Lusieta

 

シャボン玉 Ⅲ 後編

 

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天に浮かぶこの小島にいると、君はいつもより大胆になる?
それも去年と同じだ。

でも、去年よりもずっと、君は・・・


僕の頬を両手で包み、自分から唇を迎えにきた。
僕のシャツの中に手をいれて、急くような仕草で脱がせた。。

そして・・・・
そっと腰を浮かせて、僕自身を導き、迎え入れた。

いつもより、吐息が甘く激しく、
いつもより、僕を見つめ続ける目が切実で・・・

いつもより、君はたくさん・・・僕をほしがった。


僕の上で、月の光にさらされた君の姿はあまりにもまぶしくて
この世のものとは思えなかった。


君は、月の精? それとも天女?



こんなに明るい月明かりの下に、ためらいなく白い肌をさらし、

     「今日は私がしてあげるの。」

そう言った。

     「えっ?・・・」


少しぎこちない仕草で君の顔が僕の体を下りて行く。
そしていきなりその指と舌で僕を翻弄し始めたんだ。

どうしていいかわからない。

あまりの展開に驚いている間も、君は僕を責め続けて、
とうとう僕は、その底なし沼のような快感と切なさに沈められ、
降参しそうになる。


     「あぁ・・・ナヨン・・・待って・・・
      ダメだよ・・・僕ひとりでいってしまう・・
      待って・・・いっしょに・・・」


彼女の行為をとめたい気持ちと、
でもこのまま沼の底に沈んでいきたい気持ちと、
どちらもほんとだった。


彼女は、肩に触れた僕の手を振り払って、

     「ダメ・・・」

と言った。

     「最後まで・・・・してあげるの・・・」


しばらくして、僕は沼の底に深く深く沈められてしまった。
完璧な降参。




君を背中から抱きしめていた。

きっと今夜は、何度高みを迎えても、
すぐにまた君を欲しくなるだろう。

君のうなじに唇をつけながら、
もうすでに僕は、君の中に入りたい・・・




     「満月が、君を変えたの?」

     「そうかも。」

     「君は月の精?」

     「ふふ・・・・そうかも・・・」

     「月の精なら、月に帰ってしまうのかな。」

     「そう・・・かも・・・」

     「ん?・・・」

     「・・・・・・」

     「今日の君は、僕をどこまでも振り回す。」

     「そう?・・・」



やっぱり今夜の彼女は変だ。



     「何があった?・・・」

     「ん?・・・・」

     「このごろの君は、やっぱりいつもと違う。なにかあったよね。」

     「・・・・・」

     「ナヨン・・・」

     「そうなの。私、変なの。」

     「どんなふうに?」

     「いろいろ・・・・混乱したの。」

     「うん・・・」

     「田舎から、父と母が出てきて、
      家に帰ってお見合いをして結婚しなさいって、
      二つ年上の学校の先生の写真を持ってきたわ。」

     「・・・・それで、君は・・・」

     「まだあるの。去年も誘われた監督に・・・
      どうしても今度のドラマに君を使いたいって言われた。」

     「・・・それは・・・」

     「まだあるわ。」

     「え?」

     「先輩に・・・」

     「あのクマ男?」

     「うん・・・」

     「なに?」

     「プロポーズされた。」

     「・・・・・」

     「そして、あなたのマンションに、
      社長令嬢が、あなたから贈られたジャガーで毎晩通ってきて・・・
      指には1億200万ウォンの婚約指輪が光ってて・・・
      チェジュのホテルのスウィートに二人で泊まって・・・」

     「それは全部ウソだって・・・」

     「わかってる。信じたりしないわ。
      私はいつでもあなたの言葉を信じてる。
      でもね、いろいろ混乱したの。
      私が勝手に混乱したの。」

     「どんなふうに?」

     「どうすることが、あなたの幸せなのかなって。」

     「・・・・」

     「そしたらね、全然わかんなくなっちゃった。」

     「・・・なんで・・・」

     「あなたの幸せのためなら、
      私じゃない女性のほうがいいのかも・・・なんて・・・」

     「ナヨン!!」

     「でも、ダメだった。
      もう私、あなたがいないとダメだった。」

     「・・・・・」

     「だから・・・
      私、決めたの。
      私の幸せのために生きるの。
      どうしたら私が幸せになれるのか、考える。」

     「だから私は田舎に帰らないし、
      女優にもならない。
      もちろん先輩と結婚なんかしない。

      そして・・・・
      毎日元気に仕事して・・・

      あなたと生きるの。」


     「ナヨン・・・」


     「私がそうしたいから、そうするの。

      ね、すっごく簡単でしょ。」

      
     「うん。簡単だ・・・」


     「いい・・・ですか?」


     「あ・・・ありがとう。ナヨン、僕もそうしたい。
      
      僕も・・・

      あぁ・・・ナヨン・・・」



振り返った彼女を思いきり胸に閉じこめた。


     「もう混乱しない?」

     「しない。」

     「僕も。」

     「私、車も指輪もいらないから。」

     「知ってる。」

     「ホテルのスウィートより、月明かりの下が好きなの。」

     「うん。知ってる。」

     「安上がりでうれしい?」

     「うん。とても。
      デートはサル山だし、食事はハンバーガーだし、
      ほんと、助かるよ。」

     「でしょ~。ふふ・・・・」



ナヨン・・・愛しい。

愛しすぎて、僕はどうにかなってしまいそうだ。

君を誰にも渡さない。

ふたり一緒に生きて、ふたり一緒に・・・

幸せになる。



   
     「次に見まわりが来るのは4時だったっけ?」
 
     「うん。よく覚えてたね。」

     「忘れられない夜明けだった。」

     「・・ん・・・・」

     「今年も、ナヨンとこうしてる。

      僕は今すでにとてもしあわせ・・・」

     「私も・・・今すでに・・・あ・・・あぁ・・・」



今度は、僕がリードする。

今からすぐに、君をたくさん幸せにする。何度も・・・



     「・・・ねぇ・・・」

     「ん?・・・」

     「・・・・・ねぇ・・・」

     「ん?・・・」

     「なん・・でも・・・・なぃ・・・」 



ナヨンが潤んだ目で僕を見上げる。

苦しそうで幸せそうで・・・

        
     
     「ん?・・・なに?・・・言って・・・」

     「・・・だめ・・・」

     「ちゃんと言ってくれよ。」

     「・・・いや・・・」

     「言って・・・」

     「ジュン・・・」

     「ん?・・・」

     「すごく・・・」

     「うん。すごく、なに?・・・」

     「愛してる・・・」

     「あは・・・」

     「・・・あぁ・・・あ・・・」

     「僕もだよ、ナヨン。愛してる・・・」



震えてのけぞる背中を抱きしめて、君の恍惚を確かめる。

そして、そっと君の中に僕を沈める。


あぁ・・・

月明かりの下で、今年もこうして一つになれた。

こんなにも愛しい君と。





ナヨン、君に出会ってから、

僕はどんどん欲張りになる。



こんなふうに毎日、君を抱いて眠りたい。

毎日、毎日、君と朝を迎えたい。

手を繋いで漢江の岸を歩きたい。

オープンカフェでケーキを頬ばる君を見たい。

一日じゅう家にいて、ただ二人きりでいたい。




僕はもう我慢しない。

そんなささやかな夢を叶えるために、

僕らは準備を始めよう。






僕の動きに合わせて、君の白い胸が揺れる。



さぁ・・・

一緒に・・・一緒にいこう・・・・


       ・・・ナヨン・・・



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