Lusieta

 

この場所から ~ふたたびの陽射し テヤンとアヤノ番外編 ~ヌード~ 前編~

 

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二人の休日が重なった。うれしい。

しかしアヤノはPC持参だ。それに、いつ編集部に呼び出されるかわからない。
原稿をひとつ書き終わるまで、邪魔をしてはいけないので・・・
いや、いっしょにいると絶対に邪魔をしてしまうので、
僕はリビングをあなたに渡して、仕事部屋で写真の整理をしていた

もう終わったのかな? キッチンで物音がしてる。
やがていつもの香りが漂ってくる。

ほんとに終わった?
あなたさえ終われば、僕はいつでも作業を中断するよ。

「テヤン、コーヒー飲む?」

「うん、ありがと。」


持ってきたコーヒーをデスクの端に置き、
僕の肩にあごを乗せるようにして後ろから覗き込んでる・・・

「テヤンは整理がすきだねぇ~」

「ちょっと分類変えてみようと思って。」

「私だったら絶対しないね。
 一旦整理したと思ったら、もう一生したくないな。

 私ももっと整理整頓が好きだったら、編集者として大きくなってたのかな。
 ってなわけないか。」



いすをクルッと回転させて、一瞬のうちにあなたをひざに抱き取る。
あなたの関心が写真たちに行ってしまう前に、そっと頬を包む。

アヤノ、こっちを向いて・・・・
ディープじゃない(僕にとっては)キスをひとつ。



そうそう、整理整頓の話・・・・
アヤノはかなり大雑把。
そして、内緒だけど僕はあなたのその大雑把さがかなり好き。
それも変なこだわりで、アンバランスな几帳面。
そんなところを愛してる。


たとえば・・・・

本棚の本はあなたにしかわからない脈絡でならび、
一見するとめちゃくちゃだ。

整理するつもりの"とりあえずボックス"には書類が溢れてる。
本棚から溢れた本も、"とりあえず"で積み上げられたままだ。

それでも『あれはどこだっけ?』って聞くと、
なぜかすぐに出てくる不思議・・・

いきなりまとめて片付け始めて、すぐ息切れして休憩する。

ぐちゃぐちゃだったときにはちゃんとわかってたそれぞれの在り場所が
片付けた途端にわからなくなる。
「ほらーー、片付けたりするからわかんなくなっちゃった。」
これがあなたの決まり文句だ。笑える。


なのに・・・仕事のファイルだけは完璧で、
緻密なメモと資料がわかりやすくレイアウトされて、
雑誌のページのような絵面になって、誰が見ても使えるように作ってしまう。

とても同じ人とは思えない。



そして・・・・
あなたはピカピカが好き。
デスク、ダイニングテーブル、キッチンのシンク、トイレも洗面台もピカピカ。
フローリングも、人が映りそうに輝いてる。
ピーッと鳴るケトルも。

窓なんか、磨かれて透明になりすぎて、まるでガラスがないみたい。
『一日の終わりに、5分間どこかを磨く作業をするとホッとするんだよ・・・』

いや、朝も昼もやってるよ。


僕は、アヤノがいろんなものをごしごし磨く姿が好き。
すごい集中力で一心不乱に磨く。

ベランダからこっちを向いてガラスを磨いているとき、
僕は部屋の中にいて目で合図を送ってるのに、
あなたはすぐ目の前のガラスだけを見つめてる。僕に気づかない。
視線の方向は合ってるのに。

寂しくなって、ちょっとガラスに嫉妬する。


シンクを磨く後姿、ひざをついてフローリングを磨く姿。
右腕が忙しく動き回り、背中もそれに合わせて波立つ。
僕は、ぼーっと見てしまう。

しなやかに動く背中を見てるとエロティックな妄想がわき、
だんだん我慢できなくなってしまう。
その後ろからあなたとひとつになって、一緒に揺れたいという衝動にかられて・・・・
そして、3回に1回はほんとに抱きしめてしまう。

そして、そして・・・・
抱きしめてしまったときの3回に一回はベッドに連れて行ってしまう。
ちょっと大人気ないかな。

ほんとはそこでそのままひとつになりたいけれど・・・・
あなたが許してくれないから。

もうあなたはこのごろ気づいてしまって警戒してるね。
磨き始めて急に手を止め、僕をチラッと見ると、違う仕事をし始める。
ふふ・・・もうあのシチュエーションでは襲えなくなっちゃったか。


あぁー、僕はいったいどうしてしまったんだろう。
こんなにも、こんなにも、いつもあなたが欲しい。

あなたの中に身を沈めて、その温かさと切なさに酔いたい。
あなたを激しく追いつめて、その声を上げさせたい。
ひとつになって昇りつめたあとの、その脱力の表情を見たい・・・・


僕がいつもいつもそんなことを考えてると知ったら、
あなたはどう思うだろう。

僕を嫌いになる?

そんなことはありえない。

でも・・・・呆れて逃げてしまう?
もう捕まえられなくなる?

ねぇ、アヤノ・・・・
それを思うだけで、僕は動揺するよ。
あなたに・・・拒まれたくない。



僕はどうかしてる。

あなたをこんなに好きで・・・
あなたをこんなに欲しくて・・・
僕はこのごろ、ほんとに困ってしまうんだ。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「ねぇ、もう原稿できたの?」

あなたを膝に引きとめながら尋ねた。

「うん、早いでしょ。」

「じゃあ僕も1時間ほど休憩しようかな。」

そう言いながらセーターの中に手を入れる。

「1時間か・・・・」

「ん?1時間じゃ足りない?」

「なんの話?」

「僕はちょっと足りないな・・・」

「だから、なんの?・・・・」

あなたは思わせぶりに言いながら、デスクの上の写真を手にとって見てる。
余裕の表情だね。

床の上にもファイルがいくつかの塊にして積まれ
新たな区分けで整理されて本棚に帰るのを待っている。

「これまで時系列だけで並べてたんだけど、これからは被写体で分類して
 さらに時系列で並べていこうと思って。
 ラベルも全部つけなおすんだ。」

「え~、それってネガがバラバラにならない?」
「そんなことないよ」

「いや、あるよ、きっと!
 テヤンが片付けすぎてわけわかんなくなるところが見られるかも」

「アヤノじゃあるまいし、そんなことにはならないよ。」

「あぁ、言ったな! じゃあ、これがすぐに出る?・・・・」

「何?」

「ヌード」

「えっ!」

「人物の塊はどれ?」

「それだけど・・なんで?」

あなたはさっさと僕の膝から降りて、ファイルのかたまりを崩してる。

「なんで?」

「テヤンのヌード。ここにはないの?」

「ない。」

「えっ、ないの?」

「あるけど・・・・ここにはないんだ。しまってある。」

「隠してあるの?」

「隠すっていうか・・・」

「見せて。」

「えっ? なんで? 
っていうか、なんでそんなの撮ったって知ってるの?」

「テヤンの後輩に聞いたの。君が日本にいないときに。」

「誰?」

「いいじゃない、そんなの。
見たいな。見せて。」


あなたがいたずらっぽく笑いながら、
座り込んだ床の上で僕の足をつついてる。
さくら貝みたいな淡いピンクのペディキュアで。


このごろ足の爪も染めるようになったね
この色の淡さがあなたらしい。

さくら貝に見入ってしまう。
形のいい白い足によく似合うよ。
この淡いピンクに僕の唇が触れるシーンを思い浮かべてしまう。
  
   あぁーーダメだ。

ほんとにキスしたくなるよ。
  


「だめだよ。奥深くしまいこんで封印してあるから。」

「じゃあ自分で探すよ。」

「だめだよ、勝手に見ちゃあ。」

「ううん・・・みつけてやる」

僕はわくわくして、わざと意地悪を言う。

「アヤノ、どうしたの?
 写真は大事な仕事道具、興味本位でいじるものじゃないでしょ。
 それに、人物写真は立派な個人情報、未公開のものもいっぱいだ。
 守秘義務の対象だよ。」

「テヤンの学生のときの自分の写真だよ。
 仕事の写真じゃなくて、プライベートなものでしょ。
 なんで守秘義務の話になるの?」

ちょっと怒ったようなその顔も、僕を充分誘惑してる。

「私が恋人の写真を見たいと思うことが、そんなにダメ?」

「こいびと?・・・・」

「なに?・・・」

「いや、いい響きだなって思って。
 こいびと・・・・。
 僕はアヤノの恋人なんだ。」

「やめてよ・・・」

アヤノ、赤くなってる。
時々子どもじみたことを言って駄々をこねるあなたを
僕がこんなにも愛しいと思っていることを、あなたは知らない。


ねぇ、僕の恋人のアヤノさん、
今、椅子を降りてあなたを抱きしめるから、
お願いだから、すねて拒んだりしないでね。




「どうしてそんなに見たいのかなぁ。」

フローリングに腰を落として抱き寄せると、
あなたは意外にすんなり体を預けてきた。

「だって・・・・テヤンの裸なんて・・・

 たくさんの人の前にさらしたんでしょ。
 いろんなポーズとったんでしょ。

 私が知らなくて、ほかの人が知ってる。
 ちょっと、イヤかなって・・・・」

「それって、やきもちやいてくれてるってこと?」

「・・・・・」

アヤノ、なんで睨む? 

アヤノ、自分では気づいていないよね。
あなたは僕の前でだけ、時々どんどん子どものようになっていく。


初めて会った日、
思わず泣いてしまったあと、顔を洗って戻ってきたあなた、
怖いくらいに全身が緊張しているのがわかった。
無理やりな笑顔はよけいに痛々しかった。
全身でその痛みに耐えていた。
そのあとだって、平静でいようとして、ずっと苦しそうだったね。

今のあなたに、あのころの面影はない。
僕があなたの完全防備を解いたんだって、
そんなふうにこっそり自負していても・・・いいよね。

だから、あなたの無防備なふくれっ面を見て、思わず抱きしめてしまう僕を
あなたは許さなければならない。
僕には許される権利があるんだ、きっと・・・


あなたをぎゅっと腕に閉じ込めて耳元で囁いた。。

「あなたと愛し合うときの僕の体をたくさん知ってるのに?

 それは誰も知らない、あなただけに見せる僕の裸なのに?」


「もう・・・」


僕は気づいてる。あなたの目の奥に情熱がゆらめき始めたことを。


「今から僕と2時間一緒に休憩してくれたら見せてあげる。」

「えっ? さっきは1時間って・・・・・」

返事を待たずに唇をふさいだ。


ん?・・・・
今日のあなたの舌は、はじめから自分の情熱に忠実だ。

あぁ、うれしいな。



スカートのすそをたくし上げる。
少し前に、街を歩いていてインド雑貨の店に立ち寄った
あの時「普段着にいいかも」って、あなたが衝動買いした夕焼け色のスカート。
すそには型押しの幾何学模様。
たくさんのヒダで、たっぷりとして暖かそう。

試着したのを見たとたん、
その裾を僕の手でたくし上げるシーンを思い浮かべてしまった。
やばいね、ほんとに。


あなたの舌の情熱に励まされて、
そのスカートの中で一気に歩みを進めた。

そして一番奥のその場所は、
もうすっかり準備が整い、僕を待っていてくれる。

ベッドに行かないと、フローリングが冷たくて硬いね。

でも、イヤなんだ。
ここで、このままがいい。

「ごめんね・・・背中・・・痛い?・・・」

「ちょっと。・・・・でも・・・気持ちいいほうが・・・勝ってる・・・かな・・」

「アヤノ・・・」

「・・・ん?・・・」

「ふふ・・・正直者になった・・・・」

「そう?・・・・私・・・いつも・・・正直だよ・・・・・・」

「アヤノ・・・アヤノ・・・」

「んぁ・・・・・テヤン・・・」


僕の指は、的確にあなたを捕らえてる。


高まっていく自分を隠さなくなったあなたの、
かすれた喘ぎ声が・・・
少しみだらな半開きの唇が・・・
僕から視線をそらさないその瞳が・・・

もう少し抵抗できるはずだった僕のガードを、あまりに簡単に取りはらってしまう。


「アヤノ、もう・・・我慢できない・・・」


「あ・・・・」
「んぅ・・・」


あぁ・・・あなたの中は温かくて、
こんなにも切なく僕をくるみ込む。


しばらくこのままでいたいけど・・・

性急な僕を固い床の上で受け止めて、あなたのやせた背中が悲鳴をあげるね。

ひとつにつながったまま、そっとあなたを抱き起こす。


デスクの側面にもたれた僕は、またスカートのヒダをかきわけて
僕たちの結合部分に指を差し入れる。

「あぁ、・・・・テヤン・・・だめだよ・・・あぁ・・・あ・・だめ・・・」

のけぞる背中をあわててひきよせた。


あぁ、アヤノ・・・・
あなたは、こんなにも僕をしめつける
こんなにも僕をたやすく限界に追い詰める

あなたの両手が頬にのびて、激しく唇を合わてきた。

もう、初めての頃のおずおずとためらうあなたはいない。
僕に挑んで、僕を煽る・・・・

アヤノ・・・アヤノ・・・
あなたのペースに巻き込まれてしまいそうだ。

あなたが意図したわけじゃない、
無防備に情熱のままに突き進むあなたが、気づかず作るあなたのペース。

それはいつの間にか僕を従え、翻弄する・・・



ほら・・・あなたが動き出す。
僕はもう抗えないんだ。

情熱のままに上下するセーターの、胸のふくらみがまぶしい。

あぁ・・・だめだ、そんなに激しく動かないで・・・動かないで・・・・

あなたはまた僕だけを先にいかせようとするの?・・・

あなたも感じてるんだね。
息づかいがどんどん激しさを増して・・・


もう止まらないんだね。あなたもあなたを止められないんだね。

アヤノ、耳元に甘いあなたの声が響く・・・
もっともっと、あなたの声を聞かせて・・・

終わりたくない・・・・まだ、終わりたくないのに・・・



あぁ・・・あなたの情熱が、僕の上で脈打ち続けて・・・

あぁ・・・アヤノ・・・

こらえきれずあなたの腰を強く引き寄せる。
そして、昇りつめるその最後の声を、あなたのセーターの胸に埋めた。



完敗だ・・・・



そのままの姿勢で、あなたの胸に抱かれている。


「アヤノ・・・」

「ん?」

「ベッドへ行こう。」

「うん。」

あなたの瞳の中の情熱は、まだそこにあって、
行き場をさがしてゆらめいている。


休憩時間はたっぷりあるね


今度は・・・・

ゆっくりゆっくりあなたを溶かしていこう。
あなたの甘い恍惚の声を何度も聞くために・・・

そしてあなたが何度のぼりつめても、
また僕の愛で甦らせて溢れさせよう。
至福の瞬間を、二人いっしょに駆けあがるために・・・・


今度は・・・

そのためだけに、僕を捧げよう。

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