ボニボニ

 

JUNI それからstory 15

 




ジュニが 怖い。


せっかく自分が東京にいるのに あまり2人の時間がないから。




「今日もバイトなんですか?!」

「・・・だって。 あっちだって 忙しいからバイトを雇うんだもん・・。」
では今日は 僕 帰りに迎えに行きます。 
「いいですね?!」   ジュニってば ぷりぷりと機嫌が悪い。



知ってるよ ジュニの不満の理由。

2人の事がバレてから ちょっぴり後ろめたいアタシは 奴の部屋へ行くのを避けていて
両手を広げて待っているジュニは 何ゴトが起きたのかと不思議がっている。
  

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Humptyの仕事は 今日も検品とタグ付け。 


ファッション業界というとおしゃれな感じがするけど
こういう部分の仕事って モノが何でも同じだね。 



「ねぇ 茜?  このバイトって ・・・地味じゃない?」
「ん? まあね。」
「ケンタとかの方が バイト代もいいしさ。 楽しくないかな?」
「そうかもね。 なんなら 真由っぺはケンタに変えてもいいよ。」


仕事自体は単調だけど こうして売れていくのがHumptyの服だと思うと
アタシはあんまり 退屈じゃない。

「チキンも好きだけどね。 ・・真由っぺ。 ほんとアタシに付き合うことないよ。」
「うん・・。」



こんな時 アタシって「付き合いの悪い女」かもなって思う。
女の子ってお互いの間合いを測りながら 仲良く行動するものみたいだけど
実を言うとアタシは そういうのが ・・少し 面倒だ。 



ザワ・・ザワザワ・・・。

オフィスの方が騒がしい。 何かと耳をそば立てるうちに 聞きなれた声が響いてきた。

「お茶を出すから ゆっくりして行きなさいよ。」
すごく嬉しげな タカミさんの声。
「いいえ 結構です。  茜さんと早く帰りたいので 彼女の仕事を手伝います。」

げ・・・・・・! 



「あっ 茜さん。 ここにいました。」
展示室のドアが開いて ひょこりとジュニが 顔を出した。


「・・・もぉ。 来るなら事務所の近くで待っていてと言ったのに。」
この展開に戸惑っていると 横からタカミさんがフォローを入れた。
「ジュニ君は 外で待っていたのよ。 常務が彼を見つけて引っ張り込んだの。」


見ると 常務さんが向こうから からかうように眺めている。
彼は 我がHumpty2006年冬のイメージキャラクターだからね。
道端に ぼんやり立たせておくわけにはいかない。



「僕も タカミのイチ押しハンサムボーイを 一度近くで拝見したかったし。」


あ・・れ?  何だか 常務さんの物言いが 皮肉っぽい。

タカミさんが眉根を寄せて この2人って 変な雰囲気?
ジュニは ほんの一瞬だけ けげんな顔で常務さんを見た。




お迎えが来たのを潮に 今日のバイトは終わりになった。
タカミさんは 熱心にジュニを引き止めたけど
早く帰りたいジュニのヤローは あられもないほど素っ気無く断る。

「じゃあ また遊びに来てちょうだいね。」
「いいんですか?」
「大歓迎だわ。」

ジュニはアタシへ振り向くと 目顔で「だ・そうです」って顔をする。



言われなくても わかっているよ そんなこと。
タカミさんは ジュニのことが すごく気にいっているンだ。
“ちぇっ。”


・・・アタシはきっと ちょっとばかり ジュニを妬んでいるに違いない。

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お夕飯の時。 ジュニはぎりりと片眉を上げて アタシをにらむ。
「・・・・・・。」

今にも何か言いそうな顔。  この雰囲気は けっこうヤバイ。

このままだと 奴がママに トンドモナイ事を言い出しそうで
その迫力にびびったアタシは とうとう 言わざるをえなくなった。

「あ・・の・・ ジュニ?  よければ今夜 勉強を見てくれない?」





首尾よくアタシを部屋へ連れ込んで ジュニは やっと機嫌を直した。
椅子ごとぎゅうぎゅう抱きしめて。 べ、勉強が できないです。


「勉強 したいですか?」
「その為に来ているんでしょ? ねえ なんでそんな所に座るの。」
ジュニはぴたりと床に座って アタシの膝に顎を乗せる。


上目使いの悪戯顔。 じいっとアタシを見つめながら 両手で太腿を撫でている。
「スカートで来れば 膝小僧が可愛いのに・・。」

まあ でもいいです。 来てくれたから。
そう言うと ジュニはアタシの両膝を抱きしめて エイヤッと立ち上がった。

ぎゃああっ!



いきなり視界が180度回って ジュニの肩から逆さに吊られる。
「ちょっと!!」
「茜さんが いじわるなお預けをするからです。」

悪魔のジュニは 鼻歌まじり。 アタシを肩に担ぎ上げて 悠々とベッドへ歩いてゆく。

ベッドに向かって足の方から 一本背負いみたいに振り降ろされて
シーツへ打ちつけられる寸前に  大きな手が ふわっと背中を支えた。


ぱっ・・ ふん・・。

ジュニはそのままかぶさってきて アタシを がっちりフォールする。
「ジュ・・ニ・・。」
「愛し合うのを避けていますね? どうしてですか?」

心配そうなあいつの笑顔。 小指で髪をすきながら 探るみたいにアタシを見る。


「・・僕を・・ 好きですか?」
「ん。」

「・・・では 何故?」
とても静かに何故? と聞く。 
深い声が 少しかすれて。  口惜しいけど ・・・ものすごくセクシーだ。
アタシは思わずゾクッと震えて 心拍数180程度に鼓動が高くなった。

「茜さん?」


「・・・ジュニは アタシ達のコト パパに言うんだもん。」
「え?」


だ・か・ら・!!  ジュニとHしていると パパに思われるなんて  
恥ずかしくて死にそうなの! これでもアタシは18の可憐なムスメなんだよ? 
「恥ずかしいから ・・もう『そーゆーコト』はしない。」
「えっ!!」


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「・・・・僕が 悪かったです。」


パパさんが妊娠の心配をしておられたので 安心していただきたかったのですが。


「・・すみません。 女の子の気持ちを考えなかったですね? あの でも・・。」

ジュニってば おかしいくらいに低姿勢。
もうメイクラブしないと言うのは嘘ですよね? って。 すんごいコビコビ。 

「Hなんかしなくても 愛は 確かめられるよ。」
「それはもちろんそうです! でも あの・・。」

“スキンシップも  ・・・素敵ですよ。” 


この頃ジュニの言動にむくれていたアタシは 少しいじわるな気分になって
背中に貼りついて困っている奴へ 心の中で 舌を出した。




今日は茜さんの機嫌が悪いから 抱きしめるだけにしようかな。

ちょっぴりあきらめモードのジュニは  まるで 大きな鳥みたい。
ふんわり腕を翼みたいに広げて 卵のようにアタシを抱きしめる。
アタシは 背中いっぱいのジュニの体温が気持ち良くて 柔らかな気持ちになってゆく。



とりあえずアタシを抱いているから ジュニは とても機嫌がいい。

「・・あの どうしてタカミさんの所でバイトを始めたのですか?」
お金のことだけじゃないでしょう? やっぱりファッションが好きだからですか?
「うーん。 そうかな。」


まだ わからないんだけど。 ジュニはどんどん 自分の道を歩いて行くから
アタシも 何かを見つけないといけない気がして。
「・・そうしないと 置いてきぼりになる気がしたんだ。」
「ふふ 可愛い事を言いますね。」 



僕が茜さんを置いてきぼりにすることなんか 絶対 ないのに。
「でも茜さんが 活き活きしているのは嬉しいです。」
1人で寂しがっている茜さんを想像するのは
「すごく ・・・悲しいですから。」 


ドクン。


ジュニの声が低くなって アタシの胸がずきんと痛む。
腕の中で振りかえると 切ないような笑顔があって 両手で頬を包まれた。
いつも一緒にいられる訳じゃないから 一緒の時は 茜さんに触れていたいです。

「キスを してもいいですか?」



返事を待たずに きれいな顎がアタシの唇を盗りに来る。
んくんくんくといっぱいに吸われて 離す時に はむ…と柔く噛まれた。
「・・・ん・・。」


ち ちょっ・・と ジュニ。

「逃げては だめです。」

キスだけだからいいでしょうって ジュニは アタシを捕まえる。
想い全部をぶつける唇が もう とんでもなくエロティックで
抱きしめたまま切なそうに身をよじるから  あぁ なんだか・・ 感じちゃう。


・・・ぁ・・・
「こら。」
茜さんは残酷ですよ。 僕 すごく我慢しているんです。 なのにそんなに甘い声は
「誘惑しているのと 同じです。」



もう辛いな! 僕 泣きそうですと ジュニは本気で悶えている。
じれたジュニはアタシの身体を 舐めるように 撫で回す。

手のひら全部を ぴったり肌につけて 全ての凹凸を拾ってゆく。
頬を 首を 鎖骨を撫でて・・。 服の中にも 手を入れる。


「だめ・・。」
「ちょっとだけです。」


ちょっとだけじゃ ないじゃない。
ずるいんだから。 そんな眼こそ 誘惑・・じゃない。 
アタシが次第に涙目になってゆくのを 優しい笑顔が 見守っている。



ジュニの悪魔。
いつの間にか膝を分けて 腿の間に入りこんでいる。

重みをかけないように肘で支えて アタシの上に腹ばいになって。
ねえジュニ?  服は着てるけど これはもう “そういう形”だよ。


僕は何もしていませんと 心外そうにふくれてみせるけど
ジュニってば そこへ押し付けた硬い部分を 揺らすから
アタシは ・・とても困ってしまう。


「・・・ぁ・・・。」
我ながら 感じている声が出てしまって。 アタシの顔が 発火する。 
上気した頬に頬を重ねて 耳元のジュニが 危なく誘った。
「許してくれませんか?」
「・・・・。」



ジュニは きっとここが攻め所と 決めたんだろう。
大きな手で お尻をぎゅっとわしづかみ。
アタシの腰を力いっぱい抱き寄せて 最後の時みたいに動き出す。 

Gパン越しでもわかる硬さは アタシの弱みを 口惜しい位に知っていて。
何枚ある壁の向こうから まっすぐそこを責めにくる。


「・・あ・・ぁ・・あ・・・・・ だめ・・。  あっ!!」


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指を差して握った手に うっとりとキスをして 
ジュニは すごーく幸せそうだ。


大きな胸にへばりついて 絶対アタシは 奴に顔を見せたくない。
し、信じられない。 アタシってば  ・・・・服着たままで行かされた。

「茜さんが嫌なら 僕は いいです。」
「・・・。」
「こうして“抱きしめているだけで” 十分幸せです。」


くっそお! ジュニ! 
「イタタタタ!」

腹立ちまぎれに 胸に噛みつく。 アタシの歯なんか 軽く跳ね返すド筋肉のくせに
ジュニは 陽気に痛がってみせる。


「うふふ・・良かったですか?」
「やめて。」
「もう降参してください。」

ふわりと ジュニの胸が浮く。

奴の身体の下で自己嫌悪に凹むアタシへ ジュニは 口いっぱいに笑いかけて
それ以上 もう何も聞かずに いそいそと服を脱がせ始めた。




「僕・・たちは・・こんなに・・愛し合って・・いるのだから。 無理・・ですよ。」
・・あ・・あ・・あぁっ・・!

声が高くなると ジュニは突くことに専念して
アタシが上り切って落ちるのを見ると また こそこそと説得を始める。

僕もこれからは十分気をつけて 茜さんの清純なイメージを守ります。
だからいいでしょうって。 

・・・あのねえ ジュニ?
アタシの太腿を両腕に抱えて そんなことをしているクセに 何を言ってるんだ。

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ジュニに送られて家に戻ると 玄関先で 小岩さんが話こんでいた。


「あ~あら? お帰りなさい。」
小岩さんってば もう遅いのに わざわざ 回覧板を持ってきたらしい。 
・・・ジュニ目当てだな。

 
「こんばんは コイワさん。 お元気でしたか?」
「ま こんばんは♪。 “ジュニちゃん達”は お勉強だったの~ぉ?」
あのぉ小岩さん ジュニちゃん達って。 私は・・オマケ? 


ジュニは ぴんと背筋を伸ばして 礼儀正しく挨拶をする。
小岩さんが手を出すから にっこり微笑んで 握手もする。



「いつも仲がいいことね。 今日は 何のお勉強をしたのかしら?」

フフフって 小岩さんの笑いが 意味ありげ。
アタシは ちらりとジュニを見る。
(ぐっ・・!!)


「今日ですか?  ええと 2学期のまとめと課題のチェックです。」


ジュニってば ・・・あんた 自在にオーラを出せる身体なんじゃないの?


いつも以上に清潔そうな 涼やかな声と 澄んだ眼差し。
真っ白な歯がのぞく口元に ものすごく品のいい笑みを浮かべる。
「茜さんは 僕の 未来のお嫁さんですから 学業も頑張って欲しいです。」



うっすら きれいな頬を染めて 神の使徒みたいなジュニが笑う。


・・ああ この人 人間じゃないや。 
裸になったら きっと背中に 白くて長ぁい羽根が付いている・・・。
こんな人と結婚したりしたら 相手は処女懐胎するんだろう。


怖いくらいの筋肉に 今まで抱かれていたくせに
アタシまでもがそう思うほど ジュニのヤローは 清らかだ。
小岩さんは なが~~い間見とれていたけれど 慌てたように口を閉じる。
それじゃお邪魔したわねって 何だかアタフタと帰っていった。





“・・・どうです? 僕たちがベッドで何かするなんて 小岩さんは思いません。”

だから また部屋に来てくださいね♪
天使のように微笑むジュニが 耳元で そっとささやいた。

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