ボニボニ

 

JUNIな生活  クラックーひび割れ― ③

 







“・・といったヒトの色分解能力に対し、アゲハの個眼間角度は1.0度
視力にすると0.02程度ですが 視力の限界まで色が見えるという・・”


「・・・」

デカいスクリーンに アゲハのドアップ。 


アタシは思わずぴくぴくと 頬を片っぽ引きつらせてしまった。
ジュニが聞きたいと言う研究だから 星の話だと思っていたのに・・



アタシは半分ワニ眼になって 隣のジュニをチラ見する。

奴は ジャケットの中でアタシを抱いたまま
反対側の肘かけにもたれて プレゼンテーションを聞いていた。


シャツとネクタイだけなのに もう学生にはぜんぜん見えない。

いつのまにジュニはこんなにクールな オトナの顔を身につけたんだろう。




アタシが見てるのに気づいたジュニは 何ですか?って 眉を上げた。

いそいそ こちらへ傾きを変えて アタシの口元へ耳を差し出す。

別に話がある訳じゃなかったけど。 しかたないから耳元へ囁く。 
それはいかにも親密そうで ジュニは とーっても嬉しそうだった。



「コレって 何の研究発表?」

「色受容体細胞。 色彩のスペクトルを受容するしくみの研究です」
「色・・」
「実用化への貢献が多方面で期待できる分野です。キャリブレーションとか。
彼のグループの姿勢は ちょっと学究指向が強いですけれど」

「・・・」


理論の実用展開アイディアを持ったグループとコラボレーションすれば
面白い成果をあげるのではないかと思っています。

「ふぅん。 アゲハとコラボするんだと 相手はカナブンあたりかな」

「茜さん・・」




アタシに 説明しなくていいよ。 

ジュニのジャケットをシワにしないように気をつけて 椅子へ寄りかかった。
ジュニの世界はいつだって アタシの???の向こうにある。


だけど 絶対 比べない。  ジュニはジュニだし アタシはアタシ。

奴と結婚して6年。 アタシは自分に言い聞かせ続けてきた ・・のに。




発表の後は質疑応答になって プレゼンテーションは無事終わった。

会議用ホールを満たしていた人たちが 波が引くみたいに帰って行く。

ジュニのジャケットを肩にかけたまま 階段通路を上っていたら
何だろ?  チリッと頭の後ろに 気配・・?みたいなものを感じた。



気配の方を振り向いたアタシは 「えっ?」と口に出しそうになった。

階段席の真ん中くらい。 東洋系の若い男が じっとこちらを見つめてた。


冷たく見える切れ長の眼。 額へかかるまっすぐな黒髪。
アタシ 彼を知っている。 こんな所で会うはずのない人だ。

・・あれ? 

だけど 彼がアタシのことを 知っているはずなんかないんだけどな。




「・・・」

後ろを歩いていたジュニが アタシの表情に眼をとめた。
じいっとアタシを見すえたまま ゆっくり 1つまばたきをする。

きれいな頬をめぐらせて アタシの視線をたどったジュニは

若い男の姿を見ると しずか~~~に 氷の焔を立てた。



ジュ・・ジュ・・ジュニってば  いきなりそんな 迎撃モードで。 

知っている方ですか茜さん?なんて 思いっきし ガン飛ばしてるし。



「あの人は F.I.Tの デザイン科の人」

「え? 学校のお友達さんですか?」
「ううん ぜんぜん友達じゃない。 でも アタシはよく知っている」

「?」


と言うより F.I.Tの学生なら 誰でも彼を知ってる。


アラン・ウェイ  チャイニーズアメリカン。

まだ F.I.Tの学生なのに 発表した作品が話題になっている新鋭デザイナー。

マーチャンダイジングマネージメント科のアタシにとって 彼と一緒の学校にいるのは
レイ・カワクボと同期でしたみたいな つまり身近な有名人だ。



「学校で何度か見たことあるけど。 話かけることなんか出来ない相手」

「そうなのですか? でも 彼は茜さんを見ていたみたいです」
「どこかで会った気がしたんじゃない?」 


東洋人だし 学校ですれ違ったりしてるんだし。

「きっと彼 自分の知ってる人だと錯覚したんじゃないかな」

「そうですか」



『エマージェンシー解除』


ジュニは一つ階段を上がると 並んだアタシを抱きよせて
アラン・ウェイへ 丁寧な 念を押すような目礼をする。

クールビューティーで有名なウェイの ツンとした顔が少し赤くなった。


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ホールと違ってレセプションの会場は 平均年齢が高そうだった。


だいたい学生や助手ですら オーバードクターの年齢だもん。
教授や 研究者らしき人の連れているパートナーは うちのママとタメ位な感じ。

だけど幸いこの国では 年齢を言う習慣がないから

アタシは 「若く見えるでしょうけどそこそこ行ってます」風をよそおった。





「Oh! 君が“茜さん”?」

って。 おじさん 顔が近いです。

「あ、はい Mr.マイヤー。 お目にかかれて嬉しいです」



ジュニのクライアントだというMr.マイヤーは 全部が大きい人だった。

身長はジュニよりありそうだし 手なんか野球のグローブみたい。

何よりギロリと眼をむく顔が トイストーリーのバズ・ライトライアー似で
アタシは 精一杯の愛想笑いが もうすこしで引きつりそうだった。


“ゴードンさん”と呼んでくれって Mr.マイヤー 自分にさんをつけてるけど

オットに“茜さん”と呼ばれるアタシじゃ 指摘することも出来ないか。





「僕はジュニに惚れてしまってね。いやいや! そっちの話じゃないよ?」

(・・何も言ってないし)


リターンの成績がとてもいいと聞いて 彼に資金をまかせようとしたらね。

「貴方の目的が高配当でしたら 他の優秀な者をご紹介しますと言うんだ。
 生意気ですが僕は 未来を創る投資をする方を求めていますと言ってな!」


どうだっ!と嬉しげなゴードンさんは 顔いっぱいの笑顔で言った。

ジュニの投資には志がある。 私・は・そこに・惚れたのだよ!


「そ、そうですか」

「Mr.マイヤー・・。 仕事の話は それくらいにしませんか?」
「ゴードンさんと呼んでくれジュニ! そうだな 美しいレディの前だ」



私のレディも 紹介しなくてはな。 

ゴードンさんはそう言うと キョロキョロと周りを見回した。
妻は 知己が多くてな。 パーティーとなるとあちこちにつかまる。


「妻もコリアン系なのだよ。 実は 君を勧めたのも最初は彼女だったんだ」

「ぇ・・」

って これはジュニの声。



ゴードンさんのつぶやきが聞こえたみたいなタイミングで
スリムな美女が近づいて来ると まっすぐ ジュニに向き合った。

「やっとお目にかかれたわ。 私はマーガレット マギーと呼んで」



・・初めましてマダム イ・ジュ二です。  「それから 妻の茜です」 

「茜です。 初めまして」

「まぁ可愛らしいかた! 仲良くしましょうね」
「は・・い ありがとうございます」

「・・・」



・・気のせいかな。 空気が ちょっと変じゃない? 

ジュニが ぎこちない顔をしている。
目上に礼儀正しいジュニのヤローが こういう時に愛想良くないのって 珍しい。



「Mr.マイヤーの奥様が コリアン系とは知りませんでした」

「それは 黙っているように私がゴードンに口止めしたんですもの」
「・・・」

韓国企業やコリアンの投資家は クライアントにしないと言う貴方だから
私を理由に ゴードンを拒否するかもしれないと思ったの。


「・・・」

「でもゴードンはゴードン 私は私。 今さら断らないわよね?」

「・・ええ」



何だろう 2人のこの会話?

アタシがキョトキョトしていると ゴードンさんと眼が合った。
ゴードンさんも 奥様とジュニの緊張した雰囲気に驚いたみたいで

大きなゴードンさんとアタシは 凸凹うろたえコンビになった。



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家に戻ってジャケットを脱ぐなり ジュニは アタシへ腕を広げた。

さあ いらっしゃい。 セクシーなドレスの茜さんを抱かせてください。



「すべすべの肩を撫でたかったです。 パーティーは 僕には我慢大会だな」

って。 まったく 口が上手いんだから。



そう言いながらアタシってば あぁもう ジュニに吸い込まれる。

すべすべと肩を撫でたジュニは アタシを横抱きにしてベッドへ座り 
襟元のチャイナボタンを外して スリットの中へ手を差し入れた、

「こんなに狭いスリットなのに 斜め上から見る肌が「狂暴」です」



ジュニはうっとり 挿し入れた手で胸のふくらみを探っている。
デザインのパワーは凄いですね。 清楚に隠す方がエロティックです。

そう言いながら ジュニのヤローはどんどんアタシを剥いていく。

ねえ ジュニ? 
アタシはその前に パーティーでのことを聞きたいんだけど。




「マギーさんが言ってたコト。 ジュニって コリアンと仕事しないの?」

「そうです」
「どうして?」

「・・・」


膝で腿を大きく開けて ジュニが脚の間へ来る。
話しますけどメイクラブが先です。 もう僕は 我慢が出来ません。


「こんな状態でおあずけされたら。 茜さん? 明日は立てませんよ」

げ・・・



“こっち”が先でいいですよねって ジュニはゆっくり入ってくる。

がっしり腰をわしづかみにして きゅうんと言うほど奥まで挿す。

しょうがないなぁ 優しくだよ? ビビったアタシが念を押すと
はーい とジュニは子どもみたいに答えて 幸せそうに動き始めた。

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