ボニボニ

 

JUNI それからstory 番外編 -蜜月-

 




ジュニと一緒に暮す 毎日。 


アタシは 縁日の平べったい水槽に泳ぐ ちょっとトロい金魚みたいだ。
奴の周りをうろついては チャポン とジュニにすくわれる。


チャポン・・・・


ひぁっ!
長い腕がふわりと伸びて あたしを胸に閉じ込めた。
あ・か・ね・さん♪

茜さんは 僕の奥さんです  「・・・そうですよね?」
ぎうううぅ~って抱きしめて すりすりと アタシの頭に頬をすりつける。
ねえ ジュニ? それじゃ 動物がマーキングしているみたいだよ。


「ふふ 僕を好きですか?」
「好き。」

はぁ・・・・ 満足そうなジュニのため息。 
ねぇ アタシ 洗濯物を取り出している途中だから。
「そうですね。 じゃあ キスだけしましょうか。」

・・・んん・・・・
そうじゃなくてと押し返す手を ジュニは自分へ巻きつける。この手はここです。
「愛しています。」

んくんくんくんくんくんくんくんくんくんくんく・・・・

「・・・・ぷ・・ぁ・・」
「さあ。 もう一度です。」

・・・ああ もうだめだ。 膝がカクンと根性をなくす。
アタシが涙目になっちゃうと ジュニは ものすごく嬉しそう。
茜さんってば誘ってはだめですって。 いそいそ アタシを抱き上げて。

・・・お洗濯はやり直し。

-----



“MIURA kamiokaさんがビデオチャットに【招待】しています。【承諾】しますか?”

“ビデオチャットを【承諾】しました。画像読み込みを始めます”



「今晩は 三浦さん。 お元気そうですね。」
そうだ、この前のデータ分析。 メールで送っておきました。

「せっかく連休に誘っていただいたのに 神岡へ行けなくてすみませんでした。」
「そうだよ! 来るかと思って楽しみにしていたのに。忙しいのか?」

・・・忙しいというか。 ええ・・まあ・・。
「何だよハッキリしねえ奴だな。 あっ! お前アレだろ? 
 愛しの茜ちゃんと 甘~い夫婦生活に溺れちゃってるんだろう?!」

若いし 体力あるしで新婚じゃなっ! あっはっはっはー! ぁあ・は・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「湯気 出てるぞ。」
「えっ?!」
「冗談だ。そこまで赤面すると からかう気も失せる。」
「・・すみません。」
「幸せそうだな。」

いいことだよ。 まあ・・嫁さん貰って ウキウキだ。
特にお前の場合は 度外れて想い続けた茜ちゃんが「恋女房」だからな。
可愛がりたくてしょうがないんだろ? 毎晩 迫っているんじゃないか?

「みっ、三浦さんっ! ・・・僕は・・・・そんなこと。」


いいじゃねぇか。 ちゃんと結婚した夫婦なんだから。
「あれ? そういえば茜ちゃんはいないのか?」
「今 お風呂です。」

きゃ~素敵♪  お前 一緒に入ろうなんて言わねえの?
「三浦さんっ!!」



・・・・ねぇ でも三浦さん。 結婚って大変なことですね。

毎日家の中に茜さんがいるんですよ。 信じられない。
「嘘みたいです。」
「おまえなぁ・・結婚したらそれが普通だろ? 嫌なのか?一緒にいるの。」
「逆です! すごく嬉しいですけれど。 ・・彼女が気になって気が休まりません。」

は・・・
「舞い上がっちまってるわけだ。新婚さんだねえ。」

「だけど アレだぞ。 女はロマンチックなのが好きだからな。
 つかまえてヤってばーっかだと しまいに怒り出すぞ。」
「・・・・本当・・ですか・・・?」
正直な奴だな。 お前 それ白状しているようなモンだ。
「・・・・・・」


まあな。 男と女では 新婚生活に望むことに温度差があるんだ。

女の“オハナシ”につきあうこと。ナニ 相手の話をうんうんって聞いてりゃいい。
花だの菓子だの甘い音楽で良いムードにしてヤらせていただく、これが大事。
「憶えておけ。」
「はい。」



・・・素直な男だよな。 

「独り者の俺の忠告を 真面目に聞いて どうするんだ?」
あいつも大人びているけど 考えりゃ まだ二十歳か。
ビデオチャットを終了させて 三浦さんは クックッと笑った。 


・・・知らなかった。

結婚したからと言って 好きに奥さんを抱いては怒られるんだ。
さすがに三浦さんは 人生の先輩です。

僕 茜さんに嫌われる危険を冒すところでした。 危なかったな。
そう言えば 以前に真由さんが 彼氏とそのことで喧嘩していました。
たくさん抱かれると 大事にされていない気がするのですよね。

でも ・・どうしてだろう? 

もしかしたら 女性と言うのは 男性ほど
メイクラブを好まない生きものなのかもしれない・・・・・。

-----


お風呂から出たら ジュニはPCをのぞいていた。
アタシを見てホンの少しだけ微笑んだ奴は また PCへと眼を戻す。
「?」

何か ・・・変だな。
いつもなら やっとお風呂から出てきましたねって まとわりつくのに。
「ジュニ? 勉強・・忙しいの?」



・・・・・・・・・・・

ジュニがゆっくり眼を上げた。 「いいえ。」

何だろう?  不思議な違和感。
こちらを見てはいるけれど 微妙に視線をそらしている。
「何か 用がありますか?」
「え? ううん 聞いてみただけ。」

冷蔵庫へ歩きながら 横目で ジュニをキョロ見する。
アタシの視線が動く分だけ すう・・とジュニも眼をそらす。
気取った風に眉を上げて。 取りつくろった きれいな 横顔。



ぜってえ・・ 変だ。

ジュニは 何かを隠している。
三浦さんとビデオチャットするって言ってたよね。 ・・・神岡のことを 話していた?
あっ!! ひょっとしたら また1人であっちへ行っちゃうなんて話なのかも。



「・・・・ねえぇ ジュニ?」

そっと背中にすり寄って 肩越しに 腕を巻きつけた。
ぴくり・・と ジュニが身体を硬くする。 
アタシを甘く見ちゃいけないよ。 絶対 白状させてやる。

ぷよぷよフェチのジュニのヤローは 
後から抱きつくアタシに弱い。 好物の腕の内側が 奴の頬にくっつくから。
この前だってこうして甘えて 英語の宿題をやってもらったモン。


「・・・・・・・」

困ったように眼を伏せて ジュニは じっとうつむいている。
「ど・・う・・したんですか? 茜さん。」
「何か言いたい事があるでしょ?」
「・・・・・えっ?!」

たっぷり2分固まった後で ジュニは がっくりとして息をはいた。
「・・・茜さん。」

くるりと椅子ごと振りかえると アタシを切なげに じいっと見る。
「なに?」
「もうだめです。」
「・・・・・え? きゃっ!!」

ぐいっと アタシを抱き寄せたジュニが いきなり椅子から立ち上がった。
アタシを抱えてベッドへ倒れて がっしり両頬をつかまえる。
ジュ・・ジュニ そんなに力いっぱいじゃ 顔がアッチョンブリケになっちゃう。



「僕! 本当に 心から! 茜さんを大事にしています。」

僕にとっては愛情表現なんです。 怒らないでくださいって ・・・なんのこと?
「メイクラブです。 茜さんは 嫌いなんですか?」
「え?!」

な、な、なにを言い出したの? メイクラブが どうしたの?
アタシは せわしなくまばたきをする。
「茜さんを欲しくなるから 顔を見ないようにしていたのに ・・・茜さんはいじわるです。」

明日お花とケーキとCDを買って オハナシも聞きますっ!
だから 今夜は抱かせてください!!    「え?」






・・・・・・あ・・あ・・・あ・・あ・・・・あ・・・

ジュニの 筋肉こぶこぶの背中が はちみつ色に光っている。
その背で左右に分けられた 頼りなげなアタシの脚が 
奴の筋肉が動くのに合わせて 少し震えて揺れている。



・・・・僕を 嫌いになりますか? 

まったくこんな“お取り込み中”に おずおずとしたジュニの声が甘い。
「好き・・・・」

本当に? 本当にって お願いジュニ。 声と身体で 念を押さないで。

確かめるように強く突き上げられるから 我慢できなくて行ってしまう。
ジュニは アタシのビクビクが終わるまで 嬉しそうに抱きしめて
アタシの様子を探りながら いそいそとまた動き出す。

愛しています。 茜さんも? 

優しい声が 遠くに聞こえる。 返事の代わりに腕を伸ばすと
笑ったジュニが滑りこんでくる。 
ねえジュニ?  アタシの腕じゃ頑張っても 半分しか この大きな背中を抱けないね。


・・・愛してる。
アタシは トロい金魚みたいだけど すくい取られるのは嫌いじゃない。
だってジュニは身体全部で 愛しているって言うんだもん。



すりすり・・と ジュニがアタシに頬ずりをする。 
ジュニの 幸せなマーキング。

ちょっぴり ひげの剃り残しがあるよ。 アタシは小さな文句を言った。

 ←読んだらクリックしてください。
このページのトップへ