AnnaMaria

 

This Very Night 第13章 -迷い-

 

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ソンジェは二人が駐車場に通じるエレベーターに消えたのを見ると、ソファに崩れ落ちた。



・・・まさに彼だ。
まさにシン・ドンヒョクだった。

わたしはこれからどうしたらいいんだろう。
ジニョンの父に連絡を取るべきなんだろうか……


もし、この事をジニョンの父親に知らせたら、ジニョンは直ちに家に呼び戻されるわ。
ジニョンの父親がシン・ドンヒョクのことを毒へビか何かのように思っているのを
わたしは知っているもの。

娘には2度とシン・ドンヒョクになど関わり合って欲しくない。
娘には行方不明になっていた8ヶ月の間の真実を、2度と思い出して欲しくない。
娘の頭の中で、あの8ヶ月はこのまま空白でいて欲しい。
そうジニョンの父親は強く願っており、それが父親なりの娘を守る方法なんだろう・・・


ではもし、わたしがジニョンの父親に連絡しなかったら、物事はどういう風に進むのかしら・・・


ジニョンはシン・ドンヒョクにエレベータ-でばったり出会ったと言っていたわね。
エレベーターをつかまえようと慌てていて、彼の腕の中にうっかり飛び込んでしまったのだと。
また、ジニョンはそのエレベーターの中では何だか、妙な雰囲気だったとも言っていた。
何か、今まで経験したことがないような感じだったから、エレベーターのドアが開いた瞬間
気まずくてすぐに飛びだしたと言っていたわ・・・


わたしだって、ジニョンとシン・ドンヒョクが再び顔を会わせることになるなんて、想像もしていなかった。
だから、この偶然の再会が彼にどれほどのショックと衝撃を与えたのか、わかるような気もする。

でも、今のジニョンには彼に対するどんな記憶もない。

そんな二人がまた恋に落ちるだろうか・・・?



それにジェウォクのことがある。

ジェウォクはジニョンをいたわり、ずっと優しく接して来た。
ずいぶんと長い間、ジニョンをじっと待っていたのよ。

ジニョンの消息がつかめないでいたあの時期、
ジェウォク自身はジニョンを探しにそれほど頻繁に米国に来る事ができなかったにしても、
彼女を見つけるためのさまざまな方策や手段を試していた。
自分の持つあらゆる交友関係を駆使して、この件で韓国大使館に対し、ある種の圧力までかけた。

ジェウォクがジニョンの捜索にかけた途方もない圧力と費やした努力は全く驚くべきもの。
そして、もちろん賞賛に値するものよ・・・


それにジェウォクは快活でとても前向きな性質だから、
彼の行くところ、いつも周囲に笑顔をもたらしていたわよね。

ジニョンがシン・ドンヒョクと暮らしていた8ヶ月の間に、
二人は肉体的に親密な関係になってしまったのではないかと、多くの人々が疑っていた。
でも、ジェウォクはそんなことは問題ではない、
大事なのはジニョンが無事に家に帰って来たことだと強く主張していたわ。



お日さまのようなジェウォクと、どこか暗い世界からやってきたように見えるシン・ドンヒョクとは
なんて違っているんだろう。
ジェウォクが明るい昼の光の下で育ったとするなら、シン・ドンヒョクを育んだのはきっと夜だ。

多くの困難と心痛む時期にあっても、ジェウォクは常に顔をしゃんとあげ、
現実的に前向きに対処してきた。
もし彼が木だったら、上の部分を切り落とされてしまっても尚、誇らしげにまっすぐに立って、
その枝を伸ばして太陽の光を受けようとするだろう・・・


そして、シン・ドンヒョクの方はと言えば・・・
あの大変な時期、この男は緑色の目をして、地獄の門をじっと見張っているアヌビス※のような存在だったわ。

なぜジニョンが結婚を中止にしたのかは、わたしにはわからないけど、
ジェウォクが簡単にあきらめる筈のないことはわたしにもわかる。



わたしがこのまま沈黙を守って、事態が自然に落ちつく方へ流れるままにしたら、
ジニョンはシン・ドンヒョクと一緒だったあの8ヶ月を思い出すかしら。
あの8ヶ月はたしかに存在したのだと、彼女が受け入れられる日が来るかしら。
それに、シン・ドンヒョクは自分の感情を押しとどめることができるだろうか・・・



わたしにはシン・ドンヒョクという人が本当はどんな存在なのかはよくわからない。
彼の人柄を理解することはできない。

ただ彼のジニョンに対する愛はあんなにも深く激しい・・・
彼の感情の激しさは彼自身を焼きつくすばかりでなく、ジニョンをも傷つける危険性があるのじゃないかしら?

あの深い愛がいつの日か、憎しみに転じることはないと言えるのだろうか?
神はあの二人に今後どんな未来をお与えになるのだろう。


神よ、わたしはどうしたらよいのでしょう?・・・



※ エジプト神話に出て来る、ジャッカルの頭を持つ死者の神



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出典
Original in Chinese by Jenny Lin
Translated into English by happiebb
Translated into Japanese by AnnaMaria

2004/7/15 ~ 2004/7/29, 2005/10/25 dreamyj
2004/8/5 ~ 2004/9/8 BYJ Quilt (by happiebb)
2004/8/8 ~ 2004/9/8 2005/11/30 hotelier 2002(by happiebb)

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