ボニボニ

 

My hotelier 53 - 花を愛でるひと - 

 




ソウルは 夏の真ん中だった。 
その日は早朝から気温が突きあがり 朝の爽やかさを消していた。

いつものコースを走りながら ドンヒョクが リストウォッチを覗く。
パルスメーターが 運動量に較べてかなり高い。

― 随分 気温が上がったからな・・。


少しペースダウンしたほうがいい・・。 ピッチを落としたハンターに
よお とのんびり声がかかった。

「理事さん。この暑いのに運動かい? 干からびるなよ。」
「Mrガーデナー・・。 庭の手入れですか?」
老庭師が 植え込みにちんまり座っている。 
ドンヒョクが 笑顔で立ち止まった。

「いんや。今日は手入れじゃなくて眼入れだ。」


「眼入れ? ・・・それは 園芸用語ですか?」
「そんな言葉はないよ へへ・・。 草花はなあ 理事さん。
 “眼肥やし”をかけると言って ちょくちょく見てやるのが大事でな。」

すぱっと 煙草をひとふかし。老庭師が庭を ぼうとみる。
「ちゃーんと機嫌よく育ってるかなって 見ていてやるのが大事なんだ。」
「はあ・・・。」


日焼けした顔でにっと笑うと 庭師がドンヒョクに 肘突きをした。
「へっへ 理事さん。女もそうだぞ。ジニョンをちゃんと見ているか?」
「・・・!?」


「ずいぶん 可愛がっちゃいるみたいだがな。
 いじくりまわしてばーっかりいないで ちゃんと機嫌を見てやれよ。」
飄々としたガーデナーの言葉に虚をつかれて
ドンヒョクが 思わず赤くなる。
「・・・すみません。」

すみませんは正直でいいや。
あははと笑って ガーデナーが立ち上がった。

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バスルームから ドンヒョクが出てきた。

濡れた髪を拭きながら ベッドの上に視線を送る。
ジニョンは 朝陽に撫でられながら
気持ちよさげに 寝息をたてている。

“いじくりまわしてばっかりいないで ちゃんと機嫌も見てやれよ。”

ガーデナーの言葉に ドンヒョクが苦笑する。
「・・・機嫌よく 過ごしているかな?」
ふぅん・・と ジニョンがため息をついて
甘い声音が ドンヒョクの胸を締めつける。 

「見ているだけというのは・・・難題だな。」
ジニョンの隣に横たわって 愛しい人の髪をすく。
手の甲で頬をそっと撫でると くすぐったいのか顔をしかめた。


―なんて無防備な 僕のジニョン。

ハンターはうっとりと 恋人の寝顔に見とれる。



“僕が呼んだら いつでもこうして来てくれますか・・・”
“勤務中でしたら。”


どれほどこの手を伸ばしても 行儀良く背筋を伸ばしていた人。
無防備なあなたを 僕は 何としても欲しかった。

「ジニョン・・無防備だね。」 


きゅっ・・・
いたずらに 鼻をつまんでみる。
ぷるると顔を振って 愛しい人が眼をさます。
いきなり言葉が はじけ出た。

何よひどいわドンヒョクssi今日はせっかくのオフなのにもっと寝かせて。

―やれやれ。 ご機嫌ななめだ・・・
自分のした悪さは棚に上げて ハンターが笑いながらため息をつく。


Mrガーデナー。機嫌をそこねた草花には 
どんな手入れを したらいい?
「ごめん。もうしないから 寝て・・」

ぷん!と枕に埋まったジニョンが ちらりと半分顔を出す。
「そんなところで じっと見られると 眠れないわ・・」
「あっちへ行けというつもりか? 僕のベッドだぞ。」
「・・貴方が引っぱりこんだくせに。・・もう来ないわよ。」


ああ可愛い。 ぷうっと 頬が丸くなる。

君のふくれっ面に いきなり僕の留め金がはじけた。
「オモ! ・・いや・・ドンヒョクssi。」
「いやかいジニョン? ・・・・本当に?」
「・・・・・え?・・」
いきなり真顔で問いかける。 優しい瞳がうろうろ泳ぐ。 
ジニョンがそっと瞼を伏せて たくましい胸が獲物を飲み込んだ。

我慢できない大きな手が 愛しい人の腿をわける。
さっきまで眠っていた半身に指を挿して 
眼をさまして とゆっくり誘う。
ドンヒョクの眼に閉じ込められて されるがままのジニョンが
とうとう 甘い声をもらした。


ねえ Mrガーデナー。
なかなか貴方のレベルまで 達する事はできないな。
手を出さないで見守るには 
僕は ジニョンが欲しすぎる。

明るい朝のサファイアヴィラに 白い身体が揺れる。
恥ずかしがりの 僕のジニョン。 
裸身をさらして愛されることに 君は 少しずつ慣れてきた。


ジニョンを見つめながら抱いてゆくと 君が切ない眼を開けた。
「・・どうして・・・そんなに見るの?」
「見ているんだ。 君が ・・・ちゃんと 幸せかなって。」

ご機嫌いかが?
問いかけるように君を揺らす。 見られて 君は朱に染まる。
やがて全部のためらいが花びらのようにはらはら散って
愛しいジニョンが 僕の与える快感に大きく背中を反らした。


ねえ Mrガーデナー。
修行の足りない僕は つい手を出してしまうけれど


僕の可愛いこの花は 僕に揺られて 気持ち良さそうだな。

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