ボニボニ

 

もう1回

 




ジュニって奴は何をさせても  とても 上手にやってのける。


だけどそれは 決して彼が器用だからでなく。
(ううん もちろん か・な・り器用なんだけど。 それ以上に)
 
あいつが すごーく・・・、 真面目だからだ。



スポーツでも ゲームでも 学問でも
ジュニの場合。 やると決めたらとことんやる。

あいつの辞書には 「サボる」とか「適当に切り上げる」って言葉はなくて
自分がここ と 納得したゴールまで
呆れるくらいの集中力で練習をして 上手くなってしまう。


天才は1%のひらめきと99%の汗で出来る って言うけど 
あの膨大な努力を苦にもしないというのは やっぱり 才能 なんだろうな。
すごいな~って・・・・ 思うけどさ。

時々“はーぁ”って ため息も出る。
だって アタシは何でもほどほど。 根性無しの一般ピーポーだもん。



そして今困っているのは ジュニの この“ド”真面目さ。
だって ・・・ね。

絶対 大きな声では言えないけれど。 
あいつは近頃 ものすぉごく真面目に ベッドテクの向上を目指している。



どうしてそんなことになっちゃったのかというと 

話は ちょっと前に戻るんだけど。

-----





「あ、茜さんってば。 な、何ですか! これは?」



女の子向けの雑誌ですよ? 男のオールヌードなんて ・・・SE・X特集?!
「あー、それ? 真由っぺが貸してくれたんだ。 えへへ。」
その特集号は人気があって いっつも 売り切れるんだよ。
「人気? SEX特集がですか?  ・・・女性向けの本なのに?」


・・う~ん。 だって女の子もやっぱ ソーユーことに興味はあるデショ。

「そうなんですかっ?!」 
って ジュニってば ものすごい至近距離でアタシを見つめる。
しかしコイツ。 ウルトラドアップで見ても ため息が出そうにハンサムだ。


「・・・あ・・の・・ では茜さんも興味があるのですか? その 男性のヌードに。」

僕の身体は 怖いと言って嫌っているくせに。 
「このモデルさんなら 好きなんですか?」

ば、ば、ば、馬鹿野郎。  ジュニってば いきなり何を言う~!  
「別に好きとかそういうんじゃなくて。 ちょっとした あの 好奇心デス。」
それに ジュニの身体は怖いけど。 ・・・嫌いとは 言っていないよ・・ぼそ・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ジュニにとって このコトは かなりのショックだったみたいで。
その晩奴はお風呂上りに 腰にバスタオルを巻いたまま
しん と思いつめた表情で 雑誌を眺めて考え込んでいた。


・・・あのぉ・・・ジュニ? 言っておくけど

アタシはそのぉ「ベッド方面」には 不満も 欲求もないからね・・・。
って。 あの時 奴の背中へ 言ったのにな。

-----


ジュニは とてもたくさん本を買う。 

いつも買うのはハングルや英語の 難しそうな専門書。

だけどこの頃 配達される英語の書名に「sex」とか「ecstasy」なんていう
怪しい文字が混ざっていて。  ・・これは 何かな?
今夜もジュニは 端整な顔で 熱心にそういう本を読んでいた。


そして 今。
 
ジュニは静かに本を閉じて じいっと宙を見つめている。
とがらせた唇に一本指を立てて“ん~”って  ・・・何を 考えているの? 
「茜さん?」  

「!! ・・・・なに?」
「こちらへ来ませんか?」
キスをしましょう。 こともなげにジュニが言う。
上目使いで警戒するアタシに 奴は「?」って首をかしげる。


天使みたいにふんわり笑って 優しく 言い聞かせるようにまばたきをする。
「いらっしゃい。」 
口の端が笑うように上がって  ・・・それが ちょっぴり不安だけど。
溶けるような眼をしたジュニが 両手を伸べて アタシを招く。



・・・ああ まずい。

アタシは 今 カエルの気持ちがよくわかる。 

ジュニの奴は とびきりきれいな蛇のようで どうしようもなく魅入られる。
「・・・・」
広げた腕の中まで行くと 胸の中へ抱き取られた。
「愛しています。 知っていますね?」
「・・・う・・・ん・・」

柔らかく頬を包まれて ジュニが唇を食べにくる。
おいでって 舌が迎えに来て 
おそるおそる応えると すくいあげるように抱きしめられる。 

んくんく吸われて 唇が離れる頃には 身体の力が抜けてしまう。
涙眼のアタシを見るジュニは ふ・・って 優しく髪をすく。
「この先も いいですよね?」



ぱ ふん・・・

裸ンボのアタシをベッドへリリースして ジュニは は・・って幸せそう。
脚を開いて滑りこむと きちきち 硬いのを挿し入れる。

アタシの上へ腕立てをして 愛しげなジュニが 見つめている。

「痛くないですか?」 
・・・・ん・・・
最初からでごめんなさい。 ゆっくり愛しますから いっぱい感じてください。
ジュニはぴったり身体をつけて ゆっくり ゆっくり 揺すり出す。

きしんでいたのが滑らかになっても ゆっくり ゆっくり ジュニは動く。
もどかしさに身体がじれると 嬉しそうに押さえつけて。 
・・ジュ・ゥ・・ニィ・・・
「だめ・・・です。」

僕だって ものすごく 我慢しているんです。
ヒロポ族のメイクラブは 一昼夜も続くのだそうですって
一体 コイツは 何を研究しているんだ?

アタシはジタバタもだえちゃって あぁ クウゥ・・ってイってしまう。
ビクビクしているアタシの身体を  うっとり抱いて味わったジュニは
大切そうに髪を撫でながら  残酷な声で宣言する。

「ふふ 良かったですか? ・・・では もう1回です。」

-----



「茜。 なんか 疲れてる?」

「・・・・ほぇ?」


行儀悪くお箸をくわえて 心配そうに真由が聞いた。
大学のカフェテリアで真由とアタシは お昼にタンメンを食べていた。


「なんか 茜。 眼の下にクマを飼っているよ。」
「ほんと? ・・・疲れたかなあ。」
奥さん業と学校の両立って大変なの? 韓国は まだまだ封建的みたいだからねぇ。
「ジュニなら絶~対優しいと思ってたけど 結婚したら彼も “男が上”って感じ?」

・・ううん・・ 昨日はあれから “今度は茜さんが上”って・・・
はっ!! 
きゃー! バカバカバカ!アタシってば。 今 すごいことを言いそうだったじゃん!


・・ああ でも ジュニってばひどいよ。 クマが出来るなんて。

-----


その夜。 ジュニはお風呂上りに バスタオルいっちょでやってきた。
片腕でアタシをすくい取ると 横抱きにしてベッドへ座る。

「な・・・ 何?」
「茜さん! 僕の身体に触ってくださいっ♪」
「え?」
「早く。 ・・・どうですか?」 

筋肉コブコブって それだけですか? もっとちゃんと見てください。
ニコニコのジュニはアタシを抱いて 嬉しそうに胸を張る。


何 かな・・・? 

おずおずジュニの肩を撫でて アタシは 小さな違和感を感じた。

「あ・・れ? ジュニちょっと痩せた?  なんかいつもと違う感じ・・」

よくぞ気付いていてくれましたって ジュニは 口いっぱいの派手な笑顔。
「あのモデルさんは投手ですから 筋肉の付き方が違ったんです。」



スピードのある球を投げるには 筋肉の柔らかい動きが重要だそうです。
表面的な筋肉の盛り上がりは抑えて 肩周りはインナーマッスル中心に鍛えます。
あとは大腰筋と腹側筋。上体と下半身の連携が・・


「ちょ・・・ ジュニ? ・・・何を言っているの?」

「え? ボディ・デザインの話です。 茜さんは ああいう身体がいいのでしょう?」
筋肉の組成には個人差がありますから まったく同じには出来ませんが。
「ある程度までは努力できます。 僕 少し成果が出てきたでしょう?」


あんぐり。

アタシは顎が外れそうだった。 
ジュニ? それってまさか ・・・・あの 雑誌のこと?

綿菓子みたいな顔で笑うと ジュニは アタシのTシャツをめくりあげる。
くしゅくしゅと顔を胸にもぐらせて 片手でアタシをむきはじめた。

「やだっ!」
「え?」
アタシは奴の胸を押し返す。 こんな の・・ ジュニじゃない!
「で、でも。 茜さんはいつも 僕の身体を怖いって・・・。」
「それでも! アタシを抱いていいのは こんな身体じゃないのっ!」

ジュニが 豆鉄砲を喰らってる。

「だ、だって。 茜さんは 彼の身体に興味があると言ったでしょう?」
茜さんが仮に彼とベッドインしても やっぱり僕の方がいいと思ってくれるように
「・・これでも 努力しているつもりなのに。」



あ・の・ねえ・・・ 
ジュニって 確か ・・・頭いいはずだよね? 

「アタシはさ ジュニと結婚しているんだよ?」
この人をずうっと愛しますと神様に誓った。 結婚って そういう約束でしょ?
「夫以外とベッドインしたら その時点で もうかなり問題があると思うよ。」

アタシは ぷいっとムクれてみせる。 
ジュニのヤローは まったくもう。 アタシの事になると判断力ゼロだよ。


膝にアタシを乗せたまま 奴はぼんやり 赤くなっている。

「・・・じゃあ 茜さんはずっと その・・僕だけ なんですか?」
「他も 試したほうがいい?」
「いいえ! だめです!」
そうか~って ジュニのきれいな頬が染まる。
ムクれたアタシをふんわり抱いて 照れくさそうに頬を寄せる。



「触ンないで。 気持ち悪い。」

いじわるを言ったつもりだったけど ジュニを 喜ばせちゃったみたい。
「それは あのぉ “この身体が僕じゃないみたい” だからですか?」
「・・・・・」
「茜さんは “僕に”抱かれるのが 好きなんですか?」
「・・・・・」

あ~~~~~~っ! 

「抱かれるのなんか 好きじゃない!」
「!?」
「・・・・愛されるのは ・・好きだけど。」
「え?」


ジュニなんか だぁ~いっ嫌・・い。 てんで ムードがないんだから!

それはあの テクニックがなくても 僕に 抱かれるのがいいのですか? なんて
絶対答えたくない問いを ワクワクの眼差しで聞いてくる。
助けて 神様。 この無神経純愛男をナントカして。


アタシは ごそごそ 毛布へもぐる。
今夜は このまま寝てしまいたい。

「ねえねえ 茜さん・・」
zzzzzz・・・・
「答えてください。」
ジュニのバカ。 答えたら また有頂天になるくせに。


ジュニの息が うなじに甘い。
胸を包んだ指先が 先っぽをきゅうっとつかまえる。
ゆっくり始まるジュニの愛撫。 ため息なんか ついてあげないよ。

だけど身体が反ってしまって ため息がはらはら 唇からこぼれる。
あーあ アタシってだめな奴だよ。



ジュニは嬉しくなっちゃって ますますしっかり アタシを抱きしめる。
・・き、今日は  もう一回を 聞いてあげないぞ。

負け惜しみみたいに思いながら アタシは猫のように泣きはじめた。

 ←読んだらクリックしてください。
このページのトップへ