ボニボニ

 

My hotelier 138. - 満たされる日 - 

 




「ドンヒョクssi・・・・・もう・・私。」

「だめかい?」
「死んじゃうわ・・。」



しかたない。 細い腰を引き寄せて 僕は 最後へ動き出す。
「・・あ・・・」
僕がたどり着くまでに ジニョンはもう幾つかの 谷へ落ちる。

「・・・も・・・・・許して・・って・・・・・」
「ごめん・・・。 じゃあ・・一緒にいこうか・・。」



反りかえる君を柔く抱いて 僕も 君へと登りつめる。
・・・・ああっ・・・・

やっと 君の身体を放してあげる。 ふうっと ジニョンが沈んでゆく。




ハン・テジュンと一緒の君を見た日。 僕はなかなか 君の身体を離せない。
いつもこうして 君が 音を上げるまで 自分のものにしていたがる。

君は気づかない。 僕だけが まだ怖がっている。

----- 



ソウルホテルのロビーを 君とハン・テジュンが並んで歩く。
2人まっすぐ前を見ながら 仕事の話をしているらしい。



僕の心が チクリと痛む。

認めたくないけれど・・・君達は 並ぶと 嫌になるほどよく似合う。
テジュンと一緒にいる君は 僕といるより 少し気さくに見える。



「オモ! ドンヒョクssi。」
ジニョンが僕を 見つけてくれた。君の顔が明るくなるのが とても嬉しい。
「ああ理事 どうも。 今日はコンサルですね。」


ハン・テジュンを 僕に引き渡して ジニョンが離れてゆく。
去り際にきゅっと笑って 僕にだけ 君は恋人の顔を見せる。
“ドンヒョクssi、終わったら 一緒に帰れる?“


その一瞬。 必ずテジュンは眼をそらす。彼の心から まだジニョンは消えない。

―でも 僕は知っている。
ハン・テジュンが まだ君を想っているから 怖いんじゃない。

僕が・・・ 「君たち」になれないからだ。





君の様に 明るく純粋に生きられたら・・かつての僕は そう思っっていた。

だから ジニョンを手に入れた日に  僕は 決めた。
君の様に 明るく 純粋に 陽気に生きてみせるって。


でもね、ジニョン。

君とテジュンを見ると 僕は自分が 
永遠に「君たち」になれない事を 思い知らされる。
君たちの 本物の陽気さに比べると 僕は少し・・自分が痛々しくて哀れだ。

僕は結局 成り上がり者だ。
ビジネスでも それから 幸せに関しても・・・。
もともとの自分は 何ひとつ 持っていやしなかったんだから。

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ジニョンを片手に撫でながら ドンヒョクがぼんやり物思いにふける。
身体はもう充分なのに 心がどこまでも どこまでも 飢えている。

「・・・ドンヒョク・・ssi・・・」
「うん?」
 
「何を・・・考えているの?」
ジニョンは恋人の手を引き寄せて うっとりと頬をつける。
幸せそうなジニョンを見下ろして ハンターも少し幸せになる。 

「・・・何も 考えていないよ。」


ねえ、ドンヒョクssi。時々こんな日があるわね。ジニョンが唇をかむ。
「え?」
ジニョンの言葉に ドンヒョクが少しドキリとする。




「ドンヒョクssi・・・? 後悔しているのでしょう?」

「え?」
「私のために アメリカであなたが作り上げた物を 捨ててきたわ。」
そんなもの・・ドンヒョクの唇に薄笑いが浮かぶ。


「昔の暮らしなぞ 僕には 何の魅力もないよ。」
「そう・・かな・・・。」
「なぜ そんなことを?」


あなた 時々何かに憑かれたように私を抱くことが あるわよね?
「・・・・・・」
ジニョンの声が少し ゆるむ。 ドンヒョクは ゆっくりと眼をそらした。


「満足・・できないんじゃない? 今の暮らし。」
「?」

そうよね。だって 前はあんなリムジンに乗って 何百万ドルもの仕事をして。
「ジニョン・・?」
ゴージャスな女性だって よりどりみどりだったのに。
「・・ジニョン?」
私なんかをつかまえたせいで。 きっと 満足出来ないわよね・・・。

「あなたが 何かに飢えてることが感じられて ・・私 少し辛いの。」




―いや ジニョン。僕が飢えているのは そういうことじゃない。


「わかっているの。 できるならあなたを自由にしてあげたい。・・・でも私・・。」

ぽろぽろ と 
愛しい人が涙をこぼす。

「私・・・もう あなたを失えない・・・どうしよう。」
「ジニョン。」
「だめかしら。私の元に・・・いるのは 辛いかしら?」

ぽろぽろと 呆れるほどたくさんの涙が ジニョンの瞳からこぼれおちる。
可愛いジニョン そんな風に 悲しんでいたの?
あまりの愛しさにドンヒョクが呆然とする。 ふっと 大きく息を吐く。


「これじゃ・・笑い話だな。」
「・・・え?」


ドンヒョクが ジニョンを引き寄せる。

「ねえ、ジニョン? 僕はね。昔の暮らしなんかいらない。」
僕はね・・君が欲しくて 飢えているんだよ。
「なぜ?・・もうあなたのものじゃない。」

そうだね  君を深く抱きしめる。 ・・・でもね。
「こんなことはない? お腹すいたなって食べ始めたら
 自分がすごく 飢えていた事を知って なんだかガツガツ食べてしまう。」

「うん・・・あるわね。食べながら お腹すいたって言って笑われる。」


僕はね 時々そうなってしまう。
ジニョンをもっと抱きたいって 抱きながら 思っている。
幸せになりたいって 幸せの真ん中で思っている。

―馬鹿だね。 そして 君を悲しませるなんて 最低だな。


「後悔は?・・していないの。」
「してるよ。もっと早く君に逢いたかったな って。」

本心ですか?・・君が泣き笑う。僕の心の飢えが いつのまにか消えている。



「ジニョン。ずっと 僕のそばにいてくれる?」
「・・どうして 私の聞きたい事を先に言うの?」



神様。 僕はどこかで 何か善い事をしたのでしょうか?
どうしてこんな幸せが 僕に 与えられるのですか。

悪いな ハン・テジュン。
君が羨ましいけれど それでもジニョンが 選んでくれたのは 僕だった。


「ねえ・・・ジニョン。 もう絶対だめかな?」
「え・・ええ?・・・また?・・」
「そっと するから。 ・・中に入れてもらうだけでもどうでしょうか?」

もお・・と君があきらめて 恥ずかしそうに脚を開いてくれる。

「・・・本当に そうっとよ。」
そうだね壊れたら大変だ。お邪魔しますとドンヒョクは控えめだ。 


・・・・あ・・・・
「ジニョン。 ふふ。また来ました。」
温かい。
ここは 君が 僕のために用意してくれた特別室だ。

あふぅ・・
「・・んん・・。 ねぇ・・・ドン・・ヒョクssi・・私・・眠い・・。」



眠っていいよ。もう こうしているだけでいい。
僕も どうやら単純になってきた。
どんなに抱いても飢えていた心が 君の言葉だけで 幸せに満たされる。


僕に抱かれたままで 本当に 君は眠ってしまった。
ひどい奴だな・・・ ハンターが笑う。


こんなハンサムの相手をしながら 寝るなんて。

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