AnnaMaria

 

This Very Night 第20章 -夢-

 

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     ・・・誰かがわたしに話しかけている・・・



  「ベイビー、僕の名前を呼んで。おいで、僕の名前を呼んでごらん」

  「すごい!よくやったね」

  「ジニョン、怖がらなくていい。僕がついてるから」

  「君は僕の宝物だ」

  「愛しているよ」



     ・・・また、あの黒い影の男性だ。
     あの人がわたしに優しく話しかけている。あの人は誰?


     夢の中のシーンが変わった・・・

     顔の部分が見えない男性がこちらに向かって歩いて来る。
     彼はわたしに触れ、わたしを優しく愛してくれる。
     彼の手でそっと、優しく触れられると、もっともっとして欲しくなる。
     そうっとわたしを撫でてくれているのかしら?すごくいい気持ち・・・!

     わたしにぴったり寄り添っている彼の体の温もりが感じられるわ。
     ちょっぴり不思議なんだけど、懐かしい、よく知っている感じ。

     誰かがわたしにキスしている?
     誰かがわたしの下唇をやさしく吸っているの?
     誰かがわたしの口の中を自在に動き回っているの?・・・


ジニョンは、自分の口の中を動き回る彼の舌の感触まで感じられるほどだった。

本能的に、ジニョンは自分にかぶさる彼を押しのけようとした。
だが、彼の手がしっかりとジニョンの両手を押さえ込み、身動きを封じている。


     ・・・誰?わたしに、こんな事をするのは一体誰なの?
     わたしにこんな事、一体誰ができるって言うの?・・・





ジニョンはぱっと目を覚ました。夢だった。


     ・・・ああ、ただの夢だったわ!神様、感謝します・・・


ジニョンが枕元の時計に目をやると、朝の8時だった。
ジニョンは大きく伸びをして、あくびをした。


     ・・・まだ早いし、今は休暇中よね!・・・

ジニョンは柔らかい羽枕に頭をうめると、もう一度眠ろうとした。




     ・・・だけど・・・ちがうわ・・・わたしが寝たのは午後だったわ!・・・


気分が良くなくて、ホテルのスタッフに鎮痛剤をもらったのも思い出した。


     ・・・で、今は朝の8時、ということはそのあとずっと寝ちゃったんだわ・・・

     きゃ!そんなに長く寝ちゃったってこと?
     ああ、どうしよう! ・・・


ジニョンはフランク・シンと昨夜ディナーの約束をしたのを、突然思い出した。


     ・・・昨夜の7時に会うはずだったんだわ!・・・

ジニョンはいきなりベッドに起き上がった。


     ・・・だけど、そう言えば昨夜、激しいノックの音をわたし、たしかに聞いたような
     気がする。
     昨夜・・・昨夜、あの人がここにいたの?
     わたしがドアを開けたのよね?


「ああ、まだ寝ぼけてるのかしら?・・・」


ジニョンはそうつぶやくと、ベッドのそばのテーブルの薬袋を見た。
ホテルのクリニックのラベルが貼ってある。


     ・・・ということは、フランクがお医者さんを呼んでくれたのかしら。
     つまり、夢じゃなかったってこと?・・・


ジニョンは昨夜から着たままの自分の服を見おろした。


     ・・・もう、わたしのイメージなんて、メチャクチャだわ。
     今、フランクに電話して、謝るか、お礼を言うべきよね。
     いえ・・・又は、お返しに夕食をご馳走するべきかも・・・


ジニョンはフランクが以前、連絡先をくれたのを思い出した。
バッグの中をかき回すと、あった!

まず、ゆっくり深呼吸をして、それから番号をダイアルした。


     ・・・ま、どうしてわたし、こうも緊張しているのかしら・・・


「もしもし、こんにちは、フランク・シン氏とお話ししたいのですが。
 わたしは・・・」

ジニョンが最後まで言い終わらないうちに

「ボス!ソ・ジニョンさんから電話だぞ!」


ジニョンは、この声はあの日エレベーターの中にいた小柄な方の男性かな、と思った。


     ・・・だけど・・・どうしてわたしがわかったの?
     まだわたし、自分の名前も言っていないのに・・・


ジニョンには誰かが電話を取る音が聞こえたが、そのまま何の音もしなかった。
なんだか息づかいだけが聞こえて来る。


     ・・・電話がどうかしたのかしら?・・・


「もしもし、もしもし?」

「フランク・シンです」


ジニョンは電話から聞こえてくる声を聞いて、思わず一歩退いた。

     ・・・あら、フランクの声って今朝見た夢に出てくる男性の声そっくりだわ。
     だけど・・・だけどそんなはずある?・・・


ジニョンは恥ずかしくなって、顔を赤らめた。


     ・・・昨夜、フランクはわたしにあんな風に触れてないでしょ?・・・


「ソ・ジニョンです」

「わかりますよ。よく眠れた?
 朝食はもう食べた?
 気分は良くなった?」

「あの・・・ええと・・・お礼を言いたくてお電話したんです。
 昨夜お医者さまを呼んで下さいました?」

「君は僕の質問にまだ答えていないよ・・・」

「ああ、そうですね・・・ずいぶんよく眠って、すっかり元気になりました」


     ・・・全くこの人ってどうしてこうなの?・・・


「それで・・・それであの、今夜夕食にお誘いしてもよろしいでしょうか?」


ドンヒョクは微笑んだ。

「もちろん。迎えに行きますよ、7時に。
 ああ、それから、朝食を食べるのを忘れないで。
 薬もちゃんと服むんだよ」


ジニョンは電話を置くとすぐそばの薬を見た。


     ・・・どうしよう、恥ずかしいわ!
     わたしは品位も礼儀も心得たレディのはずなのに!
     あんな、あんな・・・いやらしい夢を見てしまって・・・
     こんなことどうやって彼に聞けばいいの?・・・


ジニョンはまた枕に顔をうめてしまった。
眠ったら、この恥ずかしさが消えるといいのに、と思いながら。



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出典
Original in Chinese by Jenny Lin
Translated into English by happiebb
Translated into Japanese by AnnaMaria

2004/7/15 ~ 2004/7/29, 2005/10/25 dreamyj
2004/8/5 ~ 2004/9/8 BYJ Quilt (by happiebb)
2004/8/8 ~ 2004/9/8 2005/11/30 hotelier 2002(by happiebb)

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