ボニボニ

 

My hotelier 56 - ブロンド② - 

 




大きなヤマが成功すると いつもジミーが別荘に誘ってきた。

でかいヨットに 酒と女をいっぱい乗せて。


ブロンド好きのレオは それが結構楽しみだった。
まあ・・・ 僕も・・・  何度か レオにつきあった。
決して褒められはしない過去。
その過去が ソウルにやってきた。

「・・・・・」

シン・ドンヒョクが 眼をつぶる。
「神様。僕はジニョンを ひどく傷つけてしまったでしょうか?。」

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ドンヒョクが 静かに寝室のドアを開けた。


ジニョンは 枕を背に ベッドの上で膝を抱えて 
じっと 恋人を見つめている。
切り出しかねてハンターが ベッドの端に そっと腰を下した。


「・・・話を させてくれないか?」
「それは ・・・・私が聞いて嬉しがるような 素敵な話?」
「昔のこと・・・」


もういい。事情は2人に聞いたから 何回も聞きたくはないの。
「ジニョン! その・・ 君が怒るのは 当然だけど。」
「・・・・・ドンヒョクssi。」

ジニョンが 哀れむように恋人を見た。

「あなた程の人に 女性がいなかったなんて思っていないの。」
「・・・・すまないと ・・・思っているよ。」
「ドンヒョクssi。私は 謝って欲しいわけでもない。」
「・・・・・」


不自然な程に ジニョンが冷静だ。 
完璧な対応。
ネゴシエーションの鉄則。 そうだその戦い方は 僕が教えた。 でも・・・・ 


ぽろり・・。

ジニョンの大きな眼から涙がこぼれて ドンヒョクを凍らせる。

―ジニョン! お願いだから 泣かないで。


恋人が 悲しげに手をのべた。 おずおずと ドンヒョクがにじりよる。
うなだれるハンターの首に手を回して ジニョンがつぶやいた。

「寂しい時間の 中にいたのね。」
「・・・・ジニョン?」
「ドンヒョクssi。 いつも愛してるよって 私を抱くわ。」
「・・・・・」
「ジェーン達とも・・ たとえ一時でも ちゃんと愛し合えた?」
そして 僕は絶句する。
君はいつでも 呆れるほど正しい事を 僕に・・・ 教えてくれるんだな。
 

君が 昔のフランクを哀れんで 泣いてくれる。
「そうだね・・・。」
確かに僕は 大事な事を忘れて生きていたのだろう。

 
―ジニョン。 あの頃の僕は乾きすぎて・・周りなんか見えなかったんだよ。
 人生は 勝ちか負けしかなくて。 「敵」だけを見据えて生きていた。


「・・ごめん。」
「私には 謝らなくていい。でも 彼女達に悪かったと言うことを忘れないで。」
「うん・・・。」 

この話はこれでおしまいにしましょう。もう二度と そんな事はないのよね?
ため息まじりに 恋人が言う。
「もちろん。 僕には 君がいるんだもの。」
「お役に立てて 嬉しいわ。」


神様。 どうやら僕は ジニョンに見捨てられないらしい。

「彼女達・・私が 気に入ったそうよ。」
「え?」
「一緒に屋台に行ったわ。」
「ええ?」
「あなたの・・・悪行。 たくさん教えてもらったわよ。」


ジニョンの声に いたずらな色が混じってきた。
僕は多分しばらくの間 締め上げられることになるのだろう。

「女性の敵ね。 許さないわよシン・ドンヒョク・・。私 怒る権利はあるわね?」


・・・神様 ありがとう。
いくら怒られてもかまわない。 ジニョンが 僕から去らないかぎり。

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「ジニョン。彼女達・・どうして ソウルに?」
「何だか 都合の悪いことがあって しばらく国外に逃避するんですって。」

―ジミーか。・・・危ない橋を 渡ったのか?


「ねえ ジニョン・・。」


ぱし!
恋人の肩を抱こうと そっと伸ばした手が 叩かれる。
「怒っているって ・・・言ったわよ。」


ジニョンに打たれた手を うつむき加減にさすりながら
それでもドンヒョクは 柔らかく安堵する。

「あの娘達 ・・食事でもご馳走しようか? それとも 観光にでも連れて行く?」
「そうね・・・。いえ やめて! やっぱりだめ!」


ゴージャスなブロンド2人を 横にはべらせたドンヒョクを想像する。
それは ものすごい光景でしょうね。

「2人とも とびっきりの美人よね・・。あなたと並んだら・・それはすごいわ。」
愛しいジニョンが ため息をつく。
「さすがに妬けるわ。・・やっぱりだめ。」


妬いてくれるのなら・・希望は あるのかな。
ハンターが そっと恋人の手を握る。
「ジニョンの方が ずっと 素敵だよ。」


ばしっ!

―当分 大人しくしていなければな・・。

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「レオ。その書類は 今日明日でなくていい。」


-ボスがまた 珍しい事を 言うもんだな。

「ジェーンとバーバラ って憶えてるか?」
「誰だよ それ?」
「お前・・・ 薄情な奴だな。(僕も忘れていた) 
   ジミーの別荘の ヨットのブロンドだよ。 ほら・・」
「ワオ! あの派手な2人か?! 彼女達がどうした?」
「ソウルに来ている。 レオ 頼みがあるんだ・・・。」


ニコニコ顔のレオに 2人の『接待』を言いつける。
機嫌よく 帰ってもらってくれないか。
「金は好きに使え。 ・・・僕から せいぜいよろしくと言ってくれ。」


―アメリカンドリームの1つが 女の形になったような
 陽気で 気のいいブロンド達。
 ひどい話だよな 確かに・・。
 あの頃は 彼女達が マネーゲームの景品だった。

ドンヒョクは フランクと呼ばれた日々を振り返る。
ジミーのヨットも別荘も  今では遠い悪夢になった。

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翌日 2人はチェックアウトしていった。
「ジ・ニョーン! またね!」と派手な 投げキッスをして。

「しかし すごい美人とお知り合いなんですね 理事も・・。」
ついヒョンチョルが 本音をもらす。

「あ・・・ すみません。」
「いいわよ。」
毒気を抜かれたジニョンが笑う。あそこまで豪華じゃ文句も出ないわ。


そして ジニョンの退勤時間。

従業員通路は 大変な騒ぎになった。

「ジ・ニョーン! 遊びに 行こ!」
「ヤタイ! ショッチュー! トクポッギ!」

まるで天から降ってきたような 豪華でセクシーなブロンドに 
周りの男性社員のあごが外れる。
ジニョンの口も ポカンと開いた。

「ジェーン・・・バーバラ・・・どうしたの?」

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「・・・・なんて言った?」

ドンヒョクが  オフィスでレオに眼を剥いてみせる。


「すごく気に入ったんだとさ ソウルが・・。当分滞在するって。」
「滞在って‥。 おい ソウルホテルにか!」
「俺の家だよ。」

「レオ・・お前。」
このブロンドフリークめ。 彼女達には 機嫌よく帰ってもらえと言っただろう?
射抜くような眼で部下を見るボスに 
忠実な部下が ため息をついた。


「ボス・・。 彼女たちの脅し文句を聞きたいか? 震えるぜ。」




“だめなら 仲間を みんな呼び寄せるわよ”

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