ボニボニ

 

My hotelier 67. - 最高のアクセサリー - 

 




トリップ―出張― の 最終ポイント N.Y.シティー。



この街には もうずいぶんと 秋めいた風が吹く。
ウォール街を抜け出したハンターが トライベッカに向かう。 
戦場を後にした彼は うきうきと ただの恋する男に戻っていた。


“高価なプレゼントがいいとは限らないわ。ドンヒョクssi・・・”

そういうジニョンは 本当につまらない物に喜ぶ。
万華鏡に、小物入れ・・。
ドンヒョクの理解を超える ガジェット-がらくた-達。

「いらっしゃいませ。 ハーイ!Frank お久しぶりね。」
バラエティーショップのスタッフが にこやかにハンターを迎える。
「また 恋人にお土産?」
「ああ・・頼むよ。僕には お手上げだからな。」


前回出張の際 この店でチョイスしてもらった“がらくた”が 
ジニョンの趣味に ストライキングだった。
「こんなに 沢山買うの? 随分と 彼女にイカレちゃっているのね?」
「クラクラさ・・。」


不思議な 感覚。 
この街で冷血と言われたハンターが 店員相手に軽口を叩いている。

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大きなショッピングバッグを抱えて ドンヒョクが店を出る。
キャブでも拾おうか・・・。 見回した眼が 一軒のウインドーに留まる。
シンプルなラインに 凝った生地使いの 美しいドレス。

―あぁ・・ジニョンが着たら 素敵だな。

思うと同時に ドンヒョクの手が ブティックのドアを開けていた。



「お召しになる方がご一緒じゃないと 難しいですよ。
 シンプルですが ジャストサイズで着ないと 様にならないデザインなんです。」


「ふぅ・・ん。」

ドンヒョクの手が ドレスを着せたボディを そっと引き寄せる。
「!」「!」
見ているスタッフが 思わず頬を赤らめるほどの  それは愛しげな抱擁。
長い指が背中をすべり マネキンの腰を柔らかくつかむ。


「大丈夫・・・ぴったりだな。」
納得した様に ハンターが振向くと
ぽかんと見ていた 店のスタッフが 慌てて口を閉じた。
「お・・買い上げ ありがとうございます。」

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ドンヒョクが 帰国した夜。
サファイア・ヴィラは ちょっとしたバザールだった。
「・・・・・オモ。」
「君に浪費と言われないように ・・高いものは 買っていないよ。」

あんぐり口を開けた恋人を そっと横目で窺いながら
ドンヒョクが 言い訳がましい事を言う。

「・・・まさか。 返して来いとは言わないだろう?」



「ドンヒョクssi・・。これは お土産というより“輸入”ね。」
「嬉しく ないのかな・・・?」

心配そうなマイハンター。贈り物を突き返された思い出が あなたを怯えさせる。
彼の首に腕を廻して嬉しいと言うと ふわり 柔らかい笑顔になった。
「このドレス・・・。きっと似合うよ。」

まあきれい。でもちょっと小さくない?  賭けてもいいよ ぴったりだ。
ドレスを抱えて ジニョンがパウダールームに消える。
きゃあと嬉しげな声がして ハンターを得意にさせた。

「・・・何だ それ。」

ドレスに着替えたジニョンの姿に 思わずドンヒョクが 眉をひそめる。
白いボディマネキンが着ていた時は 気がつかなかった。
凝った生地は 胸から下が半分透けて 
ジニョンの華奢なウエストがレースの向こうに ほの見える。

「素敵ね。これ 来週のパーティに着て行こうかな。」
来週の? トドとデブ2が来るじゃないか。
あいつらが見たら 涎を垂らしての大喜びだ 冗談じゃない! 

「それは・・・だめだ。 部屋着にしなさい。」
「部屋着ぃ?!」
―こんな部屋着が あるもんですか。ねずみとダンスでも踊れって?


もちろんジニョンは引き下がらない。 確信犯の上目遣い。
「今年 こういうの流行っているのよね。 ・・・着たいな。ねえ?」
「・・・・。」
「着るものがないなら キャミソールでパーティに行こうかな。」
「・・・・ジニョン。」

恋人に 弱いハンターが ついに降参の眼をつぶった。

「必ず僕の30センチ以内にいること。それが そのドレスを着る条件だ。」

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「もう! いい加減にしてドンヒョクssi。どうしてずっと触っているの!」


か細い腰をつかむ手を ジニョンが振り払おうとする。 
「だって・・こんなに透けるじゃないか。やっぱり止せば良かった。
 だいたい 僕から30センチ以上は 離れないという約束だろ?」

「3センチと離れていないじゃない! もう! 人前でそんな風に触らないで。」
「人前でって・・じゃあ 物陰に行く? 僕は・・いいけど?」
「もう!いったい 何を言っているの?!」

恋人達が喧喧と パーティの隅で話している。
もめる2人を背中にしながら トドとデブ2が そっと祝杯を上げた。


「・・・いやぁ 眼福、眼福。 いいものを見ましたな。」
「ドンヒョクのでかい手が 華奢な腰をつかんで・・・な。」
「ふふふ。 たまらんな。大変な妖艶さだ。」

そして2人は振り返り 並んで カマボコ型の眼を向ける。

ジニョンの美しい腰が揺らぎ 男の大きな手がそこを捕まえる。
それは・・・  恐ろしくエロティックな光景だった。

「いやいや。あの男も 今度ばっかりは計算外だろうな。」
「どうだい? あのドレスに わし掴みする手。・・最高のアクセサリーだ。」


「・・離してってば ドンヒョクssi!」

ふくれっ面のジニョンが かんかんに怒っている。
“いや・・そのまま そのまま” 
“ドンヒョク いいか 離すなよ”


にんまり笑ったデブ2人。 今夜だけは ドンヒョクの応援団だった。

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