ボニボニ

 

JUNI それからstory 5

 




女子高生が 繁華街を歩くと それは いろいろと 声をかけられる。


一番多いのは お店の客引きや 宗教系。
美容院のカットモデルになりませんか?  貴女の幸せを 祈らせてください。

たまにはナンパや 怪しいバイトのお誘い。
うちの学校は有名お嬢さん校だから 「制服売って」なんてのまである。



それから・・ 
モデルになりませんか? 女優に アイドルに なりたくありませんか?

「そりゃ絶対AVでしょ?」というのから 本物の有名なプロダクションまで
原宿や渋谷は 本当にスカウトマンが多い。
それなりに可愛い子なら 必ず1-2回は スカウトされていて。
どの辺の所から誘われたか なんてのを さりげに自慢していたりする。



もちろん そんな話には乗らないよ。
アタシ達だって馬鹿じゃない。

だけどさ。 
アイドルにも 女優にも モデルにも おミズのおねーちゃんにも

全然 ひとっかけらも興味のない女の子なんて ・・・いないんじゃないのかな?


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制服のまま竹下通りじゃ 捕まっちゃいそうだから 速攻帰って 着替えて行こう。
ばたばた慌てて帰宅したら うちのリビングで
ジュニが ママや近所の奥さん連中と お茶をしていた。


「お帰りなさい 茜さん。 優等生の帰宅時間ですね♪」

「あっれー ジュニ? もう帰って来たの?」
こちらでの教務関係手続きが多いから 今回は 少し早く戻りました。
「茜さんも 皆さんとお茶しませんか?」


だめ!  着替えて これから原宿に行くの。
「これから? もう夕方ですよ。」
いきなり ジュニの眼が怖い。 
「原宿へ ひとりで行くのですか?」

「だって 真由に振られちゃったんだモン!  今日までなんだよ。」
ラフォーレのバーゲン。 あのキャミワンピが安くなってるから  欲しいんだ アタシ。

「僕も 行きます。」
ああそれなら安心・・・と ママや 近所のおばさんまでがうなずく。
やだ!!  バーゲンなんか 彼氏と行きたくな~い!!

「僕も 行・き・ま・す。」




竹下通りを ジュニと歩くのは恥ずかしい。
「ちらっ」 「ちらっ」 って すれ違う女の子がジュニを見る。
ジュニは 客引きの外人さんを 英語であしらって 断っている。


「・・・ものすごい人ですね。 神岡全部より 人がいるかもしれません。」

そりゃあね。 
原宿は ニュートリノを捕まえる所じゃなくて 若い女の子を捕まえる所だもん。



ジュニとバーゲンなんか ぜったい嫌だ と思ったけど 

実は あいつ とっても役に立った。


あれが欲しい~という服を リーチの長いジュニが取ってくれる。
1回 他の女の子と同時につかんじゃったけど
ジュニと眼が合った女の子は どぎまぎ赤面して あっさり譲ってくれた。


「すっごい。 欲しいものが全部買えた・・・。夢のようだ。」

良かったですね。
でも 僕・・・ 次回は 遠慮します。
「女の子ばかりで 眼が廻りそうです。」



戦いすんで 喉が渇いたね。 アイスクリームでも食べようか?
ブラームスの小道に 濃厚アイスを出す店があるんだ。
「濃厚アイスクリーム? そんなもの食べたら よけい 喉が渇きそうです。」

じゃあ ジュニはコーヒーでも飲めばいいじゃん 
ふくれっ面で 振り返ったら ジュニの姿が消えていた。
「あ・・れ? ジュニ? ・・・ジュニ?」

人混みで はぐれちゃったのかな。
キョロキョロ 周りを見回していたら 客引きの黒人さんが声をかけてきた。
「え・・私 もう帰るところです・・・。」
こっちの弱気は すぐに伝わる。 イイジャナ~イって お兄さんは強引で
あげくに腕までつかまれる。  ジュ・・ジュニ~!


「茜さん!」

大慌てのジュニ。すくいとる様にアタシを抱き寄せて
この子は僕の連れだって 客引きの黒人さんにクレームをつけた。

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だから 1人で原宿なんて危ないです!  ジュニ補導員は 説教モードだ。

「ジュニが 急にいなくなっちゃったんじゃない。」
アタシが 悪いんじゃないもん。
「それは・・ すみません。 変な女の人が急に話しかけてきて しつこかったのです。」

女? 逆ナンされてたの?  へ~えぇ  それはそれは お楽しみでしたね。

「茜さん!って 呼んだんですよ。 何だかものすごく強引な人で
 いきなり僕の手をつかんで連れて行こうとするから 振り切って来ました。」
「フンだ。 ジュニの方が フラフラして誘われているんじゃん!」
「すみませんでした。 ・・怖かったですか?」


ごめんなさい と 申しわけなさそうなジュニは いきなりちゅっとキスをする。 

こ・・こらあ! こんな人ごみで ンナコトするなああ!
「茜さんが 怖い思いをしたから  ・・お詫びです。」
嘘つき。  お詫びと言いつつ 眼の奥が笑ってる。



「ああ・・・。 やっと 見つけたわ!」

いきなり後で声がして 振り返ったら 女の人が立っていた。
「さっきの・・。 一体 僕に 何の用ですか?!」

あなたのせいで 茜さんが危険な目に遭いましたと ジュニは女性を睨みつける。
その眼の強さに 相手の人は 一瞬たじろいだ。 

ジュニ? あの・・  そんなに怒らなくてもいいよ。
「だめです! 僕 この方は 少々非常識だと思います!」
おかげで 僕の茜さんがあんな男にぶつぶつ・・。 ねえ ジュニ ちょっと恥ずかしい。


「あ・・?  彼女と一緒だったのね? ごめんなさい 見えていなかったの。」

君を見つけたら 周囲が全部消えちゃって。
本当にごめんなさいねと その女の人は ものすごく感じのいい笑顔で笑った。


「私って だめなの。 こうなっちゃう方だから。」

両手で 眼の横に遮眼帯をつくるマネをして 彼女が笑う。
「ねえ お詫びと 説明をさせてくれない?
   そんなに時間は取らせないわ。 すぐこの先に事務所があるの。」


これって・・何の話? スカウトかな? 
アタシは興味津津なのに ジュニってば むっつりアタシの肩を抱いて歩き出す。
きょろきょろ 振りかえっちゃうアタシ。 ・・・ジャニーズのスカウトかな?

お姉さんは ここが落とし所と 見抜いたらしい。
「お願い! ねえ彼女? すっごく美味しいパウンドケーキもあるの。」
「ホント?!」
「こ・・こらっ 茜さん!!」

えへへ。 だって~ ちょっとお話聞きたいんだもん。
ジョシコーセーの好奇心を舐めてはいけないよ。 アタシは ぺろりと舌を出す。
呆れ顔で まじまじアタシをみたジュニは 最後に は・・とため息をついた。

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ブラームスの小道を行った先の 住宅街の一軒家。
白い階段を上って行くと 中はアパレルメーカーのオフィスだった。

「な~んだ ジャニーズ事務所じゃないんだ・・。」
「もうわかったでしょう? さあ 帰りましょう。」


ちょ・・ちょっと待ってよ!

お姉さんは大慌てで 「アタシの」腕を捕まえる。
「夏物の新作・・気に入ったのがあったら あげるから。」
するどいな お姉さん。 アタシ(含ジュニ)を逃さないポイント 知ってるね。



オフィスの中に入って 驚いた。
結構広いショールームには 大っきな かっちょいい写真パネルが一面に貼られて
天井から吊り下げられたバーには ずらりと洋服が掛かっている。

「げ・・・Humpty connection じゃん・・。」
アタシの憧れのブランドだ。 
セレクトとオリジナルを両方扱っていて超クール。 へえ ここがオフィスなんだ。

あのお・・・  ホントに夏物の新作くれるの?
「茜さん!」
「うふふ・・もちろん。 あなたの彼がちょっと協力してくれば。」


すっごーいぃ! ジュニを売ってHumptyの夏物ゲットか? ・・・何だかわからないけど。 

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お姉さんは Humpty connectionのデザイナーだった。
冬物のイメージモデルを探していて どうやら ジュニが気に入ったらしい。

「ポスターとね。プレス用のカタログ写真のモデルになって欲しいの。」
「お断りします。」
「ちょ・・・ジュニ・・。」

ジュニってば。 Humptyのモデルなんか 頼んだってできないよ。

「僕は そういうことに 全く興味がありませんから。」
失礼します。 茜さん パウンドケーキはもういただきましたか? では帰りましょう。
「ジュニィ・・・。」

ジュニってば  ジュニってば  ジュニってば!

アタシは おたおたと お姉さんとジュニを交互に見る。
つんと笑わないジュニは アタシのバーゲンの袋を ぽいぽい取り上げて
大股で歩いて もうドアを開けてしまった。


「ね・・ねえ! あなた! え・・と 茜・・ちゃん・・?」
「は?」

大急ぎでお姉さんが アタシに名刺を握らせる。
「お願い! ね?明日ここに電話して! 私 どうしても彼のイメージが欲しいの。」
ともかく連絡くれない? 私 絶対諦められない!  お姉さんは ものすごく真剣だ。
「・・・・は・・い。」

茜さん! ママさんが心配します。

ジュニは怒り顔で戻ってくると アタシの肩を 乱暴に抱き寄せた。

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「茜さん。 ・・この先も いいと言ってください。」


両手で頬を挟んだままで ジュニが 顔をのぞきこむ。
お夕飯の後。 アタシはジュニの部屋で 建前だけの“お勉強タイム”。
「どう・・しよう・・かな。」
「考えることは ないでしょう?」


困ったような 切ないような  半分だけ笑顔のジュニが 愛しい。
「今夜は 僕・・・ どうしても茜さんが 欲しいです。 いいと言ってください。」


茜さんに会えることだけを考えて 神岡から 帰って来たのですから。
男は その・・いろいろと大変なんです。 と ジュニの唇が まぶたへ落ちる。
アタシのロンTの裾から手を入れて ささやかなふくらみを うっとりつかむ。

「まだ・・・いいって 言ってないよ。 ジュニのH。」
「そんな・・。 僕 不純な気持ちではありません。」
愛しています。 ね? 逃げてはだめです。 茜さん。


ジュニは アタシの手を取って ベッドに座らせる。
潤んだ眼で じっと顔を覗きながら  そうっと 服を脱がせ始める。
「茜さん。 ・・・ばんざい してください。」
アタシが素直に腕を上げると 安心したように にっこり歯を見せて笑った。

「僕を 好きですか?」
「・・・・うん。」
「ずっと 僕のものでいてくれますか?」
「・・・ん。」


はぁ・・って 嬉しげなため息。

ジュニの手が ジーパンのホックを もどかしそうに開けている。
ころん・・と アタシを転がして 裾から引っぱってGパンを脱がせる。
「乱暴だ。」
「すみません。 ・・ああ でも僕。 本当に本当に 茜さんに会いたくて。」

この前 茜さんが来てくれたでしょう? あれからずっと 気になっていました。
茜さんがまた あのぼんやりした顔で 寂しがっているんじゃないかって。

大丈夫。   もう アタシは 悲しまないよ。
ジュニの行く道を もう決して アタシの為に曲げたりしないんだ。 


「神岡に行ってからは すごく元気なんだよ アタシ。」
「・・・・本当ですか?」
探るように切ない眼で アタシを じっと見つめるジュニ。 
精一杯に 笑ってあげたら こらえきれない腕が 抱きしめて
ごめんなさい 茜さん。 1回目は ちょっと我慢してください って言った。
ジュニ 1回目・・・?

いつもみたいな愛撫をせずに ジュニは 急いでアタシを開けて。 
小躍りするように入ってくるから  アタシの身体が 少しだけ きしんだ。

「はぁ・・。 茜さん。 ただいま帰りました♪」
「・・・・。」


・・・・・はっ! やばい!

「言わない気ですか・・。」

き、きゃああああ! 待って待って! 
「お帰りなさい ジュニ。」
うふふ 可愛いなあ。 ただいま茜さん。 寂しかったですか?


ただいまただいまただいまただいまただいま・・・・。ジュニがいきなり走り出す。

ち、ち、ちょっとぉ・・ 助けて助けて! 
「・・あ・・んぁ・・ ね・・ジュニ? アタシ・・ちゃん・・と “お帰り”って言ったのに。」
「はい。 ・・だ・・から “ただいま”です。」
 
すんげー ズル。 それじゃ どっちでも同じじゃん。
ぷうっとふくれたアタシの頬を ジュニが片手でぷしゅっとつぶす。
「うふふ。 愛しています。 ・・・知っていますね?」

心から 愛しています。 久しぶりに会えたのだから 
「僕たち たくさん愛し合いましょう。」
た・・たくさん って~?  ちょっと 待って・・・。

悪びれない 派手な笑顔で宣言をして ジュニのヤローは 
そのまま一気にゴールまで 全力で 駆け抜けて行った。

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