ボニボニ

 

My hotelier 58 - ブロンド④ - 

 




「なるほどね。大したゲームじゃないな。」
 
報告書をパサリと投げ出して ドンヒョクが呆れる。
「ジミーは この程度の問題も さばけないと言うのか?」
「最後は どうしても議員を脅さなくちゃいけないだろう? ・・ジミーは臆病だよ。」

―ボスみたいに 誰にでも平気でかかっていける奴のほうが少ないさ。


上院議員の接待スキャンダル。

記者がいろいろ周辺を探り始めて 議員が「証拠」を消しだした。


「ワスプのエリート議員か。 自分を中心に地球が回っているというタイプだな。
 この手合いは確かに、女の1人2人消すことだって やりかねない。」
豪華で 綺麗で そして 何の力もないブロンド達。 

―守ってやるさ。  


「・・・・レオ こいつの“上”は 僕のパワーラインとぶつかるか?」
「徹底的に調べた。 地雷は無い。」
「確かだな?」
「マリリン・モンローに誓って クリアだ。」

は・・。 レオがノーマ・ジーンに誓うんじゃ そりゃ絶対だ。

「じゃあ話は簡単だ。ゲームにもならない。 いいか?じゃあ レオは記者の方。
 僕が ・・ワシントンD.C. 。 イージープレイだからって 気を抜くな。」
「ラジャー。」

ふんとつまらなそうに 言い捨てて ハンターが受話器を取り上げた。

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「ジ・ニョーン! 遊びに行こ!」「ショチュー! ヤタイ! カラオ・ケー!」

「だ・か・ら。 私は忙しいの! 付き合ってる暇は な・い・の!
 2人とも ここは一流ホテルなのよ もう少しシックな服を着て!!
 それから バックヤードに入ってこないで! 関係者以外立ち入り禁止!」

ソ支配人がブロンド達を かんかんになって叱っている。

「まあまあ・・いいじゃないですか。 だってこちら理事のお友達なんでしょう?」
ユ支配人が鼻の下を伸ばしてかばい ブロンド達に熱い投げキッスをもらった。
「あ? ふふふ。 いやぁ これはどうも・・・」
「ユ支配人!」


豪華な2人のブロンドは ソウルホテルに入り浸る。
最初の頃こそ仰天していたスタッフも やがて毒気を抜かれてしまい 
何とはなしにこの珍獣を 自分達の中に受け入れてしまっていた。


「あそこまで徹底してコケティッシュだと ・・・かえって嫌味じゃないわね?」

支配人オフィスで 口紅を塗りたくりながら 
イ支配人がため息をつく。

「ウチの旦那は “もう あいつらを接待担当に雇うか”って言ってるわ。」
「じ・・・ 冗談じゃない!
 まったく男って どいつもこいつもグラマーに弱いんだから!」


ソウルホテルのスタッフは ブロンド達に漠然とした「共感」を抱いた。

“ホスピタリティー。”
大いに 問題はあるにせよ。
この女たちには 人にサービスする人間に共通の 匂いがあった。


「あ・・あのぉ~ ソ支配人! たまには一杯飲みに行きませんか?」
若きベルパースンが 紅潮した顔で誘ってくる。
ジニョンが 呆れ顔で笑った。

「あなた達・・・私の“おまけの2人”がお目当てね!?」

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「OK ボス。記者の方は身柄を確保。 証拠は全部買い取った。
 ライターズソサエティも コネクションを動かして 何時でも 裏から動かせる。」
電話を切ったレオが 親指を立てて陽気に笑う。
「上のラインに 話も通したし・・これで奴はもう 四方八方『keep out』 だな。」


手の中に遊ばせていたペンで ドンヒョクが コンと机上を打った。 
「後は チェックメイトのコールか。」

“つまらないゲーム・・”

ハンターが 口の端だけで苦く笑う。
何だって僕が こんな “お使い仕事”をする羽目に・・・。
ああ いけない。これはブロンド達への『贖罪』だった。

“ジニョンは 約束 守ってくれるかな・・・。”



「ヘイボス。 後は 御大を脅すだけだな。」

まとめ上げた書類を振って 有能な部下がウインクをする。
「脅す? 弁護士とも思えないボキャブラリーだな レオ・・。人聞きが悪い。
 ネゴシエーション いや ビジネストークと呼んでもらおうか。」

RRRRR・・


レオが 上院議員へのホットラインをコールする。
「Hello・・?」
議員を確認して ボスへつなぐ。

ハンターが プレッシャーをかける声で 静かに挨拶を述べた。
「メールした資料を読んでいただけましたか。 では・・取引を始めましょう。」

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サファイア・ヴィラのベッドの上で ソファ代わりの枕にもたれ 湯上りのジニョンが水を飲む。

コクン コクン コクン・・・


喉を下ってゆく水音を ドンヒョクが耳をつけて聞いている。
「ああ・・ここだ。水の通った所は 少し肌が冷たいね。」
「ドンヒョクssiったら・・。」
  
ねえ・・・ジニョン? ジェーン達は もう帰れるよ。
恋人の肩先を撫でながら ハンターが何気ない風に報告をする。

「・・彼女達の心配事 無くなったの!?」
「ああ。」
「ドンヒョクssiが 2人を助けてあげた と言うこと?」
「これで少しは 罪滅ぼしになったと思う?」

―ジニョン。 あの ご褒美・・

ジニョンがドンヒョクの腕を取って 嬉しげに胸元へ寄り添ってくる。
「ね、ね、どうやったの? 『出資転換』みたいなマジック?」
「ん? いや・・もっと簡単な・・。」

―ひと言でいうと 恐喝 なんだけどね。

およそ 世の中の全てに於いて 単純を好むジニョンには
“弱きを助ける”ヒーローほど素敵なものはないらしい。 大好き!チュッ。
「ドンヒョクssi かっこいいわ。」
「・・ジニョン・・・」

―つまらないゲームだったけれど 景品は最高だ。


「う~ん 2人が帰ったら ソウルホテルの男どもはがっかりするかもね。」


まあ 陽気で可愛い奴らだったからね。
うかつにも ドンヒョクが軽口を言う。ジニョンの眉が半分上がる。

「ねえ・・・・。もう他には いないわね?」
「え?」

あなたを訪ねてくるブロンドは もう いないわね?
念を押されたハンターが 自分の過去を振り返る。

―・・・いな・・・い・・よな?
ちょっと 気弱にドンヒョクが考える。


「なつかれちゃって困ったけれど いなくなると思えば少し寂しいわ。
 それにしても・・・あの2人って本当に ものすごいグラマーね?」
気分の良くなったジニョンが 明るい声を出す。
「・・・・・」
「バーバラってFカップなんですって 触らせてもらっちゃった。こぉんなの。」
「・・・・・」

―ジニョン・・・君。 そういう単純な好奇心が強いね。


無邪気な恋人のおしゃべりを聞くうちに 話が次第に危なくなって
ハンターの脳裏に スクランブル警報が鳴り渡る。 

「・・・よく考えたら ドンヒョクssiは・・」 

大変だ! ジニョンがろくでもない事を思い出さないうちに
さっさとこの話は 終わりにしよう。

「ジニョン! 約束のご褒美!」
大慌てのハンターが ジニョンの唇をふさぎにかかる。
「あのFカップの胸を・・・・んぷ・・」


―悪いなジニョン。 今夜はノンストップで責めるよ。 
 なんとしてでも 君の機嫌のいいうちに 気絶させてやる・・。

-----

  

「・・・あいつらが帰国しないって どういうことだ?レオ?」

眉根を寄せるハンターに レオの視線が 宙を泳ぐ。
「・・今度こそ。本当に ・・その ソウルが気に入ったらしい。
     ええと・・だから・・・その・・もう少し・・ この街に居たいそうだ。」
「お前の家に・・・か?」
「・・・・」


―・・・まさか レオ?

「・・・・どっちとだ?」

あたふたと レオが 書類をかき集める。
しどろもどろでブリーフケースに書類を詰め込む部下に
さすがのボスが 呆れてまばたきをした。


「レオ?」
「・・・・!!」
シン・ドンヒョクの信頼を その一身に負う男が
ひらひら書類をこぼしつつオフィスのドアを開けて 逃げ去ってゆく。  

ボスは言葉も出ないままに 有能な部下を 見送った。



「勘弁してくれよ。おい。  ・・・My ブラザー。」

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