ボニボニ

 

JUNI 21

 




「僕に ・・・会いたくなったんですか?」
「うん・・。」


うん・・・ ジュニ。

―会いたいんだよ 本当はいつも。

 
だけどジュニに会うのは  少し悲しいから 今までそんなことは言わないでいたんだ。
アタシの大好きなジュニは 多分 ずっと 『今のアタシ』を見てくれない。
でも・・ もういい。
ジュニの 懸命な想いの理由がわかったから もういい。


アタシがジュニを好き。 ・・・それだけで いい。

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ジュニの枕元には英語の本があった。 寝る前に読んでいたのかな。


「寒いでしょう? さあ ここへ。」

ジュニは 自分が抜け出た毛布の穴に そっとアタシを埋めこむ。
するりと横に滑りこんで  大きな手で 撫で撫で・・とアタシを撫でる。
「これで 寒くないですか?」
「うん・・。」


ちゅっ と まぶたにキスが落ちる。
あれ? 初めて見る表情。 ジュニってば 照れくさそうにしている。
アタシを見るのが恥ずかしいみたいに  上を向いて 抱きしめる。

「僕に会いたくて こんな時間に家を抜け出すなんて 茜さんは『不良娘』です。」
「ジュニにだけは アタシの素行をとやかく言われたくないよ。」
「ごもっともです・・。」
アタシは もごもごとジュニの腕の中で動いて 背中を抱かれる形に落ち着いた。


アタシが「会いたい」と言ったことが ジュニには すごく嬉しかったんだね。
腕の中にアタシを閉じ込めて うきうきと 話しかけてくる。

「父が ご迷惑をかけませんでしたか?」
ぷっ・・と アタシは吹きだしてしまう。 ジュニパパと 同じコト言ってら。
「ジュニパパねえ・・ ジュニが アタシに迫らなかったかって 心配してたよ。」


首を回して ジュニの顔を見ると ジュニはぽかんと口を開けてた。
それから やられたなあ・・という風に 眼をつぶる。 すごく可愛い困り顔だ。
アボジがそんなことを言いましたか? まいったな。

「アボジは ずっと茜さんのことは諦めろって 言い続けていたんです。」

12年前の 子どもの言った事だ 変な期待をするなって。
茜さんは茜さんの人生を歩き出しているんだから 邪魔をするなって。

「僕は 子どもの頃から茜さんと結婚すると 言い続けていましたから。
 僕が いよいよ茜さんに会いに日本に行くって聞いて 慌てたみたいなんです。」

―パパの気持ちは ワカル・・。



ジュニの胸に背中をつけているから ジュニの声が アタシの身体に直接響く。

8つのジュニ、9つのジュニ、10のジュニ・・・
ジュニは ずっと5つの茜を抱いて 生きてきた。
アタシは5つの茜の殻を脱いで どんどん 大きくなっちゃったけど。


アタシの髪を 大きな手で撫でながら ぽつり・・とジュニが言う。
「茜さん? アボジに聞いたでしょう オンマが死んだときのこと。」
「・・・・。」
「だからこうして 僕をなぐさめに来てくれたんでしょう?」


返事が出来ない。 ふっ とジュニが静かに笑う。茜さんは 優しいですね。

「優しくなんか ないよ。 ジュニのことだって忘れてたし・・。いい加減だね。」
「いいえ。 僕だって内心では 茜さんが 僕を憶えていてくれるとは
 思いませんでした。 茜さん まだあの頃 幼稚園だったし。」
だいたい それから12年間も 僕たち 音信不通ですからね。


ジュニは アタシを抱きしめて 気持ち良さそうに ため息をつく。

「でも たとえ茜さんが僕を忘れていても 
 僕は がんばって 茜さんに愛してもらおうと思っていました。」
「すごい自信だね・・・。」

とびきりハンサムで 頭もスタイルも良くて  ・・・まあ 自信も持つよね。


「自信? 自信なんてありません。 僕には 茜さんしか いないからです。」 
「嘘ばっかり。 アニーさんもいつかの韓国の人も 他にも いっぱいいるでしょ?」

―ああ・・この言い方は すごくまずい。 

アタシは 一番聞きたくない言葉を ジュニから聞き出そうとしている。
「僕 女の子にはそれほど興味ないです。 僕を抱いてくれた茜さんだけが 欲しい。」


・・・そうだよね。 あの日抱いてくれた『茜ちゃん』だけが欲しいんだ。
ああ その言葉は 聞きたくなかったな。 アタシは馬鹿だよ。トホホ・・


突然  ジュニはもじもじと 居心地悪そうに動く。
「あ・・あの・・茜さん?  僕は ちょっと今 嘘をつきました。」
「え?」
ジュニは アタシの髪を頬でよけて 耳元に こそこそ話をする。

「ずっと 茜さん1人を想ってきたと言いましたけど。 一度だけ あの・・ 
 よそみした事があります。 ちょっとだけ。
 あ! でも! そんなひどい事じゃないから! ・・怒らないで聞いてください。」
「ジュニ・・・ 耳元で叫ぶと うるさいよ。」


ええと・・ 僕。 

茜さんがどんな女の子になっているかなあって ずっと 想像してました。
眼がぱっちりして お陽様の匂いがして・・

「お陽様?」
「ええ。 茜さんが僕を抱いてくれた時 お陽様の匂いがしました。」
あの時の茜さんはお陽様の匂いがして 小さくて 温かくて 柔らかかったです。
僕を閉じ込める冷たい暗闇から 救い出してくれた 命の匂い。 


「・・オンマの腕は 大きくて 冷たくて ・・・だんだん固くなりましたから。」
「!」
ぷよぷよフェチの ジュニ・・・。 今さらながら アタシは 絶句する。
柔らかいことは ジュニにとって そんなに大きなことだったんだ。



「ええと・・・! それでね。 茜さん。 
 僕なりに17の茜さんを想像していたんです。 あんな子かな こんな子かなって。」

たとえ茜さんがオカメでペチャパイで勉強嫌いでも 愛せる自信はありましたよ。

「・・・帰る。」
「うふふ。 冗談です。 僕の『告悔』を聞いてください。」
ぼんやり 茜さんという愛しい人のイメージはありました。 でもね・・
「日本に来て そのイメージが粉々になるくらい 素敵な子に会ったんです。」


お陽様の匂いどころか その子自身が 空の真ん中にあるお陽様みたいでした。
明るくて可愛らしくて きらきらしていて。  僕 女の子に興味なんてなかったけど・・。
「惚れたと・・。」
「はい。」
「アタシに向かって ぬけぬけと言うね。」

うふふ。 茜さんは 怒りませんよ。
僕 その子に 思い切って声をかけたんです。 この辺の方ですか?って。
「え・・・・?」
「この辺に 高坂さんってお宅知りませんかって。 ・・・憶えていますか?」


ドキ。  ドキドキドキドキドキドキドキ・・・

いきなり・・・ こんな展開?

アタシの背中に 亀の甲羅みたく張り付いてるジュニが きゅっとアタシを締めつける。
「懺悔します! 12年間大切に愛してきた茜さんを 僕はその時 裏切りました。」
「!」
「ごめんなさい。 でも 許してくれるでしょう?」
「・・・・・。」


あの、え~と、それは、アタシが、ジュニが、その、・・・う~ん・・と・・

「茜さん?」
「・・・・・。」
「怒っていますか? 僕が『5歳の茜さん』に対して 誠実でありつづけなかったから?」
「・・・・・。」
「よく考えれば その女の子に目移りしたのも 無理はないです。
 今の茜さんは 僕が愛した茜さんをバージョンアップした存在なんですから・・。」


アタシ きっと 胸じゃなくて こめかみに 心臓が移転したんだと思う。
鼓動がドキドキと うるさいくらい耳に響いてる。
「ごめんなさい!!  ・・ねえ 許してください。」
ジュニの甘え声が耳元で囁く。 茜さん 怒っているんですか? 

アタシは 心臓ばくばくで ジュニの腕の中に丸くなっている。
顔が火照るからうつむいているけど 本当は きゃほーと言いたい気持ち。


アタシは ・・・・アタシのままで ジュニの視界に映っていた。  

「茜さん? どうして 耳まで赤くなっているんですか?」
「・・・・。」
「あ? もしかして コレが気になっているのですか?」
グンッて ジュニが 後ろから腰をぶつけて 何かでアタシを突いてくる。
「・・こうなるのは仕方ないです。 大好きな茜さんを 抱きしめているのだから。」


・・・ひょっとして 欲しいですか?
うふふ とジュニがいたずらそうな声を出す。

「・・・・・・うん。」


ぐらり・・と ジュニの腕が揺れた。 慌てて向きを変えられて ジュニが覗き込む。
「あの ・・・欲しいですか?」
「うん。」

ぱち ぱち と ジュニがまばたきを繰り返す。 ジュニ 口が開いたまんまだよ。
「オンマのことを聞いて 同情してくれたんですか?」
「違うよ。 ・・・理由がないと いけないの?」
「いえそんな。 あの 本心なんですね?」

ごくん・・・とジュニが唾を飲む。 おどおど 手が 出たり引っ込んだりしている。
いつもみたいに剥かないの? アタシはゆでダコのまま ジュニを見つめている。



アタシからいいと言ったのに ジュニってば遠慮がち。 もたもたアタシを脱がせてゆく。
「僕が ・・好きですか?」
「うん。」

わさわさと 半分脱がせたところで また聞く。
「僕を ・・・欲しいんですか?」
「うん。」
自分のパジャマを脱ぎながら 信じられないように 照れくさそうに もう1度聞く。 
「・・・抱かれ・・たいんですか?」
「早く脱げ。」



ジュニの手が すうっとアタシの方へ伸びる。

アタシの胸をそっとつかむ。 楽しむようにゆっくり揉んでから 唇が追いかけてくる。
アンダーバストの ぷるんとしたところをやわく噛んで それから吸って跡をつける。
もう1個の手は さんざんお腹を撫でまわして 淡い陰りに消えてゆく。

ちゅぷ・・って脚の間から音がして アタシがまた赤くなる。 ジュニ 笑わないでよ。

「たいへんなことに なっているみたいです。」
どれどれと指が挿しこまれて 彼の長い指の感触に アタシはくっと唇を噛む。

だめです・・・茜さん 我慢はしないでください。
うっとり唇が上がってきて 噛みしめたアタシの唇をほどいてゆく。
「・・ん・・・あ・・・・。」


今日のジュニ。 もどかしいほどじっくりと愛撫してくる。
茜さんが欲しいなら 僕は いっぱいあげなくてはいけませんね。

「茜さん・・ここが 僕を欲しそうです。」
悪魔みたいに素敵な笑顔。 いじわるジュニの指が アタシの敏感なポイントを責める。
「や・・めて・・。」
「だめです。 もっと・・感じてください。」 

アタシは 身体をくねらせて 逃げたいような負けたいような気持ちになる。
「い・・やぁ・・。」
あっ・・!といきなりイッてしまって アタシはびくびく震える。
身体を突き抜ける快感に涙がにじむと ジュニが 切なげに笑った。

「茜さんそんな顔・・。 僕 もう我慢できないです。」
腿を割って ジュニが入ろうとする。 アタシは腕をつかんで ねえ・・と揺すった。
「なん・・ですか?」
「愛してるって 言って。」
「え?」
言ってよ ジュニ。 アタシを愛しているって。


茜さん・・。
紅茶の中で角砂糖がとけるように ほろほろと ジュニが笑う。

ジュニの大きな手が アタシの頬を包む。 愛しています。
ぷに・・と軽く鼻をつまんで ついでに頬っぺたもつままれる。
「今日の茜さん。 甘えん坊で すごく 可愛いです。」


ああ 僕 幸せだな。 
今夜はなんだか 茜さんが しっかり僕の腕の中にいるという気がします。
ジュニは 両手でお尻をよいしょとつかんで アタシの中へみっちり身体を沈めた。 
しばらくそのままの感触を楽しんでから ゆっくりと動き出す。
「・・・あ・・・」

アタシは 少し口を開けて 眼を閉じる。
ジュニの温かい胸の下で 大切に 守られるように揺すられる。
顎をあげるとうなじを吸われて 背中を反らすと胸を吸われる。

いっぱいに挿しこまれたジュニが ゆっくり強くアタシを掘る。
は・・と 声が切なくなってくると 持ち上げるように 激しく突かれて 
ひとつ上りつめると ご褒美みたいに抱きしめられる。


ジュニに 愛されている。

あの悲しさが 嘘みたい。 幸せが アタシの身体をじいん・・と震わせる。
すごく いい気持ち。 全身が 溶け出してしまいそう。 
好きな人に抱かれるのって こんなにいいんだ・・。


アタシ よっぽどうっとりしていたのかな。

ジュニが 思わず腰をとめて
今日の 茜さん。 気持ち良さそうですね・・と 笑った。

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