ボニボニ

 

JUNI番外編3 Valentine's story

 





チョコレート屋さんの陰謀とわかっていても  ヴァレンタインデーが すたれないのは

“ 恋と リボンと チョコレート”

女の子の好物が 3つ揃っちゃうからだろうな。



アタシ ホントは  ヴァレンタインデーに チョコなんか贈りたくない。
何だかその 思いっきりなロマンチックさが  恥ずかしい。
去年は圭太に「ハート型塩せんべい」を贈って 色気がないって泣かれたもんだ。


だけど今年は  ・・・いかんせん「相手」が悪い。

-----



「茜さん♪ 僕 ヴァレンタインデーは  手作りチョコがいいです。」


ねえ ジュニ? まだ あげるって言ってないよ。

「ママさんみたいには 作れないでしょうから 
 仕方がありません。 “溶かすだけチョコ” でいいです。
 ハーシーは脂っぽいから嫌です。 カカオ70のビターなのにしてくださいね。」


・・・こいつってば 全然 聞いていないし。
「だから まだ あげると言・・。」
“ん・・!”

いきなり 視界がジュニになる。
両手で顎をつかまれて おなかぺこぺこの ジュニのキス。
巻き取るみたいにアタシの舌を 連れて行って 
んくんく と 吸って  返してくれない。

アタシってば 眼が全開になって ああもう このまま・・・白目になりそう。
かくん と 膝が崩れ落ちるのを 
すっかり慣れた仕草で ジュニが 受け止めた。

「は・・・ぁ・・。」
「僕 手作りチョコが いいです♪」

-----


玄関を出て ジュニのアパートの窓を見ると 灯りが 煌々とついている。


「おし・・・ OK。」
アタシは 絶対 奴に見つかりたくない買い物を抱えて
ゴソゴソ キッチンに入り込む。

お湯を沸かして 湯せんの用意。
カシューナッツに カボチャシードに アーモンド・・
オレンジピールも 可愛いかな。



「随分たくさん作るんですね。 うふふ。 僕のことそんなに好きですか?」

ぎゃぁぁあああ!

な・・なんで ジュニがここにいるのよ! 部屋の電気が ついていたじゃん!
「あ? ついていましたか? 消すのを忘れていました。」

・・・・もう 最悪。
満面笑顔で ニコニコのジュニは 山積みチョコブロックの 品質表示を読んでいる。
「美味しそうですね。でも こんなに食べると にきびが出来そうです。」

「あのねぇ・・ジュニ。 これは“友チョコ”だから。」

友チョコって何ですか?  お友達同志で送りあう “友情チョコ”のことだよ。
「今は 義理より友情の時代なのだ。 ジュニ。」 
アタシは 砕いたチョコブロックを ボウルに入れて溶かしてゆく。

トローリ・・・
柔らかく溶けたチョコレートが ゴムべらに撫でられて ゆるい渦を描く。
溶け残った固まりを探してかき混ぜるボウルの中に
すっと 長い指が 差しこまれた。

「あ・・。」


チョココーティングされた指を ジュニは嬉しげに差し出してくる。
「はい♪ 茜さん。 フィンガーチョコです。」
「な・・・。」
何でジュニは 臆面もなく そういうことをするかな。 
アタシは顔が赤くなって いらないよって うつむく。

面白そうに眉を上げて ジュニが そのまま手を伸ばす。
鼻にちょん 頬にちょん おでこにちょん  ・・・・唇に ちょん。
「やだ・・からね。」

ジュニは ちらりと横目で リビングを見る。
あ~! もう! こんな時に限ってママってば 脇目もふらずにチャングム鑑賞だ。

「ふふん・・。」
逃げるのならばご自由に。  僕 捕まえるのは得意です。
ジュニは 悪魔みたいに素敵に笑って アタシにつけたチョコを全部なめ取っていった。



クッキングシートに チョコを垂らして クラッシュナッツを乗せる。
型を使わないで いろいろな形なのが かわいい感じだよね。


「ふふ。 茜さん♪」
ジュニは チェアを後ろ向きにして座り 背もたれを抱いて見つめている。

「見ないでよ・・・。」
「嫌です。 僕のためにチョコを作ってくれる茜さんを 見たかったんです。」
“僕を 好きですか?” 
知らんぷりのアタシの耳に ジュニが 柔らかな声を注ぐ。

―す・・好きじゃなきゃ 誰がこんな恥ずかしいコトするもんかい!
だけど アタシはうつむくだけで じれたジュニに 耳を噛まれた。

-----


お皿に並ぶ ナッツ・チョコレート。

「僕のは これとこれとこれと・・。」
「いいのばっかり 選ばないでよ。」
当然です。  僕は 「本命」ですから・・と  ジュニは すごく偉そうだ。

「真由たちにあげるのが 失敗ばっかりになるじゃん。」


女の子同志は チェックが厳しいんだよ。
アタシが ぷーっと膨れたら ジュニがいたずらな顔になった。
「じゃあ お友達の分は 僕が手伝ってあげましょう。」

スプーンを貸してください。
ジュニってば 鼻歌まじりでチョコ作り。 こいつ・・・すごい器用。
適当に ちょちょっと垂らしてナッツをパラパラ。 だけど ピタリとサイズが揃う。
「う・・わ・・。」

ジュニってば 最後の1つはナッツを載せないで
固まりかけた頃合いを見計らって チョコにキスをスタンプした。

「はい。 これは 茜さんの分です。」

-----


今日 持ち物検査をされたら 全員アウトだな。

だけどシスターだって ヴァレンタインデーくらいは お慈悲をくれる。
皆のサブバッグから 甘い香りが漂ってくるけど 検査はしない。
どうもありがとう 聖ヴァレンチヌス。 貴方に神の祝福を。


「え! このチョコレート ジュニが作ったの?!」

ちっきしょう。
ジュニが作ったチョコだって 知れた途端に 皆の態度が激変した。
「茜♪ うふん コレ アタシの気持ち。」
だとぉ・・・。 アンタこの前  女にやるチョコなんぞねえ! って 言ったくせに。


「あ~あ・・ シスターに上げる分まで無くなっちゃったよ。」
「売れたねえ 茜のチョコ。 来年は 本当に売れば?」

あのねぇ と言いながら 真由にもらったチョコを食べる。

「う・・・・。」
これ 何だ?   ぴくぴく引きつりつつ聞くと 幸せそうに真由が微笑んだ。
「中味は 私の好きな ア・レ。」
ハムカツだ・・・。 この 大馬鹿者。


「ねえ? ところで 彼と一緒にチョコを作ってさ それをあげるのってアリ?」

そこなんだよ 真由っぺ・・。
しょうがないじゃん ジュニがまとわりついて 1人で作れなかったんだから。

いいこと考えたよ。 真由はハムカツチョコを食べながら にっと笑って言う。
あのさあのさ! チョコペン買って おっぱいにLOVEって書いたら?
「きっと すっげー喜ばれるよ。」
「・・・・・。」


真由のヤローとは 3日絶交。
なにが おっぱいにLOVEだよ。 

-----


ヴァレンタイン・デーの 夜。
ジュニの部屋へ 勉強しに行く。

玄関を出たら もうそこに マフラーをしてジュニが待っている。
「そんなに夜道が心配なら うちで 勉強を すればいいのに・・・。」
「だめですよ。 さすがにママさんのいる所では 出来ません。」
出来ませんって ・・・何が?


ジュニの部屋へ 入った途端に捕まえられて キスが来た。
チョコごとふわりと抱き上げられて インディゴブルーのシーツに埋められる。

「茜さん? 今日はヴァレンタイン・デーだから ・・この先も いいですよね?」
ニコニコの ジュニ。
早く早くと包みを受け取り 横に寝そべって ぽりぽりと食べている。

「うふふ・・ 茜さんの“愛の味”がします。」


ねえ ジュニ。  他の人からは チョコもらわなかったの?  
何気なく聞いた一言に ジュニってば 何だか困った顔で
ためらいがちに ベッドの脇の 大きなペーパーバッグを引き寄せる。
「茜さん・・。 怒らないでくれますか?」


ゴディバ、アンリ・シャルパンティエ、フォション、ゴンチャロフ、リンツ・・

「・・・有名ドコロの 揃いぶみだね。」
「受け取らない方が 良かったですよね? 
 婚約者がいますとお断りしたのですが 気持ちだけ・・と押し付けられて。」

「別に いいよ。 せっかくくれたのを 持ち帰れというのも悪いじゃない。」
・・・・アタシ ちょっと無理しているな。
そんなに余裕があるわけじゃない。 やっぱり 少し ムッとしてしまう。


とびっきりのハンサムで 優しくて 何でも出来るジュニ。
もてないでくれと 望む方が 非現実的だ。
わかっているよ。  でもさ・・


「茜さん?」
僕は 茜さんだけを 愛していますよ。 知って・・いますね?
背中から そっと抱きしめられて 首筋に ジュニの唇がはう。
「知らない・・・よ。」

可愛くないアタシは いつか ジュニに呆れられるかな。
だけど “私もあなたを愛しているわ” ・・・なんて 言える柄じゃない。

「意地っぱりの 茜さん。」
笑いの混じったジュニの声。
後から セーターの中へ手がもぐりこむ。
「せーの・・・ えぃ!」

ぎゃあ!

セーターを 裏返し。 
一気に首から抜き取られる。 背中でホックが ポチンと外されて。
「ジュニ!」
あっという間に ジュニの方へ向けられる。
持ち上げられたブラを押さえる間もなく ぱくん とジュニが喰い付いた。
「いいって 言ってないよ・・」


胸に吸い付いたままのジュニが その言葉を聞くと 眼だけで笑う。
 
ジュニ 眼が カマボコだよ。

赤んぼみたいにすまして 眼をつぶって ちゅくちゅく吸う。
口惜しいけれど アタシの胸の先っぽが
ジュニに応えて大きくなって ジュニってば 嬉しげに遊んでいる。


「や・・。」
ジュニは アタシにのしかかりながら やっと 胸から口を離す。
「“やだ”は 聞きません。 今日は ヴァレンタインデーです。
 恋人同志なのですから 僕たち たくさん愛し合いましょう。」
「・・・ゴーカンする 気だな。」


“ちゅぷ・・・”
「!」

得意そうに ジュニが見つめる。 アタシに聞かせるように音を立てて
ジュニの長い指が 出入りする。
「・・・あ・・。」 
アタシ・・・  身体に裏切られちゃってるよ。 

「茜さんは ・・・嫌じゃないみたいです。」


ジュニの脚が 腿を分ける。
じいっと アタシを見つめながら ジュニはアタシに硬くなったものを当てる。
「僕を 好きですか?」
愛しげに見つめて 髪をすく。
「僕を ・・・・好きですか?」

ちょっとだけ頭を上げて ジュニの唇にキスをする。
唇を離すと 追いかけるように ジュニの方からキスしに来て
唇と一緒にアタシの中へ ジュニが 少しだけやってくる。
「・・・ん・・。」

ジュニは 半分で身体を止めて ニコニコ アタシをじらしている。
この悪魔・・。 でもまあ 今日はヴァレンタインだもん。
しょうがない。 茜さんも 大サービスだ。
「・・・もっと  欲しい。」


コトコトコトコト・・・
ベッドサイドの チョコレートの箱が ジュニの動きに踊っている。
もっと欲しい って言い方は まずかった。
有頂天のジュニはアタシの言葉に喜んで ・・あ・・あのね ジュニ。
そん・・なにくれると・・ 気を・・・・失い・・そうです。


にっこりと ジュニが笑う。 気を失ってもいいですよ 茜さん。
「もっと・・・ 感じ・・させたいです。」

コトコトコトコト・・ 
インディゴ・ブルーのパッケージが アタシと一緒に揺れている。
本当に・・ 気を失っちゃうよ。


ジュニに 必死でしがみつきながら アタシは波に飲まれていった。

 ←読んだらクリックしてください。


このページのトップへ