Lusieta

 

続・この場所から   『しずくの秘密』

 

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「テヤン、そろそろ準備しなきゃ・・・」

「うん、まだ早いよ・・・」

「そう?」


「出かけるまであと1時間もある。準備は完璧だから・・・」

「800枚あるんでしょ、スライドショーの写真。」


「うん、どすこいさんのリクエスト、よくばりなんだ。
この10年くらいの彼の写真、どれもこれも捨てがたくて、
全然絞れないんだから。」


「でも800枚全部チェックしたって、ほんとすごいね。」


「うん、時系列で並べるんだって言って、彼女二晩徹夜したんだ。
ほかにもたくさん準備があるみたいだし、大変だよな。」


「でも強力な幹事ーズがいるからね。
いよいよだね。テヤンってば、またもみくちゃにされるよ。」

「妬ける?」

「全然。」

「妬いて。」

「あ・・・わかった。妬く。」

「ふふ・・・ありがとうございます。」


アヤノの髪に頬をつけながらみつめる先には彼がいる。
僕は今、彼にちょっとだけ妬いている。


ユイル・・・
ソン・ユイル。

小さな小さな、僕たちの宝物。


母の白い胸に必死でつかまるようにして
コクコクとおっぱいを飲んでいる。


いつもの場所、ラグの上に座って授乳タイムのアヤノを

いや、二人を・・・

ソファにもたれて後ろから包む。


このひとときのシアワセに出会えたのは5日ぶりだ。



あぁ・・・
出かける時間なんて、永遠に来なければいい・・・
そんなふうに思ってしまった僕を許して、どすこいさん。


わ・・・
おっぱいの出がよすぎて溢れてる。

彼は必死に飲もうとするけど、その小さな口では間に合わない。
口を離してプハーッと息継ぎをする顔がけなげだ。

それでもやっぱりまたおっぱいを探す。
ほんとにがんばるんだね、君は。



胸からしたたる白い液体が、ガーゼのハンカチを濡らしていく。

今のアヤノは100%ママなのに、
こんなシーンを見て、ふとエロティックな気持ちになってしまうのは・・・


ユイル・・・
君のためにいろいろ我慢してるからだぞ。


アヤノの首筋に顔を埋めながら、
前よりちょっとふくよかなウエストのあたりをなでてみる。


「テヤン・・・・何してるの?・・・」

「気にしないで。」

「ふふ・・・」

「アヤノ、意地悪だよな」

「ん?・・・」

「意地悪だ。」

「なんで?・・・・」


「つらいんだ。
こんなに一緒にいるのに・・・
今すぐしたいことがあるのに・・・

できないんだな。
あなたが100%ママだから。」


「したいことって・・・」

「アヤノをこうして抱きしめて・・・
アヤノの中に・・・入ること。」

「・・・・・」


ずいぶんストレートなことを言っている。
でも、とまらない。

僕は、だだっ子みたい?


「そしてずっと裸で抱き合うんだ。
お腹いっぱいで眠ったユイルが、次に目を覚ますまで。」

「テヤン・・・さみしい?」

「・・・うん・・・・ちょっと・・・」

「ごめんね、」


「謝らないで・・・
わかってるよ。でも、ちょっと正直者になってみた。

謝られると恥ずかしいよ。
・・・なんか、謝られるとさ・・・
ますますひとりぼっちな気持ちになってくる・・・」


「テヤン・・・」

「あぁ・・・解禁はいつだろう~」


わざとおどけて言ってみる。


「今日。」

「え?・・・」

「今・・・・」

「・・・ア・・・アヤノ・・あの・・・」


おっぱいを飲みながら眠ってしまったユイルは、
母親の肩の上で、眠りながら「ケポッ」とちいさくつぶやいた。


「ほら、僕はもう寝たよって。」

「アヤノ・・・無理しなくていい。」

「テヤン・・・」

「アヤノは今ほんとにお母さんの顔してる。」

「・・・そんなこと・・・女の顔もしてるって・・・
テヤンに言ってほしい。」

「・・・アヤノ・・・」

「待ってたの。テヤンがさっきみたいに言ってくれるの。」

「え?」

「私、もう完全に母親になっちゃって、
女として見られなくなっちゃったかなって、
ちょっと不安だった。」


「うそ・・・なんでそんなこと思うの?
アヤノ、すごくきれいだよ。

こんなにきれいなのに・・・
こんなに・・・ほんとにきれいだよ・・・」


「よかった・・・」


驚いた。
そんなふうに思ってたなんて。
もっと早く言ってくれればよかったのに・・・

バカだな、僕たち。


あなたはほんとにきれいなんだ。

わかってる?


「一ヶ月検診の時に、
もうご主人とも普通に仲良くしていいですって、
言われてたんだけど・・・」


「うそ・・・
もう、ユイル、2か月だよ・・・」


「だって・・・
テヤン、全然誘ってくれなくて・・・」



「・・・・・」








   ーーーーーーーーーー






レースのカーテンを透かして差し込む5月の陽の光に
アヤノが少しピンクに染まった体をさらしている。

まぶしい。


発光してるみたいに輝き、
そして前よりも柔らかくて豊かだ。




「ごめんね、待たせてたんだね。
これから埋め合わせするよ。いくらでも・・・」

「ふふ・・・待ってるわ。」

「ほんと?」

「うん。でもそのタイミングは、その都度ユイルに相談ね。」

「ふふ、わかった。いつもユイルの許可が必要なんだな。
手強いな。
ほんとに・・・ちょっと妬ける。」


「ふふ・・・」



そんな会話をしている間も、
僕の手は、あなたの全部を確かめていく。


はじめてのようにオズオズとあなたに触れていた指が、
ほら、あなたの全部を・・・思い出していく。


あなたがもうおしゃべりをやめ、
その唇からは吐息しか聞こえなくなった。



「アヤノ・・・大丈夫?・・・」

「ん・・・」


あ・・・大変だ・・・


「わぁ・・・・」

「わぁー・・・」


つい、いつもみたいに触れてしまった、
あなたの柔らかなふくらみの先端。

溢れ出してしまった温かなしずく。


「ごめん・・・」

「ふふ・・・こんなになるのね。」

「・・・・・・」


あなたの素肌に流れる白い道すじ
その行方を指でなぞる。

そっとすくい取り、唇をつけてみると・・・


「甘い・・・」

「ふふ・・・」

「こうして、あなたの体はどこも甘くなってしまう。
どうしよう。」

「食べないでね。」

「え? 食べちゃダメなの?」

「ふふ・・・ダメ。」

「そんな意地悪言わないで。」


「ウソだよ、テヤン・・・
ほんとは・・・早く来てほしい・・・」


「アヤノ・・・・」


そこはもう充分すぎるほど準備がととのっていた。

そっと分け入ったその場所は、温かく柔らかく僕を包んだ。


「あぁ・・・・あ・・テヤン・・・」

「はぁ・・・アヤノ・・・」


快感が一挙に押し寄せて、息がとまりそうだ。



あなたも感じているんだね。
苦しそうで切なそうで・・・・

ほら・・・もっと僕を包んで・・・
逃げられなくして・・・

あぁ・・・もっと奥へ導いて・・・


アヤノ・・・

  あぁ・・・アヤノ・・


急ぎたくないのに、
まだここにとどまって、あなたを感じていたいのに

あなたに僕を感じていてほしいのに

僕はどうして急いでしまうの?
あなたの切ない声を、もっと聞いていたいのに。


白い雫で濡れてゆく胸が
ぬるぬると光りながら揺れるのを

もっともっと見ていたいのに。


あぁ・・・僕は・・

       止まれない・・・


最後は、あなたを抱きしめて、
抗えきれない波に身をまかせた。


あなたの上に崩れ落ち、
その首すじに顔を埋めた。



「ごめん・・・」

「ん?・・・」

アヤノが僕の頭を抱えてなでている。


「僕だけ先に・・・」

「うれしかった。」

「ん?・・・」

「また初めてみたいな気持ちになった。」

「僕も・・」

「テヤン・・・」

「ん?・・・・」

「愛してる・・・」

「僕も・・・愛してる、アヤノ・・・・」



もう一度、アヤノのやわらかなふくらみをなめてみた。

甘い・・・・


「テヤン・・・・」

「ん?・・・」

「時間がなくなった・・・」

「ん?・・・・あ・・・ぁああっ!!!」






    ーーーーーーーーー









ノートPCを入れたバッグを大事に抱えながら、
人の流れをかわしてロビーを小走りで横切った。


心配そうに背伸びをして人待ちをしてるどすこいさんが見えた。


「あぁ~!テヤンく~ん!」

どすこいさんがピョンピョンはねながら手を振っている。


「遅れてごめんなさい!」

「きゃ~~待ってたわよ~~。」


大事なPCなどまるで眼中になく、
彼女はいきなり抱きついてきた。

しっかり抱きしめられたと思ったら、


「ん?・・・・」


くんくんと大げさに匂いをかいで、


「テヤンくん・・・
おっぱいの匂いがする。」


そう言って見つめると、

泣き出しそうな一瞬のあと、
またぐぃ~んと元気な笑顔で・・・

今度は静かに抱きしめてくれた。



はい、どすこいさん、
今日はきっといつもよりたくさん匂っているはずです。




「テヤンくん・・・
うれしいね。

シアワセだ。
いい匂い・・・・」


「はい、シアワセです」


「シアワセな父親テヤンくん、
801枚目を撮ってきてくれた?」


「はい、撮りたてほやほやです。」

「スライドショーの最後に、ちゃんと入れてくれた?」

「はい、ちゃんと入っています。」


「それはよかった。
みんな喜ぶわ。」




     はい、どすこいさん

        撮りたてほやほやの、僕んちの聖母子は

            きっと画面からも甘酸っぱい匂いが漂うはずです。

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