ボニボニ

 

JUNI 24

 



結局 2学期最後の成績は 216人中48番。
人間勉強が出来りゃいいってもんじゃないけど やっぱ 嬉しい。
成績表にニマニマしてたら 美咲が 前の椅子に座った。


「え・・・? 合コン?」

だってアタシ 彼氏いるし 他を あたれば?

「ま~ぁ! いやだねぇ 若いのに。 コノ子はいったい何を固いこと言ってるのよ。」
美咲は やり手ババアみたいに はすっぱな言い方をする。
「合コンて言っても ただの『オトコ付き宴会』よ。相手 結構イケメンが多いからさ。
 こっちもそれなりに粒揃えろって言われてんの。 ね? いいでしょ?」

粒を揃えろと言われますとねえ・・ お~っほほほ!

「アタシぐらいの上玉を出さなきゃって ソウイウ感じなわけね?」
「いや・・ 茜は『5番席・色モノ』って奴。」
何ヨそれ 行かないわい。 ウソウソ。  ねえ 助けると思って 明日!

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この話・・・ 切り出すタイミングを間違うと エライコトだな。


ジュニの部屋への階段を上りながら アタシは 策を練っていた。
「お帰りなさい! 寒かったですか?」
まだ部屋の前に着かないうちに ジュニが ドアを開けて出てくる。


さあさあ座って・・って。 ジュニは ベッドをぽんぽん叩く。
「そこに 座るの?
 ・・・やる気まんまんだね・・。」
「そんな品のない日本語は 知りません。 さあ お座りなさい。」



ふむふむ 結構がんばりましたね。

『ジュニ先生』は 成績表を見て にこにこと 文部省推薦の笑顔を見せる。
「来学期は もっと上を 目指しましょう。」

では ごほうびです。 いつもの すごいキスがくる。
「・・・は・・・・。」
アタシは 酸欠で ぼーっとする。

「来年はそろそろ 先の事を 考える時期ですね。」
ジュニってば 文部省推薦会話を続けながら 制服のボタンを外している。
「もしも受験を・・ ほら 腕を抜いてください・・するなら・・それ・・なりに。」
「ちょ・・ちょ・・ちょっと ジュニ。」

何ですか? とジュニが聞いたときには アタシはほとんど裸んぼで
ベッドの上で 胸を隠して座っていた。
ねえ ジュニ。 あんたってば ちょっと手際が良すぎる。



そっと ジュニの手が アタシの腕を外しに来る。

「手を除けてください。えっちな胸元に よく言い聞かせておかないといけません。」

ジュニは アタシの両腕をつかまえて ゆっくり左右に開いてゆく。
守ってくれる手を無くして 頼りない顔した 2個のふくらみ。
ほんとに言い聞かせるみたいに 下から持ち上げて ジュニが囁いた。

「僕の ・・ものですよ。」


静かにアタシを横たえて ジュニは横に片肘をつく。
「毛布かけてよ。」
「寒いですか?」
「・・恥ずかしいの!」
ふっと笑ったジュニは 毛布をかぶって アタシに覆いかぶさった。


コンクリート打ちっぱなしの壁に 鏡が一面立てかけられている。

ベッドからのぞくと アタシが1人で 毛布をかけて寝ているみたい。
だけど毛布がもごもご動いて   アタシ・・・顔が 赤いや。

毛布の裾から ジュニのシャツがぽとんと落ちる。 それからジーンズ ボクサーパンツ。
最後に ちっちゃな チェックのショーツが落ちて
毛布が リズミカルに揺れだした。


「・・・あ・・あ・・あ・・」

ちらり と鏡を見てしまう。 アタシってば 1人でもだえちゃってるな。
毛布がずれて 足が4つのぞく。
「あ・・ジュニ・・ アタシ 靴下・・・脱い・・で・・・ない。」
「大・・丈夫・・です。 何の・・支障も・・ありません。」


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「明日 スケートにでも行きませんか?」

満足満足。
やっと毛布から顔を出して ジュニはごきげんだ。
腕枕を差し込んで 鼻歌まじりに アタシの髪をすいている。
・・この タイミングかな。

「う~んと 明日はちょっと・・合コンなんだ。」
「合コン? 何ですか?」
「えーと 他の学校の人たちとの 小さいパーティです。」
「男性もいるんですか?」
ストレートにくるなあ 避けようがない。 ・・男性もいます。


「・・・・・・。」
僕という恋人がいるのに どうしてですか?
「メンバーが足りないからって頼まれたの。逢ってお話するだけだよ・・だめ?」
「・・・・・・。」
「アタシは ジュニの他に 男性の友達を持っちゃいけないの?」

どこで 合コンするんですか? 原宿?
「じゃあ僕 帰りは 迎えに行きます。」
「1人で帰ってこれるよ。」
「だめです!  無理やり “お持ち帰り”されたら大変ですから。」
“お持ち帰り”って・・。 ジュニの奴 知ってるんジャン。


まあ・・・しょうがないか。 ジュニにしては 多分 ものすごーい譲歩だ。
こないだ ジュニパパに釘さされたのが 効いてるのかな。

「ねぇ・・でも お店には来ないでよ。 出るとき携帯に連絡するから。」 

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今回は ハズレ。

なあにが「結構イケメン」だよ。 真由っぺと 肘をつんつんする。
「ハナワくんみたい・・こいつら。」

ルックスは まあ十人並みだけど 話がキモイ。
KOボーイだかなんだか知らないが 偉そうな感じが 鼻につく。
“君たちお嬢さんジョシコーセーには ボクタチみたいなのがお似合いさ~ベイベー”
って 本気で言い出しそうだ。

美咲が 目配せをして 化粧室に行く。
アタシも・・って ついて行く。
「あんたね。 ドコが粒 揃ってんのよ?」
「まあまあ・・。 ピザは美味しいじゃん。ここ。」

「割りカンにしてよ? ご馳走したのに なんて言わせたくないモン。」
固いねえ 茜は 二次会どうする?

「アタシ パス。 ジュニが迎えに来るから 帰んなきゃ。」
みゅーっと リップを塗リなおす。 この色 可愛いな。
「えっ?! ジュニ来んの?」
じゃあ アタシも帰ろって ・・・なによ それ?


ごめんなさぁい。 アタシたち皆 門限があるからもう帰らなくっちゃ。
「楽しかったわ~ またお会いしましょう。 “ごきげんよう”」

カラオケ行こうよって男達を 美咲がにっこり拒絶する。
こういう時 美咲のごきげんようは 有無を言わせない迫力がある。


「ねねねね? ジュニは 何処にいるの?」

だから 何で 美咲が一緒に来るのよ。 
アタシはメールを打ちながら 口をとがらせて抗議する。
「いいじゃん イイ男の独り占めはずるいよ。 手は出さないからさ。」
「お願いしますよ・・。 え~と 『バーガンディ』でダーツしてるって。」


タン!

ジュニはコーラの瓶を手すりに置いて ハードダーツをやっていた。

4本指グリップで すいっと投げるポーズが ものすごくきれい。
大体がジュニってば 立ち姿に 品がある。
お店はガチャガチャうるさいけれど ジュニの周りだけしんとしている。


結局 私も私もと皆が言って アタシたちは5人でダーツバーに行った。

「茜さん!」
ああ ちょっとその笑顔。 アタシは とぼける余裕がなくて赤くなる。
だけど アタシより赤い顔で 美咲のヤローがジュニにすり寄った。
「きゃーん。 ジュニってば ダーツ上手い~ん。アタシに教えて~。」
「あぁ・・ 前にお会いしましたね。」


なあにが 美咲って呼んで~ん だ。
手ぇ出さないって言ったくせに 容赦ない奴だな。
突然 ぐいって 腕をつかまれる。
「・・合コンは 楽しかったですか?」
「あ・・・。」

ジュニ・・。 ちょっと 顔が近すぎるし ・・眼が怖いです。
「よそ見は していませんね?」
「してないよ。」

「いや~ん。 ジュニってば ジェラシー君なの~?」
今日の5人を束にしても ジュニの方がもっと素敵よ~なんて美咲が言って
ジュニは ちょっと安心したみたいだった。

「いいな~ん 茜は。 アタシもジュニみたいなBFが欲しいな~。」
こいつ・・思いっきりのブリブリだ。
美咲ってばその辺徹底していて アタシは彼女のそんなたくましさが 嫌いじゃない。

だけど 油断しているうちに ジュニの前後左右に びったり女が貼りついた。

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「茜さん。 茜さん! ・・どうして 怒っているんですか?」

「怒ってない。」
だけど ずんずん歩きますね。
せっかく2人きりになれたんだから もっとゆっくり歩きましょう。
原宿からの帰り道。 アタシはちょっとムクれている。

ジュニってば 女の子に取り巻かれちゃってさ。
またそれが似合って カッコいいから腹が立つ。 フン!
きゃっ!  いきなりキスが来た。

「・・ん・・。」

ジュニ 夜道とはいえ・・・道の真ん中です。 アタシの膝が かっくんと落ちる。
「機嫌を直さないなら この先もします。」


かあっとアタシの顔が沸騰すると ジュニは 夜目にも白い歯を見せてにっこり笑った。

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