ボニボニ

 

My hotelier 45 - パイソン パニック - 

 




いつものランニングから戻ると  サファイア・ヴィラに パイソンがいた。

「・・・・・・・・・」

ボア・パイソン。
うねうねとくねる肢体が なかなか見事だ。

「・・・はじめまして と言うべきなんだろうな。 ・・・こういう場合 名刺はいる?」

こいつは「迷子」か。どちらにしても 
他所へ行け とは言えないな。 騒ぎが大きくなる。

3メートルはあろうかという彼女(彼か?)を つかまえて 
とりあえずバスルームに招待する。
バスタブに水をはってやると 嬉しげにニョロニョロととぐろを巻いた。

------


「はい。 え? 生 ですか?・・・はい かしこまりました。」
「なんだ?」
ソウルホテルの厨房で スー・シェフが 首を傾げる。

「シン理事 今朝は卵を 「生」で くれって。」
「生ぁ? ・・・・コンチネンタル・ブレックファ-ストだろ?」
「あれですかね。 ソ支配人とがんばっちゃって 精力づけに飲むんですかね。」

スー・シェフが 品のないことを言い
ジェニーが怒って ブーイングをして 
料理長が ゴチンと スー・シェフに拳固を喰らわせた。

------

その頃 支配人オフィスは大騒ぎだった。 全員召集で 顔をつきあわす。


「ソ支配人はこのブロック、ヒョンチョルはここ、イ支配人はこっちを探せ!」
「・・・ねえ パイソンって 噛むの?」
イ・スンジョンが おどおどと聞く。妻に甘いオ支配人が一喝した。

「噛むんだったらどうした!客を噛んだら どんなことになるかわかっているんだろうな!」
「・・・!」

「いいか!探すのは1時間。それを過ぎたら 部外に公表する。
そうしたら どんな騒ぎになるか 判っているな。」
「はい。」「はい。」「はい!」


『南国の不思議な生きもの達』

新館エントランスホールで 夏休みの子ども寄せに開催する予定の催しから
ボア・パイソンが一匹逃げ出した。
客のチェックアウトが始まるまで 約2時間。
スタッフ達に緊張が走る。

RRRRR・・・

ソ支配人の電話が鳴った。

「はい ソウルホテル支配人の ソ・ジニョンです。」
「ジニョン? 僕だ。 いいか 聞いてくれ。」

ドンヒョクssiごめんなさい今ちょっと取り込み中なのとソ・ジニョンが一気にまくしたてる。
「ジニョン! だから聞きなさい。パイ・・」
「ごめんなさい。後でちゃんと聞きます。今はとにかく・・また電話するわ。」

ガチャン・・・

ドンヒョクが ため息をつく。 
だから ちゃんと聞けって 言っているじゃないか。しかたのない奴だな。
その程度の冷静さで まったく よく支配人がつとまるよ。

RRRRR・・・

「はい! ソウルホテルのハンです!」
「ハン・テジュン? ちょっと聞いてくれ。うちの・・」
「シン理事! すみません!今 取り込んでて。」
「ストップ! まず 相手の言う事を聞け!だからパイソンが・・」
「申し訳ない。 後で連絡します! 時間がないんで 失礼!」

ガチャン・・
「・・・・・・」

バシン!
ハンターが 怒りにまかせてデスクを叩く。

「まったく どいつもこいつも 同じリアクションをして。なんて馬鹿だ!」
憤然と 受話器を取り上げたドンヒョクが 部下を呼び出す。 
「レオ!今日の出社は午後になる。調整してくれ!」


あいつら 僕の報酬が 時給換算で いくらになると思ってるんだ?

ジニョンは ともかく ハン・テジュンは 一発殴ってやる。

-----

ソウルホテルのロビーを シン・ドンヒョクが ずかずか歩く。

いつもは にこやかに笑いかけてくるホテリアー達が
今日は 緊張半分の挨拶をよこす。


大馬鹿者の 2人は どこだ?
ドンヒョクの眼が 火を噴きそうだ。 すれ違うスタッフが びくびくと避けてゆく。

バックヤードへのドアを開け ジニョンのオフィスを目指す。
オフィスの中は 災害本部なみのパニックだ。
全支配人が  同時に部下に 指図をとばしていた。

「Bブロックには 見つかりません!」
「庭の 主な場所にはいません・・でも 茂みに入ったら・・!」
「パイソンなら サファイアにいる。」
「それより プール! ガーデンプールは!?」 
「厨房の どこかに入り込んでないか?!」

バン!

「いい加減にしろ!」
力いっぱいドアを蹴りつけたドンヒョクが怒鳴り その場が一瞬で凍りついた。

「オモ・・・・。」
「・・理事・・。」

「だ・か・ら・・ 聞け! パイソンだろ? 私のヴィラにいるんだ!!。」

-----


ぶくぶくぶく・・・・・・

その夜 サファイア・ヴィラのジャグジーに ふくれっ面のジニョンがつかる。
ドアにもたれて ドンヒョクは腕を組む。

「・・だから ごめんなさいって 言った でしょう?」
「あやまってすむことか?まったく 君らときたら パイソン程も冷静さがない。」
「だって お客様に何かあったら。」
「トラブルの時こそ 冷静に対処しろ。ビジネスの鉄則だろう?」

―もう・・・。 この人が 正論を言っちゃ 勝ち目がないわよ。

ぶくぶくと泡を丸めて ジニョンがふてくされる。
その様子を見ながら ドンヒョクが ふと楽しげに眉をあげた。

「そうそう 君らのパイソンちゃんは あれで結構可愛いな。
  大人しくバスタブに丸まって 卵も食べていったよ。」
「・・・!バスタブぅ! ここに いたの?」
「大丈夫。ハウスキーパーがよく洗って行ったから。 “1回使えば 君のもの”だ。
 さて ジニョン。 もう ビジネスの話をしようじゃないか?  先に 向こうへ行ってるよ。」
 

湯上りの身体を くんくんと嗅ぎながら ジニョンがやってきた。
「ビジネス・・・って 何?」
「損害賠償。 君のおかげで 僕は 今朝の仕事がパーだ。」

―そうくるわけね マイハンター。 ・・・・ああ 本当に楽しそう。

-----

にこにこ顔のハンターが 獲物から貸しを取り立てている。
「ジニョンは ・・・パイソンより しなやかだね。」
ドンヒョクが ボア・パイソンの真似をして 愛する人にしっかり巻きつく。
「・・・・あ・・・・・・・・あ・・・・・」

エントランスホールのケージの中で 可愛い大蛇は もう寝ただろうか。
パクンと 丸呑みにしてたな 卵。

パクンと ジニョンの膨らみを呑んでみる。 君を 丸呑みできたらいいのにな。
「あ・・もぅ・・・ドンヒョクssi・・・・」

恋人が 切ない指で ドンヒョクの背中をつかむ。 
「ジニョン・・・愛しているよ。」
だから こうして泣かせてあげる。 腰をつかんで 強く追い込むと 
ジニョンが 長く声をあげて 僕の背中に爪を立てた。

「ねえ・・・もう・・おしまい・・。」
「だめだな。 だって君 明日はオフだろう? 気絶するまで 賠償金支払ってもらうんだ。」
「そん・・な・・・・・・・ねぇ・・・あ!・・・・」

南の国のボア・パイソン。
残念だけど 君に巻かれる訳には いかない。


だって ほらね。  こんなに白くて 可愛い蛇が 僕のベッドの専属なんだよ。

 ←読んだらクリックしてください。
このページのトップへ