AnnaMaria

 

This Very Night 第7章 -美術館-

 

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わたしはタクシーに飛び乗ったあと、知らず知らずに高鳴る心臓の鼓動を静める為、
そっと手を胸にあてた。


・・・何だかまだ妙な気分がする・・・


さっきわたしがいたエレベーターの中にはおかしな雰囲気が漂っていたわ。
あそこにいた二人の男性の行動も少し妙だったし、
あの二人がわたしを見る視線はもっと変だったわ。

わたしは、あの二人にどこかで会ったことがあったのかしら?
だからあの人たちがあんな風にふるまったのかしら?
わたしを見て、ものすごく驚いたようだったわね。

それに、あのサングラスで目元を隠していた男性、
何でわたしのことを呼び止めたの?・・・


・・・ああ、もうこんがらがってきちゃう!・・・


わたしは、もつれてくる考えを振り払おうと軽く頭を振り、運転手に行き先を告げた。

「すみません、ニューヨーク市立美術館までお願いします」




美術館の中に入ってもしばらく、わたしは妙な気分を振り払えないでいた。


・・・わたしの中で確かに何かが警戒を発している。
でも何に対してなのかがわからない・・・
焼けつくような熱い視線が、背中にじっとまとわりついてくるような感じがする・・・


でも、何とかそんな考えを押し殺して、目の前に架けられた美しい絵画に集中しようとしてみる。

・・・いつも、いつも、美しい絵や芸術作品はわたしの心をしっとりと癒してくれる。
ここにある偉大なる作品の美の中に、わたしの慰めを見いだそう・・・


そのうちに、わたしは芸術家たちの素晴らしい作品の中に完全に没入していった。


・・・この色合い、この筆づかい・・・
たとえ長い時が過ぎていても、芸術家たちがこの作品を創りだしたときの感動を
今も感じることができるわ・・・

美術館で過ごした3時間で、わたしはとても豪華なごちそうを目だけでなく、
心にまでいっぱい味わうことができた。





美術館を出ると、冷たい空気がほてった顔と心をなぶり、しずめてくれる。
少し雪が舞っているものの、まだ太陽のほんのりとした暖かさを感じることができた。


・・・太陽の輝きの感じられる、こういう寒い日ってわたしは好き・・・


美術館の隣の小さな店で、サンドイッチとコーラを買った。
今朝の簡単な朝食に満足したわけではなかったし、すごくお腹が空いていたからだ。


べりっとサンドイッチの包みを破る。

「痛っ!」また急に頭痛がしてきた。
いったん痛みだすと、どんどんひどくなってくる。
あわてて、バッグの中に手を突っ込んで、鎮痛剤を探してみる。

・・・しまった!
急いでいたから、バッグに鎮痛剤を入れるのを忘れてしまったんだわ・・・


激しい痛みがギリギリと、わたしを責め苛んでくる!
あまりにひどい痛みに足がぐらぐらし、体を支えていることもできなくなってきた。


・・・もう立っていられない・・・


わたしはひざを曲げ、その場にへなへなとしゃがみ込んでしまった。
そうしているうちにも、顔の方にまで痛みが広がってくる。

ああ、世界が自分のまわりでぐるぐる回り始め、ひっくり返っていくような感じ。
歯の根が合わなくなって、だんだん、がちがちと鳴り始める・・・。

ついにめまいまでして来たとき、誰かが韓国語でわたしに、気分が悪いのか、と尋ねているのが
ぼんやりと聞こえた。

「頭、頭が痛くて・・・、狂いそうに痛いんです」

「薬は持っていないの?」

「ホテルにあるわ!」

わたしは激しい痛みにうめいた。

「ああ・・・痛っ!」

あまりの痛みに、両手で頭を抱えこんでしまった。


・・・わたし、わたしはあまり痛みとうまくつき合えるほうじゃないから、
頭痛が始まるといつもすぐ鎮痛剤を服んできたのに・・・

だけど今日に限って・・・
おお神様、一体何だってわたしは鎮痛剤を置いて出かけるような不注意をしでかしたのでしょう?
    おお、痛みがあんまり激しくて、涙が出るのを止められない・・・!


わたしはあまりの苦痛に大声で泣きだし、痛みに身をよじった。

・・・どうやってこの痛みをしずめたらいいんだろう、ああ、どうしたら!・・・





わたしは自分がどうやって美術館を離れ、
どうやってホテルに戻ったのかまるでわからない。

だが、ついに誰かがわたしに薬を服ませてくれた。
誰かがわたしを介抱してくれて、頼もしい声でもうすぐ痛みが消えると言ってくれた。


・・・え?と、いうことは・・・?


突如わたしは、誰かが部屋にいることに気がついた。

男性だった。

彼がわたしを腕の中に抱いたまま、とても心配そうな目でわたしをじっと見つめていた。



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出典
Original in Chinese by Jenny Lin
Translated into English by happiebb
Translated into Japanese by AnnaMaria

2004/7/15 ~ 2004/7/29, 2005/10/25 dreamyj
2004/8/5 ~ 2004/9/8 BYJ Quilt (by happiebb)
2004/8/8 ~ 2004/9/8 2005/11/30 hotelier 2002(by happiebb)

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