ボニボニ

 

My hotelier 29 - ふたりのデート先 - ドンヒョクの休日②

 





早朝のソウルホテル。 
気の早い蝉が鳴きだして、今日の温度を上げてゆく。

まだ 爽やかな空気を裂いて シン・ドンヒョクが走ってくる。

つっと流れる汗。
ヴィラのアプローチに置いた ミネラルウォーターとタオルをすくい取り
大股でヴィラへ入ってゆく。

シャワーを浴びた ドンヒョクが ふとベッドに眼をやった。
くしゃくしゃとまとまったシーツの山に  行儀の悪い きれいな脚。
「?」

―しかたがないな。・・・寝過ごしたのか。

華奢な足首をつかんで やや乱暴に引く。
「ジニョンさん、 遅刻だ。」


バタバタと起きだす・・・・ と思ったジニョンの足が シーツの中に 縮んでいった。
「・・・・・有給取れって 言われたの・・・・・。」

「誰から? ・・・・ハン・テジュン?」 

がばっ!
ふくれっ面のジニョンが  シーツから飛び起きる。

「誰から・・・ですって?」
「総支配人と 料理長と ハウスキーパーと ベルパースンと ビジネスルームのセクレタリと
コンシェルジェと リペアラーと ガーデナーと ドアパースンからよ!」

「・・・・・ワオ、それは 寄ってたかってだ。 君、嫌われているの?」

あなたのせいでしょう と ジニョンがうるさい。

「何だか わからないけれど・・・
  僕が休みだから 皆 気を利かせてくれるんだね。」

うん、なかなかいい作戦だったと ハンターは自讃する。
ではお言葉に甘えまして。 ドンヒョクが いそいそベッドに上がりこむ。


「だめ!」

「総支配人と 料理長と ハウスキーパーと ベルパースンと ビジネスルームのセクレタリと
コンシェルジェと リペアラーと ガーデナーと ドアパースン に言いつけるぞ。
“ジニョンが やらせてくれません”。」
「いっぺんで・・・おぼえたわね。」

ジニョンは 驚く方に気がそれて。 ハンターにやすやすと組み敷かれる。

「愛してるよ・・・。」
唇を寄せるドンヒョクの 頬をはさんで ジニョンが言った。
「ねえ! どうせ休みだから デートをしましょう。 実は 行きたい所があるの!」

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明るい光のソウル市内を シン・ドンヒョクの車が走る。
ついた所は 最近オープンしたばかりで 話題を集める ・・・・ホテルだった。
「スイートルームは 空いていますか?」

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ふむふむと ロビーを見まわしていたジニョンが カードキーを見て驚いた。
「・・・何で チェックインするの?」
「君は 素人か? ホテルの価値は チェックインしないとわからないものだ。」
「ま・・・」


ひさしぶりの 恋人達が レストランで食事をする。

「あの メートル・ド・テール(給仕長)  良く眼が届いているわ。」
「4×17・・・ウエイティングバーを入れて76席か。 落ち着けるサイズだな。
・・・・ねえ でも、ジニョン・・・ 今日は僕たち デートじゃないのかな?」

「そういうドンヒョクssiは なんでPDAに メモを入れてるの?」

その時 2人は知らなかった。
“只者じゃない” 二人連れに このホテルのホテリアー達が 戦々恐々としていた事を。


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「うわあ、・・・なんでスイートなんか? 高いでしょう。」

「・・まったく ジニョンは 文句が多いな・・・・。 上のランクの部屋を見るほうが 参考になる。
君は少し 僕に感謝するということを おぼえるべきだと思うけど。」

それでも ジニョンは上機嫌だ。アメニティセットを調べ、
枕を当ててみる。 照明を点けてみる。 空調を加減する。


―本当に ホテルが 好きなんだな・・・・。
可愛い僕のhotelier。  まるで 遊園地に遊ぶ子どものようだ。
ドンヒョクは まぶしげに恋人を見る。

僕の運命を変えた ジニョンの誘い。

“ソウルホテル。とても美しいホテルですよ。
一度いらしてください。最高のサービスでお迎えします。“

ソウルホテルにチェックインしなかったら 僕は 今頃どうしていただろう。
切ない気持ちになったドンヒョクが 愛しい人へ 手をのべた。

「・・・・・え?」
「ジニョン。 おいで。」

甘くなったドンヒョクの声に ジニョンの笑いが 薄くなる。
うるんだ眼差しに つかまえられて 恋しさに 少し 戸惑う。
「おいで、ジニョン。」
ドンヒョクの声が 優しかった。

ドンヒョクに抱き取られたジニョンが そっとベッドに置かれる。
「ベッドのスプリングも・・・確かめようか?」
「・・・もう・・」

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ドンヒョクの強い動きに キングサイズのベッドは キシとも鳴かない。
責められるジニョンが 代わりに泣いた。
「・・・あ・・あ・・あ・・あ・・・・、・・・ドンヒョク・・ssi。」
「ジニョン・・」

ジニョンの身体が 大きくしなる。
何かを探すように動く手が 切なげにシーツをつかむ。
たまにベッドを変えるのもいいな。恋人の感じやすさに ドンヒョクが満足する。

「ドンヒョク・・ssi。 ・・あ・・・・・すご・・・く・・・・いい・・。」
「!」

ドンヒョクの動きが 止まった。
「・・・・・今・・・・ なんて言った?」

信じられないような顔で ドンヒョクが恋人をのぞきこむ。
小指で ジニョンの乱れた髪を 壊れもののようにすくって 直してやる。

「・・・ジニョン もう一度言って。」
「・・・・・もう 言えない。」
恥ずかしがりの恋人が 思わず言った自分の言葉に 真っ赤になった。

「ジニョン。ねえ、・・・・なんて言った?」
「・・・・・・言えない。」

それじゃ言うまで 責めてやると 有頂天のハンターが陽気に言って
だめだめと ジニョンの声が ・・・・だんだん 甘くなってゆく。


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「はい、ええ、・・え? ・・・いや、ただの市場調査ですよ。
M&A?とんでもない!うちがそちら様となんて、自分達だけで 手一杯ですから。」


―ドンヒョク・・・あの野郎! ジニョンを他のホテルに連れ込みやがった。

電話を切ったハン・テジュンが 眉根をつまむ。 

―お前ら ホテル専門のM&Aハンターと ソウルホテルの支配人だぞ!
何しに来たかと 他人様を ビビらせているんじゃない。


「まったく・・・。うちのスタッフを困らせるのに飽きたと思えば・・・」

恋人たちが 甘い時間を過ごしていた時、
社長室のハン・テジュンは むっつりと 頭を抱えていた。

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