ボニボニ

 

My hotelier 40 - ご家族のかたは? - 

 




ジェニーが 仕事中に 倒れた。

“大した事はありません。暑気あたりからくる 脳貧血ですね。”
医務室の医師はそう言ったが 
念のためにと ハン・テジュンが 病院での検査を命じた。

「どこだ!ジェニー!」
「あら、ドンヒョクssi・・」

廊下で待つ ジニョンのもとへ 蒼白のドンヒョクが駆けてくる。


どうしたんだどうなったんだと それは大変な剣幕の彼の手を握って 
ジニョンが 柔らかく微笑んだ。
「ジェニーは・・・・大丈夫よ。 念のため の検査なんだから。」


その時 看護婦が声をあげた。
“ジェニファーさんの ご家族のかたはいませんか?”

「・・・・・・・・!」
「・・・・あの・・・ジェニファーさんの ご家族のかた?」

「・・・・・・・・」

「ドンヒョクssi?」

ドンヒョクが 見事に 固まっている。
まるで これからプロポーズでもしそうに まじまじと看護婦を見つめながら
自分の半生にはなかった “その言葉”に 呆然と立ち尽くしている。

そっと・・・ 
ジニョンが恋人の腕を 揺する。  魔法の解けたドンヒョクが ようやく声を出した。

「・・・・・・・ご家族のかた?」
「あ・・の・・・僕です。ジェニファー・・の・・・兄です。」


おずおずと 『家族』を 名乗るドンヒョクに ジニョンが温かく微笑んだ。

そうよ 愛しいハンターさん。 ちゃんと おぼえて・・・。
あなたは もう 1人ぼっちなんかじゃない。

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「だめだ!ホテルに戻るなんて とんでもない。」

大体 あの医者め 入院の必要がないなどと 無茶な事を言う・・。
ハンドルを握るドンヒョクが 問答無用と 妹を切りすてる。

「料理長には 休暇をもらった。 オッパが仕事を休んで看病してやるから 心配しなくていい。」
「助けて・・・ジニョン義姉さぁん。」
微笑ましい兄妹の言い合いを ジニョンは クックと笑って聞いていた。 



「大体遅刻しそうだからって あの坂を一気に駆け上がったのがまずかったわ。
私ね 通勤に スクーターがあればいいな~って 前から思っていたのよ。」

「そうねえ・・スクーターがあれば いい距離よね。」

家に帰ったジェニーが言い出して ドンヒョクが 氷の眼を向けた。
「バイク・・だって?」
「スクーター。」
「だめに 決まっているだろう。そんな危ない物。通勤が大変なら 運転手をつけようか?」

どこの世界に 運転手つきで通勤するコックがいるの。
ジェニーが怒り これで話は終わりだと ドンヒョクが言い放った。

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「・・・・あ・・・あ・・・・」
「こら。病人が 向こうの部屋にいるんだから 声を出しちゃだめだよ。」

声を出させるような事をしないでよ。 ハンターの我がままに ジニョンがふくれる。

「妹の看病なんでしょう? あっちに寝れば いいじゃない。」
「そうしたらジニョンが寂しいだろう? 僕は恋人に 寂しい思いはさせられない。」

「じゃいっそ 3人で寝れば 合宿みたいでよかったかな。」
「いたいけな妹に 刺激的なシーンを見せるのは 教育上いかがなものかと思う。」  


だ・か・ら そういう事は しないのよ。それは無理だよ 君と一緒に寝て。
こそこそと愛を交わしながら 恋人達が話している。

「でも・・ 買ってあげればいいのに スクーター。妹のおねだりは 可愛いでしょ?」
「君がそんなに冷酷な人だとは知らなかった。バイクでジェニーが命を落としたらどうする。」
「スクーター・・・・。
 だってここからホテルまで 危ない道じゃないでしょう。」

その話は終わりだと またもドンヒョクが言い放ち。 
動き始めた恋人に ジニョンが 唇をかんで声をこらえた。

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しかし 結局ドンヒョクは スクーターを買った。
なんだか 間抜けなロボットのような オレンジ色の可愛いらしい奴。
自転車の親分くらいの速さで パタパタと 軽快に走る。

「やったわね。ジェニー! うまくいったじゃない。」
「ジニョン義姉さんのおかげ!教えてもらったとおりに
 “買ってくれなきゃ 大嫌い”って・・・。 そう言ったときの オッパの顔ってば・・クク」
「ふふふ・・内緒よ。今のところ このセリフ勝率100%なんだから。」

悪だくみを成功させた女2人が ホテルの裏でクスクス笑う。
「でも 可愛いわね。このスクーター。ちょっと乗ってもいい?」

バウン!
「キャー!」

とぼけたデザインにだまされて スクーターに乗ったジニョンは
庭の茂みに突っ込みながら 運転の出来ない自分を 思い出した。

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「どこだ! ジニョン!」
「あら、オッパ・・」

廊下で待つ ジェニーのもとへ 蒼白のドンヒョクが駆けてくる。
どうしたんだどうなったんだと大変な剣幕の兄に 呆れたジェニーが鼻を鳴らす。
その時 看護婦が声をあげた。

“ソ・ジニョンさんの ご家族のかたはいませんか?”

「!・・・・・・・・」
「・・・・あの・・・ソ・ジニョンさんの ・・・・・ご家族のかた?」
「・・・・・・・・・・」

―あ~あ~。 見事に固まっちゃって。
 ・・・・オッパ。 そんなに思いつめた顔で 看護婦さんにプロポーズでもするつもり?


ジェニーが ツンと 肘でドンヒョクを突く。
どぎまぎと 本当に どぎまぎと 顔を少し赤らめて 血も涙もないハンターが言う。


「・・・・・ご家族の かた?」


「あの・・・僕・・・・です。ソ・ジニョンの・・・婚約者です。」

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