Lusieta

 

続・この場所から 1月の風 2007 Ⅰ-2

 

konobasyo2_title.jpg





ーーーーside テヤン




あなたは絶対メールを待ってたよね。返信、早すぎるよ。ふふ・・・

あなたの好きなコーヒーを買って待っていようかと思ったけど、

冷めるといけないからやめておこう。



ゆうべはちゃんと夕食を食べたんだろうか。

結婚してから、僕は少し太ったのに、あなたは少し痩せた。

ダイエットだって言って、またジャンクフードですませたのかも。




窓一面の冬の青空を見ながら、神経は背中に集中させていた。

30時間ぶりだよ、アヤノ。

ゆうべはよく眠れた?


でも、今日も撮影地にとんぼ返りであさってまで続く。

僕たち、一瞬の逢瀬だね。



誰かが近づいてくる気配。

そっと目隠しされる。


   ふふ・・・珍しいね、こんなことして。



「ずいぶん早かったね。」


そう言うと同時に、アヤノじゃない香りが僕を包んだ。


「ん? 私たち約束してた?」


「ううん、してない。マミ?」


「うん。」


「今日はお疲れさま。」


「お疲れさま。
ねぇ、それより誰を待ってたの?」



   マミ、目隠ししたままだ。



「僕の奥さん。」


「えっ!」


「彼女、すごいやきもち妬きだから、そろそろ手を離してくれる?」


「テヤン、結婚したの?」


「うん。」


「信じられない・・・」


「そう? 楽しいよ、結婚。

あれ・・・来ないな・・・」


「私、今日テヤンに会えるの、すごく楽しみにしてきたんだよ!」


「どうしたのかな・・・」


「もう・・・私の話聞いてないし。」



「え? 何? あ・・・ごめん、マミ。ちょっと行ってくるよ。」


「もしかして目撃しちゃったとか? わたしのせい?」


「かもね。あ・・・サトウさん。」


「おい、テヤン! 探したんだぞ! さっきの企画の話だけど・・・・いや、それよりアヤノとなにかあったか。」


「すみません、サトウさん。ちょっとアヤノのころに行かなきゃいけなくなって・・」


「今そこにいたぞ。血相変えてぶりぶりに怒って

“テヤンなんか知らない!”とか言ってたぞ。」


「サトちゃ~ん、テヤンの奥さんってどんな人?

私、今テヤンにフラれちゃったよ~。

あ・・・んでさ、私とテヤンのラブシーン目撃したの。その奥さん。」


「テヤン、マジか・・・」


「マジです。」


「バカヤローてめえ!」


「っていうことなので、追いかけます。


サトウさん、マミをよろしく!」


「はぁ~~」


「サトちゃん、フラれた私をなぐさめてぇ~~!」


「ほいほい。テヤン、早く行け」


「がんばってねぇ~テヤ~ン!」


「ハハ・・・、ありがとう。」


投げキッスをするマミ。

サトウさんに頭を小突かれてる。

ふふ・・・



あっけらかんとしていて、

失恋すると「慰めて!!」っていきなり部屋に押しかけて、

復活するとパタッと来なくなった。

落ち込んでるはずなのに、いつも陽気で。

楽しかったよ。

また失恋したのかな?

もう慰めてあげられなくてごめんね。

僕は今、大事な大事な奥さんのことで頭がいっぱいなんだ。







それにしても・・・・

どこ行ったのかな?



見たんだよね、アヤノ。 さっきの場面。

逃げちゃわないで、ちゃんと怒らなきゃダメだよ。



なんて・・・・



1年前、僕も逃げたっけ。


そうだよ、足が勝手に動いちゃうんだ。





それで・・・・

  どこに動いていったの?

      そのキュートな足は・・・










ーーーーside アヤノ






コートのポケットの携帯が、ぶるぶる震えてる。

ケイタイ君、キミも寒いのか?




「もしもし、アヤノ? 今どこ?」


「・・・・・」


「アヤノ? 聞こえてるんでしょ? 今どこなのか教えて。」


「・・・・・」


「教えなさい!」


「・・・そと・・・」


「なんでそんなところに・・・

イヤ・・・見たんでしょ?

見たんだよね。マミのこと。」


「・・・・ふ~ん、マミっていうんだ。」


「あのね、古い知り合いなんだ。でも話してる時間がない。

ちょっとでも会いたかったけど、もう行かなきゃいけない。

携帯の充電も切れそうなんだ。

今夜、うちの電話にかけるから。

ねぇ、アヤノ、また明後日まで会えないんだからさ、

夜はちゃんと話してね。」







  そうだった。


   もう明後日まで会えないのに・・・・


   バカだね、私・・・





     テヤンが逃げた話はこちらから飛べます


 ←読んだらクリックしてください。
このページのトップへ