ボニボニ

 

JUNI番外編 ジュニと茜の韓国訪問:前編

 





「茜さん こんどの週末 ソウルに来ませんか?」


ジュニからの そんな電話で アタシは イキナリ韓国へ行くことになった。



韓国って 2月がお正月なんだって。
日本にいるなら 顔を見せろと お祖母様に言われたとかで。
ジュニはソウルへお年賀に行った。 だけど・・。
あいつめ どうやらアタシのことを 向こうで盛大にしゃべったらしい。


「ハルモニが “生きているうちに茜さんに会いたい” と言うのです。」

遊びに来ませんかって。  ・・誰よ ハルモニさんって?
「お祖母さんのことです。ソウルなんて すぐ近くです。」


え~・・ 何か 嫌だな。 
「我が家にふさわしくないとか 言われそうじゃん 怖いよ。」
「ハルモニは そんなタイプじゃないです。
 BFがいるからソウルに遊びに来た というくらいの気持ちで ・・どうですか?」

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「え? 韓国にいらっしゃいって? ・・・う~ん そうねえ。」

ママはチャングムのロケ地ツアーに行きたかったのよ。安い皮のコートも欲しいし・・。
「え? ママも 行くの?」
だって茜だけと言うのは 心配じゃない?


「親まで行くと大げさな話になるから 茜だけの方がいいんじゃないか?」
わきから ポツリ・・とパパが言う。
「今すぐ『婚約式』なんて話になっても 大変だろう? 茜は まだ高校生なんだし。」


ジュニがいるなら 向こうでの案内は 大丈夫だろう?
俺が 出張でよく使うホテルを取ってやるから そこに泊まればいい。
まあ気軽に行ってみろ。  パパが言って 話は トントンまとまった。
「う~ん そうねぇ・・。 じゃ チャングム・ツアーは また今度。」

・・・ママ、あのさ。 問題はチャングム・ツアーじゃないから。

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空港に降り立ったら ジュニが いなかった。

ぎゃあぁ! なんで?

40分待っても 一人ぼっち。 
携帯に連絡しても・・留守電じゃん。 しかたなく伝言をして ホテルへ向かった。


パパが取ってくれた「ソウルホテル」は 漢江を見下ろす高台にあって
入り口に 偉そうなコートを着た ガタイのいいおじさんがいる。
タクシーから降りたアタシは おじさんの挨拶に ちょっとびびった。

だってアタシ 1人でホテルに入ったこと・・・ないんだもん。



「あの~ぉ  イルボン エヨ イョヤッケソヨ・・」

“日本で予約しました”って これで いいんだよね・・。
ジュニがいるからいいやと思ったけど やっぱ 持ってきて良かったよ
『やさしい韓国語:カタコト会話帳』。

待つうち インカムを片手に持って
背の高い きれいな女性が 大股で歩いてきた。
「ようこそソウルホテルへ。 高坂部長のお嬢様ですね? お伺いしております。」


う・・わ かっちょいい女の人だな。 タイトなミニのスーツがきれいに決まってる。
何かあったら ソ支配人に頼りなさいって
パパが言ってたのは この人だ。

美人ジャン・・。  ママ ちょっとパパってば怪しいかもよ。


パパが 念入りに頼んでおいてくれたらしく
支配人さんは ベルボーイと一緒に 部屋まで案内してくれた。

「あの・・支配人・・さん?」 
恐る恐る聞いてみると 大きな眼をぱっちり開いて 支配人さんが振り向いた。


「ソ・ジニョンと言います。 ジニョンと呼んでね。茜ちゃん・・でいいかな?」
「あ、うん。 茜で いいです。」
「高坂部長が いつも自慢していらっしゃいますよ。 本当に 可愛らしいお譲さん。」

パパがアタシを 自慢? 
茜はオカメでペチャパイでって いつもけなすくせに。
「気を悪くしないでね。 高坂さんは 私が茜ちゃんに似ているっておっしゃるの。」
しえ~! パパ それは親バカだよ。
「ジニョンさんみたいな美人に・・ 失礼なことを言うパパだよね。」

あら嬉しい。いたずらそうに ジニョンさんが笑う。 
美人と言っていただいては 精一杯サービスさせてもらわなくちゃ。
「ほかに何か ご用がおありですか? お客様。」 


えーと・・ イ・ジュニという人が 多分 来ると思います。

「本当は空港に来てもらう約束だったんだけど 会えなかったんです。」
「では お見えになったらご案内しましょう。 そうだ!
 館内放送でお呼びしますから お部屋でずっと待っていなくても大丈夫ですよ。」
プールやプレイルームもありますから 
「どうぞ ソウルホテルを 楽しんで下さいね。」

にっこり。 
はぁ  何か 気持ちのいい人だね・・

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ベッドの上に 大の字に寝て 30分。
裏返って うつぶせで寝て 15分。


いくら待っても ジュニが来ない。

茜さんが いつまでも 待っていると思うなよ。
「くっそー。 知らない国に 1人で放り出してくれちゃって・・。」
口惜しいから 部屋で待つのはやめにした。

“プールやプレイルームもあるんだから” アタシだって 遊んじゃうよ。


ジャボーン・・・ 
って マッチョなオジサンが 飛び込んでいる。

ガラス越しに 室内プールをのぞいていたら
ヘルスセンターのお姉さんが カウンターから声をかけてきた。
「コウサカさま? こちらでスイムウェア・レンタルもいたしますよ。」
え? 高坂って言った?
カウンターのお姉さんは にこにこ笑っている。 すごいな・・このホテル。

別に 泳ぐ気はなかったんだけど
ホテルで泳ぐのって なんかカッコイイかも。
旅先でも身体を鍛えますの オホホ なんちゃって。 ・・・ウチでも鍛えてないけど。


お正月で増えたウェイトを 絞ろう。
あんまり泳ぎは得意じゃないけど ぴよぴよクロールで泳ぎだす。
もう少しで壁に着くというあたりで 息が切れてしまって足をついた。


がぼっ・・・!!

“ぞごがだい!(底が無い!)”

うそ! そんなに深いプールじゃなかったはずなのに。 
がぼがぼがぼ・・・ ぢ・・ぢょっど・・だずげで・・!!
パニックになって溺れてたら いきなり 大きな手に抱き上げられた。

「ぶは!」

盛大に水を吐き出すと 助けてくれたおじさんの顔に 見事に命中した。

「・・・。」
「ず・・ずびばぜん・・。」
呆れて見るおじさんは 掌で顔をひとぬぐい  は・・と笑って 私を抱く。
「つかまって。」と おじさんが英語で言った。

必死でおじさんに抱きついて プールサイドまで 連れて行ってもらう。
アタシ 心臓がばくばくしちゃって プールサイドに上がったら腰が抜けた。

「大丈夫かな?」
おじさんは バスタオルをかけてくれる。 いい人だ。
「サ・サ・サンキュー・・」


おじさんは じいっと アタシを見つめている。
何で そんなに 見るのかな。 ・・ちょっと おじさん “せくしぃ”かも・・
水をかけてごめんなさいと つたない英語で伝えると おじさんは 薄く笑った。
「僕は このプールでおぼれる女性の 救出係みたいだな。」
・・・プールにも ライフガードがいるのか。

びしょびしょの髪を拭いていたら おじさんが また じっと見つめた。
「だけど 君・・本当に。」
「え?」


あ・・の・・ どうして そんな眼で。

すうっと おじさんの手が伸びて アタシのほつれ髪をかきあげる。
大きな手。 ・・・え?
おじさんの手が アタシの頬をつかまえて ・・・何 するの?
「何をするんですか!!」
「え?」「?」

ガタガタガターン! 
プールサイドチェアを蹴飛ばしながら ジュニが すっ飛んできた。
いきなりおじさんの腕をつかんで 2人は 派手な戦闘態勢になる。

ジュニ!
「ジュニ! 違う!助けてもらったの!!」
「え?」「!」

ドボーン・・・・・・

やっぱ あのおじさん。 このプールの ライフガードなんだ。
ご大層にマウンテンパーカまで着こんで ジュニは プールに落ちちゃって
一緒に落ちたおじさんは やれやれとばかり 手を貸していた。

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「ハ・・ハクション!」

大丈夫? ジュニ?
「大丈夫です。・・・どうも ごめんなさい。」


驚いたことにおじさんは ここのホテルに「住んでいる」んだって。
それよりもっと びっくりしたこと。
おじさんってば ジニョンさんの旦那さんだった。

「もぉ! ドンヒョクssiが ジュニさんを突き落とすから・・。」
ソ支配人さんは すまなそうに ジュニに温かい飲み物を出す。
ずぶ濡れジュニは 服一式をクリーニングに出して おじさんの服を借りていた。

「突き落とす? 心外だな。 彼が先に殴りかかってきたんだ。」
僕にもコーヒーをもらえないかな。 おじさんは 少しむくれている。
「アジョシが 茜さんに 手を出そうとするからです!」
ジュニは めらめら青い焔を立てて ・・・謝るものかって 怒っている。

「そ・・それは。」
おじさんが 少し赤くなったので ジニョンさんが不審気に睨みつけた。


「なあに? ドンヒョクssi。 茜ちゃんに何かしたの?」
「・・・・。」
聞こえません と ジニョンさんは  両手を腰に仁王立ちする。
おじさんってば カッコいいけど ジニョンさんには頭があがんないね。

「君に・・ 似てるいるんだ。この子。」
「え?」
見るほどに似ているから つい 頬をなでてしまった・・。
「アジョシ! 茜さんは 僕の婚約者なんですからね!」

「おじさんおじさんと言わないでくれ。 シン・ドンヒョクだ。」

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「茜さん! こっちへ いらっしゃい。」

アタシの部屋に入るなり ジュニはぷりぷり頬を撫でる。
ドンヒョクssiに 水着姿で抱かれるなんて まったく冗談じゃないです。
大きい 優しいジュニの手。 でも・・
ドンヒョクさんの手も 大きかったな。 大人の匂いと あの切なげな眼ざし・・。


むっ・・。
「茜さん。 何を思い出しているんですか? 顔が赤いです。」
「そ・・そんなことないよ。」
「いいえ! 良からぬことを 考えていますね。」

す・・するどい ジュニ。 でも やばい。

アタシはそろそろ後に下がって クルリ と廻れ右をする。
ジュニは アタシを 羽交い絞めで捕まえて
えいやっ!ボンッ とベッドに投げ捨てた。
「やめろぉおおお!」
「だめです!  茜さんは 僕のものです!」

アタシが 体勢を立て直す前に ジュニが上から押さえつける。
「はふ・・・。」
ジュニの胸に抱かれたら ほんわり 煙草の匂いがした。
「わぁ・・。 ジュニ 煙草の匂いがする。」
「!」
くんくん。 ・・・・何か 大人の匂いだね。

ジュニは むっと身体を起こして ぽんぽん 服を脱ぎだした。
「ジュニ・・・・。」
裸でベッドに戻ったジュニは 怒ったように  もう煙草の匂いはしません と言った。


「茜さん。 僕以外の男に 抱きついたりしてはだめです!」

だってジュニ あそこ2メートル50センチもあったんだよ。
抱きつかなかったらアタシ ドザエモンじゃん・・
ああ だめだ。 ジュニってば 眼の色が変わっちゃってる。

「アタシ ジュニしか好きじゃないよ。」
「本当・・ですか?」
ホントホント ドンヒョクさんはおじさんだと言うと ジュニが やっと笑う。
それでは愛し合いましょうねって ・・やっぱ それはやるのか。
「優しく だよ?」

もちろんですと言いながら ジュニは アタシの腿をわける。
「うふふ。 茜さん 久しぶりです。」
久しぶり・・ってほどじゃないよ。 ジュニが 頬をすりすり撫でる。
「空港に行ったら茜さんがいないものだから  僕 気絶しそうでした。」
「あ・・。」

思い出した! ジュニの奴! 空港に迎えに来なかったくせに。
アタシ 怒っている最中だったじゃない!
「やめて ジュニ。」

「何ですか?」
酷いのはジュニでしょ! アタシを 1人でソウルに放り出したくせに。 
「アタシ 怒っているんだからね。」
本当にごめんなさい。 途中で 車が故障したのです。
「茜さんに心細い思いをさせました。 許してください。」
お詫びに 今日はいっぱい可愛がりますって・・ いやジュニ それは いいから。


「ハルモニさんに 会いに・・行くんじゃ・・ないの?」
じたばた逃げつつ聞いてみる。 ジュニは脚でアタシを押さえて
かまわずアタシを剥きながら  ああ♪それはねって 鼻歌まじり。
「ハルモニには 明日茜さんが来るって 言いました。」

「・・・1日 サバ読んだね。」

茜さんを抱いて朝まで眠るチャンスは こうでもしないと できません。
予約も昨日ダブルに変更したんですよ。 パパさんには・・ しーっ 内緒です。
「悪魔だ。」
「そんな言い方は 間違いです。 愛に忠実なだけです。」


さあ 茜さん もう逃げないで。
ジュニはアタシを押さえこんで にこにこと入ってくる。
大事そうに あちこち撫でるジュニの手が ・・・いきなり 固まった。
「指の跡が・・・ついています。」
「え?」

深みへ沈んだアタシを 慌ててつかんだドンヒョクさんの 指の跡。
二の腕の内側 柔らかなところに 小さな赤い印があった。
「ジュ・・ニ・・。」

ジュニの手が いきなりお尻をわしづかみにして 怒った顔で引き寄せる。
あの ジュニ 優しくするって ・・・言ったよね?
「僕・・の・・ 茜さんに・・。」
「あ・・・ジュ・・・待って・・。」
シーツへ逃げるアタシの手が ジュニに捕まって背にまわされる。
ちゃんと 僕につかまってください! ジュニの肩に 青い焔がゆらめいている。

ねえジュニ ・・・ソウル観光は?
「明日でいいです!」

アタシは くらくら揺れながら それでも・・・次第に溶けていった。

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