AnnaMaria

 

続・裸でごめんなさい  20. 約束

 

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土曜日、都心の住宅街の最寄り駅には、
通勤客はいないものの、学生、買い物客で切れ目ない人通りがある。

その中に、ひと際目につく長身。

駅の雑踏の中で、端正な横顔を見せて、
ひとりだけ周囲から切り取られたように、くっきりと立っている。


ホントに何て目立つ人だろう・・・


いつも乍ら、少々気後れしながら隆の方に歩いていくと、ぱっとこっちを振り向き、
その途端、あたりの空気を弾くような、晴れやかな笑顔が浮かんだ。


「まどか!」


手の届くところに着くと、いきなり捕まってハグをされる。


「あの、こ、ここは日本なんですけど・・・。」


閉じこめられた腕の中で、やや胸を押し気味にしながら訴える。


「そうだったかな。しばらく向こうにいたら、また戻っちゃった。
 あっちだとハグは挨拶だから・・・。」


肩に腕を回しながら、上機嫌で答える。


戻っちゃったって、ホントかしら?
何か、わたしにわざとプレッシャーかけてるような気がするわ・・・


横目でにらんでも、知らん顔だ。

停めてあった車に着くと、助手席のドアを開けてくれる。


「ホテルで待ち合わせて食事でも・・・とも思ったけど、止めたよ」

「何故?」

「部屋を出る度にいちいち服装を気にしたりしないで、
 君とずうっと過ごしたいから。
 家にいれば、どんな格好でも構わないし・・・。

 あ、でも今日の君はまたいいね。
 この下に何着てるの?見せて・・・・」


運転席に座るなり、片手で私のジャケットをめくって中のワンピースを確かめようとする。


「止めてよ。後で脱ぐわよ。」

「え、どこまで?」


まどかはハンドルに手をかけていた隆の腕をぴしゃんと叩いた。


「もう!」

「痛た・・、早く見たいな。

 じゃ、折角だからこのまま、どこかに昼飯でも食いに行こう。
 少しだけ、買い物もしたいし・・・」


はああ・・・。
すっかりはしゃいじゃってるみたい。

ちょっと緊張して来たんだけど、この嬉しそうな顔の前にはお手上げだわ。



隆が連れてきてくれたのは、屋外テラスのあるカフェレストランで、
近くのコインパーキングに駐車してから歩いていった。

テラス席に案内されると、まどかの上着を隆が手伝って脱がせてくれ、
軽快なワンピース姿になった。


「うん、いいな。君によく似合っているよ。」


隆が目を細めてまどかを見、上着を椅子の背にかけた。

ランチの皿をはさんで、テラスで向かい合う。

屋外テラスには色とりどりの花が咲きこぼれ、昼の光の下で鮮やかに目を打つ。

陽射しが木のテーブルを温めて、風はほとんどなく、
気持ちのいいランチタイムになった。

隣のテーブルの冷たそうな白ワインを横目に見て、隆が聞いた。


「まどか、運転できる?」

「できるけど、ここではダメよ。
 世田谷の道って急に細くなったり、すれ違いが難しかったり、色々なんですもん。」

「よく知ってるね、何で?」


何でって言われても・・・


「えっと、大学のサークルで、この近くで集まったり、テニスしたりした事があって、
 お友達の車に乗ってて、迷子になったり、すれ違えなくてバックしたり
 色々あったことを思い出したの。」

「ふ〜ん・・・この辺で遊んでいたんだ。」

「いえ、遊んでいたわけじゃなくて、たまに来たことがあったのよ。
 ほら、おいしいケーキ屋さんとかあるじゃない?」


何でこんなに汗かいて、言い訳しなくちゃならないのかしら・・・。


「誰と来たの?」

「だから、サークルの友達とか・・・その、色々よ。」

「へえ〜え、そうなんだ・・・」


追求はぱったり止んだが、何となくさっきの上機嫌が影を潜めてしまった。

黙ってサラダを食べている隆を見ながら、ため息をついた。

結構、気分の変わる人ねえ。




昼食を食べ終わると、連れ立って近くの店に買い物に行った。

土曜の午後なので、都心の高級スーパーは買い物客でにぎわっている。


焼きたてのパンとチーズを何種類か・・・。

サラダ用のアボガド、トマト、緑濃いレタス、真っ赤なリンゴ、洋梨・・・。

かごの中は色とりどりの野菜や果物で埋まっていく。


「他に何か、買いたいものがある?」


ヨーグルトが目についた。

毎朝、ヨーグルトを食べるまどかだが、ここで手に取るのが少しためらわれた。

隆がまどかの逡巡を見透かして、すぐにカゴに入れる。


「朝食に食べればいいじゃないか。」


うん、そうなんだよね・・・。

でも何となく明日の朝のことを考えるって恥ずかしくて・・・。


困ったようなまどかの顔を見ると、面白がって隆が耳をくすぐってきた。


「きゃ、止めてよ!」

「わはは・・、顔赤くして何考えてるんだよ。
 結構、君って○○○かも・・・」


その言葉を耳の中にささやくと、まどかが怒って隆の背中を叩いた。


「何てこと言うのよ!」


それでも隆は笑いやまず、まどかの肩をぎゅっと抱いて、キャッシャーの方へ行く。


「君が昔行ったって言う、ケーキ屋さんにも寄って行こう・・・ね?」


また上機嫌で隆が笑った。




隆の家に着き、車のトランクから買った物を取り出して、玄関の方へ行くと、
ドアの前に、可愛らしいピンクのつるバラの大鉢が置かれ、
あたりに淡い香りを漂わせている。


「わあ、きれい。それにいい匂い・・・。
 前来た時にはなかった気がするわ。」


まどかがバラに顔を近づけて匂いを嗅いでいるようすを見ると、
隆の顔にほんの少し、得意そうな笑みが浮かんだが、
ふと表情をおさめて、自分は荷物を持ったまま鍵を開ける。



ドアを開けてまどかを中へと促すと、家の中にもかすかに芳香が漂っている。

玄関に入ると、丈高のガラス鉢からあふれ出たようなグリーンと
白いぽやぽやした花がみずみずしくまどかを出迎えた。


「かっわいい!!これ、隆が活けたの?」


隆は肩をすくめ、まさか、という表情をした。


「いいから、中に進んでよ・・・」


まどかが先に立って、リビングに続くドアを開ける。
芳しい香りが、ふわりと漂いでてきた。

いつもと変わらないリビングなのに、新鮮な生気が満ちていた。
見ると部屋のそこここにさまざまな色のバラが咲き乱れている。


暖炉の鏡の前には、濃淡のある赤バラが、
いくつもの小さなガラス瓶に生けられてずらっと並び、
鏡の前でラインダンスを踊っているようだ。

テーブルの上のバラは、緑のツタや赤や濃い紫のベリ-類と一緒に
かわいらしくお皿に盛られ、
真ん中の太いキャンドルを取り巻いている。

古い飾り箪笥の上には、少し色が褪せたような紅茶色のバラが深みを添えていた。


どれも今、切り取ってきたばかりのように新鮮で、
温室のような香りを部屋の中に満たしていた。


「わあ・・・・すごい!
 なんてきれいなんでしょう。バラ園にいるみたい・・・」


まどかが感心している様子を、隆がドアのところにもたれて微笑んで見ていた。


「どなたが生けたの?」

「僕じゃない・・・友人に頼んだんだ。気に入った?」

「こんな感じは初めて見たわ。バラに囲まれているのに、ちっとも息苦しくなくて。
 新鮮できれいな『バラの間』って言う感じかしら・・・。
 すごくセンスの良い人ね。」


アレンジを一つ一つのぞき込んでいるまどかを置いて、
隆は買ってきたものをキッチンに運んだ。


キッチンのドアから顔を出し、手招きしてまどかを呼ぶ。


「こっちも見てよ・・・」


キッチンの出窓にも、小さなバケツに投げ入れたようにピンクのバラが生けられ、
午後の柔らかい光に花びらを透かしている。


隆が指差したカウンターの上には重そうなシチュー鍋があり、
蓋を開けると、ワインの豊かな香りがふわっと鼻をくすぐる。


「おいしそう!これは何?」

「コック・オー・ヴァン、鶏の赤ワイン煮込みだよ。
 そんなに難しいものじゃない。」

「隆が作ったの?」

「これだけ今朝作ったんだ。まだ温かいだろ?」


隆がまどかの手を取って、鋳物の鍋の外側に当てると、
じんわり温もりが伝わってきた。


「あとは、これにオオムギのバターライス風を添えて、サラダを少し作ろうか。」

「お手伝いするわ・・・。」

「そう。じゃ、これを着けて・・・」とエプロンを渡された時、少しためらった。

「それはうちの母のじゃない。ここで手伝ってくれる人が使ってるんだよ。」


その言葉で素直にワンピースの上からエプロンを着け、
言われるまま、野菜を洗ってちぎったり、トマトの皮を剥いたりした。

隆がその間、あちこちから皿を取り出し、カトラリーと何種類かのグラスを並べる。


こうして二人きりで食事の仕度をしているのが不思議な感じがした。

既に少しだけなじみつつあるキッチンと、二人で何かを用意する感覚。

何だか、まるで・・・。


「ん、どうしたの?」


手が止まったまどかを見て、隆が傍に寄ってきた。



「何でもないの。ただ、こうしているのがちょっと不思議な感じがして・・・。」


隆はふっと笑顔を見せると、まどかの耳を軽く触った。

そのまま、耳のそばの頬に軽く口づけると、


「僕はすごく嬉しい。まどかが一緒にここにいてくれて・・・」


そのまま、腕の中に引き寄せて、エプロンごとまどかを胸の中に包んだ。


んん、温かい胸・・・。
それに今日は、お馴染みの中に別の良い匂いがする。


まどかは隆の胸元に鼻を近づけて、匂いを嗅いだ。


「何?」

「うん、おいしそうな匂いがする。」

「ああ、午前中作っている間に、服に匂いが移っちゃったかな。
 さ、早く本物を食べよう・・・」


腕の中のまどかの前髪をくしゃくしゃっとなで付けると、そこにもキスを落とし、
残ったグラスを持って居間の方に行ってしまった。




テーブルの真ん中に置かれたキャンドルに火を灯し、
サラダの大皿と、籠に盛ったバゲットを挟んで座ると
隆が冷えたシャンペンを丈の高いグラスに注いでくれた。


「手伝ってくれてありがとう。」

「こっちこそ、素敵なお招きをありがとう。」


二人で軽く乾杯する。

グラスの中の金色の泡が滑らかに喉を滑って、
つうっと流れ込んで行くようだ。


「おいしい・・・」

「よかった。僕も好きなんだ。さ、食べよう・・・。」


隆がサラダを取り分けてくれ、自分もどんどん食べ始めた。


「ここに来るの、久しぶり・・・」


隆が皿から目を上げて、


「やっと連れて来れた感じだな・・・。」


隆がテーブル越しにウィンクした。


もう、帰さないから・・・。



低いつぶやきが聞こえて、まどかは「ん?」と、少し聞きとがめたものの、
言い方がおかしくて、笑ってしまった。


隆の作った鶏の煮込みもワインが沁みて、温かくおいしかった。

添えてあるものが、米じゃなくてオオムギなのが珍しかったが、
隆には馴染みの付け合わせなんだろうか。

ゆでた芽キャベツにもソースが絡まっておいしい。



「ケーキ食べられる?」

「今はいいわ。せっかくワインが残ってるし・・・。」


ゆったりしたバルーングラスに注いでもらった、濃い赤い液体を回しながら、
まどかがうっとりと口に含んだ。


「いい香り・・・」


隆がまどかの顔を見て笑って、


「一緒にワインを楽しんでくれて嬉しいんだけど、
 そのままたちまち酔っぱらって寝てしまいそうで、心配になるよ。」

「それもいいなあ・・・」

「寝ちゃったら、すっごいいたずらするぞ・・・」


隆が真顔になって、テーブルの向こうから怖い顔をして見せる。


ふ〜んだ・・・・。


テーブルに出ているチーズをつまみながら、とろんとまどかがつぶやいた。


怖くないもん・・・。




「まどか・・・」




隆がグラスを持ったまま、向かいの席から、
テーブルの角をはさんで隣の椅子に移ってきた。


まどかの手首にゆれている、ブレスレットをシャラシャラと指で揺らして、
嬉しそうに微笑む。


「まどかに似合ってる・・・」


以前、隆がNYから帰ってきた時に贈られたものだ。

料理を手伝っている間は外していたが、食事をする前につけ直した。


「もうひとつ、まどかに贈りたいものがあるんだけど・・・。」


胸がドキンとして、酔いが醒めるように思ったが、
グラスを持ったまま、わざととろんとした目で見つめ返した。


「おみやげのチョコレート?」


もっといいものだよ・・・。


隆の低い声がして、まどかの顔をじっと見つめてくる。

まどかの手をグラスから外して、自分の掌につつんだ。



「まどか。この前の返事を聞かせて欲しい。

 僕は、この部屋で君にプロポーズしたよね。」



そうだわ。そう言えば、ここで聞いたのだった・・・。

もちろん忘れたわけじゃないけど、細かく考えないようにしていた。




「まどかを愛している。
 たぶん、君が思っているよりもずっと君が大切なんだ。
 
 僕と結婚して欲しい。
 ずっと一生僕のそばにいて欲しい。

 返事は?」



隆の少し茶色がかった瞳が真剣だった。

まどかの心に、光の線のように真っ直ぐに射し込んでくる。




わたしでいいのね・・・
わたしが一緒にいていいのね。

答えなんか、とっくに決まっていたんだわ。


一度大きくうなずいてから、


「ええ、ずっとあなたの傍にいるわ」と告げた。



まだ、あなたの視線がわたしの上にとどまったまま・・・。
椅子に縫い付けられているような気持ちがする。



しばらくして、隆の低い声が聞こえた。


「僕について来てくれるの?」

「行くわ。」

「どこまででも?」

「どこまででも・・・。」

「君を世界の果てまで連れていくかもしれないよ。
 それでも一緒に来てくれる?」

「必ず一緒に行くわ。」



やっと隆が破顔した。

立ち上がってテーブルの角を回り、座ったままのわたしを思いっきり抱きしめた。



「手を・・」

「・・・?」

「手を貸して・・・」


おずおずと隆に手を差し出すと、ぐっと椅子から引っ張り上げられ、
そのまま、暖炉の前のところまで行った。

赤いバラがラインダンスをしている真ん中に、
いつの間にか小さなクリスマスツリーがあって、
その足元に小さな箱があった。



「君のチョコレートだよ。」


隆が笑って箱を開けると、それをつまみあげた隆の指の間でキラリ、と光を放つ。

確かめるようにまどかの顔をちらりと見上げると、
まどかは小さくうなずいた。


左手がゆっくり持ち上げられて、薬指に白く輝く指輪がすうっとはめられる。

指の上を冷たい金属が滑っていく感触と、
自分の手を握っている、隆の手の温もりが対照的だった。


そのまま、ぎゅっと手を握られた。



「決まりだ。

 君は今から僕のもの。

 もちろん、僕も君のものだ。」


まっすぐに見つめられたまま、そう宣言されてしまった。


「僕のものって・・・・。

 そう言われると、何だかあなたの鞄だか時計になったみたいだわ。」


まどかがちょっと冗談めかして言うと、


「鞄じゃないよ。

 僕の手や足や心臓だ。」


まどかの手を持ち上げて、指輪をはめた手に唇を当てる。


「この左手は僕の手だし、この右足は僕の足だ・・・。」


まどかの腿に優しく掌を這わせる。

あごの下に手をかけ、顔を上向かせて、指で、
瞼を、唇を、そうっとひとつずつなぞっていく。




「この目も、唇も、心臓も・・・全部僕のものだから、
 そう思って大切にして」


柔らかい唇が指の跡をたどり、羽のようにかすかに、額に、まぶたに、頬に触れる。
まどかも両腕を隆に回して、しっかりしがみついた。

それから、ゆっくりと二人の唇が合わさった。









「僕は小さい頃から何度も何度も引っ越しをしてきたから、
 持って行けないものには、愛着は持っても執着はしないようにしてる。

 本当に好きなものがほんのいくつかあればいい。
 後は身一つで、どんどん新しい世界に飛び込んで行きたい。」


ソファに移動して、まどかは隆の膝の上ですっぽり抱きしめられていた。
低い声が耳を柔らかくかすめ、体の中に落ちて行く。


「でも、まどかだけは必ず連れていくから、絶対について来て。
 君さえいれば、何もなくても新しい所へ行けるから。
 むしろ、わくわくするくらいだ・・・」


大きな手がまどかの頬をすべって、またも優しい視線が向けられ、
ふっと微笑みが浮かんだ。


「大変かもしれないけど、君ならきっと大丈夫。

 ご両親に早く、ご挨拶しなければならないね。
 完全に根こそぎ、君をさらって行くつもりだから・・・。」


そうっと肩をつかんで、瞳をのぞき込んでくる。

まどかは隆の瞳の中に自分が小さく映っているのが見えた。


「覚悟をして・・・僕を信じて。
 いい?」


こっくりうなずくと、弾けたような笑顔が広がった。

ぎゅうっと温かい胸の中に抱きしめられる。


「ああ、嬉しいよ。
 君はもう僕の一部なんだから・・・」

「あら、まだよ。」

「いや、もう一部だ。
 君が僕にイエスと言ったんだから、その時点でもう君の全部は僕のものだ。

 さっき、そう言ったろ?」



大きな手が愛しそうに、まどかの体の上をさまよい始めた。
額に温かい息を感じ、顔を寄せると胸のあたりの肌から隆の香りが立ちのぼる。

体の上を這う掌から、ささやきが聞こえてくるような気がした。


「僕の体を抱きしめさせて・・・・。
 僕の唇にキスをさせて・・・・。
 僕の大事な白い肌に、しるしを付けさせて・・・・」



まどかはゆっくりとソファに倒れ込んでいく自分を意識したが、
首すじにとまっている隆の唇があまりに熱くて、
自分がどうなっていくのかわからないくらいだった。


隆とこのまま溶け合ってしまいたい・・・。


まどかも心からそれを望んでいた。



膝の下に隆の腕が差し込まれ、すうっと体が持ち上がる。

まどかも目をそらさずに、隆の首に腕を巻き付けた。

そのままゆっくりと階段を上っていく。

キャンドルの作る大きな影がゆらいで、壁を静かに移動する。

階段を上がるにつれ、どこからか甘いバラの香りがまた漂ってきた。

ほの暗い廊下を運ばれ、目の前のドアが開くとそこからかすかに香りがこぼれてくる。




 まどか、世界は本当に危険と不安に満ちているけど、
 君と一緒なら、飛んでいけるよ。
 僕から離れないで・・・・君しか要らないから・・・・。

     

     あなたとなら、どこへだって行ける。
     わたしを決して離さないでね。



背中でそっとドアが閉まり、
二人の吐息は甘く、深く、秘めやかな闇の中に溶けていった。

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