AnnaMaria

 

This Very Night 第10章 -フランク・シン?-

 

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ジニョンはふと目を覚ました。

だが、自分が一体どこにいるのかまるでわからなかったが、
周りを見まわすと、車の中だというのはわかった。

そして自分は隣にいる男性のあごの下に顔を埋めて、ぴったりと寄り添っている。
いや、もっと正確に言えば、彼の胸の上で眠っていたらしい!


彼の体は温かくて気持ちいい、彼の心臓の鼓動が子守唄のように響いてくる。


     ・・・これは夢かしら・・・?


     ・・・いえ!夢じゃないわ!


突然がばっと起き上がると、いきなり頭を車の屋根にぶつけてしまった。


     ・・・痛っ!頭にひびいたわ!・・・


隣にいる男性が衝撃で目を覚まし、
彼は無意識に手を伸ばして彼女を抱き寄せると、訊いた。


「どうしたの。また頭痛がする?
 それとも悪い夢でも見たのかな?」

「頭を車の屋根にぶつけたんです」

と、彼女はおずおずと言った。

それを聞くと彼はジニョンの頭に手をのせ、やさしく撫でてくれた。


「そんなに勢いよくぶつけないで・・・。痛いでしょう」

「すみません」


彼女を撫でる手の感触がますます優しく、やわらかいものになってくる。


ここに至って、ジニョンは完全に目を覚ました。


     ・・・あああ、何だってぐっすり眠り込んじゃったんだろう?
     わたしに、ほんのちょっとましなイメージや印象が残っていたとしても、
     今や完全に吹っ飛んでいるわね。
     わたしはレディのはずだったのに!・・・


「わたし・・・ああ・・・あのお昼をいただいたら眠り込んでしまったみたいで、
 すみませんでした。でも、どうして起こしてくださらなかったの?」


彼女は何気なく髪をかきあげると、この人ってなんて変な人なんだろう、と思った。
確かに彼女は眠ってしまった、でもどうして起こしてくれなかったの?


     ・・・しかも!
     彼ったら、わたしの隣でくっついて寝ているなんて!
     全然紳士らしくない行動よ!
     それに・・・それにこの人って何でいつも、わたしの最悪の瞬間ばかりに居合わせる
     のかしら?
     彼ってわたしが最もみっともなくて、弱っているときばかり現れるみたいだ
     わ!・・・




ドンヒョクはジニョンをホテルまで送っていった。

「夕食を一緒にどう?」

「いえ、もうそんな必要は・・・わたし・・・」

「7時にロビーで待ってる」


そう言うと、くるっと背を向けて行ってしまった。
彼は断る隙を与えてくれなかった。
ジニョンはただ呆然と彼の歩いて行く後ろ姿を見送っているだけだった。





ジニョンがホテルのロビーを歩いて行くと、こちらに向かって来る女性が見えた。


「あら、水くさい!
 あなたったらニューヨークにいるのに、わたしに電話すら寄越さないで。
 スンジョンが言ってくれなかったら、あなたがここにいるのも知らなかったわよ!」


ジニョンは笑って友だちの非難を聞いていた。
彼女は昔からの友だち、ソンジェの顔に不機嫌そうな表情が浮かんでいるのを見ると、
駆け寄って両手で思いきり抱きついた。


「ゴメンね。誓ってもいいけど、そのうち本当に電話するつもりだったのよ!
 でも、あなたが恋に狂ってるのも知ってたから、だからわたし・・・」

「へええ~、じゃ、あんたが私に連絡した時に、
 前のあなたみたいに私がいなくなってたらどんな気分がするのか、
 あなたにもわかるわよ!」

「何のこと?なんで?誰がいなくなったの?
 それにいなくなるってどこへ行くつもりなの?」


ジニョンは友だちの言葉を聞いて、ちょっと不審に思った。



だがソンジェを見ていると、温かくて幸せな気分がわいてくるのを感じる。
ジニョンは子供の頃から、特に孤独を感じることなく育ったが、
それはソンジェのような友だちがいたお陰だったろう。

また、ジニョンは自分がニューヨークで行方不明になっていたあの8ヶ月間、
ソンジェが、ジニョンの捜索に関するあらゆる質問、尋問、反対尋問等を、
彼女ひとりで引き受けざるを得なかった事も知った。



ジニョンは一年前に自分が記憶を取り戻したときのことを思い出した。
ソンジェもその時、病院にいた。
二人はずいぶんと長いこと友だちでいるが、ジニョンの知っているソンジェは常に前向きで明るい人だった。

だが、あの日のソンジェはいつもの彼女の影のような感じだった。
ジニョンがソンジェの名前を呼ぶのを聞くと、いきなり泣き崩れたのだった。

ソンジェの涙はあとからあとから、凄まじい勢いであふれてきた。
ずいぶん長い間、ソンジェはただそこに立って、泣き続けていた。
まるで彼女の胸の中から、この8ヶ月の間のあらゆる不安、心労、欲求不満などがあふれだし、
涙となって流れ出て来たかのようだった。

ソンジェは泣いて、泣いて、泣き続けた。




ジニョンがニューヨークで行方不明になっていることを知るまで
ソンジェはジニョンがもう韓国に帰ったものと考えていたと、後で話してくれた。

それはソンジェの過ちではなかったが、彼女は自分を責め、ジニョンの安否を深刻に気づかっていた。
ジニョンがどんな事件に巻き込まれたのかはっきりわからなかったし、
わからないままに妄想がどんどん広がっていって、最悪の事態が脳裏に浮かんでくる。
考えれば考えるほど、ますます心配になり、悪い方へと考えが向かうのを止められなかった。


ある程度の期間が過ぎたあたりから、ソンジェはモルグ(身元不明死体置き場)をまわって、
東洋系らしい女性の身元不明の遺体をチェックしていった。
ソンジェはそんなところに足を踏み入れたのは初めてだったし、
恐怖とはどんなものかを初めて知った場所だったと、後でジニョンに言っていた。
ジニョンが失踪していたつらい8ヶ月の間に、ソンジェは10キロも体重を落としてしまった。


ソンジェはまた、有名なレストランの外でジニョンを一度見かけたことがあるとも言っていた。
そのジニョンらしい誰かは、背の高い男性に寄りそっていて、
二人で車に乗り込むところだった。
ソンジェはすぐにタクシーをつかまえられなかったが、
その女性が本当にジニョンなのか、何としても追いかけて絶対に確かめたかった。


二人を見かけたときのソンジェは、ハイヒールを履いて両手いっぱい荷物を抱えた状態だったにもかかわらず、
車の後を狂ったように走って追いかけた。
ソンジェの頭の中には、ジニョンを見つけるためのどんなに小さな可能性も絶対にあきらめない、
という思いしかない。
とにかく、車のナンバープレートだけでも絶対確認してみせる、と自分に誓っていた。


車はすぐに走り出した。

車に追いつくことはできなかったが、あきらめるつもりは全くなく、
車の走り去った方向に向かってかなり長い間走り続けた。
ソンジェは大声で泣き叫びながら、車の後を追い、走って走って走りつづけた。

通行人はドラマチックな場面でも見ているように見物していて、
映画のワンシーンを撮影しているのだと誤解する人までいた。



ジニョンはソンジェからその話を聞いた時、

「ソンジェ、今でも車の中にいたのがわたしだったって本当に思ってる?」


ジニョンがそう聞くと、友人の顔にいろんな表情がよぎるのを見えた。
ソンジェは、しばらくして確信にみちた調子で宣言した。


「いえ、あれはあなたじゃないわ」

「どうしてそんなことがわかるの?」

ソンジェは、ジニョンの質問にちょっと虚をつかれた感じで、答えをためらっていたが

「わたしがそう思うからよ!」




ジニョンはソンジェがあの8ヶ月の間、じつに大変な日々を送ってきたのを後で知った。

ジニョンの消息が絶えてから、ジニョンの父、母、スンジョンあるいは婚約者のジェウォクといった人たちが
ジニョンを探しに次々と韓国からニューヨークにやって来た時も、
ソンジェは案内役を買ってでて、一度も断らなかった。

彼らはニューヨークの街角という街角、小道という小道をしらみつぶしにあたった。
さらにソンジェはジニョンが消えた辺りで何か手がかりになるものが拾えるかもしれないと、
何度も何度も繰り返し、足取りをたどり直すよう求められた。

ある時、ソンジェが自分の髪に白髪を見つけた時、冗談半分にジニョンに言った。


「これも全部、あなたのおかげってわけね。
 この8ヶ月、櫛で梳くようにニューヨークを1インチ刻みに調べ回った挙げ句、
 自分の頭に白髪が一本見つかったってわけだわ!」




ソンジェのしてくれたことを思うと、ジニョンはまたいっそうこの友人のありがたさが胸に沁みる。


「ねえ、それって全部わたしのせいだわ。
 コーヒーくらいおごらせてよ。たしかコーヒー狂いだったわよね。
 コーヒーでも飲みながら、ソンジェの最近の恋愛生活の話でも聞かせてよ」


ソンジェは親友の顔を見た。
ジニョンのドジかげんと注意力散漫はものすごく良く知っている。


「ねえ、ジニョンのお父さん、絶対ニューヨークには行かせないって言ってなかった?
 あなたが来るわけないと思ってたから、ブリュッセル行きの便を予約しちゃったのよ。
 明後日発つの。ヘンリーがブリュッセルでの仕事を受けることになったから。

 だけど、あなた一人ニューヨークに置いておけないわね。
 出発便を延期することにしようかな」


     ・・・ジニョンが困っているのに放っておけないわ・・・・


「ねえ、それじゃうちのお父さんみたいじゃない!勘弁してよ!
 わたしだってもう子供じゃないことくらい、わかってるでしょう?
 それにわたし、3年もここに住んでたんだから・・・。
 とにかく、わたし、そのことであなたの大事なヘンリーと争う気なんか、全然ないから。

 心配しないで、気をつけるから大丈夫よ。
 わたし、ベル教授のお招きを受けて、学校の演奏会に参加することにしたのよ。
 それに、わたしが無事だってこと伝えるために、毎日家に電話も入れてるわ!
 来週の水曜日にはどっちみち韓国へ帰らないといけないし・・・」

ジニョンは不満そうに言った。


     ・・・何だってわたしの周りの人はみんな、わたしを子供扱いするのかしら、信じら
     れないわ・・・


ソンジェはそんなジニョンの様子を見て、そろそろ過去を切り捨てる潮時なのかもしれないと考えた。


     ・・・たしかに、1年前はみんなが苦しい経験をしたわ。
     でももう終わったことだし、ここらでジニョンに息をつかせてやるべきかもしれな
     い。
     だけど、あの苦しい8ヶ月間のつらい時間のことを思い出すと、
     何があっても二度とあんな体験はしたくない、と思わずにはいられないのよ・・・


ソンジェは心の中ではっきりと確信していた。
レストランの外で見かけたあの女性は、間違いなくジニョンだと。
ジニョンはあの男性と一緒だった。

あの男性、ジニョンを8ヶ月もの間隠していた男。
シン・ドンヒョクという名前の男性。


あの時まで、ソンジェにはシン・ドンヒョクがなぜ、あんな事をしたのか理解できないでいた。
彼はジニョンのことを並外れて大切にしていた、
彼女がアメリカ国籍を持たず、保険に加入できないために生じた膨大な医療費も、全額彼が負担していた。


     ・・・でも彼の行為が、ジニョンの家族や友だちに大変な苦痛を与えたことに変わり
     はないわ。
     彼のせいで、私たちは深い谷間の一番深い谷底、誰も知らないような奥まった場所に
     投げ出され、大きな心痛と不安を味わった・・・

     彼が彼女を隠していた8ヶ月という期間に
     私たちの方は、ジニョンがもう見つからないのではないかと、
     あらゆる希望をあきらめかける瀬戸際にまで追い込まれていた・・・

     もし、彼が本当にジニョンを好きだったなら、なぜもっと適当なやり方を取らなかっ
     たのだろう?
     もし、スンジョンがコンサートで彼と一緒にいるジニョンに会わなかったら、
     彼は永久にジニョンを隠しておこうと考えていたのかしら?・・・


ソンジェは、自分には彼のようなタイプの友だちがいなくて密かに救われた思いだった。

しかし、もっと後で、シン・ドンヒョクがジニョンを見つめる視線、
病院でのあまりに悲痛な彼の表情を見た時、
ソンジェは気持ちがぐらついてしまった。
彼女の中に、シン・ドンヒョクに対する哀れみが生まれていた。


     ・・・おそらく、おそらくだけど、彼は最初から彼女を隠したり、
     そばに置いたりする気持ちはなかったのだろう・・・

     おそらく、おそらくだけど、無意識に、自分でも全く予期しないうちに、
     ジニョンへの恋に落ちてしまったのだろう・・・

     おそらく、そしておそらくだけど、ジニョンが家族の元へ帰れるほど回復した時に
     は、彼のジニョンに対する気持ちはもうどうすることもできないほど強くなってい
     た。
     既に、とても自分の元から手放すことができないほど、恋におぼれてしまっていたの
     だわ・・・


もちろん、そんな強くて激しい愛がこの世に本当にあるのかどうか、ソンジェにも確かではない。
だが、ソンジェはシン・ドンヒョクがジニョンを見つめる目が忘れられなかった。
この世の何ものも構わず、この世の他の誰のことも目に入らず、
愛と優しさにあふれたまなざしで、ただただジニョンを見つめていた。




病院では、だれもが非難の目でシン・ドンヒョクを見たが、彼は全く無表情だった。
彼が何を考えているのが、どういう気持ちでいるのか、誰にもわからなかった。

だが、ジニョンが死ぬかもしれないと聞いた時、
ソンジェは、彼の表情が一変するのを見た。
顔が幽霊のように白くなり、体が細かく震え出して抑えられず、
ソンジェは彼がこのまま気絶するのではないかと考えたくらいだ。

ソンジェは彼が病院の外でひざまずく姿も見たし、聞くものの胸が張り裂けるような祈りの言葉も聞いた。
そして彼の涙も見てしまった。

ソンジェは彼のジニョンに対するむきだしの愛に強く心を動かされたのを思い出した。
ひざまずく彼を見つめていると、妙な思いがわいて来た。


     ・・・たぶん私が彼を助けるべきなのではないかしら・・・



しかし、人生は皮肉に満ちている。
ジニョンが意識をとり戻した時、彼女の過去の記憶も全て戻って来た。
ただ彼と共に過ごした時間の記憶だけをのぞいて・・・。
神が彼の祈りを聞き届けたかのようだった。





ソンジェが、韓国に帰国するジニョンと両親を空港まで送っていった時、彼を見つけた。
その男ははるか遠くの隅で一人で座っていた。
誰もその男のことが目に入らない。
たとえ視線をむけても、空港の中で彼の存在を気にかけるものなど誰もいなかった。

ソンジェはかつて過敏な少女だった頃の感覚を、今も自分の中に持ち続けている。
もしそうでなかったら、彼女も彼に気がつかなかったかもしれない。
あのはるか遠くの隅にすわっている男、男は燃えるような目でジニョンを見つめている。

男の名はシン・ドンヒョク。


ソンジェは彼からジニョンがはっきり見えるように、ジニョンの体の向きを少し変えた。
彼の目に映る最後のジニョンは車椅子に乗っている姿だった。
まだあの頃はとても弱っていて、旅客機にのせるのに客室乗務員が抱えあげなければならなかった。

ソンジェはドンヒョクが立ち上がるのが見え、
今にもこちらへ歩いて来て、ジニョンの手助けをしたいように見えた。
ソンジェはあわてて、目で彼が来るのを止めようとした。
だが、ドンヒョクの目にはジニョンしか見えていない。
ソンジェはとうとう彼の視線をとらえることができなかった。


しかし結局、彼は自分を抑えて、こちらに来るのを思いとどまったようだった。
ただ、目だけはこちらを見ている。
その目、涙のあふれた彼の目を見た時、ソンジェは彼に負けたと思った。

この狂おしい恋に身を焼き尽くしている男を許そう、
彼のやったこと全て、彼の為に皆が味わったあらゆる苦痛も許そう、
この男はただ恋におぼれている愚かものに過ぎないことを、ソンジェは理解したのだった。





「ね、夕食一緒に食べない?
 ヘンリーにも電話して、仕事の後、合流してもらうように言うわ」

「わ・・・わたしもう夕食の約束しちゃったの」

「本当?だけど、あなた今、ニューヨークにどんな知り合いがいるっていうのよ?
 え、え、え?男性なの?ホントに?
 たった1日しかここにいないのに、もうあなたの崇拝者がいるってわけなの?
 まあ、私あなたが世界のこっち側でこんなに人気だとは、全く知らなかったわ!」


ジニョンは先ほどの出来事を説明したかったが、あまりに色々あった日だったので、
どこから始めてよいやらわからなかった。

ソンジェは訊いた。


「ねえ、あなたが誰かとデートしてるなんて知ったら、ジェウォクが怒るかもしれないって心配じゃないの?」

「ああ、言い忘れてたけど、私たちの結婚は中止にしたの」

「ええ、なぜ?」

「あの、それについては、今あまり話したくないの」

「わかったわ。終わったことなら、聞かない。
 また違うときにでも話を聞くわ。
 でも・・・でも、その新しい彼のことは聞かせてもらうわよ!」

「新しい彼ってわけじゃないのよ!彼に、今日いろいろと助けてもらったの。
 今日会ったばかりなの」


ジニョンは顔を伏せて、ソンジェの方を見ないようにした。
ソンジェが次に何を言うか、大体想像できたからだ。


     ・・・う、まさしく・・・


「何ですって?
 たった1日会っただけなのに、もう夕食の約束をしちゃったの?
 いつからそんなに発展家になったのよ?」


ジニョンも考えこんでしまった。
ソンジェの言うことは図星だ。
ジニョンはこれまでずっと初めて会うような人には特に恥ずかしがりやだった。


     ・・・だけど、今日・・・あのちょっと変わった人に会ってから、
     わたしの行動も何だかも少し変わってしまったんだわ。
     あの人がそばにいると、いつものわたしじゃなくなるようなんだもの・・・


しかしジニョンはまだ抵抗しようとしていた。

「だって、だって、あの人わたしにダメって言うヒマもくれなかったのよ!」

「ああ、全くなんてこと!じゃあ、わたしが代わりにやってあげるわよ。
 さ、彼の電話番号貸しなさいよ。名前はなんて言うの?」


ソンジェは自分のバッグをかき回して、携帯電話を探していた。

ジニョンはフランクの電話番号が書かれた紙切れを取り出した。
彼はランチが終わってすぐにこれを渡して言った。

「君ならいつ電話してくれてもいい」


お互いに知り合ってからのあまりに短い時間を考えると、
いつ電話してもいいなんてずいぶん変だと思ったことを思い出した。


     ・・・とにかく、ソンジェが夕食の約束のキャンセルの電話をしてくれるって言うん
     だから、ちょうどいいかも。
     あの人といると妙に緊張するし、今晩会わない方がかえっていいのかもしれない
     わ・・・


「電話番号はこれよ。あん!待って、ちょっと見せて!
 彼はフランク。名前はフランク・シンよ」

ジニョンはソンジェがその名前を聞いたとたん、携帯を探す手を止めたのに気がついた。


ソンジェはゆっくりとジニョンの方に顔を向けた。
彼女の中の本当の感情を出さないようにしようとしているように見えた。
彼女は首を傾げて、言った。


「もう一度言って、彼の名前が何だって?」


ジニョンは大声でくり返した。


「名前はフランクって言ったのよ。フランク・シンよ」


ジニョンは友人の口がぽっかりと開いたのを見て、あれじゃ卵が丸ごとすっぽり入りそうだわ、と思った。



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出典
Original in Chinese by Jenny Lin
Translated into English by happiebb
Translated into Japanese by AnnaMaria

2004/7/15 ~ 2004/7/29, 2005/10/25 dreamyj
2004/8/5 ~ 2004/9/8 BYJ Quilt (by happiebb)
2004/8/8 ~ 2004/9/8 2005/11/30 hotelier 2002(by happiebb)

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