ボニボニ

 

My hotelier 32 - ジニョンに 触るな - 

 





「アメリカン倶楽部の・・・・パーティ?」

「申し訳ないけれど パートナー同伴なんだ。勤務を調整してくれない?」

「ハンターさんも パーティなんか 行くのね。」
「ジニョン・・・・。 ある程度以上の仕事は 人脈がないと 動かせないものだ。」
「ねえ・・。でも ドンヒョクssi・・・・・私で いいの?」

―いいの? も何も。 パートナー同伴だって 言ったじゃないか。
「まさか レオに カクテルドレスを着せて 連れて行けと 言うんじゃないだろうな。」

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― ・・・・こんなに きらびやかなパーティ。

ジニョンは ひどく気後れがしていた。
政財界の有名人に 様々な国籍の セレブリティ。

―完全に 私には 場違いの世界だわ。

「どうしよう。こんな席・・。」
まさか お皿を下げるお手伝いも出来ないし・・・・・。

ドンヒョクssi、・・・・離れないで。
ジニョンは ドンヒョクの脇に ぺたりと貼りついていた。

ディナーコートのドンヒョクは 水際だった美しさで
横に立つ恋人の腰を軽く抱き 優雅に人々と会話する。

「私って・・・・。 ドンヒョクssiの ポケットチーフみたい。」
いささか 自嘲気味に ジニョンが苦笑した。

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「失礼・・・・。 もしかして ソ・ジニョン・・・・?」
背中で 聞いたことのある声がした。

振り向くと 大柄な紳士が立っている。
「え?・・・あ、ミスター・ジェフィー! まあ、こんなところで・・・、今晩は。」


ソウルホテルの 上得意VIP。 陽気なお父様みたいな方。
いつも担当のジニョンを 明るく 口説く。
 “家内を まくから 今夜デートしてくれ!”

そのくせ 大変な愛妻家の 素敵な紳士だった。

「ワォ、本当に君か。 おいおい これは綺麗だな! ソ・ジニョン!
ダーリン、ほら! ソウルホテルのソ支配人だ。」
「まあまあジニョン! 今日はゲストなの? じゃあゆっくりお話ができるわね。」

「だめだめ、ダーリン!こんな機会はめったにないんだから。今夜は 俺の独り占めだ。」
「ま! じゃ あたくしは どうするの?」
「ジニョンは・・・・誰と 来ているんだ?」 


背後の騒ぎに ドンヒョクが振り返る。
ミスター・ジェフィーが 少し驚いた。

「おい・・・ こいつが俺の想い人を かっさらった奴か?
まいったな レイダースのシン・ドンヒョクだろう? 許せんな。純情なジニョンをかどわかすとは。」
「?!」
「シン・ドンヒョク。今夜は 特別に! 
・・・・君に私のダーリン 愛しい妻を貸してやる。私はジニョンとダンスをしよう。」

ダンスだ!音楽を!と言いつけられて 慌ててバンドが 演奏を変える。
有無を言わせずジニョンを連れて ミスター・ジェフィーが フロアの真ん中に進んだ。

「許してあげてくれない。ミスター・シン・・? うちの人 ジニョンが大好きなのよ。」
「ええ・・・・・。 では 奥様。踊っていただけますか?」
「まあ、これは どうもハンサムさん。 光栄だわ。」


―すごい大物を 知っているんだな。
いささか虚をつかれて ドンヒョクが 苦笑する。

―そうか・・・ ジニョンは VIP担当じゃないか。

韓国政界の大物が ジニョンを抱えて嬉しそうに踊る。
ダンスをしながら 目で追いかけるドンヒョクの 顔が 少し引きつっていた。

―おい・・・ ちょっと 触りすぎじゃないか? 
  
「なんだ! 貴様。許さんぞ!」
よく通る声が フロアに響く。 ミスター・ジェフィーに負けないほど恰幅の男が憤っていた。
「ソ・ジニョンを よこせ。 彼女はいつも 俺の担当なんだ!」

知った顔の銀行頭取が ジニョンを奪って 踊りだす。
「何だよ、ソ支配人。 ・・・ホテルを抜け出す時は 私に まっさきに教えてくれよ。
今夜はいつもの “私的な時間は過ごせない規則です” は  言わないんだろう?」

でれでれと やに下がる頭取から 政界大物が ジニョンを取り戻す。
2人の大物の 子どものような喧嘩に たまらず 周囲が笑い出した。

ミセス・ジェフィーが呆れて 鼻を鳴らす。
「あらあら・・・ ミスター・シン。 貴方 行かなくちゃ。」
「ええ、・・・・失礼。」

大股で近づき 二人からジニョンを取り上げたドンヒョクが これ以上ないほど憤然として 言った。
「ジェントルメン!  ・・・僕の フィアンセです。」

フロアは 水を打ったように静まり返り やがて どっと笑い出す。

たった一言で シン・ドンヒョクは 韓国政財界に 温かく認知された。
『ソ・ジニョンの 恋人』

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「やめてやめてやめて ・・・ドンヒョクssi!」

カンカンに怒って腕まくりしたドンヒョクの小脇に抱えられて ジニョンがバスルームへ連行される。
洗濯物のように ごしごしと洗われて バスタオルごと ベッドに放られる。

「きゃあ!」
「まったく! あんな・・・  許さないぞ!」

馬乗りになったドンヒョクが タオルでジニョンを拭いてゆく。
「痛い痛い・・・もうっ! シン・ドンヒョク! 私 何もしてないじゃない!!」
「ジニョンのことは 怒っちゃいない! あのデブ2人だよ!」

ドンヒョクは そして 濡れたシャツを脱ぎ

もう一度 ジニョンに馬乗りになる。


「デブ親父どもに 何か されなかったか!」
「・・・・何よ、あなた。 ずっとにらんでたじゃない。・・・・ダンスしただけでしょ。」 

彼女のダンス相手は僕だけなのに ジニョンにべたべた触ってと ドンヒョクが不機嫌だ。
VIPが触れたすべての場所へ 消毒と言って 無理やり 唇を当ててゆく。
「もう・・・・・・ ドンヒョク・・・ssi・・・・」

まったく 腹立たしい・・・。 ドンヒョクは 少々 ジニョンに八つ当たり気味だ。
嫉妬にまかせて 恋人を抱くハンターは 彼女の反応を 見ていない。
誰にも盗られないように  しっかり身体に組み敷いて 遠慮なしに愛してゆく。


「・・・・・・・! ・・・・・あ・あ!!」

愛しい人の 大きな声に  ドンヒョクが びくりと 動きを止めた。
「ジニョン?・・・・どうし・・・・」

紅潮したジニョンが  うすく涙をにじませている。
唇がほどけて 切なそうな息づかいで ふるえている。
「・・・痛いの?ジニョン ・・・・・ちょっと・・・、乱暴だっ・・た・・・かな?・・・」

おろおろと ドンヒョクがジニョンの頬をなでる。

ハンターの胸の下 可愛い獲物が涙まじりに  じれた腰を 揺らした。
「いやよ・・・、ドンヒョク・・・・・ssi 、やめ・・・ないで・・・!」
「え・・・? あ!・・・」

恥ずかしがりやのジニョンが しなやかな魚のように 大きく 跳ねる。
腕から出て行きそうな恋人を ハンターが 慌てて捕まえた。 
「・・・・・・・・ジニョン・・・?」

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ソウル市内。
フランク・シンのオフィスへ やたらと パーティの招待が届く。

「なんだい?これは?」
レオが 封書の山に 首を傾げる。
「・・・パートナー同伴は 皆 断れ!」


あんなに 感じやすくなってきた恋人を ・・・・誰が 連れて行けるもんか。
“僕だけのものだ。  絶対 誰にも 触らせない。”


PCモニターの数字を 覗きながら ちょっと嬉しいドンヒョクは  

昨夜のジニョンを思い出して 口元の笑いを押さえつけていた。

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