AnnaMaria

 

This Very Night 第27章 -謎-

 

tvn_title.jpg




     ・・・変だわ・・・
     フランクってわたしの好きなものと苦手なものが完璧にわかっているみたい。

     だって、ここの家の冷蔵庫はわたしの大好きな食べ物でいっぱいだし、
     今朝、食料品の買い出しをしてきたって軽い調子で言ってたけど、
     わたしの好物とばっちり一致するものばかり買ってきた・・・


それに、とジニョンは自分の着ている服を見た・・・。


今朝目が覚めた時、自分のイブニングドレスがハンガーにかかっているのを見て、
かなりショックを受けたのを思い出した。

おそるおそる自分の服を見下ろしてみると、おお、どうしよう!
なんだか見慣れない寝間着を着ているではないか!


     ・・・これって彼がしたの?
     ああ、全くどうしよう!本当にそうなのかしら?
     でも、そんなこと彼に聞けるわけないじゃない!・・・


ジニョンは枕に顔を埋めてしまった。




「君、起きたんだね!」


     ・・・ああ、フランクが部屋に入って来たけど、まだ顔も洗っていない状態だ
     わ!・・・


「バスルームまでお連れしてもいいかな?」


そう言うと、彼はジニョンを抱き上げてバスルームまで運んで行き、
バスタブの中にそっと下ろすと、そばに椅子を置いてくれた。
ジニョンが必要になりそうな小物を椅子の上に並べ、
ジニョンがゆっくりバスタイムを楽しめるようにと、バスルームを出て行った。



バスルームの中を見回したジニョンは、驚いて開いた口がふさがらなかった。
ベージュとクリームを基調とした、淡い色合いのゆったりした空間の中にあったのは、
全部女性用の化粧品や洗面用具だったのだ。

明るい色調のメーキャップ用品や、化粧用クリームやローション、
その他、女性用の衛生用品までそろっていた。


この空間全体の状態から、ここを頻繁に利用する女性客の存在が明らかに示されている。


     ・・・この家に誰か他の女の人がいたの?・・・


ジニョンは小物の幾つかを手に取って、よく見てみた。


     ・・・偶然の一致かしら。
     どの色も、どの香りもわたし好みのものばかりだわ・・・





フランクがやって来たタイミングは完璧だった。
ジニョンがバスタイムを終えたちょうどその時に、彼のノックの音が聞こえて来たのだ。
そして、ジニョンがバスタブから出るのを手伝ってくれた。


「ここからは手伝ってあげられないけど・・・君、自分だけで着替えが出来るかな?」


ジニョンは彼がベッドの上に並べてくれた着替えを見て、思わず息を吸いこんだ。

またしても、自分が選びそうなスタイルのもの。
新品の服ではなかったけれど、奇跡のように、服は彼女の体にぴったり合った。
彼が持って来てくれた服に着替えながらも、ジニョンはケガの痛みに時折顔をしかめた。





今、ジニョンはキッチンに座って、フランクの手際をながめている。
彼はジニョンに背を向けて、朝食の用意に忙しい。
フライパンを握る彼の指は、長くてほっそりしている。


     ・・・うーん、あの指はピアノを弾くのにぴったりね、すごく優雅な指だわ。
     でも、あなたは音楽の魔力がわからないと言っていたわね・・・


彼がキッチンの中のいろいろな調理用品や器具をいかにも巧みに扱うのを見ていると、
なんだか、急に既視感を覚えた。
この光景全体がものすごく懐かしく、前にどこかで見たような、おなじみの感じがしてくる。


     ・・・一体どこで見たんだろう・・・?


ジニョンは目を細めて必死に考えたが、結局何も浮かんでは来なかった。




「先にミルクを飲みたい?
 ああっと、君のマグカップはどこだったかな?」

「左の引き出しの中よ」


言葉が止める間もなく、彼女の唇からこぼれ落ちた。
ジニョンは思わず、手で口元を抑えた。
どうしてこんな言葉が出てきたのか、自分でもわからない。

ジニョンは彼の背中が急にこわばり、そのまま固まってしまったのを見た。

まるでスロー・モーションの動作のように、彼がゆっくりと振り返って彼女の顔を見た。
彼の目の中に奇妙な光があった。そう、奇妙な・・・


     ・・・でも・・・でも彼は今なんて言ったんだっけ?
     わたしのマグ?
     わたしのマグが彼のうちにあるって言うの?・・・


彼は左側の引き出しを開けると、マグカップを取り出した。
花模様の柄のマグだった。
彼はそこにミルクを注ぐと、彼女に手渡してくれた。



過去の記憶が急にドンヒョクの頭の中によみがえった。
週末にはいつもドンヒョクが二人分の朝食を用意していたが、
以前の彼女は空腹をまるで我慢できないタイプだった。

いつも朝食ができあがるまで待ちきれず、
空腹をアピールしようとスプーンでテーブルの面をコンコンたたいていた。
ドンヒョクはいつも笑いながら言ったものだ。


「我慢だよ、おちびちゃん!もうちょっとの辛抱だ。すぐできるからね」 


しばらくするうちに、ドンヒョクはうっかり今の状況を忘れて、ついジニョンに言ってしまった、


「我慢だよ、おちびちゃん!もうちょっとの辛抱だ、すぐできるからね」


ジニョンはミルクの入ったマグを口元に運びながらいぶかった。


     ・・・何だろう、子供にでも話しているような調子じゃない?・・・




彼の作ってくれた朝食は素晴らしかった!

ジニョンは彼がキッチンでもこんなにうまく自分流の腕前を発揮できる人だとは、思ってもみなかった。
ちょっとディナーのことも考えてみる。


     ・・・もし彼がわたしにディナーも作ってくれるとしたら、どんな感じのお料理にな
     るのかしら?・・・


ふと彼女は自分の料理の腕を思いめぐらせた。


     ・・・うーん、えらい違いだわ!・・・



「おいしい?」

「あん!」

「『あん』ってどういう意味?」

「あん、すごくおいしいわ」

彼が微笑んだ。


     ・・・彼って笑うとすごくステキ・・・


ジニョンはこんな素敵な笑顔の男性に会ったのは初めてだった。

彼の笑顔には、魔力のような、魅惑するような何かがあって、
彼が笑うと、つられて彼女もつい笑顔がはじけてしまうのだった。


------------------------------
出典
Original in Chinese by Jenny Lin
Translated into English by happiebb
Translated into Japanese by AnnaMaria

2004/7/15 ~ 2004/7/29, 2005/10/25 dreamyj
2004/8/5 ~ 2004/9/8 BYJ Quilt (by happiebb)
2004/8/8 ~ 2004/9/8 2005/11/30 hotelier 2002(by happiebb)

 ←読んだらクリックしてください。
このページのトップへ