AnnaMaria

 

This Very Night 第35章 -お返し-

 

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ジニョンはなんとかバランスを保とうとしていた・・・
近くにある戸棚にしっかりつかまると、立ち上がろうとした。

フランクは自室にいるようだし、ジニョンは彼に何もかも面倒をかけるのが嫌だったのだ。
ジニョンは自分では足がずいぶん良くなったように思っていたのだが、
どうも間違いだったようだ。

さっき、ケガをした方の足をうっかりぶつけてしまい、
思っていたほど、足が回復していないことを自覚したのだった。

これ以上バランスを保つことができなくなったので、
代わりに何かにつかまろうとした今、かなり危なっかしい姿勢になっていた。

ジニョンを支えていた椅子が不安定にぐらぐら揺れている・・・


     ・・・もう!このいまいましい足!全く役立たずじゃない!・・・


何だか気分が悪くなってきた、今にも倒れてしまいそうな気がする。
何とか、バランスを保とうともがいたが、逆に手が滑ってしまった。


     ・・・ああ、ダメ、大声を出しちゃいけないわ!
     倒れてもいけないわ!
     おお!どうしよう!・・・


ジニョンは今や後悔していた、彼の助けを求めるべきだったのだ!


     ・・・でも、今になってどうしたらいいの?
     今すぐ、彼を呼んだ方がいいのかしら?
     でも、今大声を出したら、そのまますぐに倒れてしまいそうな気がする!・・・





ドンヒョクはシャワーを浴びていた。
熱い湯が身体の上を流れ落ちるにまかせていく。
ふと、以前ジニョンと一緒にシャワーを浴びていた頃が懐かしくなった。


   ・・あの頃のジニョンは、全くの無垢な子供で、
   男と女の体の違いについても何も理解していなかった。

   君は僕を見つめ、自分をさわってみると、
   僕に触ってみようと手を伸ばした。
   二人の体の違いに興味があるようだった。

   僕はたびたび息を詰めて、君の好奇心いっぱいの、あちこち触りたがる手をどかさなけれ
   ばならなかった。
   あちこちを彷徨う君の手は、僕にしてみれば拷問にも等しいものだった。

   君は僕の顔にじゃれついて、キスをし、
   体を丸くして、自分の体を僕にこすりつけてきた。
   君は自分の体を使って、僕に親愛の情を示し、僕が好きだと伝えようとしたのだろう。

   もう、もうこれ以上・・・僕は自分の勃然とわき上がる欲望を抑えきれるかどうか、
   自信が持てなくなっていた。
   僕の意志が、いずれは肉体の欲望に負けてしまうのではないかと恐れ、
   君と一緒にシャワーを浴びるのを止めた。

   それからというもの、シャワーを浴びる時は、バスルームのドアをロックし、
   できるだけ急いで済ませるようにした。
   というのは、君がバスルームのすぐそばに座って、ずっとドアを叩き続けていたからだ。
   君は僕が拒否したのを理解できず、大声で叫んだり、わめいたりしていた。


   もうじき君が行ってしまうということがわかったとき、
   僕は再び、君と一緒にシャワーを浴びるようになった。

   この頃には、君も少し言葉を話せるようになっていて、
   僕に向かって、愛らしい、短い言葉を使い、
   全身で訴えかけて来る動きは、前にも増して魅力的で抵抗しがたいものだった。

   君は自分の胸を僕の裸の胸にすり寄せて、


   「ドンヒョク、愛してる」


   と、言うのだった。

   君は自分の指先で僕の身体の感触を確かめ、不思議そうに尋ねた


   「ドンヒョク、これなに?」



   時にはどうしても自分が抑えられなくなった。
   君の唇を奪うと、そのまま、君の愛らしい肢体全部に唇をあてて、
   僕のしるしをつけていく。

   僕の身体は、このまま続けて君を奪え、と命じる。
   だが、僕の頭はまだ醒めていて、ダメだ!もうやめろ、と叫ぶ。

   僕は、君はまだほんの子供なのだと、自分に何度も何度も言い聞かせた。

   結局、君に対する愛が、自らの肉体的な欲望に打ち勝って、
   君に触れ、君を感じていた手・・・震える手を引っ込めたのだった。


   だが、僕にとって、自分を抑えるのはますます難しくなっていった。
   君が、僕のあらゆる動きの真似をし始めたからだ。

   君は僕の胸に唇を這わせ、
   僕の乳首を唇にふくんで舌を絡め、僕の一番私的な部分に手を触れる。
   君はおもちゃで遊ぶように、僕自身をもてあそび、
   自分の行為で僕の身体に変化が起こるのを楽しそうに見ていた。

   だが・・・自分の手や唇が僕にどんな影響をもたらしたかについては、
   まるでわかってなどいなかったのだ!


   毎回、毎回、僕は自分がシャワールームの壁にもたれ、
   息を喘がせているのに気がついた。
   そこに立ったまま、自分の中の熱が冷めるのを待っていた。
   毎回、毎回、君とシャワーを浴びるたびに、自分自身との戦いのようになってしまう。

   頭の中が荒れ狂うような、困難な戦い。
   何度も君をシャワールームの外に押し出しては、頭から冷水シャワーを浴びた。
   浴びなければならなかった!
   自分の中に目覚めて来る炎をかき消すために。


   ああ、なんて苦しい、甘美な拷問だったろう!
   心をねじるような痛みが僕の中に不安を生み、
   君に対する欲望が、身体中をごうごうと音を立てて暴れ回る・・・。


   君が行ってしまってから、レオがあらゆる女性を僕に用立ててくれたが、
   彼女たちがすばらしい身体をさらし、裸で僕の前に立っていても、
   こういった女性たちには何の欲望も湧かなかった。
   ただ、ただ、こういった女性たちの前を歩いて立ち去るしかできなかった。




   だが、夜の深いしじまの中、たった一人で家にいると、ジニョンを思い出した。
   僕の手がどんな風に、君のあらゆる曲線を、くぼみをさまよっていたのかを思い出した。
   君を求める気持ちがたちまちわき起こり、多くの眠れない夜の中でも、
   ひときわ痛みを伴って、僕に迫ってくるのだった。

   けれどだめだ・・・君の姿はもうない。
   頭の中で、思いはあらゆる垣根を越えてめぐり、
   妄想はますます荒っぽく広がるばかり・・・
   冷水シャワーももはや効かない。

   僕は酒で自分を紛らわせるようになった。


   この大きな家にたった一人でいると、心を病んだ者のように、
   君の名前を叫びたくなった。
   こういった夜、酔いに任せてようやくまどろんだかと思うと、
   しつこく付きまとう悪夢で何度も目覚めるのだった。
   時には、目覚めてみると、君の好きだった服を握りしめている自分に気づくこともあっ
   た。

   しばらくして、僕の中から肉体的な欲望は去ったが、魂の方も抜け殻になっていた。
   君が行ってしまった時、僕の希望も魂も共に行ってしまったのだと、
   気づくことになった。
   君は僕の希望と魂を携えたまま、僕をずっとずっと以前に見捨てたあの国へ、
   はるかな国へと行ってしまったのだ。




   今また、僕の元に戻ってきた君のことを考えている。

   僕にとって、君はこんなにも近く、また遠い存在だ。
   こんなにも良く知っているのに、見知らぬ人のようでもある!
   君の中にいる、無垢な少女と、魅惑的な女性との完璧な融合が
   どれほど僕を焦がれさせているか。

   時折、無意識に、僕は君への愛に身を焦がしている自分を見いだしてしまう。
   長い間、忘れていた欲望がまた僕の中に炎となって燃え上がり始めている。
   だが、こんなむき出しの欲望を君に知られるわけには行かない。
   君はきっと怖がって、逃げ出してしまうだろう!

   ああ、いつかそんな日がくることがあるのだろうか、
   君のすべてを抱きしめ、あらゆる警告を振り切って、君と奔放に愛を交わせる日が!
   君の夫となり、僕の妻となって、二人でただ毎日を過ごしたい!
   君を、何度も何度も愛する自由を得たい!
   君への欲望に焼き尽くされながら、共に官能の果てに行き着きたい!・・・・




ドシン!ドッスーン!
休息室の方から大きな音が響いて来て、彼はハッと物思いから覚めた。
バスタブから飛び上がり、バスルームから飛び出し、バスルームの隣の部屋へ大急ぎで駆けこんだ。
ジニョンが床に倒れて、めそめそと泣いていた。


「どうした?どんな風に倒れたの?痛いのかい?」

彼は心配そうにたずねた。



-------------



ドシン!ついに椅子がたおれた。
ジニョンの腕は自分の体重を支えられず、ぐらっとバランスを崩すと、足を滑らせた。
ドッスーン!彼女は地響きと共に床に倒れてしまった。


     ・・・ああ、神様!わたしの足!わたしの背中!・・・


次にわかったことと言えば、
大慌ての足音が隣の部屋から、ジニョンが今いる部屋に響いて来た。
フランクが部屋に駆けこんで来て、彼女のそばにかがんだ。
ジニョンは彼の腕につかまって、起き上がろうとした。


     ・・・あら、あなたの腕、濡れてる!
     あなたの顔も髪も脚もみんなびしょびしょで、しずくがしたたりおちているわ。
     まあ、こんな寒い日なのに!水泳でもしたのかしら?・・・


ジニョンは彼を見下ろすと、突然、自分の痛みを忘れて大慌てで顔を背け、
下を向いて、手で顔を隠した。


     ・・・おお、神様!・・・


ジニョンは小さく叫んだ。


     ・・・この人、何にも着ていないじゃない!・・・


ジニョンは素っ裸の男性を見るのは、生まれて初めてだった!
しかも、こんなすぐそばで!


     ・・・あれ・・・あれは何だったのかしら?・・・


ジニョンは自分の指のすきまからフランクの方をそっと覗き見た。
フランクが本当に裸なのか、確かめたかったのだ!


     ・・・ま、まさに裸じゃない!見間違いじゃなかったのね!
     これ以上、とても彼の方を見れないわ。
     わたし、今、きっと耳まで真っ赤になってるに違いない!

     この人!なんで裸なの?
     なんでもいいから何か着てきてよ!
     何だっていいわ!・・・




ドンヒョクはジニョンを腕の中に引き寄せると、
彼女が大丈夫かどうか調べようとした。

だが、ジニョンの反応はすごく妙で、
なんとしても顔を隠し、自分の視線を避けようとしていた。
今にも頭が床にくっつきそうになっている!
できるものなら、自分の頭を地面に埋めてしまおうとしているようにさえ、思えた。


「どうして黙ったままなんだ?言ってごらん!どこか痛くしたの?」


ジニョンはそろそろと人差し指を彼に向けた、
が、はずみで彼の胸につい触れてしまった。
ジニョンの指は、まるで熱いものに触れてやけどでもしたように、
あわてて引っ込められた。


「あなた・・・あなた・・・お洋服は・・・?」


ドンヒョクは彼女の指さす方に目をやると、裸の自分を見た。
彼はどうしようもなく、笑うしかなかった。
彼女にはずい分、ショックだったに違いない。


「すぐに戻るよ!君、君はここにいて、動かないで!」


     ・・・ああ、僕の愛しいジニョン!
     もし君が僕たちの過去を思い出したら、どんな顔をするかな?

     どんな反応をする?
     僕の事を熱く抱きしめてくれるかな、
     それとも穴でも見つけて、その中に隠れてしまうだろうか?・・・


ドンヒョクはひとりで想像していた。




「おいで、ちょっと見せてごらん。君がケガをしたかどうか調べさせて」


彼は、ジニョンのところに戻るとそう言った。
今度は、服を着ていた。

ジニョンは、自分の体のお日さまが当たらない箇所を打ってしまったことは分かっていたが、
そんなにも個人的な場所を彼に見せられるわけがない、と思っていた。

ジニョンが自分の服のはじをきつく握りしめた様子から、
彼女が痛めたのは、お尻の部分だな、とわかった。
ドンヒョクは、どの程度痛めたのか、自分にケガの箇所を見せてくれるよう説得しなければならなかった。


「ねえ、僕が医者で、君に注射をするところなんだと思ってくれないかな。
 ほんのちらっと見るだけでいい。誓って、邪な考えで言ってるんじゃない」


最後の手段として


「でないと、僕は君を病院に連れて行くしか手がないな。
 本物の医者に君を診察してもらわなくちゃね」


ジニョンもこれには折れた。

ドンヒョクは、ジニョンが病院に行くのを極端に嫌がっているのを知っており、
以前、彼女を病院に連れて行って治療を受けさせるのに、どれほど苦労したかも思い出した。


ジニョンはスカートをつかんでいた手をゆるめた。
彼は、スカートをめくると、そろそろと下着を下ろした。
ジニョンは自分の下着をしっかり握ったまま離さないでいた。

ドンヒョクは彼女の柔らかい部分を調べながら、笑みをうかべた。
だが、打ち身はかなりひどく、何分も経たないのにその部分の皮膚が青黒い色に変わっていた。
彼は軟膏を持って来て少し手に取ると、彼女の柔らかな肉にすりこみ、マッサージを始めた。


「イタッ!それ、痛いわ!」

「しばらく我慢して。血の巡りをよくするのに、さすっているんだよ。
 でないと、血が凝固して痕になるから」


ジニョンは枕に顔を埋めた。


「じゃ、優しくやって!」


だが、彼女の抗議など全く聞こえなかったように、彼の手が前より強くさすっているように感じた。


     ・・・この人って自分の手の力がどんなに強いのか、わかってるのかしら?・・・


枕の下で、こっそり彼の悪口を言って、憂さ晴らしをした。


「悪いやつ!なんていじわる、えっち!・・・」


ドンヒョクはジニョンのお尻の部分の色がほんのり赤みを取り戻すまでさすり続けた。


             ・・・なんて可愛らしい丸みだろう。
             下に行くにつれ引き締まって、長い脚につづいている!・・・



彼はそこにそっとキスをした。
彼女は急いで洋服を直した。
髪がべっとりと頬に張り付いて、顔は赤かぶみたいに真っ赤になっていた。

ドンヒョクは頬に張り付いていた髪をよけてやると、彼女の耳の後ろにたくしこんでやった。
そして、ちょっと怖い顔で、彼女を見ると


「今、僕を叱ったのは何故?」

「あ・・・あなた、聞こえてたの?」


     ・・・まずいわ!ついうっかり口に出しちゃった!・・・


ジニョンはあわてて、自分の口を手でおおった。


「僕は君を助けたのに!なのに、君は僕を責めるんだね?」


そう言うと彼女をつかまえて、くすぐり始めた。


「やめて!やめて!お願い!
 どうか、ちょっと・・・やめて!」


彼のいたずらな手から逃れようと、身をよじったりかわしたりしながらも、
こみ上げてくる笑い声を止めることはできなかった。

くすぐってくる手をよけようとするたびに、彼女の髪が空中にふわっと舞い上がった。
ドンヒョクはたまらなく気持ちをかきたてられ、彼女への愛がたちまち体中に満ちてくる。
くすぐるのを止めて、彼女をぴったりと引き寄せ、熱く、貪るように唇を奪った。


                ・・・愛している!・・・


ゆっくりとだが・・・彼はジニョンがキスに応えてくるのを感じた。


     ・・・あなたのキスがあんまり熱くて、応えずにはいられない・・・。



ジニョンは彼のキスに応えた。
彼女はまたも、彼が自分の体中の空気を吸い出してしまうような気持ちがした。


                ・・・ああ・・・君からキスのお返しをもらうなんて・・・
                体中が溶けてしまいそうな気分だ!
                僕の触れる指、僕の唇に応えてくる君を思う存分味わってい
                る・・・


今や、ドンヒョクはジニョンとのキスに抱擁に、ますます溺れていった。


                ・・・ジニョン、もし、君がまた僕を置いて行ってしまうと
                言うなら、僕は死んだ方がましだ・・・



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出典
Original in Chinese by Jenny Lin
Translated into English by happiebb
Translated into Japanese by AnnaMaria

2004/7/15 ~ 2004/7/29, 2005/10/25 dreamyj
2004/8/5 ~ 2004/9/8 BYJ Quilt (by happiebb)
2004/8/8 ~ 2004/9/8 2005/11/30 hotelier 2002(by happiebb)

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