ボニボニ

 

JUNI それからstory 6

 




「もしもし。 あのぉ 高坂と申しますが・・・。」
「はあ?」



はあ?って ・・何よ。

すがりつくように“絶対 明日電話して”って言うから かけてあげたのに。

安井孝美 さん 
と言うのが 竹下通りでジュニをナンパしたお姉さんの 名前みたいだった。
翌日。  Humpty connectionへ電話して 安井さんをお願いしますと言うと
チーフですね と 電話口の人が言った。

お姉さんって チーフなんだ。 エライのかな。
だけど 電話に出てきたお姉さんってば  思いっきり 感じが悪かった。



「あのアタシ!  ただ・・  昨日あなたに電話しろって言われたから かけただけです。」
お忙しいところ失礼しました! じゃあ これで。
「あっ ちょっ・・待って待って待って! ストップ!!  あなた・・・茜ちゃんなの?!」

馴れ馴れしいなあ。
「そうです。」


きゃあああああ! やったやった! ちょっと皆! やった! ゲットよ!
電話の向こうが いきなり大騒ぎになっている。
「・・・あの・・?」
「茜ちゃん?! 茜ちゃん! 今どこにいるの?  今から逢えない? ね?! お願い!」
「は・・あ・・。」

何だかわからないけど 学校帰りに お姉さんと会うことになった。
どこでもいいから都合のいい場所を指定して って言うから
恵比寿の お洒落なカフェにした。 ・・・1回 行ってみたかった店。

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アタシがお店に行ったとき お姉さんは 先に待っていて
口いっぱいに歯を見せて 電話をありがとうって言って 笑った。 


「きっと電話くれないだろうって思っていたから 今日は ずっと凹んでいたの。」

嬉しいわ~!! ここよく来るの? 何でも注文してね。
煙草 いいかしら? 
お姉さんはそう言って すうっと吸った顔を横へ向け  遠慮するように脇へ 煙を吐く。


アタシ 見知らぬ人とこんな風に 気安く会ったりする子じゃないよ。
だけど 何て言うのか。 この人って・・・ものすごーくパワフル一直線 なんだもの。


「あのぉ 安井さん。」
「タカミって呼んで。 安井さんって呼ばれたくないの。  もうすぐ苗字変わるし。」
「はあ・・。」
苗字が変わる とタカミさんは言ったけど
結婚する という感じじゃない気がしたので アタシは 何にも言わなかった。


「ねえ! 昨日の彼。 ジュン君って言うの?」
「・・“ジュニ” です。 イ・ジュニ。」
「イって? コリアンなの? ・・茜ちゃんは?」
「私は ただの 日本人です。」

あっはっは。 ただの日本人は良かったわね。
「確かに 彼は“ただものじゃないコリアン”だもの。」



ここのケーキ ものすごーく 美味しい。 こ・れ・は モウケけたなあ。
何でも注文してって言ったから きっとこれ ご馳走してくれるんだよね?
ゴロゴロ乗ったブルーベリーをつまんでいると タカミさんがなんだか甘く 囁くように言った。


「ねえ 茜ちゃん? ジュニ君って ・・君の 彼氏?」

げ・・。  まあ 聞かれるとは 思っていたけど。


「あのぉ ジュニはアタシの  一応 ・・・婚約者・・です。」
婚約者ぁ? まあまあ その若さで?
「ああでも 解るわ。 彼 あなたにベタ惚れって感じよね。」

いえあの ・・そんな ・・・そうかな?    もう! アタシってば 大馬鹿モノ状態だ。
アタシのうろたえぶりを タカミさんってば ニコニコ見ている。


「・・・あなたの我がままなら 彼は 何でも聞いちゃうって 感じだったじゃない?」
「どうかなぁ。」
ねえ・・。
タカミさんが じり・・と迫る。 茜ちゃんから 説得してくれない?
「たった1日!!  彼を 撮影に連れてきて欲しいの。」


でもぉ。  ジュニはその話 断っていたでしょう?

「そうなんだけど・・。 だって彼みたいなコって そうそういないわ。」
あなただって そう思うでしょう?
「あのコだったら 私の思うイメージが 表現できるって気がするの。」
それからタカミさんは きっちり1時間。 冬物コレクションの話をした。


『アンドロジナス(Androgynous) ― 両性具有 ―』

二律背反が 奇跡のように調和する というイメージなのよ。
花のように笑えて氷のように怒れる 華奢な少年のようで圧倒的な男 のイメージが欲しいの。


・・・そりゃ ジュニだ。

アタシでさえも そう思った。


「でも Humpty connectionって レディス主体のブランドですよね?」
「よく知っているわね。 今冬からは メンズにも力を入れたいのよ。」
ブランドとしては 勝負時だから  展開イメージに妥協を したくないの。

タカミさんは おかしいくらいに気負っていた。

アタシみたいなシロウトの小娘に 製品ラインの概要から 素材の質感までを 熱っぽく語る。
トップスは変わり織りで、ブークレから途中で変化するのって ・・・わかんないよ。
でも その話。 アタシには ・・・なんだか ものすごく面白かった。

「ね! お願い。 私を助けて!!」

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はあ・・ぁ・・・


「どうしようかなあ・・。」
「何故そんなところで つかえているんですか?  茜さんは ちょっと不勉強です。」
「問題は 数学じゃないよ。」

・・では 何ですか? 
ジュニは椅子ごとアタシを回す。 集中できないなら 勉強は 無駄です。
「ソファで お話でもしましょうか♪」

ジュニにもたれて 髪を撫でられる。
時々アタシを抱きしめては こめかみにキスして。 そうしているジュニは とても 満足そうだ。
「茜さん 髪が伸びましたね。 前より 女性らしいです。」
「ジュニ? ・・・モデルにならない?」
「え?」


タカミさんに会った話をしたら ジュニは案の定 眉根を寄せた。
どこの誰とも知らない相手に 無用心に会うなんて 絶対 だめです!


「ジュニは知らないだろうけどさ。 Humpty connectionって すごい有名ブランドなんだよ。」

ポリシーがはっきりしていて アーティスティックなのに 着やすい。
高いから 高校生の身分じゃ買えないけれど アタシの 憧れのブランドなの。


「僕には  興味も 関係も ありません。」

モデルさんなら プロの方々がいるでしょう?
シロウトの僕を わざわざ使う必要はありません と ジュニはてんで素っ気無い。
その話はもうお終いにしましょう なんて  ちぇっ・・。

「茜さん。 あの・・・ あっちで ゆっくりしませんか?」
もじもじ。  アタシの両手を握って ジュニはベッドの方へ頭を傾げる。
ジュニってば “何か”したいんでしょう?  思いっきり下心が 見え見えだ。



「・・・ねえジュニ? イメージモデルの話は もう おわり?」
「?」
「話が終わりなら アタシ 今夜は帰ろうかな。」
「えっ!!」

こんな時 女の子ってズルイ ・・と 自分でも思う。
だけど 持ってるカードは 使わなくっちゃね。
「あ・・ええと・・・! あの・・あの・じゃあ・・。 話の続きを ベッドでしましょう。」
「うん!」

うんジュニ そうしよう。

ぷらぷらと両腕を 甘えてジュニに からめてみせる。
困ったように唇をとがらせたジュニは それでも よいしょっとアタシを抱き上げた。


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「ジュニがね 大きなポスターになるんだって。 欲しいなアタシ ジュニのポスター。
 ジュニがいない時・・。 寂しくないように お部屋に貼れるでしょ。」
「・・・・。」
「欲しいな。」
「・・・僕の大きい写真が欲しいなら イメージセッタで出力します。」

でも~ぉ プロが撮る写真は そういうのとは違うもーん。
「・・・・。」


ジュニってば アタシの話を 聞きたくないらしい。
もしゃもしゃ頭を 胸元へもぐらせて アタシの胸に 吸い付いている。
このまま コトに及ぶ気だな。 そうは行かせないぞ。

アタシは くるんと身体を返して。 うつぶせで ジュニに背中を向けた。
「茜さん。」
「アタシ ジュニのポスターが欲しい。」

「茜さん・・・。」
「欲しいな。」
「・・・。」
アタシの背中に張りついて ほうっと ジュニは大きなため息。

「・・・・わかりました。 1日だけですよ。 それに撮影は 茜さんも一緒です。」
やった!!
「そりゃ もちろんもちろん! アタシが 撮影を見たいんだもん。
 きっとジュニは カッコ良く撮れるよ。 芸能人にスカウトされちゃうかも。」


・・・僕 そういうスカウトは いつもお断りしています。
つまらなそうに ジュニが言った。

「そうなの?」
ってことは 前にもそういう話あったんだ。 そりゃまあ そうだよねえ。ジュニだもん。

「ああいう方たちは  強引で 少し しつこいです。  僕は 苦手です。」
でも 仕方がありません。 ・・・茜さんが そんなに望むのなら。


やれやれと眉根を 開けて ジュニはアタシに身体をすり寄せる。
「ちゃんと 報酬をもらいますよ。」
「報酬? そりゃあ タダじゃないと思うよ。 だけどモデル料って どれくらいなのかな?」
「そんなことじゃ ありません!」

僕は “茜さんの言いつけに従って 茜さんのために” 引き受けるのです。
「それって・・。」
「そういう ことです♪」

にっこり。 
悪魔のような上機嫌で ジュニがアタシを抱きかかえる。
うつぶせのアタシを 表に返して 顎を支えてキスをする。
「茜さん? 今日は“もちろん” この先もいいですね?」
「・・う・・。」



すべすべ です。

ジュニは大きな掌で アタシの身体を撫でてゆく。 
アタシの両手をひとつにまとめて 頭の上へ押し付けて
大好物の ぷよぷよ腕の内側を 唇で ふかふか噛んでいる。

「明日 体育があるんだから  跡をつけちゃ嫌だよ・・。」
わかりました。  ちょっと残念そうなジュニの唇が 今度は お腹へ滑ってゆく。
「・・・茜さんは モードに興味があるのですか?」
「え?」

茜さんが こんな風に何かをしたいと 僕にねだるのは 珍しいです。
「そういえば『ハーパース・バザール』も読んでいましたね。 ファッションが 好きなのですか?」


そんなこと 思いもしなかった。
「アタシは ただ・・ タカミさんが ものすごく真剣に困っていたからさ。」
あのお姉さんの助けに なって あげたくなったんだ。

だけど 考えたら  ・・・なんでアタシは そんな気持ちになったのかな?


首をかしげて考えるアタシに ふんわり ジュニが腕をまわす。

気持ち良さそうに頬ずりしながら 膝で腿をそっと開けて。  脚の間にジュニがやってくる。
硬くなったジュニのそれが つんつん アタシを探しているから
アタシは膝を立てて ここって “入り口”を ジュニに当てた。

「茜さん・・。」
馬鹿みたいに嬉しそうな ジュニの 顔。
「な 何よ。」
「茜さん。 自分から・・僕に。」


かあっ と 顔が赤くなる。  アタシ・・ 「いらっしゃいませ」を しちゃった? 
ジュニは 切なく笑いながら ゆっくり 身体を埋めてくる。
「・・ん・・。」
しっかり中へ挿しいれて  ジュニは じいっと嬉しげに アタシの顔を見つめている。
アタシは 彼のまっすぐな瞳が照れくさくて。  ねえ もう・・ 視線が合わせられないよ。

ジュニの胸へ顔を埋めて その眼を見ないようにする。 ちょっとだけ 腰を揺らして。 
・・・動かないの?  ジュニ。

はぁ・・・。
幸せそうな ジュニのため息。
「茜さん。」
「え?」

「僕たち・・・愛し合って いるんですね?」
僕が茜さんを抱きたいように 茜さんも僕に抱かれたいと  思ってくれているんですね。
アタシの額にこぼれる髪を そっと指ですきながら  安心したように ジュニが笑う。
そりゃ・・・まあ ね。
ゴーカンなんて もう 言わないよ。 アタシは赤くなって モジモジだ。

「茜・・・さん。」
「ん・・。」
ちょっと声がゆるんで  ジュニ? どうしたの? ・・・泣いているの?
「・・・・。」
返事をしないジュニが やわやわと アタシを揺すりだす。


ジュニは アタシに顔を伏せたまま ぎゅうぅっと 腕に 力をいれる。
アタシを ゆさゆさ揺らしながら ジュニは ずっと 顔を上げない。
ねえジュニ そんなに ・・・嬉しかったの?

ゆらゆら揺れる ジュニの身体の下。
背中へそっと腕をまわすと 大きな腕が アタシを深く抱き直す。
「・・愛しています。」


なんだか アタシもジンとしちゃって ジュニ・・って 甘い声を出した。

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