AnnaMaria

 

This Very Night 第6章 -再会2-

 

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僕とレオは新しいM&Aのプロジェクトに着手したところだった。

長い夜だった。
まるまる一晩かけて、クライアントと細かいところまで交渉を進め、
契約がまとまったのは朝の7時だった。



僕らはエレベーターに乗り込んだ。

100階からエレベーターはゆっくりと降下していく。
僕は疲れて充血した目を隠すためサングラスをかけていた。
エレベーターは46階で止まり、ドアが開いた。

その階のボタンを押した人物が降りると、今度はエレベーターへと急ぎ足で駈けてくる足音が聞こえる。
次の瞬間、誰かが猛然と突っ込んで来たのがわかった

女性が、慌てて走ってきたのでうまく止まれず、僕のところに飛び込んできた。
すぐ腕を伸ばして女性を支えた。
彼女は詫びを言って、僕の方を見上げる。

その瞬間、僕の息も心臓も止まってしまった。



     ・・・俺の目が正しいのか?
     これは本物か?
     本物の彼女なのか?
     本物の彼女の感触がしなかったが・・・

     僕の腕の中にいるのは・・・・ジニョン!


ジニョンだった。
昼も夜も求め続けた女性、
数えきれないほどの眠れない夜に追い求めた女性、
僕のジニョンだった・・・!


無意識に君の腕をつかむ手に、つい力が加わってしまう。
本当に君なのか確かめようとしたのかもしれない。
いや、僕は知りたかった・・・確かめたかったんだ・・・



「痛いんです!」

君の顔が少し歪んだ。
    
僕は手を離し、謝罪の言葉を言った。
君は少しきまり悪そうにして、壁にもたれている。
だがこちらを、僕とレオをちらちらと盗み見ているのがわかる。


僕はレオを見た。
レオの顔に浮かぶ驚愕の表情は、僕の見ているものが錯覚でないことを教えてくれた。


頭の中が真っ白になり、全身の血流が止まってしまったようで、悪寒すら感じる。
と、同時に心臓の方はたちまち騒ぎだし、狂ったように速く鼓動を打っている。


君から目を離せない・・・どうしても君を見つめずにはいられない・・・


君が身につけている香水の微かな香りが漂ってくる。
喉が締め付けられるようで、声が出ない・・・どんな声も立てることができない・・・



レオが君に何か尋ねようと口を開いた。
君は少し赤くなって、微笑みながら答えている。
驚いたようだった。

僕は大きく息をすると、目の中に熱いものがあふれてくるのを感じる。

泣き出しそうな気分だ。
こんな気持ちがどこからやって来るのか、自分でもわからない。
体が・・・細かく震えているのがわかる。
自分で自分の体のコントロールが利かないようだ。

神は僕の元に僕の天使をお戻しくださったのか?
君に何と言ったらいいのだろう?
何か言うべきなのだろうか?
君はひどく居心地悪そうで、落ちつかない様子だ・・・。


ちょうどその時、エレベーターが降下し始めた。


君はまさにここにいる。
君は僕のすぐそばに・・・
君の香り・・・君のほんのわずかな動きまで見える・・・感じられる・・・
全てこれは・・・これは現実なのだ。



この一年、何度自分に問いかけただろう。
僕が生きている間に、また君の顔を見られる日が一体来るのだろうかと・・・

あるとしたら、どんな場合だ?
どんなふうに僕らは出会うのか?
どんな状況で?
そして、それはいつなんだろう?
君はどんな風に僕を見つめるのだろう?・・・


しかし、僕は君にまたこのニューヨークで会えるとは、全く想像もしていなかった。
しかも、こんな狭い箱の中の限られた空間で出会うとは、
僕らの再会がこんな形で訪れるとはまるで考えていなかったのだ・・・

君は僕のことを少し不安そうに、警戒するような目で見つめている。
その視線が僕の心に鈍い痛みをきざんでいく・・・
凍りつき、動きをやめていた僕の心臓がまた、動きだし・・・破れかけている。




エレベーターがメイン・ロビーの階で止まると、
君の顔に安堵の表情がうかぶのが見えた。
まるで一刻も早く逃れでたいとするように、エレベーターから飛び出していった。


君を呼び止めたい!・・・

こんな風に僕の元から去ってしまうなんて耐えられない。

自分の声が

「ソ・ジニョンさん!」

と呼ぶのが聞こえた。


君は一瞬ためらった。
ほんの一瞬、動きが止まったのが見えた。

僕の声が聞こえたのだろう。
だが、君はやや怯えていた。
猛獣にねらわれた獲物が走り去るように、そのまま振り返らなかった。

僕には、君が僕を見る視線で、
もはや僕のことを完全に忘れてしまっているのがわかった。



君は、本当に完全に僕のことを忘れてしまったのだ・・・・・



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出典
Original in Chinese by Jenny Lin
Translated into English by happiebb
Translated into Japanese by AnnaMaria

2004/7/15 ~ 2004/7/29, 2005/10/25 dreamyj
2004/8/5 ~ 2004/9/8 BYJ Quilt (by happiebb)
2004/8/8 ~ 2004/9/8 2005/11/30 hotelier 2002(by happiebb)

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