ボニボニ

 

My hotelier 18 - Disturb -

 




無防備な寝顔で 恋人が眠っている。
シン・ドンヒョクの口元に いとおしそうな微笑が浮かぶ。


―早く・・・・ 眼を覚ましてくれよ。

我慢できないハンターは ジニョンが頭を載せた腕枕をそっと揺すってみた。
わずかな振動に ジニョンがゆっくり眼を開ける。

ぼんやりとした まばたき。
「おはよう。・・よく寝たね。」


やがて ジニョンがふくれっ面で抗議する。

「・・・・『Do not disturb』って 言ったじゃない。」


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「『Do not disturb』でしょう、知ってるよ。 君の眠りは ― disturb ― 妨げては いないはずだ? 
昨夜に限って この手は無罪です。」

大きな掌を 恋人にかざして ハンターが 誠実そうに宣言をする。


「そっちの手は、君が勝手に 枕に使っているんだ。 おかげで僕は
 君が起きるまで 動けなかった。」
はっとジニョンは 自分が枕のつもりで抱え込んでいた腕を見た。

― ・・・ちょっと 首の下に腕を差し入れたけどね。


「ドアに札が掛かっていたら 入ってこないでという意味よ。」

「 『Keep out』 じゃないだろう? 
ソファで寝ようかとも思ったんだけど 枕が変わると 眠れないんだ。」

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いけしゃあしゃあと言う恋人に ジニョンは朝から腹をたてる。
「あたし 帰る。」


ふんっと勢いよく身体を起こしたジニョンが ・・・大慌てでまた シーツに潜る。
「!!」


ドンヒョクは 枕を背に 少し身体を起こして 悠々としていた。
ジニョンの “衣類一式”は  デスクの椅子の上だ。
はずかしがりやの僕のジニョン。 どうやって 取りに行くのかな?


―大丈夫だよ。 ちょっぴり詰めの甘い かわいいジニョン。 
 もちろん 僕は追い詰めない。目的は「勝つ」ことじゃなくて「友好」だ。


朝の光が満ちてゆく部屋で 2人は ベッドに黙って並ぶ。
・・・そっと ジニョンがドンヒョクを 見る。
ハンターは ここぞとばかり 最上級の笑顔でうなずいた。


「・・・・・、だって 本当に 困ったのよ、私。」
「悪かったよ。 もう絶対同じミスはしない。 故意じゃないから・・許してくれないか?」
「・・・・・・」


「ああ、でもな・・」
ドンヒョクが 頭の後ろで腕を組む。 たくましい胸が少し見えて、
ジニョンは 慌てて目をそらす。


「ああ でも僕、嬉しかったな!
かわいいジニョンが 裸のままで 僕のベッドに潜って待っていてくれるなんて。」
「・・・・・」


「すごく嬉しかった。有頂天って こういう気持ちなんだって思ったな。
冗談でも・・・・ 一瞬だけは ほんとうに幸せだった。」
はぁ・・・ とドンヒョクが それはそれは 幸せそうなため息をついた。


ジニョンはもじもじと 居心地が悪い。
―この人 天才ね。 ・・あたしは こうしていつも 負けちゃうのかな。


チュッ
ドンヒョクの頬で 小さなキスが鳴る。

ドンヒョクは びっくりしたような顔を作ってみせる。


「ほら・・・ 今だって 幸せでしょ?」
ジニョンの声が 甘くなった。


「・・・ジニョン?」
「ん?・・」
「・・・・ここも・・・」

ドンヒョクが 唇を指でさす。
「・・・・もお」

笑ったもん負けで ジニョンがキスをくれた。
「・・・ここも・・・」

「・・・・・・・ここも・・」
「いい加減にしなさいよ。」


あははと笑って ハンターが ジニョンを抱きしめる。 
用心深く 獲物のご機嫌を伺う。
瞳の中の笑いを見せまいと ジニョンが つんと目をつぶり
それを合図に シーツがふわりと舞った。



おいでジニョン、 もっと沢山のキスをしよう。
無理やりだった最初のキスから やっとここまで たどりつけたから。

だからジニョン キスをしよう。

暗い眼をしていた僕がもう 二度とあそこへ戻らないように。

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