ボニボニ

 

My hotelier 23 - ジゴロ・ナイト -

 





バーラウンジの暗がりで ハイスツールにすわった ジゴロが 
脚の間にしっかりはさみこんだ恋人を 楽しそうにからかっている。


「・・・やめて・・・」
「大きな声を出すと 他の人に聞こえるぞ。」
煙草の煙が立ち込める けむった店の片隅で  ドンヒョクは 真面目に不良をやっていた。

「口を開けろよ。」
「・・・・?」

「ほら。」
カクテルに浮いた さくらんぼをいたずらそうに振る。ジニョンがしぶしぶ口を開けると
さくらんぼを手の中に隠し 代わりに指を差し入れて 恋人の舌をつかまえた。
「・・・・! !・・・」

「この口か。 僕の『決め技』はなに って 聞いただろう?」
「・・・・・・う・・・」

「ジニョン。 ・・・ちょっと無防備すぎる。 
男に向かって、“あなたはどうやって女を口説くの”って 聞いたんだぞ。」
「・・・・・・・」
「それじゃ 口説いてみせてと 言っているようなものだ。
相手が僕だから 見逃してやる。 ・・・・他の男に 絶対そんな口を 聞くな。」
「・・う・・・」

舌をきゅっとつねってから 指が抜かれ さくらんぼが入ってきた。
呆然とした ジニョンは 口もきけない。
にっこり笑ったドンヒョクが  さくらんぼの種だけ取り戻しにやってくる。


「ヘイボス。いい加減に 代わってくれよ。」
レオが 不満な声をかけ  ドンヒョクの気がそれた隙に、ジニョンが逃げ出した。


------ 


パタパタとヒールを鳴らして バーラウンジから走り出る。
ジニョンの鼓動は 耳まで駆け上がっていた。
控えの部屋にすべり込み 慌てて 服を整える。

「は・・・・・・」
あれは 誰?  あれが  ・・・私の優しいドンヒョクssi?


カチャ・・・

「ああ ここか」
「きゃっ!」

すい と ドンヒョクが入ってきた。後ろ手にカチリと ドアを閉める。
「いきなり逃げるから。 ふうん・・・・客がいるから ここで?」

何、何、何を言っているのと慌てるジニョンを無視して ドンヒョクが近づいてくる。
くいと あごをつかまれて いとも無造作に唇をふさがれた。

「ドンヒョクssi・・・・なの?」
ジニョンは しどろもどろになってしまう。
「君には 僕以外に キスを許す男がいるのか?」


「だって・・・あなたじゃ・・ない・・・みたいだもの・・・・。」

ジニョンの声がゆるくなった。


―ああ、ジニョン、 楽しかったのに。 泣かせることはできないから もうオシマイか。
仕方なく 残念そうなドンヒョクが 種あかしをする。
「だって 『ちょっと不良な大人の一夜』なんだろ?今日は。」


「え?  ええ・・そう。今夜は ・・・・・え?じゃあ それで?」
「雇われジゴロとしましては それらしく演じているのだから。ソ支配人も合わせなきゃ・・」



バイトのジゴロがにっこり笑う。  手近な椅子を引き寄せて座り 恋人を膝にすくい寄せる。
やっと恋人の顔を見つけたジニョンが 安心したように微笑んだ。


「ドンヒョクssi。 ランドリーに出したら あなたの紳士は 縮んじゃったのかと思ったわ。」
「冗談じゃない。 僕は紳士だ。 君のいやがることは 絶対しない。」


そう言いながら ドンヒョクの指が ジニョンのボウタイをもてあそぶ。するりと引くとタイがほどけた。
襟元を きれいな指がなでてゆき ジニョンが 少し身を硬くする。

「でもさ・・・ 今夜は僕 雇われの身なんだ。 人使いの粗い社長に使われて 
まじめに 不良を しなくちゃならない・・・・・・。」

そしてハンターは笑顔をおさめる。 恋人の頬に手を添えて そっとジニョンをのぞきこむ。
「・・・・・・・・キスして いい?」
「ん・・・」

ドンヒョクが 恋人にキスをする。 ・・・ちょっと不良な大人のキス。
歯をわって 甘い舌がやってきて ジニョンの舌を撫でてゆく。
うかうかと誘いにのって舌を預けると さんざんに吸われて ジニョンの意識が遠くなる。

「は・・・・・・」
やっと息をしたジニョンに ドンヒョクが笑う。
「ここじゃ だめ?」
「ここじゃ ・・・だめ。」

じゃあ あきらめようと ジゴロが言い。唇を胸元にもぐらせる。
今度は そこをさんざん吸われて ジニョンは力が抜けていく。
「紳士だって・・・  言ったくせに・・・」


もちろん 君の 嫌がることはしない。 ・・・・だけど ジニョンは 嫌がっていないよ。
「それに僕は 許してもらったキスしか していない。」

そんなキスは反則よ。 ちょっとふくれてジニョンが 言う。

まだ・・・ 先があるよ。 

ジニョンを椅子に座らせて ドンヒョクがにこにことひざまずく。
「・・・・だめ。」
「キスしか しないよ。」

それはだめ というジニョンの声を もちろん ジゴロは聞き流す。
ちょっと不良な恋人のキスに  ジニョンはもう立ち上がれない。



------ 


「なんだよ、あいつ。レオさんに押し付けて・・・・。」

カンを取り戻したレオのオールインに感心しながら ハン・テジュンがむくれている。

「ボスから 社長に伝言だ。 “不良の得意技は フケること”だって。」

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