ボニボニ

 

My hotelier 54 - テジュンが守る女 おまけ - 

 




「精密検査の 必要は・・・ないと?」

「ありません。ただのショック症状です。
  第一・・・ご心配でも ホテルにはCTもMRIもありませんよ。」
ドンヒョクが 医務室の医師を ひたと睨みつけた。 


俺は この理事が苦手なんだよ。まったくもう
そんな怖い眼で 睨まないでくれよ。こっちは 医者なんだから。
下心があってソ支配人に触っているわけじゃないのに。 ・・・“あ、そうか!”

「心電図なら・・とれますよ。検査しましょうか?」
「心電図・・。」
―ジニョンの 服を脱がせる気か?

コホンと咳払いがひとつ。 理事が立ち上がる。

「先生がそう仰るなら まあ いいでしょう。お世話になりました。」


ジニョンの背に手を当てて ドンヒョクが医務室を後にする。
やれやれと 医師が一息ついた。

―ああ、やれやれ。まったくもう。
 しかしまさか理事。医務室の医師を女医に替えろと言わないだろうな・・。

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「じゃあ あの“テジュンちゃん”は 私を守ったってこと?」
ジニョンが 可笑しそうに聞き返す。

「ああ。君が急に倒れたから とっさに君のナイトになったらしい。
 自分が飛び掛って気絶させたくせに まったく頭の鈍い 馬鹿な奴だよ。」
―テジュンちゃん・・・。

恋人の言葉が少々 気に入らないハンターは必要以上に犬をけなす。

「あら そんなこと言っちゃ可哀そうじゃない。 そうか・・私を守って・・」


バウバウバウバウ!


豪快な獣の声がする。
渡り廊下では  犬のテジュンがボスの帰りを待っていた。
「テジュン・・」

ジニョンが おそるおそる巨大な犬に近寄った。
犬のテジュンは ごろりと寝そべり おなかを出して腕を折る。
クゥン・・・
「まあ テジュンちゃん・・」

クスリと笑ったジニョンが 犬のそばにしゃがむ。
撫でて撫でてのテジュンを 優しく撫でたり首を掻いてやる。

犬のテジュンは 大喜びだ。
― やっと ほめてもらえたな。
「あらあら嬉しそう。顔は怖いけど すごく可愛いのね。
  私ね 昔コリーを飼っていたの。 よしよしテジュンちゃん いい子ね。」


―ジニョン。 君・・・ その辺 無神経すぎないか?

ドンヒョクの気圧が ゆっくりと下がってゆく。 



ドッグトレーナーがリードを持ってやってきた。

「どうもすみませんでした。 ソ支配人大丈夫ですか?」
「ええ平気。 テジュンちゃんまたね!」
クンクンクン・・

「いやあソ支配人! 随分気に入られましたね。今度は支配人にお守り頼もうかな。」
トレーナーが 軽口を言う。
「いやあね。きゃ だめだめテジュンちゃん!」
「!!」
犬のテジュンが 喜んで ジニョンの鼻先をベロベロなめた。


「テジュ~ン・・・」
ビクリ!

マスチーフが 我に返ったようにボスを見る。
ボスは・・・・ 半眼で睨んでいた。

キャン!

「お?どうした? テムジン?」
ドッグトレーナーは いきなり自分の後ろに逃げ込む犬を振り返った。

「腹でも空いたんだろ。さっさと連れて行って エサをやれば?」
そ知らぬ顔で 理事が言う。
「ああ。・・そうします。では失礼します。」

マスチーフが コソコソと帰ってゆく。ジニョンがにこにこ見送った。
「テジュンちゃん。結構 愛嬌があるわね。」
「ジニョン! あの犬の名前は『テムジン』らしいよ。
 いつまでもハン社長の名前で呼んでは 大変失礼というものだ。」

自分の事は棚の上。 ドンヒョクが恋人を叱ってのける。
「あ!そうね! いっけない。」
ぺろりと舌を出したジニョンが可愛くて ドンヒョクの機嫌が一気に直る。


―・・・・やばかったなあ。
 ボスのメスと仲良くしすぎたよな。 良かった俺 噛まれなくて。


ドッグトレーナーに 引かれながら 犬のテジュンは胆を冷やしていた。

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