ボニボニ

 

My hotelier 41 - 聖人の夜 - 

 




サファイラ・ヴィラの朝。 ジェニーがドアを開けて出てくる。

「あらぁ アンニョン、 ジェニー! 今日はお兄さんの所からご出勤?」

ハウスキーパー達を従えて イ支配人が にっこり笑う。
「オッパに ジニョン義姉さんのアパートを追い出されたんです。 僕が看病するって・・・」
「オモ! ひどいの? 彼女のケガ?」

それは一大事! 真っ赤なルージュの唇をとがらせて 
イ・スンジョンが ずいいっと 迫る。
「ケガは・・・ かすり傷ですけど。 看病のほうは 集中治療室なみです。」
「んま・・・」

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20:00  ジニョンのアパート。  

36.5度。脈平常。

ドンヒョクが 体温計をにらむ。彼は 猛烈に怒っている。
ベッドの中に 押し込まれて ジニョンの方も ふくれている。

「血圧を・・・」
腕を取ろうとするドンヒョクと 引っ込めようとするジニョンが
にらみあったまま 引き合いをする。

「いいかげんにしたらどうだ!」

窓が震えるほどの一喝が飛び、ジニョンが ビクリと眼をつぶった。

「ナニよ・・・」
いったんはつぶった眼を むっつりと開いて ジニョンがにらみ返す。
「・・血圧なんか 測らなくてもいいわよ・・。打撲とすり傷なんだから・・・」

じろり・・・・。
他の人間がこの眼を見たら きっと総毛だつに 違いない。

「体温・血圧・心拍数・・・ 基本的な身体データを 見ているだけだ。
・・・・頭も打ったんだ。 急変ということだって 充分に 考えられる。」
「頭を打った・・・? ドンヒョクssi? これはね “タ・ン・コ・ブ” っていう シロモノなの。」

「タンコブなどという症名は ない。」

ああ もう・・・ 誰かこのハーバードボーイに 言い聞かせて。

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ジェニーのスクーターで 植え込みに突っ込んだジニョンは 
カンカンに怒った恋人に 強制的に休暇申請をされた。

カタカタカタカタカタ・・・

ハンターがキーボードを叩いている。オフィスでは レオさんが悲鳴をあげているに違いない。
申し訳なさと 恋人の強引さへの怒りで ジニョンは複雑だ。

― 人一倍忙しいくせに ・・・無理するんだから。


「君は・・・・ 僕から 君を奪うかも しれなかったんだぞ。」

モニターを見たまま ドンヒョクが言う。
「僕は 何があっても君を失えない。 それがわかっているのに
 君は  いとも気軽に 無茶をする・・・・。 」


ハンターは キッと ジニョンを見据えた。 彼の眼のふちが 少し赤い。

「僕が どんな気持ちで病院まで走ったか・・ 君には わかるのかっ!?」
「オ・・・・・」
ぱくぱくと ジニョンの反論は 声に ならない。
恋人を 思い切りにらみつけたドンヒョクは ぷいっ と モニターへ眼を戻した。

「・・・・・・・ごめんなさい。」
ドンヒョクの剣幕に さすがのジニョンも 素直になった。
「わかればいい。 もう 二度と こんな思いは させないでくれ。」


―こんなに 想われて。 私は ・・・幸せ・・ね。

ジニョンの心が震える。 恋人の想いの強さにふれて  愛しさがつのった。 


「ねえ・・ドンヒョクssi。 こっちへ 来て・・・・。」
「ん?」
ジニョンが 恋人に腕をまわす。 自分の方から 小さくキスをする。
「ね、ドンヒョクssi? いいコト する?」

「だめだ。」
「オモ・・・・。」

シン・ドンヒョク が ・・・・ジニョンの誘惑を 断った?


「言っただろう? 君は 今回 頭を打っている。
  急激な血圧上昇を伴いそうな行為は しばらく 避けるべきだな。」

「え~っ と・・・? それは 愛し合って頭に血が上ると タンコブが痛くなるっていう話?」 
「状態の急変。 クモ膜下出血にでもなったら どうする?」


― ・・・この人 本気で言っているのかしら?

呆れたジニョンは  悪戯な気持ちになってゆく。  
― よお ・・し。 ドンヒョクssiが そう言うのなら・・。

ブランケットの中で ごそごそと パジャマを脱ぐ。 
ぽいぽいと ベッドの下に 脱いだものを捨てる。

「・・いい加減にしろ。」

コットンのブランケットから きれいな脚をひらひらと伸ばして 誘う。

「君の性格は あまり ・・・良くないな。」

ブランケットを 胸まで引きおろして まるい膨らみを 半分覗かせる。


カタカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・・

ドンヒョクはもう たちの悪い小悪魔の 相手をするのを やめたらしい。
猛烈な勢いで キーボードを叩いている。


「ドンヒョクssi・・・・。」
「・・・・・・」

チュッ! 
手に負えない恋人が キスを投げてくる 。・・・完全に 増長させてしまったな。
不覚にも ハンターが ミスタッチをした。

ドンヒョクが 受話器を取り上げる。

「もしもし・・ああ レオか? 僕だけど・・。」

ツーッ ・・・・・・

ジニョンが 会話のスイッチを オフにする。
ぱっちりとした眼に それは愛らしい笑みを浮かべて ハンターを見上げる。

「・・・・・ねえ 血圧なんか 上がらないわよ。」
「バイクで突っ込むまで 自分に運転が出来ない事を忘れていたという。
 そんな人間の判断など  信じる気にもなれない。」

「バイクじゃないわ、スクーター。 ・・・ふん、だ。 あきらめた。大人しく寝ましょ。」
「そうしてくれ。」
「でも・・寂しいから ・・・腕枕くらいは いいでしょう?」


―いったい どうして 僕の恋人は こうも・・・意地悪い事を 思いつくのだ?

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「ドンヒョクssi・・・・・・。」
「黙って 寝ないと 腕枕はしないよ。」
「キスは いいでしょう?」

それでも今夜のハンターは 獲物に じっと手を出さない。 何かあったら大変だ。
誘いつかれて ジニョンは眠る。 すうすうと 寝息が深くなった。

「・・・ジニョン?」

用心深く 眠り姫の顔をうかがう。
そっと腕をとり  ゆっくりと 規則ただしい脈を 確認する。

大丈夫かな? 額にキスをする。
ジニョンの手が ドンヒョクのシャツの胸をつかんでいる。
はずそうとして・・・ そのままにした。

そっとジニョンの髪をすく。 
頬に手をあてると  眠るジニョンが 気持ち良さそうに頬をすりつけてきた。
 
― 大した事がなくて 本当に 良かったよ ・・・・My hotelier。
  
「事故と聞いた時は ・・・・死ぬほど 怖かったんだからな。」


今夜は 聖人のドンヒョクが やっと静かにほほえんだ。

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