月曜にレオが戻ってきた。
暗闇の中で眼を覚ました時、ジニョンは自分がどこにいるのかわからなかった。
隣の部屋からくぐもった声する。クスッと笑った声は、ドンヒョクのようだった。
―ああ、昨日は泊まったんだっけ・・・。
レセプション続きの土日が終わり、泥のように疲れたジニョンは、
家まで帰るのが嫌なばかりに、サファイア・ヴィラの戸を叩いた。
・・・ジニョンの耳に、2人の人間の声が聞こえる。
“ok、一緒に入るぞ”
“・・・!・・”
“し、 ジニョンが寝ているんだ。大きな声を出すな。”
ドンヒョクの声は、低いが良く通る。くぐもった声の方は少し高かった。
ククと笑う声や物音。
“・・・もういいだろ?欲張るなよ。”
ジニョンは起き上がり、ベッドのそばに脱ぎ捨てられた恋人のシャツを
暗闇の中でそっとはおった。
ドンヒョクが満足そうに、ふっと笑う。
もう一つの声が、“I love you" というのを聞いて
ジニョンはドアを思い切りあけた。
バン!
パソコンのモニタをのぞいていた2人の男が、飛び上がるように振りかえった。
「ジニョンさん・・・」
一瞬呆然としたレオは、我にかえって、手にした携帯に声をかけた。
「あ・・と。 OK ! I love you men, good job! 」
電話を切ったレオは、どぎまぎと挨拶をする。
「・・ご無沙汰してます。ジニョンさん。今日はどうも・・、
あの、こ、こんな時間にお邪魔しまして・・・」
そう言いながら、レオの視線が、ジニョンの胸元に吸いついた。
「!!」
息を呑んだドンヒョクが椅子を蹴って飛んできて、自分の身体でジニョンを隠す。
レオに背を向けたまま、ジニョンのシャツの前をかきあわせ、
これ以上はない程の素速さで、襟元までボタンを留めた。
「ジ、ジニョンさんも、ボスと、その、仲良くお過ごしのようですね・・」
「レオ!」
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レオがやってきて、ドンヒョクは本格的に仕事を再開したようだった。
ソウルホテルの中でドンヒョクを見かける機会が減り、
スタッフ達は、彼の姿が見えない事を、意外な程に寂しく感じた。
そして、木曜日には、イ・スンジョンが復帰した。
「・・・イ支配人、どこにいた?」
「新館7階でお見かけしましたが・・」
-じゃあ新館の方は鬼門ね。
ジニョンは、彼女と話す機会を作るまいと空しく逃げ回っていたが
それと知ったイ支配人が、オフィスに陣取って動かない作戦に出るに及んで
ついに観念せざるを得なかった。
「あたくし、ソ支配人には、ホント感謝してるの。」
「・・・そんな・・・・」
「ウチのダーリンを私の元へ来させるために、ジニョンったらついに
バラ300本の“愛のヴィラ”から出て・・」
「イ先輩!」
「あたくしったら、愛する2人を引き裂いて、罪な女ね・・・」
「イ・スンジョン!!」
うふふ冗談よ本当に感謝してるわと、イ支配人は嬉しそうだ。
ー私をからかいたくて、仕事に出てきたわね・・・。
目眩をこらえてジニョンは耐え、フロントに向かって歩き出す。
その背中に、イ支配人の甘い声が飛んだ。
「ジニョン・・あたくし、ささやかなお礼贈ったの。どうか受け取ってね?」
その夜、当直のジニョンに、シン・ドンヒョクから電話が入る。
「洗面所のクロゼットに入っているの・・。これ、ジニョンさんの物かな?」
「・・・・何・・・・?」
何だか、とても、嫌な予感がした。
「うーん、女性の着るものは良くわからないんだけれど、ひらひらとした・・、
WAO! すごいなこれ。今度来た時に、是非とも着て見せて欲しいね。」
―イ・スンジョン!!
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翌日ハウスキーパーが飛んできた。
「ソ支配人!大変です。イ支配人が倒れました!」
「え 流産!?」
「あ、いえ。 僕たちに素敵なプレゼントをありがとう って。
その・・・、シン理事が、イ支配人を抱きしめたんです。」