ボニボニ

 

My hotelier side story - ガテマンジャー おまけ -

 




うかつだった・・・。

「僕は ひょっとすると クビになるかも知れないなあ。」



バックヤードを 歩きながら “アイスマン”は 戸惑いを隠せなかった。
シン理事ときたら
まさに 手中の珠の如く ソ支配人を想っている。
僕は その“珠”をアイス・カービングに仕上げて 衆人の集まるパーティ会場に飾ってしまった。


「ぴんと 来ちゃったんだよなあ・・。」


芸術家肌の“アイスマン”は 情けなさそうなため息をつく。
紫陽花の向こうを通り過ぎた 美しい女性に 絵心がそそられてしまった自分を
今は 少しだけ 悔いていた。

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コンコン・・・


会議室のドアを開けると テーブルの突き当たりに ハンターがいた。
「お呼びで・・・しょうか・・・。」

そこへ・・ と 物静かな手が 椅子を示す。
恐縮しきった“アイスマン”はどぎまぎと 理事の前にかしこまる。
パーティ会場で射すくめるように睨みつけた人が  今は ただ静かに 横を向いていた。


シン理事は 怒るほどに 冷静になる。
誰かに聞いたことがある。 僕はきっと 虎の尾を 踏んでしまったに違いない。



「あれは ・・・ジニョンだ。」

横を向いたままの ひとり言のようなつぶやき。


「・・・す・・ すみませんでした!」
「君は どうやってあの像を作った? 彼女が その ・・モデルを引き受けたのか?」
「い いいえ!」

カービングの ノミの饒舌さとは裏腹に 口下手な“アイスマン”は
しどろもどろに 切り張りしたような弁明をはじめる。
「花のスケッチをしている時に 偶然現れたソ支配人を見て ぴんと来て その・・」


相手が誰かなどと深く考えもせず とっさに 姿を描きとめてしまったのです。


ただ じっと・・・。 
シン・ドンヒョクは “アイスマン”を見る。
なるほど 彼は本物のアーティストだ。 とっさに描きとめて “あれ”を作ったのか。
「・・・・・。」


「ど、どうも すみませんでした。」
「君は  その ・・・氷しか 扱わないのかな?」
「は?」

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サファイア・ハウスの 午前2時。


愛しいジニョンはベッドの中で 深い寝息をたてている。
とても静かに起きだして 書斎に忍んだハンターは 
デスクの引き出しから 絹に巻かれた物を取り出すと もう一度ベッドへ戻ってきた。

するり と 上質な絹がほどけて 小さな彫像が現れる。
湧き立つように紫陽花が咲き乱れ 
その真ん中で 恍惚の笑みを浮かべて竪琴を弾く ミューズ。

「Wao・・・。」


このうなじ こぼれる胸元。 すんなり伸びた きれいな脚。
そして何より ふわりときらめく 恍惚の笑み。
「・・・・信じられない。」



ためつすがめつ。  満足至極のハンターは 恋しい人と彫像を 交互に見る。
我慢ができずに そっとシーツを持ち上げて 2つの裸身を見較べる。
天才の手になる 傑作だ。 どうだい この腰から腿へのラインの 本物そっくりなこと。
「最高だな。 オフィスに 置いておこう。」

何・・・を・・・ しているの・・?
「!」

いきなり目覚めた恋人に ドンヒョクの眼が 宙を泳ぐ。
「何? ・・・あら? それ この前のアイス・カービング?」
「あ・・。 うん そう。」

とても見事で 気に入ったから ガテマンジャーに頼んで レプリカを作ってもらった。
「あはは・・ アイス・カービングのレプリカだなんて。」
「可笑しいかな。 オリジナルはもう溶けてしまったけど・・。」


綺麗だったな。
ライトに照らされて きらめいていた君。
トドとデブ2さえいなければ あのまま 永久保存したかった。


「ちょっと見せて。 わぁ・・ 本当に素敵。 これどうするの?」
「オフィスに 置くために頼んだんだ。」

えー? それじゃあ 私が見られないわ。 
「ねえねえ 玄関のアルコーブに飾らない?」
「とんでもない!」

― 君の肢体だぞ! 僕以外には 門外不出に決まっている。



何よ。 女性の裸像なんかに 鼻の下伸ばしちゃって・・。

ぷうっと膨れる ジニョンはまだ ミューズのモデルに気づかない。
陽気な気分のハンターは 愛しい人を抱き寄せて 甘い囁き。  もちろん 君の方がずっと素敵だよ。
― だけど 裸の君にそばにいてもらっては 仕事にならないだろう?

「僕のオフィスに見に来ればいい。  いつだって 歓迎するよ。」
「嫌よ。 ドンヒョクssiのオフィスは 危ないんだもの。」
僕は紳士だ。  誓って 何も しない。
「ドンヒョクssi。 その言葉だけは  悪いけれど 信用度ゼロです。」


失礼な妻だな。 もう1つ宝物を手に入れて シン・ドンヒョクは 上機嫌。
ジニョンの身体を 抱きしめ直すと そっと 膝で 腿を割る。
「オモ・・・。」


いいだろう?
返事をさせない素早さで キスが唇をふさいでいく。
ん・・と 一瞬戸惑ってから ジニョンの声が甘くなった。

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