ボニボニ

 

My hotelier 55 - ブロンド① - 

 




“その2人”の チェックイン風景は ちょっとした見ものだった。

きらめくブロンド 迫力あるバスト。すらりと伸びやかな長い脚。 
見事にくびれたウエストから 男なら誰でも触りたくなるような
豊満なヒップラインへと 素晴らしいカーブが続く。

人目を惹かずにはいられない 超ド級の美人が2人。
1人は少しセクシーで 1人は少し清楚に見える。

それとて些細な違いで 2人は『魅力的なブロンド美人』という言葉そのものが 
タイトなワンピースを着て歩いている様だった。


「いらっしゃいませ。ソウルホテルにようこそ お客様。」

ソ支配人の挨拶に にっこりしてみせた彼女達の微笑は まさに『完璧』だった。
少し紅潮したヒョンチョルが ベルボーイに 自分が行くと言いつける。
無理もないわね 先輩の役得よ ジニョンが後輩と笑いあった。


「ソ支配人・・・ちょっと。こちらへ。」

ブロンドの部屋から戻ったヒョンチョルが 微妙な表情をして 物陰に呼ぶ。
「何?・・・」
「あのお客様は・・シン理事のお知り合いです。」
「え・・?」

フランク・シンはここに住んでいるのか と聞かれました。
誠実なヒョンチョルが言う。婚約者がここにいるでしょう?とも・・。
あの勢いでは周囲に聞きまわるかもしれませんから
勝手ですが・・ 私がお呼びしてきますと 申し上げました。

「・・・どうもありがとう。・・あの・・ヒョンチョルssi。」
「勿論。他言はしません。」
「ごめんなさい。」

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どういうことかしらシン・ドンヒョク ?  ジニョンはふくれっ面で廊下を歩く。
まあ あなたの過去に 何もないとは思わないけど・・・。

コンコンコン・・・
「Come in。」

「こんにちは。お呼びですか お客様?」
廊下を歩きながら考えた科白を ジニョンが滑らかな英語で話す。
2人のブロンドが 眼をみはった。

「貴女が ・・・フランクと婚約したというかた?」
「はい お客様。 当ホテル支配人のソ・ジニョンと申します。」

女達は じろじろと 値踏みする眼でジニョンを見つめる。
―・・・すみませんね。こちらは貧相な見てくれで・・。
ジニョンが ふんと うつむく。

「アジアン・ビューティね。よろしくジニョン。仲良くしましょう。
 私はジェーンこっちはバーバラ・・陳腐な名前でしょ?仕事上の呼び名だけど。
 あなたと私達。まんざら知らない仲ではないのよ。
 3人ともベッドの中のフランクを知っている。そういえば おわかりね?」
「!」

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どうもありがとう シン・ドンヒョク。私に『姉妹』を作ってくれて!
ジニョンは 歯を食いしばる。何よ あの悪びれないブロンドたちは。
「ソウルの夜を案内してくれ」ですって? まったく何よ!
ジニョンは ほとんど意地だけで2人の申し出を受けた。

ロッカールームで着替えながら ジニョンは心を決める。
案内させていただくわ。私の大好きなソウルの夜をね!!

ふくれっ面のジニョンが バン! とロッカーを閉めた。
 


ゴージャスな2人は 壁がばたつく屋台を 眼をぱちくりさせて見回す。
屋台の客たちは 天から降ってきたような2人を ぽかんと見ていた。

「これはね タクカルビ。チキンだからヘルシーだし 美味しいわよ。
 あ!焼酎はどう? おばさ~ん!焼酎お願いします!・・・食べないの?」
「え?・・・ううん。いただきます。」

「ドンヒョクssiと 同じリアクションをするのね?」
焼酎を くっと飲みながら ジニョンが笑う。
これが私。そして私の大好きなソウル。 ・・何か 言いたい事がおありですか?

信じられないと言うように ブロンドがまじまじと眼を瞠った。
「フランク・・も ここに来たの?」
「彼は苦手みたいね、こういう所。でも無理やり連れて来たわ。2,3回。
 私は こういう所が気楽なの。 ・・・ねえ美味しいのよ、それ。」
「・・・・」「・・・・」

キャーッ! アハハハ!

ジニョンがびっくりするほどの大声で 2人がいきなりはしゃぎ出す。
「貴女 最高だわ!」
ゴージャスなブロンド達が お互いを叩きながら笑う。

「いただくわ。ワオ! 美味しい」
「Good! チキンクレオールの美味しいのみたい!」
「・・・美味しい? そうでしょ? うふふ。良かった。」
お気に入りの味を褒められて 嬉しくなったジニョンが笑う。
その笑顔に 2人がまぶしそうな顔をした。

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「ソウルへは 観光に?」
「・・ジミーにね。ちょっとやばいから逃げてろって 言われたの。」

「ジミーって ・・・誰?」
「私達の雇い主。ジミーの接待は いつも決まってるの。
 豪華なヨットに酒と女をどっさり積んで お待ちしていますってヤツ。」
「・・・・」

「成功者へのご褒美ってわけ。私が右でバーバラが左。
 シャンパンと一緒にポンポン開けて 後は な~んにも面倒がありません。」
「フランクも何度かね。 あ・・ごめんなさい。」
「ううん‥そう。 ひどいわね ドンヒョクssi。女をなんだと思ってるのかしら。」

ジニョンがぼんやり眉根を寄せる。女達が顔を見合わせる。
「私達にとって これはビジネスなの。ま、褒められた商売じゃないけどね。」
「・・・そう。」

私には わからない世界。でも、以前のドンヒョクssiは、
彼女たちに 少しの時間を慰めてもらっていたの? なんだか切ないわね。


「じゃあ あの あなた達は・・ドンヒョクssiに用があって?」

「ううん。しばらく高飛びしてろって言われたから、アジアでも旅行しようかって。
ソウルに寄るって言ったら ジミーがフランクの消息を教えてくれたの・・。」
これ なかなか美味しいわと言いながら 女達は 焼酎を陽気に空ける。
豪華な容貌の女たちは ジニョン以上の酒豪だった。

やがて テーブルに空き瓶がずらりと並ぶ。

「ね~え・・信じられなかったわね? あの『氷のフランク』が 婚約なんて。」
「結婚なんて 絶対するタイプの男じゃなかったもの。」
「ふう・・ん・・・。」 
「せっかくだから 相手はどんな女か見てやろうって寄ってみたのよ。」

「・・・こんな女で びっくりしたでしょ?」
ジニョンが ふくれっ面でふてくされる。ブロンドたちがニコニコと笑った。

「ええ 驚いたわ。フランクは・・ターミネータかと思っていたけど」
「結構女を見る目があったわね。」
「オモ・・」

私達 あなたがすごく気に入ったわ。
フランクは きっと今 幸せね。
ゴージャスなブロンド2人が ジニョンに両側からキスをした。

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サファイア・ヴィラに 車が帰って来た。
うつむき加減で ドンヒョクが降り立つ。
眼を上げて ヴィラの窓に灯りを見つけると 嬉しそうに眉が上がった。

「ジニョン? 来たの・・・。」
うきうきとドアを開けた ドンヒョクが  絶句する。

「Nice to meet you again ,Frank」「Do you remember us ?」

お久しぶりねフランク。なんだか見違えちゃったわ。本当に違う人みたい。
すごくいい顔をしている。幸せになったのね。 ブロンドたちがステレオで話す。
「どうやって・・・ここに入った?」
「ジニョンと一緒に。」「仲良くね。」
「!」

「彼女は あっち。」
「私達は入れてくれないそうよ。」

にこにこと 2人は寝室の方へ頭を傾げる。
さすがのハンターが ゆっくりと青ざめる。
「4人でヤらない?って言ってみたんだけど だめだって。」「固物よ 彼女。」
「・・・・」

さて・・と あなたの顔も見られたし楽しかった。 じゃあもう部屋に帰るわ。
ソウルホテルにはしばらくいるから “その気”になったら いつでも誘って。
呆然としたドンヒョクにキスを投げて 女達が笑いながら帰って行った。


サファイア・ヴィラの24時。
寝室の中は 静まり返る。

― 神様 僕は何があっても ジニョンだけは失えない。




恋人の待つドアの前で ハンターがごく・・と喉を鳴らした。

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