ボニボニ

 

My hotelier 75. - オイスター - 

 




ジニョンは 巨大なハマグリが焼けるのを わくわくと待っている。


カンウォンドにやってきてからというもの
彼女の食事は すべて魚介類で 埋め尽くされている。


“その土地で 一番美味しいものを食べなくちゃ・・・”

そうだね。
きっともうすぐ可愛い君は エラ呼吸するようになるに違いない。

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「・・・お父様の家に 泊まれば良かったのに・・。」


ことこと動くハマグリを見ながら ジニョンが言う。
ドンヒョクの薄笑い。 
ジニョン、さりげない風に見せるのが 下手だな。


「いいんだ。また今度。 ・・ジェニーとでも来た時に 泊まるよ。」
「お父様。 ・・すこし 寂しそうじゃなかった?」
「そうでもないな。 彼女と2人で外泊する絶好の機会だから 
 アボジの家には泊まらない。 そう言ったら・・・笑っていたから。」


ジニョンが あんぐり口を開ける。 ハマグリ並みだな。
「・・・本当に そんなこと 言ってないでしょうね?」
「ハマグリが ブクブク言っているよ。」

「熱っつ! ちちち・・・」

「馬鹿だな。 指で貝を触るなんて・・大丈夫かい?」


ああ・・おつゆが たくさんこぼれちゃった。
食いしん坊の恋人が 大げさに 悲嘆にくれている。
僕の貝も 食べたらいい。
そんなひと言で 彼女の機嫌が すっかり良くなる。

「・・ああ僕は 戦略を 誤ったな。」

誕生日のプレゼント。ドレスや靴じゃなくて生鮮品にすれば良かった。
「君には 真珠よりアコヤ貝だったんだ。 リサーチが足りなかった。」


陽気になったハンターが わざとらしい程悔やんでみせる。
「もう・・失礼ね。」
はふはふと貝を食べながら ジニョンが顔を赤くした。

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「ハマグリ6つに カキが1ダース・・ 仕上げのジャグジーは シェル型か。」
「・・・・・数えてたの?」


ブルーのシャツを 素肌にはおって
ハンターは 美しい貝形の バスタブの縁に座る。
リゾートホテルの選定基準は この豪勢なジャグジーだった。


「ドンヒョクssi・・ どうして そこに座っているの?
 私 あの・・・ もう出たいんだけど。」

もじもじと ジニョンが泡の中で 困っている。
にっこり笑ったハンターは いそいそとバスタオルを広げる。 


「やれやれ やっと 出てくる気になったか。
 これで君を すくおうと思って ずっと待っていたんだ。」

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大きな魚を 捕まえた。


得意満面 ハンターが ジニョンを抱き上げる。
シーツの海に 放してあげて
さあどうやって 食べようかな。


「・・・・・・い・・や・・。」

「いやと言われると 好色な領主さまは 燃えるな。」

逃げる背中へ 腕を差し入れて
にこにことハンターが 獲物のふくらみをつかまえる。
そのまま片手がお腹を滑り 柔らかいところに入っていく。

「ドン・・ヒョクssi。 あ・・なた・・紳士じゃなかったっけ?」


今は休暇に出ています。

そろそろ君も 観念したほうがいい。アボジにも もう挨拶しただろう。
気持ち良さそうに頬をすりつけ ドンヒョクが 肩甲骨を噛む。
は・・と反らした背中から 腰をつかんで半身を挿しいれる。
「・・・あ・・。」

自分を思いのままにする 有頂天のハンターに 
なんだか口惜しいジニョンが チクリと反撃をした。
「・・・・私の・・・パパ・・に・・挨拶は?」 


ごくん・・・

ドンヒョクの 動きが止まる。

1つになったそのままで 見えない“パパ”に 首をすくめる。
「ジニョン・・・。 君のパパって どんな人?」
ブルートみたいな 髭モジャの 怖い大男。

「・・・・・。」
「身長は 2メートル30センチ・・。」
「・・・嘘を 言っているだろう?」

くすくすと 意地の悪い支配人が 笑い出す。
許さないぞ。 
気弱なポパイが怒り出し 愛しい人を 責めだした。

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シン・ドンヒョクが 嬉しげに 恋人を抱きしめている。
ジニョンの息が落ち着いたら もう一度・・。
ほくほくと ブレイクタイムを待ちながら 柔らかく 髪を撫でている。

「はあ・・・・はぁ・・はあ・・。」

ちょっと・・・・ 力いっぱいだったかな? ジニョン 大丈夫?

「はぁ・・はあ・・ドン・・ヒョクssi・・苦しい・・。」
「苦しい? ・・・・ジニョン!!」 

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真夜中の車道を 救急車が突っ走る。

バン と開いた 後部ドアからストレッチャーが滑り出す。
真っ青な顔のジニョンは 滝のように汗を流して 
蒼白のドンヒョクは 物も言わずに 付き添って走る。


「何時からですか?! この症状は?!」
「・・・1時間・・く・・らい・・ま・・え・・。」
看護婦がバタバタと 機器を取り付けるそばで 
年配の医者が 聴診器を当てる。

「妊娠の可能性は ありますか?!」
「え・・・あ・・の・・・・。」

こんな時に ジニョンが恥ずかしがっている。

「可能性は ないとは言えません。」
ドンヒョクの冷静な声が 横から滑りこむ。
「旦那さん?」「婚約者です。」

おい! 外妊も考慮だ。検査行くぞ!
治療室が 一斉に動き出し 廊下に出されたドンヒョクは
呆然と ドアを見つめていた。

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「・・・・食あたりですね。何か 食べましたか?」


「ハマグリと ・・・カキを1ダース。」

「それはそれは ご馳走でしたね。 じゃあ 犯人はカキかな。」
ご旅行中ですか。 ・・まあ お帰りになっても大丈夫です。
できれば明日1日 安静にお過ごしください。


明け方近くに開放されて 2人がホテルに戻ってきた。    

「できれば1日 安静にお過ごしください・・・。」

恋人を そっとベッドに横たえて
心配でへとへとのハンターが そばに座る。

「・・・・ごめんなさい。」
シーツの中から 大きな眼だけをのぞかせて 半病人が謝っている。
「心臓が止まるかと ・・思ったよ。」

ベッドの脇にひざまずいて ドンヒョクがジニョンの髪をなでる。
「ジニョン・・。 早く 一緒に住もう。 今夜みたいな夜に 
君のそばにいられなかったら 僕の心臓がもたないよ。」
「ドンヒョクssi・・。」

そっと ジニョンが手を伸ばす。
まだ青ざめている恋人の 頬にふれる。
自分の頬におかれた手を ドンヒョクが 上から包み込んだ。

「明日・・ 遊びに行けなくなっちゃったわね・・。」 

2人の思い出が少ないだろう? そう言った彼を思い出して
ジニョンが神妙な 声を出した。

平気だよ。 にっこりと 嬉しそうにドンヒョクが言う。



「どっちにしても 最後の1日は 君をベッドから出さないつもりだったから。」

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