ボニボニ

 

小岩さんのお気に入り from JUNI

 




学会の発表は仕方がないにしても レセプションなんて窮屈です。


「せっかくの日曜を茜さんと過ごせないのは嫌ですから」と
お断りしたら 三浦さんはニンマリと 顔中歯ぐきにして笑った。


「・・・だけどなあ ジュニ。 “夫婦同伴”だぜ?」


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「やだ」

「えっ?」
「だって 外人さんとか教授とかがいっぱいなんでしょ?」
「まあ・・」
「アタシ英語 下手っぴだし。 メンドクサイ」


・・って まったく茜さんってば 
僕の夢だった“茜さんと一緒にフォーマルパーティ”を バッサリ切り捨てるんだから。

だけど僕にはプランがあった。 リスクヘッジをしておいて 良かったな。



「ねぇ 茜さん? 僕達が向こうへ行ったら 英語下手っぴでは済みませんよ」

・・ギク・・

「それに僕。 茜さんの為に もうドレスを買ってしまいました」
「え?」

「この前ニコタマで見て 茜さんが可愛いって言ってた奴」
「えっ?! あの7万円?!」
「40%オフでした。 セール品だから返せないです」

ひええぇぇ~~!



陥落ですね。 

やっと 積年の目標を これでまた1つクリアしました。


アボジがベアトップの茜さんを連れて 出掛けて行ったフォーマルパーティ。
あんなにえっちなドレスを着て 茜さんは「とても楽しかった」と言いました。

あの夜 僕は誓ったんです。

ママの借り物でないドレスを茜さんに着せて パーティへエスコートするんだって。


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「ジュニちゃん♪ こっちでお茶でもいかが?」

「・・え?」
「小岩さんからいただいたの~。 フォンダン・ショコラ」
「ワォ ケーキですか? ・・でも出掛ける前です」

「茜ならまだ戻らないわよ。 ただ待っているのも退屈でしょ?」


そうですね。 女性の支度には時間がかかる。
茜さん ゆっくりおめかししたいんだろうな。

「ふふ・・そうですね。 では いただきます」



ジュニちゃん 今日はおめかしちゃって。 あらあらパーティ? 夫婦同伴?

「茜ちゃんがドレスアップしたら可愛いでしょうね」って 小岩さんはいい方です。


小岩さんは ティーセレモニーのマスターなので ちょっと緊張しますけれど
僕も 抹茶の美味しさが少しわかってきたみたいです。

「大変 結構なお手前ですね」

にっこり。 はい 良く出来ましたと 小岩さんは笑う。
ママさんのお友達の小岩さんは 本当に優しいアジュンマです。

「たっだいま~~~!」

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「ずっる~い! フォンダン・ショコラに抹茶?! アタシも食べるぅ!」

「だめです! もう時間ギリギリです」
「ひっどい。 ジュニ!どれくらい食べた?!」

・・・もぉ 茜さんの食いしん坊・・・


「45°位です。 まだ いっぱいありますから 帰ってからいただきましょう」
「ママが ガッツリ行くかもじゃん」

「レセプションの会場でも スィーツは出ます」
「だけど フォンダン・ショコラがな・・」
「もぅ!」
「?!」


んくんくんくんくんくんくんく・・・・・・・

・・・ぷわぁ・・

「どうですか?! こんな味でした」


膝が抜けて やっと黙った茜さんを タクシーの座席に押しこめる。
僕の夢だった茜さんとのフォーマル・パーティだから 遅刻したくないです。

「もっと味見したいですか?」
「いい・・です」
「遠慮しなくても いいですよ」


・・運転手さんがいるから・・・って さっきの勢いはどこへやら。
抹茶の味しかしないよぅって 消え入りそうな声が可愛いです。

むっ・・。 茜さんがきれいなので 運転手さんがミラーで見ている。


「“僕の奥さん”なんですよ。 今日は 夫婦同伴のパーティです」

「ちょ・・ちょっと! ジュニ」

「へぇえ 若いご夫婦ですね」
「ええ。 でも結婚して3年位です」
「へーぇ! じゃあそろそろ お子さんでも欲しいトコロだ」

・・・うふふ・・


ジュニってば! 茜さんのちっちゃな手が 僕の脇腹を突いている。
なかなか いい話題になってきました。

なんて素敵なバレンタインデー。 僕は 茜さんの腰を抱き寄せた。




fin

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