AnnaMaria

 

琥珀色のアルバム 39 ごはん会

 

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秋冬キャンペーンのプレゼン結果が白黒着かず、
KAtiEスタッフは中途半端なまま、週末を迎えようとしていた。

「わたしが社長なんだから、
 わたしがいいと思ったものは絶対に通します。」

かつえが断言しているので、スタッフは綿貫案に沿って
プロモーションの準備を進めているのだが、
親会社の意向を大きく左右する曽根副社長の動向も正直気になるところで、
営業部長などはプレゼンの顛末を聞くなり、
ふうむ、と言って黙り込んでしまった。

「大丈夫なんですかね、本当に。」

隣に座り込んだ不安顔を、真也が穏やかになだめている。

「うちの会社のプロモーションですよ。
 かつえさんの作った製品を売るのに、かつえさんが認めた案が
 通らないはずないでしょう。」

「でも、このままじゃ、金は出さないってすごんだんでしょ?」

真也は困ったように微笑んだ。

「ちょっと違うけど、まあ、同じ意味かな。」
「お〜〜!エラい人はコレだから。」

営業部長は頭を抱えたが、

「週明けまではっきりしないってんなら、
 それとなくあっちの様子でも探っときますか。」

「いや、この顛末はS社側にも知れ渡ってると思うから、
 下手なことはしない方がいいと思います。信じて待ちましょう。」

若い真也が年配営業部長の肩をたたいている図は、ちょっぴりおかしかったが、
笑っている場合ではない。

「美奈、午後からQさん来るから、資料をそろえておいてくれるかな。」
「わかりました。」

二人を眺めて複雑な顔をしていた美奈に真也が言葉を投げて、話は終わった。





「美奈さん、今晩の都合は大丈夫ですか?」

昼食を買いに出ようとしたところで、ばったりQに出くわした。
今日はベージュの綿スーツにチェックのシャツを着ている。

「Qさん、早いですね。」

「かつえ社長に昼ごはんのお誘いを受けたのですよ。
 何でもその時間しか空いてないそうで。」

「それはそれは・・・」

微笑むとQの目尻にちょっとしわが寄って、とても柔らかい印象になる。

「今夜は大丈夫です。プレゼン終わったら本格始動の筈だったのですが、
 ちょっと中途半端な状態で、おかげで今週末は休めそう。」

「そうなんですか。」

Qは少し怪訝な表情をしたが、

「僕は5時には部屋に戻って準備しています。
 美奈さんは仕事が終わり次第、いつでも来て下さい。」

「はい。伺います。」

「地図はお渡ししましたよね?」

「ええ、すばらしくきれいな奴を」

Qが苦笑した。

「アトリエ案内も兼ねているので、営業用にイラストを起こしただけですよ。
 それから、お気遣いなく手ぶらで来て下さい。」

「はい、そうします。」

軽く手を振って別れると、美奈はそのまま外へ出た。
ついでに綿貫にも今夜、部屋に行く旨、再度メールを入れておこう。
昨夜はちゃんと眠れたのだろうか。





「Atelier Q」と小さな表札の出ているドアを何度も確かめて、ベルを押す。
日が長くなってきたとはいえ、7時はもう暗い。
ドアが開き、シャツの袖をまくって、たくましい腕をさらしたQが
笑顔で立っていた。

「いらっしゃい。」
「はい。お邪魔します。」

お土産に持ってきたキッシュとチーズを渡すと

「手ぶらでいいと言いませんでしたか?」

言いながらもありがとうと覗き込んでくれる。
部屋の真ん中に白くて細長いテーブルが据えられ、
大輪の濃いピンクの花が幾つも咲いたような大皿が置いてある。

「わあ、きれい!これ何ですか?食べられるの?」

Qに上着を渡しながら、たちまちテーブルに吸い寄せられる。

「はっは!食べられないもんはお皿に載せないよ。
 それはサラダだから、ぜひ食べてみて。」

美奈の後ろから、坊主頭の大男が柳刃をかざしながら近づいて来たので、
思わず、Qににじり寄る。

「おいおい、刃物かざしたまま来るなよ。」

「ああ、ごめんごめん。こいつをやってる最中だったからさ。」

大男ごしにのぞくと、後ろのキッチンカウンターに大きな魚が横たわっている。

「すごっ!お魚まるごとですか?」

「魚はみんな丸ごとだよ。切り身じゃ泳いでないからね。」

美奈は聞いていなかった。
デカい魚のお腹にていねいに緑の葉っぱが詰めてある。
こんな料理、食べたことがない。期待しちゃう。

「お料理上手そうですね。」

「上手そうは余計だ。上手なんだよ。ほい、いらっしゃい!」

やっと包丁を置くとふきんで拭いた手を差し出した。
握ると体同様、大きくて分厚い手。

「初めまして、小林美奈です。
 もしかして、お魚やさんとか?」
「そう見える?」「見えます!」

大男は伸び上がって、美奈の上着をかけているQに

「Qちゃ〜ん、俺、魚屋って言われちゃった。」

「いいじゃないか、大ちゃん。鮮度重視の点では一緒だろ?」

「まあね。」

「違うんですか?」

問い返しながらも目はテーブルの上に吸い寄せられた。
大皿に色とりどりの料理が盛られて運ばれてくる。
美奈は急激にお腹が空いて来た。

「すっごくおいしそう!ああ、うれしい!来てよかった!」

「正直なお嬢さんだねえ。腹ぺこでメシ食いに来たのか。
 可愛い顔してんのに。」

大ちゃんと呼ばれた大男が、ぶあつい手のひらで美奈の頭を撫でた。

「いえ、あの、色んな人にお会いできるかもってお誘い受けて、それで・・」

テーブル近くでグラスを並べている二人に目をやった。
一人は細身の男性、一人は大きなイヤリングをした女性。
Qが二人に美奈を引き合わせてくれた。

「彼はこの近くの歯医者さん。
 こちらは奥さんで、アパレルブランドのアタッシェ・ド・プレスなんだ。」
「はじめまして・・・」

プレスと紹介された女性はとても個性的だった。
ボーダーのカーディガンと大きな花柄のスカートに
赤いスパッツを合わせている。

「わたし、化粧品ブランドのプレスを担当して半年の新米なんです。」

「あらまあ、Qちゃんの言ってた女性はあなたなのね。」

美奈が物問い顔で、後ろのQを見ると

「プレスの女性が来る、と伝えておいたのですよ。
 話を聞きたいかもしれないから、と。」
「ありがとうございます。」

美奈が女性と話をしようか、と思った矢先に

「よ〜し!あとはコイツをフライパンで蒸すだけだ。
 腹が減った、喉が乾いた、もう我慢でき〜ん!」

キッチンカウンターから、大ちゃんが吠える声が聞こえた。

「美奈さん、何を飲みます?」

Qに聞かれると、ここしばらく体調がすぐれなかったことなど、
きれいに忘れてしまった。
今は猛烈に食欲が湧いて喉が渇いている。

「アルコールなら何でも!」

「ははは、美奈さんはイケル口でしたね。
 では、最初はビールから行きましょうか。」




「かんぱ〜い!」「乾杯!」「かんぱい!」

掲げられたグラスは7つ。
途中からグラフィックデザイナーの青年と若い女性も加わった。
みんなかなり飲めるようで、最初のビールが見る見る空になる。

「このテーブル気をつけてね。固定してなくて載せてるだけだから。
 寄りかかるとひっくり返るよ。」

言われて美奈がテーブルの脚をのぞくと、
二つ並んだ小さめのテーブルに、細長い天板が載せられている状態だ。

「これ、あそこのドアなんだ。」

隣の青年が指さしたところに半分ユニットバスが見えている。

「ドアって・・・外したんですか?」

「そう。お客が来ると洗面所のドアが天板代わりになるんです。
 酔っぱらった誰かが何度か、ひっくり返したことがあるけど。」

「はは、中々いいアイディアですね。」

Qに言うと

「みんなで野球やったあとなんか、ちょっと困るけどね。
 テーブル用意している最中に誰かがシャワー浴びようとすると、
 裸が見えちゃうから。」

うふふふ、それは困るかも・・・

誰かがお皿に取ってくれた、ピンクの花のようなサラダ。
そっと噛んでみるとサクッとした歯ざわり。

「?」

美奈が食べながら首をかしげると

「さて、何でしょう?」

大ちゃんがうれしそうに覗き込む。

「味は・・・とろっとした大根みたいだけど。」

「う〜〜ん、半分アタリ。ビーツって聞いたことある?」

「え〜〜とロシア料理に使われるって言う。」

「そう、それ。サラダにしても美味しいんだよ。
 服にこぼすと赤いの取れにくいから、気をつけてね。
 まな板も血まみれみたいに真っ赤になるし。」

「へえ。生のビーツって初めて食べたわ。」

「そりゃあ、あんまり手に入らないからな。
 ドレッシングにはちみつを混ぜるのがミソなんだよ。」

大ちゃんの自慢そうな様子に

「もしかして大ちゃんさんが入手したんですか?」

「そうだよ。だって俺、八百屋だもん。」

「八百屋さん!」

八百屋というより、魚屋のほうが似合いそうな体躯だが、
素朴な雰囲気は畑の野菜をも思わせる。

「魚もさばける八百屋さん。」

「そう。店売りじゃなくて、卸専門だけどね。
 レストランや食べ物屋さんにいろんな野菜を卸してるんだよ。
 けっこう特殊な野菜も手に入れて欲しがるから、それでさ。」

ふうん。

美奈はテーブルにならぶ、カラフルな野菜料理を見渡した。
オレンジや紫、緑、赤、色とりどりの焼き野菜マリネ。
形もさまざまで、たしかに普通のスーパーでは見ない野菜も多い。

「じゃ、これはプロ流通野菜の横流しですか。」

「横流しっていうか、半端とかあまった奴とかいろいろ。」

「へえ、おいしい!すごい!あれもこれも生まれて初めて!」

美奈が野菜を口に入れるたび、感心したようにほめる。

へへへ。大ちゃんが笑いながら頭をかく。

「Qちゃん、俺、この子気に入っちゃった。」

「ダメダメ、大事なクライアントさんに手を出さない。
 ほら、美奈さん、もっとこっちへ。」

Qがわざとらしく美奈を自分のほうに引っ張ったので、
美奈はすこしドキリとした。

「なんだよ、元気に野菜をバリバリ食べるとこが気に入ったのに。」

大ちゃんはふくれて見せたが、おいしそうにビールを干すと
たちまちご機嫌な笑顔になり、またキッチンに立って行った。

「・・・プレスのセミナーに通っているんです。」

「へえ、誰の主催?」

「ゲ○ンのプレスだった○○さんのセミナーです。」

「あらあら、一番ハードなのを取ったのね。」

「いえ、入門コースなんでまだまだです。
 出入りの美容ライターさんになってない!って言われてドロナワ式で。」

ふふふふ・・・

プレスのマリコさんは面白そうに笑った。

「欧米じゃ、専門職なのよ。
 でも日本だと可愛い女子社員が憧れる人気職って感じでしょ?」

「確かに可愛い人、多かったですけど。」

「勉強することは多いけど、基本的に人と接する仕事だから
 それが嫌いでさえなければ大丈夫。
 ただ、見た目より地味な作業が多いから、そっちはどうかしら?」

「えっと失礼ながら『プレスになりたい!』という憧れで入っていないので、
 幻滅とかそういうのは無いです。」

「そう、いいじゃない。そういう若い子が本当に多いから。
 しばらくは良くても、そのうち嫌になっちゃうみたいで。」

マリコさんの話は具体的な部分には、あまり踏み込んでこない。
自分がまだ本当の駆け出しなので、先入観を与えまいとしているのか。

宴が進んで、さきほど大ちゃんが仕込んでいた「魚の香草詰め蒸し」や
オーブンでこんがり焼いたポークローストなどが出てきた。

「きゃ〜!おいしい!たまらない!」

美奈が連発すると、Qがニコニコとお代わりをよそってくれた。

「美奈さんは得意料理とかあるんですか?」

得意料理?
さらりと訊かれて、正直とまどった。

「え〜〜っと。『トマトすき焼き』とか。」

「へえ、うまそうですね。」

「シーフードをトマトで煮込んだものなんですけど、
 食べた人に『地獄鍋』とかって言われちゃって」

「どうして?」

「血の池に白い骨、イカなんですけど、がプカプカ浮いているからって。
 ひどいでしょ!おいしいのに。」

「いやあ、料理は見た目も大切だからね。
 血の池に見えるんじゃ、ちょっとなあ。」

したり顔で大ちゃんが言うのが悔しく、ほっぺたがふくれてくる。
大ちゃんが面白そうにほっぺたをつつきに来た。
飲み物はいつの間にか、ワインに替わっている。

10時を過ぎると大ちゃんが

「じゃあ、俺、仕入れあるからお先に。」

「え〜?もう帰っちゃうんですか?」

「市場に2時半頃行くんだ。ちょっと仮眠しとかないと運転ヤバいからね。」

「そうなんですか。今日はごちそうさま、すごくおいしかったです。」

「またおいで。
 今度はめずらしいフルーツの盛り盛りデザートを食べさせてあげる。
 とってもおいしいよぉ。」

「きゃ〜、楽しみっ!」

Qと美奈で大ちゃんをドアの外まで送って行った。

「またな」

大ちゃんは大きな体でひょいっと自転車にまたがると、
さっと手を挙げて夜道に消えて行った。

外の空気はかなり冷えていた。
Qと並んででっかい背中を見送っていたら、
飲んで騒いだ汗がすうっと冷えて、ぞくりとした。
思わず両腕を抱くようにすると、Qが

「美奈さん、寒いの?」

「平気です。ちょっと汗が冷えただけで」

Qが美奈の背中をかばうようにして、ドアを開けてくれた。
なんて優しい人だろう、本当によく気をつけてくれる。
元の席に戻って、グラフィックデザイナー青年の話を聞いていたが、
なぜか、いっこうに寒気が取れず、肌の表面が粟立ってきた。

しばらくして、パサリ、と肩にパーカーが掛かった。

「あ、ありがとうございます。」

一瞬驚いた美奈が、Qに礼を言って袖を通すと

「Qちゃんってホント、よく気がつくわよね。
 優しいし・・」

プレスのマリコさんが、夫の方を向いて言う。

「おいおい、俺が優しくないみたいじゃないか。」
「優しいけど、気はつかないわ。」
「気はつくけどテレ屋なんだよ」「嘘ばっかり」

これでもどう?

美奈の前に湯気の立つ飲み物が差し出された。
赤くてレモンが差してある。
受け取って一口飲むとほんのり甘く、かなり熱い。

「おいしい。」

渡してくれたQに言うとうれしそうに破顔した。

「よかった、ホットワインです。体があったまるから。」
「はい、ありがとう。」

温かいワインが体の中を巡るにつれ、あたりがぼうっとなってきた。
みんなの会話が遠くに聞こえる。
グラフィックデザイナーと彼女は帰るらしい。

「さよなら。」「さよなら、またお会いしましょう。」

ソファにもたれかかったまま、美奈は握手の手だけ差し出した。
マリコさん夫婦とQだけになり、マリコさんが急に

「美奈ちゃん、何だか顔が赤くない?飲み過ぎちゃった?」

3人の視線が一斉に自分に注がれて、美奈は恥ずかしくなった。

「それほどでもないです。
 お酒はわりと強い方なんですが。」

隣にいたQが「失礼」と、そっと美奈の額に手を当てた。
大きな手のひらの感触が冷たくて気持ちいい。

「すごく熱い。」

心配そうにQが言った。

「大丈夫?お医者さん、連れていく?」
「大丈夫、大丈夫。
 あったかいワイン飲んだから、火照ってるんだと思います。」

Qに続いてマリコさんも額に手を当てた。

「あら、すごい。Qちゃん、体温計とかってある?」

みんなが慌ただしく動くのを、美奈はぼうっとした目で見ていた。
体温計らしいものが差し出され、だまって脇の下に挟み込む。

3人がテーブルの片付けをしているのを、申し訳なく眺めていた。
自分もお手伝いしなくてはいけないのに。

だが、立ち上がろうとすると体に力が入らない。
いったいどうしちゃったんだろう。
ビール数杯とワインとさっきのあったかい奴。
いつもなら、ぜんぜん平気な量だ。

電子音が鳴って手を出されたので、はさんでいた体温計を出した。
目盛りを見たQの顔がぎゅっと曇る。

「何度ある?」「39度。」「え〜〜っ?」

いつのまにか美奈はソファに寝かされ、上から毛布が掛けられていた。
顔が熱いのに、体はかたかた震える。

3人が話し合う声が遠くに聞こえる。

「どうする?Qちゃん、あたし残ろうか。」
「大丈夫ですよ。マリコさん、あした仕事でしょ?
 彼女は明日お休みみたいだから、少しここで休ませてから。」

そうそう、少し休んだら帰れるから、
車を呼んでもらって綿貫さんのところへ行かなくちゃ。

「叔父貴に電話して聞いてみた。
 40度過ぎたら解熱剤服ませた方がいいって。
 叔父貴のとこ、ここから遠いからねえ。
 朝まで待って近所の医者に行く方が正確な診断してもらえるよ。」

歯医者のご主人がQに説明している声がぼうっと聞こえる。

「Qちゃん、あの子、写真の彼女でしょう?」
「ええまあ。」「あら、チャンスかもしれないわね。」
「バカな、体調が悪い子にそんなこと考える奴があるか。」

夫がたしなめるとマリコが素直に謝った。

「そうね、ごめんなさい」

Qが何と答えたのかわからなかった。
最後にマリコ夫妻が手を振ってくれたのへ、
何とか手を振り返すのが精一杯だった。




彼女のバッグで携帯が鳴っている。
さっきから何度か鳴っているが誰からだろう。彼?

Qは向かいのソファに横たわっている美奈を見つめていた。
唇を少し開き、りんごみたいな頬をして、栗色の髪が額に貼り付いている。
Qは立ち上がってソファのそばにひざまづき、
起こさないようにそっと、髪を額からどかした。

彼女はどんな顔で眠るのだろう?

あの日撮影しながら、ずっと想像していた寝顔を、
思いがけず見ることになった。
絶えずくるくる動く表情が止まると、起きている時より整った印象を受ける。
大きな目が閉じて濃いまつげの影が落ち、ふっくらした唇は
熱のため乾いて白っぽい。

かわいそうに。

またそっと髪をなでた。
いつものエネルギーがばったり途絶えた美奈は、
動かなくなった人形のようにも見える。

こっそり写真を撮ることは許されないだろう。
だが自分には目があり手がある。
つと、ペンを取って手近の紙へさらさらと寝顔を写し取る。
1枚、2枚、3枚・・・Qは筆が早かった。

また携帯電話が鳴り出し、美奈がかすかに身動きした。
Qはそばのクッションを見た。
これをバッグの上に乗せてしまえば、音は聞こえなくなる。
そうすれば彼女は静かに眠ることができるだろう。
朝までずっとこの部屋で。
朝になったら、自分が医者に連れて行けばいい。



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