ボニボニ

 

My hotelier 8 - ストリッパー -

 




午前3時。 サファイア・ヴィラは月明かりに照らされていた。
ほの青く発光したような夜の中、ドンヒョクが静かに眠っている。

すっと通った鼻筋。眼を閉じている彼は人間離れした美しさで、
大理石で出来たギリシャ彫刻なのではないかと錯覚する。


コトン・・

かすかな音を捉えて、ドンヒョクが薄く目覚める。
動かずに、眼だけをめぐらせると
サイドテーブルにインカムを置くジニョンが見えた。

とても静かな仕種で、ジニョンが、腕から時計をはずす。
音をさせずに肩からジャケットを滑らせ、スカートを脱ぐ。
形のいい脚をスツールに乗せ、腿から柔らかく手を滑らせて、
美しい昆虫が脱皮する様に、ストッキングを脱いでゆく。

眠りと覚醒のあいだで、ゆっくりピントを合わせながら、
ドンヒョクは、横顔だけの恋人に、うっとりと見とれていた。

「ピーピング・トム。」
ブラウスのボウタイを外しながら、ジニョンの横顔がつぶやく。
「・・・ずっと見ていたでしょう?」

「・・・夜勤じゃなかった?」
愛しげに囁いたドンヒョクの声が、少しかすれてしまった。

「夜勤よ。・・休憩時間なの。」
スリップを足下へ落とし、背中のホックを外したジニョンは
すべり落ちた下着の代りに、腕で膨らみを隠して、
ドンヒョクの方へまっすぐ向き直した。

「・・・せっかくだから、ストリップを見せてあげようと思って・・」

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これは一体、何の魔法なんだろうかと、ドンヒョクがいぶかしむ。
恥ずかしがりの、愛しいジニョンが、月の光に身体をさらしている・・。

「シャワーを浴びてくるわ。」

くるりとターンすると、滑らかな背中を見せて、
可愛いストリッパーがバスルームに消えた。

”シャワーなんて、いいのにな・・・”
思わずこぼれる微笑みをこらえて ドンヒョクが瞼を閉じた。

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「・・?・・」
戻ってきた彼女は新しい下着をつけていた。

「おいで。」
ジニョンの分だけ身体を動かし、ドンヒョクが毛布を持ちあげようとした時
毛布の上からジニョンの脚が、彼の手を踏んだ。

「!」

ドンヒョクを毛布ごと踏んだ脚に、ジニョンがストッキングをはいてゆく。
「ジニョン・・・?」
「ストリップを見せてあげるって言ったでしょ?」

脚を代えて、もう片方もストッキングをはいたジニョンが
新しい制服を取り上げた。
「焼酎のビンごとお客様を抱えたのよ。もうベトベト。」

てきぱきと着衣してゆくジニョンに、事の次第を理解したドンヒョクが
いささかうろたえて話かける。

「オフィスの事、怒ったのかな? 確かに悪かったよ・・。」
「ルームサービスの注文のことも、・・深く反省している。だから、」

ポンポンと濡れた制服を ランドリーバッグに放り込んだジニョンが
してやったりと得意そうだ。
「愛してるわ。 でも休憩時間が終わるから、戻らなくちゃ。」

「・・・どうして こんな底意地の悪い事を思いついた?」

うふん、と嬉しそうにジニョンが鼻を鳴らす。
「ハーバード仕込みなの。」
季節外れのサンタの様に袋を抱えて、片手にインカムを持ったソ支配人が歩き出す。

「ソ・ジニョン!! Hold up!」

ドンヒョクがベッドの上に身を起こす。
端整な顔に不似合いな、たくましい筋肉がのぞく。

眼鏡をかけ、もう一度ジニョンを見つめて、
ドンヒョクが切ない声を出した。

「・・・頼むよ。・・そのまま行くのは酷すぎる。」

勝ち逃げしたいジニョンが、瞳を揺らしながら、それでも口をとがらせて抗議した。
「・・・・・だって。本当に休憩が終わるのよ。」
「わかってる。・・キスだけでいい。」

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ベッドに腰かけたジニョンの頬を包み込んで、
ドンヒョクが、いくつも、いくつも、キスをする。

-もう・・・本当に行かなくちゃ。あと2つ、・・・3つだけ。
デスクの仕事を気にかけながら、ソ支配人は恋人のキスを数えていた。

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