ボニボニ

 

JUNI 18

 



2人だけで話すと言っても ジュニは 頑として拒否した。


ジュニって こんな顔をするんだな。
彼が 怒りへ動き出したら アタシ きっと止められない・・・。

困り果てていると 圭太が近づいてきて まっすぐジュニに向き合った。

「ちょっとだけ・・ 高坂と 話させてくれよ。」
「・・・・・。」
「あんたが心配するような事は 絶対しないからさ。」


お願い・・・ジュニ。 
アタシは 恐る恐るジュニの手を握る。 
ジュニは アタシがいることに 初めて気づいたような顔をした。



公園で 圭太は 片足だけでジャングルジムに 登った。 

例の派手なギプスは取れたらしくて 軽そうな固定具になっている。 
「脚・・・ 治ったの?」
「わりとな。 驚異の治癒力だって 医者が言ったぜ。 俺 ミルク好きだからかな。」
「・・・・・。」
「この前 ・・・ごめん。」
「謝らないでよ。 アタシが 無神経だったんだと思う。」


5~6m離れたベンチで ジュニはまっすぐ こちらを見ている。
お前の婚約者 やっぱ怖えぇな。  俺 ぶっ殺されるんじゃないかと思った。
ジュニの方を見ないようにして 圭太が ふふっと笑って言った。

「結局 アイツとつきあうことになったんだ。」
「・・・ごめん・・。」
「俺に謝ることじゃないよ。 アイツのこと 好きなんだろ?」
「う・ん・・。」


お前さ すげーきれいになった。  いきなり 圭太はそんなことを言う。
ナンかさ 見たこともない女みたいでさ。
「俺 ・・・嫉妬 したのかな。 俺とつきあってる時の茜と 全然 違うから。」 
「・・・・・。」

「本当は 最後に友達同士のハグをして もう あきらめようと思ったんだぜ。」
・・・だけど 茜がなんか ものすごく可愛く見えちゃって。つい・・。
「もう 言わないでよ。」


ジャングルジムの上の 圭太を見上げる。
アタシが傷つけちゃった 優しい 人。
「アタシ 圭太が好きだったよ。 それはうそじゃない。」
「・・・・わかってる。」


ごめんね圭太。 アタシは 圭太に手を伸ばす。
ちらりと ジュニへ視線を走らせてから 圭太がアタシの手を握る。

「このまま引っ張って キスしてやろうかな。」
「命知らずだね。 脚 もう一本折れちゃうよ。」
「あいつさあ お前に 手を上げたりは しないんだろ?」
「ん・・・。」


山から派手な竜神がやってきて 村娘をかっさらっていったみたいだよ。
ああ・・おれ 体育会系なのに 本当にブンガク的なこと言っちゃうよな。
「もう行けよ。 あいつ そろそろ切れちまいそうだから。」
「ん・・・。」

アタシは うつむいて くるりと圭太に背中を向ける。
「茜?」
「ん・・・。」
振りかえるアタシに 圭太は にっと笑って言った。


「お前 あいつとヤッタだろ? 不純異性交遊。」
げ・・・
「バレバレだぜ。 色気のない女が急に艶っぽくなっちゃってさ。このスケベ。」
「・・・な・・・。」

とっとと行け。お前みたいなふしだら女に 用はない。
「せいぜい 婚約者とよろしくやりな。」
ありがとう 圭太。 最後に ・・ちょっと目元がゆがんじゃったね。
「ばいばい。」


アタシは もう絶対振りむかない背中を 圭太に向けて 歩き出した。

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「痛いよ・・。 ジュニ。」

ジュニってば 手を握っていないと 誰かに盗られるとでもいうようだ。  
電車の中でも怒ったような顔で アタシを がっしりつかまえている。


「・・・圭太はもともと アタシの恋人だったんだよ。」
「わかっています。」
「心変わりしたアタシを責めないで・・ジュニの所へ来させてくれたんだよ。」
「わかっています!」
「!」

いきなり ジュニの大きな声。
ガラ空きの車両の中で 視線が集まる。
アタシは もう何も言えなくて ぽつんと ジュニにつながれた。



アパートの前で 握られた手をそっと放すと ジュニが腕をつかんだ。
「え?」
「僕の部屋へ 来てください。」
「・・・ご飯のあとで 勉強しに行く。」
「だめです。」

眼の底を光らせて首を振るジュニに アタシの背筋が 冷たくなる。
抑えた声の底にある ジュニの激情に魅入られて アタシは身体が固くなる。  
「来てください。」

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部屋に入るなり ジュニの ものすごいキスが来た。
いつもと違って性急で 激しくて 凶暴なキス。

まだ玄関で 靴も脱いでいなくて なのに 壁に押し付けられて。
コートも鞄も 捨てるように奪われて セーターへ手も入りこんで。 
アタシはジュニを押し返すけど 胸板が石のように硬い。

「やっ!」
「茜さん!」
「やだ。」
「どうしてですか?! 茜さんは僕のものです。」


涙目のジュニが すごい顔でアタシをにらむ。 ジュニ・・そうじゃない。
「どこかに行っちゃだめです! 僕の・・!!」
「痛いの!」
「え・・?」
「乱暴なんだもん・・。 優しくしないなら やだ。」
「あ・・・・。」



アタシの返事が拒絶じゃないと知って ジュニは 脱力したみたい。

赤い顔して 横を向いて どきまぎと言い訳をする。
「ご・・めんなさい。 茜さんがタカハシ君と手をつなぐのを見たら 怖くなりました。
 ・・・茜さんが どこかへ行ってしまうんじゃないかと思ったんです。」
「あれは さよならの握手だよ。」
「・・・そうですか。」

僕 茜さんを 愛しすぎているかもしれません。
うつむくジュニの声が 低い。 


愛なのかな? 執着・・なんじゃ ないのかな。
なんかアタシ 涙が出た。 
それでも ジュニに想われるのが嬉しいという 自分の情けなさに。

「・・・茜さん?」
おずおずジュニが抱きしめる。申しわけなさそうに 唇を寄せる。
「この先も いいと言ってください。」
「・・優しく・・だよ?」

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嘘つき。

優しくしますと言ったくせに。 今日のジュニは 自分が抑えられない。
はらぺこ犬が貪るように アタシの腿を大きく開ける。
恥ずかしいからだめと言っても止まんなくて ちゅぷちゅぷ派手な音をさせるし
腰をつかんで 痛いくらい深く挿すから 涙が出ちゃうよ。

「あう・・・・」
「ごめんなさい。」
茜さん 怒らないで 怒らないで。 僕 気持ちが震えて身体が止まらないです。
眼の横で揺れるたくましい腕。 アタシを護るために鍛えたと言ってた。

ホント 嘘つき。

護るどころかジュニの身体が 凶器になって責めてくる。
「・・・・あ・・」
それでも アタシの口から甘い声がこぼれて ジュニが嬉しそうになった。



やっと ジュニが身体を放した時には アタシは ぐったり疲れてしまって
頭もうまく上げられなくて ジュニが拭いてくれるにまかせて ぼんやりしていた。

「茜さん・・・あの・・大丈夫ですか?」
「・・ぼろぼろ・・・。」


ジュニはようやく正気になって ものすごーく・・自己嫌悪にはまっているね? 
悲しげに唇をかみしめて 今さらだけどアタシを そおっと 撫でている。 
・・・遅いよ。


しょぼくれたジュニを見ていたら なんだか哀れになってきた。アタシって甘い奴だよ。
「疲れたから 少し寝る。 ・・・腕枕して。」
「!」
アタシにわがまま言われたジュニは 嬉しそうに身体を寄せて 腕を差し入れる。
律儀な召使みたいに毛布をかけて さあ 寝てくださいと言った。


1時間寝て 家に帰った。
ママは牡蠣フライを揚げていて アタシがくたびれたよ~と言ったら
牡蠣とグリコーゲンと栄養補給の話を 得意そうに講義してくれた。

ジュニに抱かれて体力使い果たしたアタシが 夕飯を盛大にかっこんでると
ジュニが 自分の牡蠣フライを2つ そっとアタシのお皿にくれた。



お詫びのつもりかな?  ともあれ 有難くいただくことにする。 

アタシが もらったフライを食べるのを見て ジュニは嬉しそうにうつむいた。

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