ボニボニ

 

My hotelier 20 - ジニョンが 彼の靴を踏んだわけ -

 




「オモ? ドンヒョクssi?  お仕事じゃないの?」

バックヤードオフィスの前で 恋人を見つけたジニョンが寄ってくる。
鈴をはったような眼を いっぱいに開き 
鳥のように小首をかしげて 明るい声で問いかける。


―My hotelier! ああ、・・・君はまったく可愛いな。
クスリと笑ったドンヒョクは 気難しい顔を作ってみせた。


「仕事だよ、今日はコンサルをしにきたんだ。
ねえ・・・・ソ支配人。こういう時は できれば 役職で呼んでいただけないかな?」
「まっ!・・・・・失礼しました。」

ぷっとふくれて ジニョンが去る。
首尾よく大好きなふくれっ面を見ることが出来て
シン・ドンヒョクは ほくそえんだ。


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「ああいい経営状況ですね。・・・・客室回転率も 立派な数字だ。
この分だと黒字転換は 早々・・ひょっとしたら今年度会計内で いけるかもしれません。」

いやあとんでもないと ハン・テジュンが頭をかく。
―この野郎。株主として 経営にプレッシャーをかける気か?


「コンサルタントの僕としては 相談にのる場面がなくて、暇だな。」
書類から眼をあげて ドンヒョクが笑う。

「理事が そうして株主として構えているのが何よりですよ。
・・・・あなたがいるホテルに、誰かがM&Aかけてくる心配は ありませんからね。」


ぴくり と ドンヒョクの眉が上がる。
―この野郎。人を番犬かなにかの様に言いやがって。

2人の男は ちょっと角を突き合わせては 遊んでいるようだった。


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秘書がメモを入れてきた。 さっと眼を通した社長は 戻りかけの秘書を呼び止める。
「ジニョンを入れてくれ。 こっちはもう 大体片付いたから・・。」

ドンヒョクの眉が また 上がる。
―僕の恋人だ。 ジニョン と 呼ぶな。

支配人の顔で現れたジニョンが ハン・テジュンにてきぱきと用件を告げる。
「ああ、じゃあ、それは俺が行こう。 お前は、ここにいていいぞ。
・・・ちょっと理事、5分ほどいいですか?」

「どうぞ。」
ドンヒョクは 澄まして 眼鏡を押し上げている。

いていいぞと言われても・・・ とジニョンが困る。
礼をして 下ろうとした時 ドンヒョクが呼んだ。


「ソ・ジニョン!」

クイッ と 指だけで理事が招く。
ジニョンはむっとして ドンヒョクへ向かった。


「はい、理事! 御用でし・・・・」

その一瞬 ドンヒョクがジニョンに向けて さっと足を蹴り出した。
「きゃ!」

思わず ドンヒョクの足を踏んだジニョンが つんのめる。
そのまま ふわりと蹴り上げて
倒れこんできたジニョンを しっかり抱きとめた。


「オモ!!」
「5分間だけ、キスをしようか?」
逃げるジニョンを 器用に押さえつけて ドンヒョクが 耳元にささやく。

「放して、こっちは仕事中よ!」
「僕も仕事中だ。 ご機嫌直さないと・・・ ここで やっちゃうぞ。」
「な・・!」

―おっと危ない。ここまでにしないと 吼えはじめるからな。



「・・・・冗談だよ。たまにジニョンの仕事場に来たから うれしくて。」

ドンヒョクは 恋人をちゃんと立たせて 服を 手早く整えてやる。


「すごく素敵だよ。・・勤務中の君。 きらきらしていてハンサムウーマンだ。
今は、僕のジニョンじゃないんだなって、ちょっと寂しい気持ちもするけどね。」

「・・・まったく 口が上手いんだから。」
「さ、 行って。」

ドンヒョクが立ち上がり 恋人をそっと送り出す。 ジニョンが うなじ越しにささやいた。

「・・・・ ドンヒョクssi?」
「うん。」
「・・・3分くらいなら・・・」


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「・・・・・ん・・」
ジニョンが 甘いキスをくれる。 ハン・テジュン・・まだ 戻ってくるなよ。


うっとりと 愛しい人を抱きしめていて
 ドンヒョクは わずかな痛みに気がついた。

「・・・・? ジニョン 僕の足を 踏んでいる。」
「・・・ん・・・。そうよ。」
平然と言う 恋人に 少し鼓動が早くなる。


「・・・ん・・・・、・・・さっき 私の足を 引っ掛けたわね。」

ああ、ジニョン。キスの最中に仕返しはないだろう?

「・・・・痛いよ。」
「この唇は、キスに使うの? それともクレーム?」


3分間しか ないからな。
諦め顔のハンターは、
甘んじて恋人に 足を踏まれている。



―お前らの3分は、・・・いったいどれ位あるんだよ。


ドアにもたれたハン・テジュンは、 時計を見ながらため息をつく。
恋人に足を踏まれている男の 切るような眼を思い出す。

―見せつけてくれるじゃないか。
「おぼえていろよ。」

いっそ陽気なハン・テジュンが やけに大きく咳払いをした。

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