ボニボニ

 

My hotelier 30 - おいでテジュン - ドンヒョクの休日④

 





「ああ、理事。お休みのところ お呼びたてして申し訳ありません。」

ソウルホテルの裏庭で ハン・テジュンが 朗らかに詫びる。
「こんなところで  ・・何か 僕に用でも?」

「ええ 実は こいつなんですが・・・・。」
テジュンが ごつい鉄のフェンスを押す。中に子牛ほどもある 巨大な犬が寝そべっていた。
「ふうん・・・。マスチーフですか? きれいな犬だな。」

「お客様の愛犬なんですがね。ペットトレーナーが今日休みで 散歩させられないんですよ。」
「・・・それで?」

―遊んでいるなら手伝えとでもいうつもりか? ハン・テジュン。
「仕方がないから 誰か 『支配人』にでも まかせようかと思うんですが・・・」
「!」

ドンヒョクが うつむいて ゆっくりと眼鏡を持ち上げる。
「・・・僕 ちょうど遊び相手が欲しい所だったんです。犬は好きですし。手伝いましょうか?」

―さすがに 話が早い奴だな
「本当ですか?助かります。
・・・お礼にといっては何ですが ソ支配人を夕方で帰しましょう。」


―ジニョンを早く帰すと言った時の あいつの顔ときたら。よくもあそこまで変れるものだ。
「虎のお守りは 猛犬が一番だよ。 ま、悪さしないで 大人しくしていてくれ。」

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そして 午後。
ペットトレーナーとの定時連絡の電話で ハン・テジュンが青ざめた。

「あの リー会長のマスチーフですか?! 社長!あいつ ものすごい性格です。
素人に抑えられるようなタマじゃないんです。シン理事 大怪我をしますよ!」
慌てた テジュンが 庭へと 走った。

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ドンヒョクは バラ園のあずまやで のんびり本を読んでいた。

ウウウウウ・・・

テジュンが近づくと  足元から立ち上がったマスチフが 歯を見せて唸る。
「黙れ。」
ドンヒョクがつまらなそうに制すと ピタリと 犬が治まった。

「は・・・・・」
「どうしたんですか? 散歩なら さっき一緒に10キロは走りましたよ。」
「・・・理事は ドッグトレーナーの資格でも ・・・お持ちですか?」
さすがにテジュンも 呆れて聞いた。
「いいえ?」


ドンヒョクの足元に マスチフが 大人しくはべる。
「犬って 言うのはね、『ボス』が 欲しい動物なんです。
最初に 誰がボスかを きちんと教えてやれば 喜んで言う事を聞きますよ。」
凶暴な性格とわかって テジュンは 犬の動きを おっかなびっくり窺っている。

「犬の散歩は アメリカの子どもにとって バイトの定番ですからね。
僕は 身体が大きいから 大型犬をよく預かりました・・・。 あ!ジニョン!」

バラ園の向こうを インカムを持ったジニョンが通る。
「ジニョン! おいで。」
恋人にうきうきと手招きをした後で ドンヒョクが 足元の犬に 厳然と言う。
「うなるなよ! 怖がらせたら 承知しないぞ。」
クゥ・・ン・・

―クゥ・・ン・・ だぁ?

「オモオモ・・ドンヒョクssi・・・・。そんな大きな犬。私 怖いわ」
「大丈夫! こいつ 大人しいから。」
びくびくと ジニョンがやってくる。 ドンヒョクが長い腕をのべて 恋人を腕の中に抱き取った。

「ちょっ! ドンヒョクssi!」
テジュンの前にもかかわらず べたべたと抱きつくドンヒョクに ジニョンが慌てる。
「何するのよ。もう・・」

「犬に 教えているんだよ。ほら もう大丈夫。」
マスチフが くんくんと ジニョンの手に 鼻をすりつける。
「わかったな? これがお前のボスのメス。 間違えても噛むんじゃないぞ!」
「!」

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ソウルホテルの夕暮れ時。
早々と 恋人を手に入れたハンターが いそいそヴィラに帰って行く。

「ルームサービスに しよう。」
「レストランに行きましょうよ。だって お部屋に行ったら 出てこられないもの。」
「レストランじゃあ キスしながら 食べられないじゃないか。 こっちは 休暇なんだぞ。」
「オモ・・・」


「理事!」

ヒョンチョルが追いかけてきた。  ドンヒョクがあからさまに邪魔そうな顔をする。
「す・・・すみません。 ちょっと・・・・社長が お呼びです。」

「犬が 言う事を 聞かないんですよ。」
鉄柵の前で テジュンが頭をかいている。
「檻から出せば いいんですか? ・・・テジュン!おいで。」
「!!」

ぽん、と叩いたドンヒョクの腿に 檻から出てきたマスチフが ピタリと 寄り添った。
「理事・・・」


「あはは すみません。 社長が、犬の名前を 教えてくれなかったから。
 ・・・テジュン氏からの預かり物ってことで・・・ね。」


―馬鹿野郎 今日こそは 一発殴ってやる

ひきつるテジュンに それは機嫌よく微笑んで ハンターが引き上げてゆく。

―へっへっへ。犬なんか 押し付けるからだ。



やっと 愛しいジニョンのもとへ行ける。
恋する虎は 一目散に サファイア・ヴィラへの坂を上った。

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