ボニボニ

 

JUNI それからstory 1

 




チャペルの鐘が カーン カーン・・ と鳴って
教室の人影が まばらになってきた。



「茜! 今日これから 品プリの水族館に行かない?」

誘ってくるのは 美咲と美穂の “自称”ツイン・ビューティー。
こいつらがそんな所に誘うって事は また合コンだ。 飽きないねえ・・・。


「あたしパス。 どうせ合コンでしょ?」

い~いじゃ~ん♪ 
今日はネ お客さん 相手はS大モノよ・・って  あんた『おすすめ料理』みたいに。
「ハーフでDJやってる子も いるんだって。」
「いらないよ。 今日あたり ジュニが帰って来るんだもん。早く帰る。」

えっ!ジュニ帰ってくんの?!  きゃーっ! じゃ合コンしようって言っといて!
「・・・あのね。」

-----


新学期がくる前に ジュニは どっかの山奥にある 研究施設に行っちゃった。


“茜さんを置いて 神岡に行くのは 僕 本当に 本当に心配です。
 ちゃんと いい子で待っていてくださいね。”


“待たないよ。 ジュニが居なくなったら すぐに 合コン三昧。”
“・・・・・・”
な、なによ。 そんな顔しても 怖くないもん。 
“まだ 愛され足りないんですね? さぁ いらっしゃい。”
ぎゃあぁぁぁ! はっ 離せっ!
“だめです!  当分 男なんて見たくないようにしてあげましょう。”



・・・・あの時は まじに モノスゴイ目に遭いました。
「・・・・。」
アタシ 今 とんでもないシーンを思い出してるな・・・。 思わず 顔が赤くなる。

だけど そんなこと言っておいて ジュニの奴め。
一ヵ月近く 研究所に行ききりになっちゃって・・。
そしてアタシは ちょっぴり寂しく 高3になった。

「嘘つき・・。 月の半分は こっちにいるって 言ったくせに。」
アタシ うるっと 口がへの字になる。
今回だって あいつ 本当に 帰ってくるのかな・・・。

うつむきながら 校門を出る。 合コン 思い切って行っちゃえば良かった。
ふと気づくと 周りのコたちが 何かを見つけてざわざわしている。
「・・・?・・・」


さらさらと 光に揺れる 栗色の髪。 

ガードレールに軽く腰かけて 長い脚の間で 指を組んでいる。
眼鏡の奥のいたずらそうな瞳と 口元からこぼれる真っ白な歯。








「茜さん?」

きゅう・・って 胸が締めつけられる。  ジュニ! 
“茜さん?” 
電話の向こうに響くその声が いったい どれくらい辛かったと思ってるんだ。

「・・・・・。」
「帰ってきましたよ。 寂しかったですか?」
「全然。 『お出迎え』はやめてって言ったでしょう? ウチ 風紀うるさいんだから。」

僕はあなたの 婚約者ですから大丈夫です。 茜さんに・・会いたかったです。
「さあ 一緒に帰りましょう 僕の部屋へ。」
な・・・何で ジュニの部屋へなのよ? 帰るって言ったら家でしょう。

「う~ん。 でも さすがにママさんの見ている所で 茜さんとセッ・・」
ひゃああああああ・・・!
「ジュ・・ジ・・ジュニ! アンタいったい何を言うのよ 公道で!」

アタシが じたばた赤くなると ジュニが ふふっ可愛いなぁ・・と言う。
茜さんの意地っ張り。 久しぶりだから 懐かしいです。 
「さあ 帰りますよ。」



ジュニに手をつながれて 道を歩く。  離してよ 離しませんよ。

「茜さん? どうして僕のあげた指輪していないんですか? よそ見はだめです。」
「うちの学校 アクセサリーの類は禁止なんだよ。」
「ステディリングは アクセサリーじゃないでしょう?」
まあ 高校卒業前に婚約が整って エンゲージリングしてくる人はいるけどね。


電車はそろそろ夕方のラッシュで ジュニはにこにこ アタシのウエストに腕をまわす。
「大丈夫ですか? 茜さん。」
大丈夫じゃないわい。 何で アタシの腿の間に 膝 入れてんのよ。
「くっつきすぎだってば。」
ジュニは聞こえないふり。 ・・・こぉの 悪魔。
「結構 混んでますね? 久しぶりの都会は 人がいっぱいだな・・。」

-----








ジュニがいる ジュニの部屋。


ジュニのいない間 実は アタシ 毎日ここにくる。
窓をあけて たまにはほこりくらい払って。
ジュニのソファでDVDを見たり ベッドで丸まって・・泣いたりする。


だけど 今日は ジュニがいる部屋。

「先にお家へ行っちゃうと 夕飯の後にしか 茜さんを抱けないでしょう?」
だから 学校で網を張って つかまえることにしたんです。
―あのね・・ ジュニ。
 それじゃまるで 鮭を 河口で捕まえる話みたいだよ。


「茜さん♪  あぁ・・やっと 本物の茜さんに キスができます。」
大きな手が こらえきれないように アタシの頬を包みこむ。

あん・・と口を開けたジュニが 顔を傾けてやってきて
アタシの口が 奪われる。 
んくんく と強く吸われて。ジュニの舌がアタシの舌を巻きとってゆく。
ねえ ジュニ。 身体ごと持って行かれそう・・。
「・・・は・・。」

寂しかったですか 茜さん?
今回は 研究の段取りを憶えたり 向こうで生活する準備をしたりで
思ったより 時間を取ってしまいました。

「約束したより 長い逗留になってしまったことを 申し訳なく思っています。」
「・・・・・・。」
「茜さん?」

アタシって なんで こんなに可愛くない性格なのかな?
帰ってきてくれて嬉しい! とか 言えたらいいのに。 
これからしばらくジュニがいる っていうことより 
また ジュニが行っちゃうことを考えて ふくれっ面で ・・寂しがってる。


アタシはもう キスされたくなくて ガムを噛む。

ふっと笑ったジュニは アタシを抱き寄せて 撫で撫でをする。
ちらっと いたずらそうな顔で覗きこみ はむ・・とキスをして。
無言の けっこう真剣な奪い合いの末に ガムを取り上げていった。
「・・・そんなに 寂しかったですか?」
「ちっとも。」

「茜さん ばんざいしてください。」
制服の白いセーターを脱がせるジュニに 天邪鬼なアタシは 聞く。
「嫌・・って 言ったらどうするの?」

プリーツスカートを脱がせて 靴下はつま先から びよんと引っ張って
ジュニはアタシを剥きながら ふんふんふんと 鼻歌まじりだ。
「ねえ・・・!  嫌って言ったら どうするの?」 
「茜さん?」

片手で いきなり頬をわしづかみ。 いはい(痛い)よ・・ ジュニ。
「19歳のオトコの煩悩を 舐めてはいけません。」

毎日毎日毎日毎日毎日  茜さんの幻を抱いて 寝ていたんです。
「そういう意味では 恋人同志になる前の方が ずっと楽でした。
 茜さんと離れる辛さが これほどのものだとは 僕 知りませんでしたから。」

ここで 今日は嫌 なんて言われたら・・
「茜さんを 2回目のゴーカンです。」

よいしょっと 色気のない掛け声で ジュニがアタシを抱き上げる。
ベッドに埋めてリボンタイを引き ブラウスのボタンを ぽちぽち ・・・ぽち。
「あ?」

かぁっ とアタシの顔が赤くなる。 ばれちゃった よね。
ジュニの顔が ふわりとほころんで 愛しげに そしてからかうように覗きこむ。
「こんな所に・・」

鎖骨に落ちるジュニの唇が うなじに向かってすうっと動いて
途中でネックチェーンをなぞって ペンダントトップの指輪にゆっくりキスをする。
「つけてくれていましたね。」
ジュニは背中のホックを外し ブラを持ち上げて アタシの胸をむきだしにする。
大きく開けた口でぱくんとくわえて ・・突起を舌で転がして遊ぶ。


アタシは もう・・って赤い顔で 正直に 眼をつぶるしかない。
ステディリングなんかしたら 友達がうるさくて 大変なんだよ。
だから これしかないじゃない。 ・・・肌身離さず持っていたいなら。

ジュニの手が そっと腿を割る。
「ごめんなさい。 今日は もう先に・・。」
「・・ん・・。」
アタシの 寂しがりやの空っぽを ジュニがいっぱいに満たしてゆく。

ジュニが 帰って来た。 
アタシのひとりぽっちが 溶けてゆく。
これ以上行ったら壊れちゃうよってところまで挿して 一休み。
「あぁ・・ ただいま帰りました 茜さん。」
「・・・・・。」

言わないつもりですか? では 覚悟しなさい。 ただいまただいまただいま・・・
「あっ!・・・あ!あ!」
強く動く身体が 逃げようもなくアタシを責める。 もう ジュニってば 無茶苦茶だ。

アタシはぐらぐら揺すられて ちょっとだけ 気が遠くなる。
茜さんは強情ですね よぉし・・って アタシの脚を 両脇に抱える。
「茜さん ただいま・・ ただいま・・ ただいま!」
「あ!・・わ・・かった・・・あ!・・あ!・お・・お・帰り・・なさ・・い・・」

ぜぃぜぃぜぃ。 
息を切らして見上げると ぽとん とジュニの汗が落ちてきた。
「寂しかった・・ですか?」

はぁはぁと真上から ジュニがアタシを覗きこむ。 きれいな 顔だね。
「口に出したら ・・・泣いちゃうんだもん。」
「もう僕がいます。 涙は 吸ってあげます。」
「いやだ。」
「愛しています。 ・・ちゃんと 分かっているでしょう?」

ぽろ・・

寂しかったよ。 ジュニなんかひどいよ。 
「茜さん・・。」
「寂しかった。」
ごめんなさい。寂しかった。ごめんなさい茜さん。寂しかった・・

ぽろぽろと 涙が 呆れるほどこぼれ出て ずーっと吸い続けたジュニは
茜さん。 僕 塩分過多になりそうですって 切なげに笑う。

「茜さんが 泣いていると思うのが 一番 辛かったです。」
ジュニの腕が アタシの身体を そおっとすくい上げる。
「離れていても泣かないで 僕を 好きでいてくださいね?」
「・・・・。」

ジュニってば ズル。 そんなこと言っても また山奥に行ってしまうくせに。
それでもアタシはもう 意地っ張りをやめて ジュニの首に腕をまわす。
「・・・好き。」
「うふふ  やっと白状しましたね。」

アタシは 眼が赤くなっちゃったので 顔を100回洗ってから 家に帰った。

-----


「まあ・・ジュニちゃんったら! ちょっと 痩せちゃったんじゃない?」

あんまり 変わんないと思うけどね。
ママは 自分が面倒見られないから  ジュニが痩せちゃったと思いたい。
「ジュニちゃんの好きな チキンキャセロールを作ったから たくさん食べてね。」

ジュニは ママのチキンキャセロールが大好きだ。
確かにすっごい美味しくて アタシも好物。
でもママ 実はね『アタシの部屋にお泊りした思い出の味』なんだって。

夕飯の後。 久しぶりに ジュニのいる夜。
ジュニはアタシを クッションみたいに抱き寄せたまま
ニュートリノ観察装置『スーパーカミオカンデ』の話をする。

「11200個の“眼”のある装置なんですよ。」

アタシは全身に 11200個の眼をつけた 神話に出てくる怪物を想像する。
ジュニはその怪物のかたわらで ポロポロ竪琴を 弾いている。

科学関係にまったく興味のないママは キッチンに逃げて
今日のケーキを出してくる。
「ジュニちゃ~ん! これね! 最近おぼえたの! 流行ってるんだって。」
「わお! ママさんの新作? 素敵ですね 何というのですか?」
「う~ん♪ 『塩ケーキ』って言うの。甘くないからいっぱい食べてね!」

塩・・ケーキ・・







素敵な笑顔の そのまんま。 ジュニがこっそり固まっている。
つくづく今日は 塩分過多の運命だね。

背中にジュニの鼓動を聞きながら アタシは ぷっと吹き出した。

 ←読んだらクリックしてください。
このページのトップへ