AnnaMaria

 

This Very Night 第31章 -クローゼット-

 

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     ・・・ああ、今日の太陽はなんて綺麗なんだ!・・・


フランクはジニョンのそばに来ると、


「今日は街に出てみない?
 外でいっしょに食事をしてから家に戻ろう、どうかな?」


そう提案してみた。

ジニョンは外出できるかもしれないという望みにすっかり興奮して、
彼の言葉も終わらないうちから何度もうなずいていた。



フランクはジニョンのいる部屋のクローゼットを開けた。

それは壁に埋め込み式になっていて、かなりの広さがあり、中はきれいに整理されていた。
表面には美しい彫刻が施されており、ジニョンはずっと壁の装飾の一部だと思っていたのだが、
実際は壁に作りつけのクローゼットだったのだ。


「どれを着たい気分かな。このドレス?
 うーん、それともこっちの方がいいかもしれない。
 今日は外は寒そうだからね」


ジニョンは言葉を失った。
クローゼットの中は女性用の服でいっぱいだったのだ。

全シーズン用の服があり、全てきちんと整理されている。
下着も、コートも、靴も・・・
きれいに種類別に分類されて、クローゼットの中の棚に収められていた。

ワードローブの中の服のスタイルはかなり女らしいもので占められている。
ドレスの何枚かは息を呑むほど美しいもので、
いったい誰のものなんだろうという疑問がわいてきた。


     ・・・こんな服を持っている女性ってどんな人なのかしら?・・・



ワードローブの一番下の棚には靴が収められていた。
どれも美しい靴で、よく手入れされていて、きちんと磨いてある。
こういった品物すべては、持ち主が来て、手に取ってもらうのを待っているようだった。
持ち主の注意を引こうと、クローゼットの中でその色やスタイルをお互いに競っている。



「あの、これって・・・これは・・・」


フランクもジニョンの顔に浮かんだ、問いかけるような表情に気がついたに違いない。


「・・・これは友だちのなんだよ。
 彼女・・・彼女はとても急いでここを去らなくちゃならなくて、
 こういったものを持って行く暇がなかったんだ」


あの見慣れた悲しみの表情がフランクの顔に浮かんだ。
フランクはジニョンのためらいを感じ取っていた。


「気に入らない?」


フランクは心配そうにそう言ったが、ジニョンは首を横に振った。


     ・・・いいえ、この服や靴が気に入らないわけじゃないの、
     ただ、こんな素敵なドレスや靴を身にまとって、ニューヨークの地下鉄に乗る自分が
     想像できなかっただけなの。
     もしそうしたら、どんな風に見えるかしら・・・


それに彼女は知りたかった・・・


     ・・・こんなきれいなドレスや靴の持ち主って誰なの?

     友だち!
     その人、恋人?あなたの恋人だったの?
     この部屋はその人の部屋だったの?
     どうしてあなたは、そんな人の部屋にわたしなんかを寝かせているの。
     いつか、そのお友だちが帰って来るんじゃないの?

     二人はもう離れてしまったのかしら。
     別れたってこと?

     だけど、彼女の服はまだここにあるじゃない!
     それにあなた・・・あなただってまだ悲しそうで、寂しそうに見えるわ。
     まだその人のことを思っているのかしら?
     その人を恋しがってる?

     きっとその人は、あなたを傷つけたまま行ってしまったのね・・・


「そのお友だちは他の人がこのお洋服を着るのを気にしないかしら?」

「君は気になる?」


ジニョンは自分が何を気にしているのか、自問してみた。


     ・・・わたしの気持ちの問題じゃないわ・・・


「もし、わたしがそのお友だちだったら・・・気にすると思うわ」


フランクは手を伸ばしてドレスを少しゆらし、ちょっと空虚な表情で言った。


「君が着てくれるなら、彼女は気にしないよ」



ジニョンはフランクの顔に浮かんだ表情に目を留めた。
彼がその女性とどんなに親しかったか、どんなに近しい存在だったのかを表すものだった。
また、暗い陰に表情をくもらせている。
だが同時に、なんだかとても優しい顔をしていた。


     ・・・あなたはその女性のことをすごく愛していたに違いないわ!

     その人は誰?
     一体、どうして別れることになってしまったの?
     今、その人はどこにいるのかしら・・・


ジニョンの胸にフランクへの質問が山のように押し寄せてきた。


     ・・・今でもその人のことを愛しているんだわ!・・・


彼がこの女性を忘れてなどいないのは、明らかだった。


     ・・・でも、あなたが他の女性をまだ愛しているのなら、
     なぜこんなにも一途にわたしを追い求めるのだろう・・・


こうして浮かんできたさまざまな考えが、
日に日に強くなっていくフランクに対しての自分の気持ちを醒ましてくれたようだった。


     ・・・たぶん、わたしの足がちょっとでも快くなる兆しが見えたら、
     すぐにホテルに戻った方がいいんだわ。
     なるべく早く韓国に帰ること。
     そうすれば、あなたのことも忘れてしまえる、
     わたしたち二人の間に起こった何もかもを忘れてしまおう。

     わたしは既に十分面倒を抱えているのだから、これ以上厄介事を抱える必要などない
     のよ。
     特に、恋の三角関係なんかは・・・



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出典
Original in Chinese by Jenny Lin
Translated into English by happiebb
Translated into Japanese by AnnaMaria

2004/7/15 ~ 2004/7/29, 2005/10/25 dreamyj
2004/8/5 ~ 2004/9/8 BYJ Quilt (by happiebb)
2004/8/8 ~ 2004/9/8 2005/11/30 hotelier 2002(by happiebb)

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