AnnaMaria

 

続・裸でごめんなさい  34-2. タヒチからの手紙 2

 

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ケンとエイジ。

結婚式全般を取り仕切ってくれてありがとう。

ケンとエイジのセンスと経験がなければ、
あんな素晴らしいパーティはできなかったと思う。
本当に心から感謝するよ。




さて、タヒチに来ている。

まどかには言ってないけど、
実は僕は一度だけ、ここに来たことがあるんだ。

その時のイメージがあまりに素晴らしかったから、
ぜひ、まどかを連れてここに来たかった。
今回は滞在する島も、ホテルも違うけど、
タヒチの素晴らしさは変わらないね。



僕らはほとんど、コテージと海を往復して過ごし、
山の方にはあまり行っていない。

帰るまでに、滝だけでも見てみようかと思っているけど、
正直、どうでもいいんだ。


こんな時間を過ごせることって、人生の最高の快楽だ。
ケンとエイジなら、それを知っているよね。



まどかは海外に来たのも初めてだし、
いわゆるリゾートに滞在したこともないらしい。
その上、あまり上手に泳げないから、遠くの海に出るのを怖がる。

ダイビングの出来ない人間用に、
アクアサファリというのがあって、
水中ヘルメットをかぶって海中を散歩し、
魚とじかに触れ合うもので、
子供でも大丈夫なんだけど、
怖がって絶対にやろうとしない。

ようやくシュノーケリングだけできるようになって、
海中をぴちゃぴちゃと楽しそうに浮かんでいる。

本人はずいぶん潜っている気分らしいけど、
実のところ、海面から頭の先が見えていて、
髪の毛が水面をぽちゃぽちゃしている。

あまりかっこいいものじゃないけど、
本人が楽しければそれでいい。



それでも、夕映えのビーチに
ごくシンプルなドレスを着て、
たたずんでいる彼女は素晴らしいよ。

甘い香りのする鮮やかな花を髪に挿して、
あどけなく笑う姿は、人魚みたいにしなやかだ。

キスをしないではいられないよ。
もっとも、泳げない人魚だけどね。



夕暮れ時は、青かった空と海が、
だんだん金色に溶け合ってきて、
壮大な真紅のパノラマに変わり、
やがて神秘的な紫色の中に、
山々も海も一瞬に沈んで行く。

星が光り始めるこの時間の景色が、僕は一番好きだな。






ケンとエイジなら、
ここの色とりどりの花や植物を
どんな風に料理するだろう。
香りも色もとびきり強くて、どれも生命力に満ちあふれているよ。



夕食が終わると、僕のお姫さまを腕の中に抱きしめる時間だ。

いつも夜まで待てるわけじゃないけど、
ハネムーンだから、それも許されるだろう?

まどかの肌の色がどんどん変わって、
毎日、新しい彼女が生まれるみたいだ。
気のせいか、ずいぶん大胆になったような気もする。






タヒチの花の甘い香りのせいか、
毎晩、抱きしめている僕のせいなのか。
僕のせいであって欲しいな・・・


彼女の黒い瞳が揺れるのを見ながら、
僕の腕の中で甘く熟して行く彼女を味わいながら、
波の音と、かすかに吹き抜ける風を感じる。

夜になると、一層強く花々が香り出すようだが、
それも、彼女自身の甘いかぐわしさには遠く及ばないよ。



二人とも呆れているかい?

一生に一度くらい、こんなバカな手紙を書いたっていいだろう。
楽園を追放される前のアダムとイブみたいに幸せだ。


君たちのおかげだ。
こんな手紙を最後まで読んでくれて感謝する。

では、またいずれ。




神待里 隆


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