ボニボニ

 

My hotelier 11 - ベビードール -

 





「ベビードールを 贈ったの。」

ん~、ぱ!  
真っ赤な唇を開けたイ支配人が、さらにルージュを塗りたくる。


―唇を2倍にする気ね・・・。
半眼の流し目で、ジニョンが睨む。


「赤ちゃんが写真を撮る時に着るような、可愛い~いフリフリのヤツ。」
うふん、と手鏡を見ながら、確信犯の女が微笑む。

「ピンクでネ、すご~~~ぉく透け透けなの。肌がセクシーに見えるわよ。
こぉーんなに、短くって。 ・・・ん~~~?・・・」
カツカツカツ・・とジニョンに近づいたイ支配人は、ジニョンの長い脚をフンと眺めて言った。

「でも、あなたみたいなノッポが着たら、半ケツが出るわね。」


バタン!とジニョンはロッカーを閉める。
―この女、最低だわ。ベビードール? 誰が着るのよ、まったく!

当分サファイア・ヴィラには近づかないほうがいい。
ドンヒョクssiの事だから、そんな物を手に入れたら
きっと、ろくでもない事を企むに違いない・。

“せっかくイ先輩が下さったプレゼントだから、感謝して着てみなくちゃ・・”
くらいは、言いかねないもの。
彼が、クローゼットの中のプレゼントを忘れるまで、ほとぼりを冷まさなきゃ。

-----   

「ジニョン。今日は早めに帰れるから、ヴィラに遊びにくる?・・」
「行けないわ。ちょっと用があって。」

「ねえ、今日は夜勤だろう? 休憩の時においでよ。」
「今日は、や、やることが 沢山あるの。」

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シン・ドンヒョクは、アゴの下で手を組んで考え事をしていた。

―・・・何か、変だな。ジニョンが、ここのところ、僕を避け続けるのはいったい
・・・どうしてだ?

―彼女を怒らせるようなことを、僕はしていないはずだ。

「・・・・最近、何があったかな・・・」

愛しいジニョンの不思議な態度に、ドンヒョクは首をかしげていた。
怒っているなら、ふくれる。悲しんでいると、眼が潤む。
ドンヒョクの恋人は、素直でわかり易いひとのはずだった。

それが今回は、ただ・・・逃げ回っている?


ドンヒョクは、ゆっくりと、記憶を探っている。 
・・やがて彼の唇に薄い笑いが拡がった。
「・・・・・・もしかして、アレか?」

そうかも知れない、とハンターは笑う。イ支配人がくれたやつ。あれ、なんて言った。
ベビードールだっけ? ジニョンは、あれを警戒しているんだ。
「今度来た時、ぜひ着て見せてくれ」と言ったからな。


「クックック・・。」

きっとジニョンは、上唇をかんで、いつものふくれっ面で困っているのだろう。
プレイメイトが着そうな、あのおぞましい代物を、着せられるとでも思ったの?


「なるほど。それなら話は、簡単だ。」
ハンターは、にこやかに受話器を取り上げた。

-----  

RRRRR
「ジニョン、僕だよ。もう退勤時間だろう?」
「ごめんなさいドンヒョクssi。 ち、ちょっと、今日も行けないみたい。」


・・コホン、とドンヒョクが咳払いをする。
ジニョン、かくれんぼはもう終わりだから、出ておいで。

「いいから来い。来ないと言うなら、ヒョンチョルを呼んで、
真っ赤なリボンを結んだベビードールを、君のオフィスに届けさせるぞ!」



サファイア・ヴィラへ続く坂道を、ジニョンが大慌てで走っていく。
ヴィラでは、ドンヒョクが恋人を待っている。

洗面所のクロゼットを開け、ハンガーからベビードールを外してごみ箱へ歩く。
捨てようとして、ちょっと拡げてみた。なんとまあ・・・
“着てごらん”そんなことを、僕が言うと・・・思ったんだな。

失礼なソ・ジニョン。僕の冗談は、もっと上品だぞ。

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