ボニボニ

 

My hotelier 101. - ダブルベッド - 

 




“ソ・ジニョンという人にとって
 眠りは 至福の時なんだな。 ・・・僕と 愛し合うことよりも?”



幸せそうに ジニョンが眠る
枕に うっとり頬を寄せて。

僕に頬を寄せるとき 果たして彼女は これほど幸福に 見えるのだろうか?
疑惑の瞳でみつめていたら ようやく眠り姫のまぶたが ふるえ始めた。
ゆっくりと開く眼が すぐに もう1度  閉ざされる。

ぱち・・ ぱち・・・・と もう1度開く。
「おはよう ジニョン。」
「ドンヒョクssi・・・」

どうしたの?   待っていたんだ 君が 起きるのを。

「いま・・何時?」
「11時に近いな。朝方にベッドに入ったとはいえ よく寝ただろう?」
ふぅん・・・と もう1度枕に顔を埋めてから 
ようやくジニョンが覚醒する。
「ドンヒョクssiも さすがに 結婚式の翌朝は 走らないのね?」

ふふん わかっていないな。 走らなかったのは そんな理由じゃない。
「走りたかったんだけど 君を待っていたんだ。
 昨夜やるべき仕事を 片付けなかったからね。」
「やるべき仕事・・?」

そうだよ My hotelier。
君が 披露宴で疲れきってしまっていたからね。
「僕は 君を まだ妻にしていない。」
「!」


あの・・それ・・
可愛いジニョンが赤くなる。 そういう ことだよ。
「でも・・ もうお日様が高いわ。」
「初夜にしては いささか明るいけどね。 気にしなくていい 僕たちはもう夫婦だ。」


ベッドの中でそろそろと ジニョンが向こうへ逃げてゆく。
そっと・・細い腰を つかまえる。
「どこに行く つもりかな?」
もう 疲れているは聞かないぞ。 君はゆっくり寝ていたからね。
 
私 その お風呂に・・
「寝る前に シャワーを浴びていたじゃないか。」
大きな手が 有無を言わせず ジニョンを引き寄せる。
僕の“奥さん”。 もう ぐずぐず言わないで。


愛しているよ ジニョン。 

最高だな。 もうこれからは 毎日 君と一緒のベッドだ。
甘い時間を作るための あの手この手の 涙ぐましい努力の日々は 終わった。
これからはいつだって 手を伸ばせば ジニョンに届く。



新婚の妻のボタンへと いそいそドンヒョクが手を伸ばす。
「ねえ・・・ ドンヒョクssi?」
「うん。」
「新居のベッドね ・・ツインにしない?」

ぴくり。
ハンターの笑顔が止まる。

指は止まらず 着ているものを脱がせながら いささか不機嫌そうに聞く。
「何故?」
「だってあなた すごく眠りが浅いんだもの。」
私が動くと 揺れて 起きちゃうでしょ?


―あなた・・

ジニョンの言葉が新鮮に聞こえて 新米夫は 眼を伏せたまま 薄く微笑む。
「気にしなくていい 僕の睡眠は十分だよ。ベッドをわける必要は ない。」
「でも私。 仕事で疲れたときには 手足をう~んと伸び伸びさせて寝たいな・・って。」


奥さん? 

大きな手がすうっと伸びて ジニョンのあごをつかまえる。
「ドンヒョクssi。  ・・ち・・ょっと・・い・・たいわ。」
悪魔のように優しい シン・ドンヒョクの笑顔。
じっと 獲物を見つめたままでキスをして ジニョンの大きな眼が 寄り眼になる。
「身体を伸ばしたい? それなら 君がベッドの中で太極拳ができるくらいの 
 キングサイズベッドを 探してあげよう。」 


この話は これで終わりだ。
さあ もう夫婦の時間に させてくれないか。
ハンターが身を躍らせて 半分寝起きの恋人は シーツの波に飲まれていく。


すらりと長い きれいな右脚・左脚。
真ん中に 見事に筋肉質な大きな背中が 深く 入り込んでいる。
ジニョンは 薄く唇をあけて 貫かれる感覚にうっとりと眼をつぶる。
きれいだな。 愛しい人の恍惚を ハンターは満足そうに見守っている。
「眼を・・あけて。 ジニョン。」

ゆっくりと 大輪の花が開くように ジニョンのまぶたが開いてゆく。
切なげな顔で微笑んで ドンヒョクが 妻に笑いかけた。
「やっと・・  君を 手に入れたね。」
「・・・ドンヒョクssi。」


「愛している。」
心から 愛しているよ。  たくましい腕が 華奢な身体を 抱きしめる。
ソ・ジニョンという人が 自分の妻であるという奇跡に
ドンヒョクは 柔らかいため息をつく。

指輪の光るジニョンの掌へ ドンヒョクの指が差し込まれる。
その指が ぐっと握られて リズミカルに揺れ始める。


「・・あ・・あ・・・あ・・・・。」
戸惑い揺れるジニョンの指が やがて たまらないように握りかえして
甘い泣き声が 高くなる。

僕のものだ。 一生手放さない宝ものを ハンターは強く抱きしめた。


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「・・・でもね。 イ先輩が ベッドは別々の方が良かったって言うのよ。」


腕枕。 
ジニョンの手が ドンヒョクの胸でいたずら書きをする。
つたない指使いがこそばゆくて  その手を奪って 指先にキスをする。
君は・・  まだ 終わった話を蒸しかえすつもりか?


「もしも 僕たちもそう思うようだったら その時にツインへ 買い換えればいい。」
「だってそんなの ・・もったいないわ。」


もったいない?

君と一緒の部屋で 離れて寝るほうが よほどもったいない。
“第一そんなことをしたら また君を僕のベッドに呼ぶために あの手この手だ。”

「ツインベッド? そんなものは 絶対 認めない。」
「暴君。」
「何とでも 言ってもらおう。」
「そうやってあなたは これからいつも 妻を 絶対服従させるつもり?」  
「え・・・?」


・・雲行きが怪しい。


ジニョンの機嫌が傾いてきて ドンヒョクが いささかうろたえる。
新婚初日なんだ。 仲たがいなどは 死んでも避けなくては。

「ねえジニョン。  たとえば 神がもう1度 大洪水を起こしたとき・・。」
「?」
「流れ込んでくる膨大な水に 君のベッドが連れ去られたらどうする?
 僕は 君と同じベッドに乗って アララット山の頂きに 流れ着きたいんだ。」
「そんな すごいシチュエーションを 持ってこないで。」

もう・・

きれいな 白い背中を見せて 愛しい妻がふくれている。
天使の羽の形をした 肩甲骨にキスをする。
ジニョン。 これは僕たち夫婦の 最初のネゴシエーションだ。
そしてゲームはファーストブレイク。  ・・・ここが 肝心だ。



「・・・ジニョン?  僕は ずっと 楽しみにしていたんだよ。」

君を腕に抱いて眠る日々が これからずっと続くんだと思うと 嬉しかった。
「・・・・・。」
「どんなに疲れて 気持ちがささくれた夜でも 君が腕の中にいるなら 僕は 安心して眠れる。」
「・・ドンヒョクssi・・。」


強気な男の 伏せたまつげ。 そして小さなため息。
眉根が悲しげに寄って ドンヒョクがすい と眼をそむける。
「もちろん 君が嫌なら諦めよう。 僕は紳士だ。 妻の 嫌がる事はしない。」
「・・・ドンヒョクssi・・。」


ああ まずい。
ここで 負けちゃだめなのに。
でも でも・・・ 彼が寂しそうで 見ていられない。
ジニョンの瞳が 迷いの中で揺れる。
打ちひしがれたハンターが ラストディールへ 歩を進める。

「ジニョン?」
「ええ。」
「君は どうしても ・・・僕と一緒のベッドじゃ 嫌なの?」
「嫌 だなんて そんな。」
ゆっくりと ジニョンをのぞきこむドンヒョクの 弱々しい瞳。
こんなに愛しているのに 君は 僕と  離れて眠りたい?



“はぁ・・・。”
―きっと 私 後悔するわ。 あの時押し通していれば良かった って。


ジニョンの腕がすう・・と伸びて 夫を抱きしめる。
「負けたわ。」
「・・じゃあ。」
「寝相が悪いと怒っても 知らないわよ。」

それなら 新体操のマット位の ベッドにするよ。
「ジニョン ・・・ありがとう。」


では お礼にもう1度。

「ねえ。 もう・・・準備して 飛行場に行かなくちゃ・・。」
「かまわないよ。 飛行機なんか 待たせておけばいい。」
ちょっと待ってよ ドンヒョクssi・・

「ジニョン?  “あなた”って 呼んでごらん。」


ちょっと ねえ・・

指輪の光るジニョンの手を ドンヒョクの左手が包み込み 2つの指輪が重なる。

これで ラブvsフィフティーン。
僕の  生涯もっとも楽しいゲームが 始まる。
「敵は 過去最大だけどね・・。」

「・・なあに?」
「ジニョンを 愛しているって 言ったんだよ。」


緒戦一勝の シン・ドンヒョクは   可愛い戦利品にキスをした。

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